好きすきすきす
秘密基地からほど近い川のほとりに腰を下ろし、きらきらと輝く水面へ糸を垂れる。
暖かな日差しを浴びながらのんびりと釣りを楽しんでいたアルペックは、不意に左袖をくい、と引かれる感覚を覚え、顔を上げた。
「どうしたんだ、チャコ?」
「あのさ、ちょっとアルにお願いがあるんだけど……」
手にしていた釣竿を脇に置き、隣へ目を向ける。
すると、アルペックの左袖を遠慮がちにつまんだまま、チャコがにこにこと笑みを浮かべていた。
普段はあまり甘えた様子を見せない恋人の愛らしい仕草に、アルペックの頬は自然と緩む。
「お願い?」
「うん」
そわそわと少し落ち着かない様子のチャコが小さく頷く。
促すようにアルペックが頷き返せば、ゆっくりとチャコは唇を開いた。
「アル、好きって10回言って?」
「へ?好き?」
「うん」
「10回?」
「うん」
ダメ?とこちらを覗き込むイタズラっぽい表情に、胸の辺りがどきりと脈を打つ。
つい抱きしめてしまいそうになる衝動をぐっと堪えたアルペックは、「もちろん」と大きく頷いた。
「チャコになら100回でも1000回でも、好きっち言えるけん!1000回言っとく?」
「あははっ。嬉しいけど、今は10回でいいかな」
「わかった!すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき!」
何回言ったか分からなくならないよう、指を折って数えながら難なく10回「好き」と口にしてみせる。
10回目の「好き」を口にするのと同時にチャコの顔を覗き込めば、目を丸くしたチャコが少し照れくさそうに微笑んだ。
「ふふ、ありがと。じゃあ……さっきアルが言ったもの、俺から欲しい?」
「さっきオレが言ったもの?」
つい先ほどの出来事を振り返りながら、アルペックは僅かに首を傾ける。
自分がさっき口にしたのは、「好き」の二文字だけだ。
——ということは、つまり……。
「チャコもオレに好きって言ってくれるってことだよな!めーっちゃ欲しい!」
「ふふ、わかった」
ひとつたりとも絶対に聞き漏らさないという強い意志で、アルペックは耳をすませる。
今か今かとそわそわしていれば、不意にアルペックの唇に柔らかなものが触れる感覚がした。
「……へっ?」
なにが起こったのか最初は分からなかったが、こちらを見つめるチャコの表情を確認した途端——アルペックの顔に一気に熱が集まった。
「ちゃ、ちゃ……チャコ!?」
チャコの頬はほんのりと赤らんでいて、はにかみながらじっとこちらを見つめている。
キスをされたと確信したアルペックの顔も、みるみるうちに赤くなった。
「なっ、なん、キス!?好きじゃなくて!?」
「アル、さっき途中から『キス』って言ってたの気づかなかった?」
「えっ……あ!確かに、キスって言ってると好きになる!」
すきすきすきすきすきすきす……。
意図せずキスを強請っていたことに気がついたアルペックは、したり顔のチャコを強く抱き寄せた。
「オレが欲しいっち言ったの、キスやん……!」
「うん。だからちゃんと『アルが言ったもの』って伝えたでしょ?」
くすくすと機嫌良さげに笑うチャコの身体を解放し、代わりに白くやわらかな頬を両手で包み込む。
きょとんとしたチャコの顔をじっと見つめれば、まっさらな白にじわりと朱が差した。
「アル、どうし……っ、ん!」
そこまで言いかけたチャコの唇に自分のものを重ね、やわらかな感触を楽しむ。
触れた部分から伝わってくる体温が心地いい。
名残惜しく思いながらも唇を離して顔を覗き込めば、目を大きく見開いたチャコの顔はすっかり赤くなっていた。
「う、ぁ、アル……!」
「へへ、オレからもお返し!」
表情を隠すように顔を背けたチャコが、おずおずと抱きついてくる。
ぐりぐりと肩口に額を押し付けてくる恋人の背中に両腕を回したアルペックは、満足げに笑った。
「チャコ、もう一回してもいい?」
ふるふると小刻みに震えるチャコの背中をぽんぽん撫でながら、そう伺ってみる。
「…………」
「いや?」
「……いいよ」
腕の中で小さく頷く気配を感じたのと同時に、消え入りそうな——でも、はっきりとした返事が耳に届く。
思わず笑みを溢したアルペックは、再びチャコの身体をぎゅっと抱きしめた。
