コケラの動きを止めることに成功すると、ユウナたちが駆け寄って来る。
高台から海を見下ろすと、蠢きながら接近する黒い影が見て取れた。

「シン？」

ユウナの声に、ティーダは浜辺へ下りる道へ走り出した。

「おい！」

ワッカの制止も聞こえていない。

「連れ戻すわ」

アヤが、後を追った。

「アーロンさん、俺も行きます！」

「あぁ、頼む」

入り海の浜辺にある、切り札の準備はまだ終わっていない。
その時、海が大きく盛り上がり、シンが姿を現わす。
波しぶきが、霧のようにシンのからだに纏わりつく。
ルチルは、チョコボに騎乗したまま剣を抜いた。

「いくぞ！」

「撃て！」

海から現れたシンに、小型兵器が一斉に火を噴いた。
雨のように降り注ぐ砲弾も、シンの表面を削る程度の威力でしかなかった。
シンから剥がれ堕ちたコケラは、海中を一直線に浜辺へと泳いだ。

「突撃！」

前戦部隊と騎兵隊は、浅瀬でコケラを激え撃った。
ルチルは、チョコボを巧みに操りながら、次々とコケラを消していった。
しかし、コケラは途切れることなく、シンのからだから剥がれ堕ちてくる。
大型兵器の準備はまだかと、そちらに目をやった。
ルチルの目に、からだを覆う外壁が崩れ落ちたシンが映った。
シンが集束した重力が球体となって、自身を包む。

「来るぞ！」

高台でアーロンが叫ぶ。

「総員！退避！！」

ルチルは、考えるより先に叫んだ。
叫びながら、自らも真横に走る。
声を聞いたルッツは、シンを見た。

『ルッツ！死ぬんじゃねぇぞ！』

それは海を斬り裂き、一直線に進んでくる。
ルッツは、泣き笑いの顔になった。

「ワッカーー悪い」





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