Sugary Halloween xxx
オレンジやパープルに染まり、この国の主やかぼちゃをかたどった装飾が、都会的な街を鮮やかに賑わせている。
ハロウィン当日を迎え、どこか浮き立つようなポチャッコ王国の街並みを、アルペックとチャコは肩を並べて歩いていた。
「すげーなチャコ!あっちにもこっちにもハロウィンの飾りがあって賑やかだ!」
「ポチャッコ様が『今年のハロウィンは去年よりも賑やかにするんだ』って、一カ月前から意気込んでてさ。それならってことで、国全体で準備を進めたんだ」
「だからこんなに飾りでいっぱいなんだな!」
付き合って半月になる恋人とのデート気分を味わいながら、アルペックは辺りを見回す。
すると、近くの店の外壁に、大きなかぼちゃに腰かけたポチャッコさんの絵が貼られていることに気がついた。
その隣には、ジャック・オー・ランタンのように顔の形にくり抜かれた“おばけにんじん”を手に、笑顔を浮かべるポチャッコさんの写真も貼られている。
この王国の人々が王様へ向ける愛情と、ハロウィンにかける熱意を感じられ、アルペックの口元に自然と笑みがこぼれた。
「ペックルさんとオレもハロウィンパーティーに誘ってもらえたし、楽しみだなー!ポチャッコさんのおつかい済ませたら、オレもお城の飾りつけ手伝うぞ!」
「ありがとう、助かるよ。——えっと、まずは雑貨店で飾りつけ用のリボンを……」
そこまで口にしたチャコが、何かに気づいたように視線を右へ向けた。
つられてアルペックもそちらを見る。
そこには、魔女の仮装をした小さな女の子が、ポチャッコさんの形を模したお菓子入れを手に立っていた。
よく見ると、その子は「トリック・オア・トリート」と口にしながら、自分の父親らしき男性にお菓子をねだっているようだ。
「ハロウィンって感じだね」
「そうだな!……あの子、お菓子貰えて嬉しそうだな〜」
お菓子を受け取ってはしゃぐ女の子の様子を眺めていると、不意に左腕が軽く引かれた。
そちらへ目を向けると、アルペックの左袖を右手でそっとつまんだチャコが、何か言いたげにじっとこちらを見つめている。
「どうしたんだ、チャコ?」
「お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ〜。……なんてね?」
イタズラっぽく微笑んだチャコの言葉に、アルペックは「ああ!」と声を弾ませた。
思い出したように上着の右ポケットへ手を差し入れ、取り出したいくつものお菓子を、チャコの手のひらへ乗せていく。
「はい!」
「——え、ありがとう。こんなに貰っていいの?」
「もちろん!全部チャコに渡すために用意したけん。ほら、チャコが好きなバナナアイスっぽいお菓子もあるぞ!」
一瞬、驚いたように目を丸くしたチャコだったが、その表情はすぐに笑顔へと変わった。
自分の王国ではバナナアイス味のお菓子が見つからず、先日この国を訪れたときに、こっそり買っておいたものを手渡したのだが……どうやら、チャコは喜んでくれているらしい。
嬉しそうに微笑むチャコの姿に、アルペックも自然と頬を緩めた。
「ふふ、アルがお菓子用意してるとは思わなかったよ。嬉しいけど、いたずらし損ねちゃった」
「チャコ、オレにいたずらするつもりで言ってたのか!何するつもりだったんだ?」
「んー、秘密」
「どんないたずらか気になるやん……!」
ウインクをして「秘密だよ」とはぐらかすチャコは、にこにこと、なんだか機嫌が良さそうだ。
その様子につられて、アルペックも笑みを返す。
そして今度は、自分の番だと言わんばかりに、アルペックは意気揚々と口を開いた。
「チャコ!お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ!」
「っえ」
パーカーのポケットにお菓子をしまっていたチャコの動きが、一瞬止まった。
ややあって、お菓子を入れ終えたチャコの表情を覗き込むと、どこか落ち着かない様子で視線を宙にさまよわせている。
「チャコ?」
「……えーっと」
口ごもりながらズボンの右ポケットに手を入れたチャコの姿に、アルペックは首を傾げた。
——きっと、お菓子を持ってきていないんだな。
そう判断したアルペックは、ぐいとチャコの肩を抱き寄せながら口を開いた。
「よーし!じゃあ、オレからチャコにいたずらな!」
「えっ?」
「チャコ、どんないたずらがいい?」
