14話 理由
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「何を言い争っていた・・」
何も言わないアヤの赤く腫れた頬に、アーロンは自分の冷えた手のひらを、そっと押し当てた。
自分のいない10年の間、アヤが僧兵に混じり、戦いに身を投じているとは考えてもみなかった。
ましてや、それをさせていたのがかつての親友だとは、努々思わなかった。
【伝説のガード】の名の大きさを侮っていた。
「アーロン、ありがとう」
落ち着いた声で礼を言うと、冷やすように当てられたアーロンの手を、そっと外した。
そのままアーロンの手から、アヤの指がすり抜けていく。
追いかけると、アヤの瞳がそれを拒んだ。
「ユウナたちが心配する。行きましょう」
先に立って歩くアヤの背中に、アーロンは、この10年という月日の隔たりを感じた。
自分に、ティーダと暮らした時の積み重ねがあるように。
アヤにも、自分の居ない10年分の時の積み重ねがあるのだ。
己が、アヤに言えないことがあるように、アヤにも言えないことがあるのだろうか。
何も言わないアヤの背中に、淋しさが心の中で渦を巻く。
アーロンは、己の弱さに臍を噛んだ。
「キノックがーー」
「なんだ?」
「老師に任命されたのが、三年前。わずか七年で、一介の僧兵が、老師までに登り詰めたのよ」
「あくどい手を、使ったか」
アヤは無言で肯定した。
「それに、あなたも寺院のやり方は、知ってるでしょう?」
明かりが灯るテントを目にして、立ち止まる。
「あぁ。あいつらに話しても信じないだろうがな」
「特に、ワッカはね」
ため息混じりに、ワッカの名を呟いた。
「アーロン」
入り口に手をかけて言った。
「あなたなら、エボンを中心から、変えられたかもしれないわね」
アーロンは、目を見開いたまま固まった。
「おまえ、気は確かか?」
「あの縁談、お受けしたら良かったのに」
少し悪戯な笑みを浮かべた。
「でも、あなたに老師の衣装は、似合わないわね」
「その台詞、二度めだな」
アヤは、ルカで言ったことを思い出した。
「あーー気にしてた?」
「少しな」
アーロンは、口の端を上げた。
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