暖かな日差しを浴びながらのんびりと釣りを楽しんでいたアルペックは、不意に左袖をくい、と引かれる感覚を覚え、顔を上げた。
「どうしたんだ、チャコ?」
「あのさ、ちょっとアルにお願いがあるんだけど……」
手にしていた釣竿を脇に置き、隣へ目を向ける。
すると、アルペックの左袖を遠慮がちにつまんだまま、チャコがにこにこと笑みを浮かべていた。
普段はあまり甘えた様子を見せない恋人の愛らしい仕草に、アルペックの頬は自然と緩む。
「お願い?」
「うん」
そわそわと少し落ち着かない様子のチャコが小さく頷く。
促すようにアルペックが頷き返せば、ゆっくりとチャコは唇を開いた。
「アル、好きって10回言って?」
「へ?好き?」
「うん」
「10回?」
「うん」
ダメ?とこちらを覗き込むイタズラっぽい表情に、胸の辺りがどきりと脈を打つ。
つい抱きしめてしまいそうになる衝動をぐっと堪えたアルペックは、「もちろん」と大きく頷いた。
「チャコになら100回でも1000回でも、好きっち言えるけん!1000回言っとく?」
「あははっ。嬉しいけど、今は10回でいいかな」
「わかった!すきすきすきすきすきすきすきすきすきすき!」
何回言ったか分からなくならないよう、指を折って数えながら難なく10回「好き」と口にしてみせる。
10回目の「好き」を口にするのと同時にチャコの顔を覗き込めば、目を丸くしたチャコが少し照れくさそうに微笑んだ。
「ふふ、ありがと。じゃあ……さっきアルが言ったもの、俺から欲しい?」
「さっきオレが言ったもの?」
つい先ほどの出来事を振り返りながら、アルペックは僅かに首を傾ける。
自分がさっき口にしたのは、「好き」の二文字だけだ。
——ということは、つまり……。
「チャコもオレに好きって言ってくれるってことだよな!めーっちゃ欲しい!」
「ふふ、わかった」
ひとつたりとも絶対に聞き漏らさないという強い意志で、アルペックは耳をすませる。
今か今かとそわそわしていれば、不意にアルペックの唇に柔らかなものが触れる感覚がした。
「……へっ?」
なにが起こったのか最初は分からなかったが、こちらを見つめるチャコの表情を確認した途端——アルペックの顔に一気に熱が集まった。
「ちゃ、ちゃ……チャコ!?」
チャコの頬はほんのりと赤らんでいて、はにかみながらじっとこちらを見つめている。
キスをされたと確信したアルペックの顔も、みるみるうちに赤くなった。
「なっ、なん、キス!?好きじゃなくて!?」
「アル、さっき途中から『キス』って言ってたの気づかなかった?」
「えっ……あ!確かに、キスって言ってると好きになる!」
すきすきすきすきすきすきす……。
意図せずキスを強請っていたことに気がついたアルペックは、したり顔のチャコを強く抱き寄せた。
「オレが欲しいっち言ったの、キスやん……!」
「うん。だからちゃんと『アルが言ったもの』って伝えたでしょ?」
くすくすと機嫌良さげに笑うチャコの身体を解放し、代わりに白くやわらかな頬を両手で包み込む。
きょとんとしたチャコの顔をじっと見つめれば、まっさらな白にじわりと朱が差した。
「アル、どうし……っ、ん!」
そこまで言いかけたチャコの唇に自分のものを重ね、やわらかな感触を楽しむ。
触れた部分から伝わってくる体温が心地いい。
名残惜しく思いながらも唇を離して顔を覗き込めば、目を大きく見開いたチャコの顔はすっかり赤くなっていた。
「う、ぁ、アル……!」
「へへ、オレからもお返し!」
表情を隠すように顔を背けたチャコが、おずおずと抱きついてくる。
ぐりぐりと肩口に額を押し付けてくる恋人の背中に両腕を回したアルペックは、満足げに笑った。
「チャコ、もう一回してもいい?」
ふるふると小刻みに震えるチャコの背中をぽんぽん撫でながら、そう伺ってみる。
「…………」
「いや?」
「……いいよ」
腕の中で小さく頷く気配を感じたのと同時に、消え入りそうな——でも、はっきりとした返事が耳に届く。
思わず笑みを溢したアルペックは、再びチャコの身体をぎゅっと抱きしめた。
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