16話 撤退
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【儚(つまらな)い宴のあと】
前戦で戦っていた兵は、半数も生き残れなかった。
生き残った兵は、遺体を何カ所かに集め始めた。
ワッカとキマリも、手を貸している。
遺体を運びながら、ひとりの兵が呟く。
「俺は、運がいいんだ。まだ生きているんだからなーー」
前戦部隊の遺体を集めたあと、大型兵器があった場所へ移動した。
意識を取り戻したティーダも、手伝い始める。
手や、脚だけになってしまった遺体も、集めた。
それでも、体が残っている者はマシな方だった。
死んだ兵の大部分は、シンの攻撃で、海の藻くずとなって消えていた。
「死者は、迷うのよ」
キーリカで、ルールーが言っていたことを思い出す。
スピラを守ろうとして死んだ兵が、今度は魔物となって、人々を襲うのだろうか?
そう思うと、遣る瀬なかった。
なんとか遺体を集め、ユウナの異界送りもすんだ。
そこへ、アーロンがアヤを抱きかかえて、歩いてくる。
「アヤーーまだ、気がつかないのか?」
「シンに接触したからな。すぐには無理だろう」
ユウナたちも、心配そうに、顔を覗き込んだ。
そこへ、僧兵を連れたキノックが、ようやく現れた。
無惨に壊れた兵器に、儚そうな眼を向けた後、踵を返した。
戦死した討伐隊の遺体には、目もくれなかった。
アーロンは、アヤをティーダにまかせ、キノックの前に立ち塞がった。
「素早い退散だな。満足か」
「どういう意味だ」
いつもの人の良さそうな笑みは消え、冷徹な本性が剥き出しになっていた。
「教えに反し、機械を求めた兵たちは死に、従順な僧兵が生き延びた」
「ふむ・・昔と同じというわけにはいかんな」
10年前、いち僧兵として腕を競い合っていた頃と、立場も考えも違い過ぎることを、ふたりは思い知った。
立ち去るキノックを見送ると、ルールーが提案する。
「アーロンさん、ユウナが立て続けに異界送りをしましたし、アヤさんもこんな状態です。
少し、休んでから出発した方が良いのでは?」
ワッカたちも、隊員たちの死に接し、精神的にも疲れている。
アーロンは、ルールーの提案を了承した。
皆、思い思いの場所で休憩していると、ユウナの元へ、シーモアが近づいて来た。
「顔色がすぐれませんね」
「シーモア老師」
「ユウナ殿、このような時こそ、気丈に振る舞わねばなりません」
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