16話 撤退
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祈り子から召喚獣を授かったあと、ユウナとルールーとアヤは、負傷者の手当てに廻った。
夜になっても運び込まれる負傷者に、三人は、なかなか休むことが出来ない。
手当ての甲斐なく、息を引き取る者もいて、ユウナはそのたびに異界送りを行った。
ようやく真夜中過ぎに、ルールーが寺院から出て来た。
隣接している宿屋に皆がいる筈だ。
さすがに疲労の色が隠せない。
ユウナやアヤは、もうしばらくかかりそうだが、自分に出来ることもなくなった。
悪いが、先に休ませてもらうことにした。
寺院の扉を開けると、闇の向こうに朱い色が見えた。
「アーロンさん」
アーロンは、目だけを動かして、ルールーを見た。
「終わったのか?」
「手が空いたので、私だけーーユウナとアヤさんは、もう少しかかりそうです」
「そうか」
「アーロンさんこそ、こんな時間まで起きていらしたのですか?」
「ーー眠れなくてな」
ブラスカとの、旅の事を思い出していたのだろうかと、ルールーは思った。
「あの」
「なんだ?」
ルカで、ワッカに聞かれたからではないが、正直ルールーも気にはなっていた。
ふたりで話す姿を見かけはするが、どこかよそよそしさも感じる。
だが、10年前に一度会っただけの間柄で、立ち入った事を聞くのも躊躇われた。
自分から話し掛けたが、先が続かなくなった。
「アヤのことか」
弾かれたように顔を上げたルールーに、アーロンは苦い顔をした。
「あ、すいません、立ち入った事を」
「いや」
ルールーは、アーロンの機嫌を損ねても、聞いてみたいと思った。
「アヤさんとは、あの、もう、恋人同士ではないのですか?」
言った後、随分と間の抜けた質問だと、ルールーは顔が赤くなった。
武器にしている、ケット・シーのぬいぐるみを抱きしめ、俯く。
アーロンは、いきなり直球が飛んで来たことに目を見開いたが、やがて、その瞳に自責の色を浮かべる。
「10年前、俺はアイツを傷つけた。もう、恋人を名乗る資格はない」
ルールーは、顔を上げると
「でもアヤさんは、今でもアーロンさんのことを」
すがりつくように訴えるルールーに、アーロンは苦笑した。
「ルールー、もう休め。休むのもガードの仕事だ」
「ーーはい」
これ以上は、語りたくないのだろう、アーロンは向こうを向いてしまった。
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