17話 幻光の中の真実
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「おい見てみろ」
しばらく進み、河の深さが増した頃、ワッカが河底を指差す。
「何?あ!」
ティーダは立ち上がり、河底を覗き込む。
「街が沈んでる!」
透明な水に、いまのスピラには考えられない、ビル群が沈んでいる。
「千年以上前の、機械の街だ。河に沢山の橋を掛けて、その上に街を作ったらしい」
「街の重さで橋が崩れて、河の底へ沈んでしまったそうよ」
「なんで、橋の上に街を作ったんだ?便利だからか?」
「自分達の技術、力を試したかっただけだ」
「そうかなぁ」
「エボンの教えだ。人は、力を持つと使わずにはいられない。禁止しないと、キリがない」
ティーダは、河を覗き込むのを止めて、座席へ座った。
腑に落ちないと、ワッカに訊ねる。
「でもさ、スタジアムとか、機械使ってるよな」
「寺院が決めるの。この機械は可、これは不可ーーてね」
ワッカに代わり、ルールーが答える。
「どんな機械がダメなんだ?」
機械の恩恵に預かっているのに、機械の使用を禁止する。その矛盾に、ティーダは笑った。
「ミヘン・セッションで見ただろ?ああいう機械だ」
「また、戦争がはじまるからね」
「戦争?」
ティーダはドキッとした。
「千年以上前に、機械の武器を、沢山使った戦争があったんだって…」
ユウナも話に加わる。
「戦争の間も、武器はどんどん強力になってな」
「スピラそのものを、破壊しつくす力を持つ武器も造られた。それでも、戦争は終わらなかった」
「ど、どうなったんだ?」
ワッカとルールーの話に息を呑む。
「突然【シン】が現れて、街や武器を破壊した」
「戦争は終わったわ。でも、その代償として【シン】が残った」
「な?シンは、調子に乗り過ぎた人間への罰ってわけだ」
「でも、機械が悪いって、わけじゃないだろ?」
「そう、使う側の問題ね」
ティーダは少しの間、考え込んだ。
「シンてさ、突然現れたのか?」
「え?えぇ、教えではそうなっているわ」
「ふ~ん、じゃあ、どうやってシンが生まれたか、わからないんだ」
「そう言われれば・・そうね」
ルールーもエボンの民だが、ワッカより柔軟な姿勢だ。
「何言ってんだ?教えがそうなってんだから、そうなんだよ」
「ワッカ、説明になってないっスよ」
ワッカが熱くなる程、ティーダは冷静になっていく。
「兎に角、エボンの教えは正しいんだ。教えを守って、生きていけばいいんだ。
そうすれば、いつか罪は償える。それに、寺院は俺たちを救ってくれる」
アヤが、不意にうずくまるように、手で顔を覆って伏せた。
「アヤ、どうしたっスか?」
「気分でも、悪いんですか?」
両隣に座っている、ティーダとワッカが声を掛ける。
「大、丈夫・・何でも、ないの」
微かに、肩が震えている。
結果、アヤがワッカとティーダの水かけ論に、終止符を打つ形になった。
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