「いたずらする相手に、いたずら内容の希望を聞くんだ……?」
そう言いつつも、何が良いかと考え始めたチャコの瞳を、アルペックはそっと覗き込んだ。
秋の陽射しをやわらかく映し、どこかいつもより輝いて見えるその瞳に、アルペックは思わず見惚れてしまう。
太陽の光を受けてきらめく故郷の川を思い出しながら——綺麗だな、と胸の内で呟いたそのとき、意を決したように「決めた」とチャコが小さく呟いた。
「なになに?何にする?」
「——アルの好きにしていいよ」
「へ?」
聞き間違いだろうか。
抱いていたチャコの肩からそっと左腕を離し、アルペックは向き合うようにその正面に立った。
小首を傾げてこちらを見つめるチャコの瞳に、かすかな期待の色が宿っているように見える——いや、さすがに自分の思い込みだろうか。
「どうせなら、俺がびっくりするようないたずらにしてね?」
「わかった!——でも、チャコがびっくりするいたずらかぁ」
どんないたずらが良いか、腕を組みながらアルペックは真剣に考え込む。
チャコから「好きにしていい」と言われたはずなのに、いざとなると何をしていいのか、アルペックは分からなくなっていた。
「チャコがびっくりすること……」
「そんなに悩むほど難しい?」
「だってチャコ、そんなに驚いたりすることなくない?」
「そんなことないと思うけど。アルと一緒にいると、驚かされることが結構あるよ」
チャコを驚かせた覚えはなかったが、本人がそう言うのなら間違いないのだろう。
納得したアルペックは少しのあいだ考え込み、やがて思いついたように顔を上げた。
「……そうだ!」
「いたずら、何にするか決まった?」
ひらめいたアルペックが声を上げると、興味津々といった様子でチャコが身を乗り出してくる。
アルペックは嬉しそうに大きく頷き、にっこりと笑うと、目の前に立つチャコの両肩に手を添えた。
「アル、何にす……んん!?」
こちらに問いかけようとしていたチャコの唇に、アルペックは自分の唇を重ねた。
恋人のやわらかな感触と温もりを確かめるように、そっと短く触れて——小さく音を立てて離れる。
「チャコ、びっくりした?」
ぺろりと自分の唇を舐めたアルペックは、うかがうようにチャコの顔を覗き込んだ。
キスしたときと同じ体勢のまま、しばらく固まっていたチャコだったが、よく見ると白い頬や耳たぶがじわじわと赤く染まっていく。
その様子が可愛くて、アルペックがもう一度、触れるだけの口づけを落とすと、びくりと大袈裟なほどにチャコの肩が跳ねた。
「チャコー?」
「……び、びっくりした」
呆然としていたチャコだったが、先ほどのキスを確かめるように右手の人差し指で自分の唇に触れ、わかりやすく顔を赤らめていた。
外だからと叱られるかと思っていたが、どうやらそれどころではないらしい。
「チャコ、照れてる?」
「っ……急にあんなことされて、照れない方が無理だから」
「顔赤くなってる、かーわいい。なあなあチャコ、もう一回していい?」
「いたずらは終わったでしょ?……後で俺の部屋でなら、いいよ」
おあずけにはなったものの、恋人からのお誘いにアルペックは笑みをこぼした。
お城に戻ったら飾りつけを手伝って、ハロウィンパーティーをして、それから——チャコの部屋でお菓子をつまみながら、何度も抱きしめて、たくさんキスをしよう。
お菓子よりも甘い恋人との時間を思い浮かべながら、アルペックはチャコの右手をそっと握り、指先を絡めた。
そして恋人繋ぎの形にし、確かめるようにその手を握り込んだ。
「よし!それじゃあ、おつかい済ませてお城に帰ろうー!」
「ふふ、そうだね。とりあえず、一番近い雑貨店から回ろうか?」
そう言って微笑んだチャコに、ぎゅっと手を握り返される。
デート気分のおつかいから、一気に“デート”そのものへ——。
チャコとの間に流れる空気がどこか甘いものに変わり、アルペックは思わず顔をほころばせた。
そんなとき、チャコのズボンの右ポケットから、ラッピング袋のようなものが覗いていることに気がついた。
「チャコ、それ……?」
「えっ?——ああ、これね」
繋いでいた手を離したチャコが、ふと思い出したようにポケットへ手を入れる。そして、綺麗にラッピングされた小さな袋をアルペックに差し出してきた。
それを受け取り、透明なラッピングの外から中を覗く。
そこには、かぼす味のさまざまなお菓子がぎゅっと詰められていた。
「本当は持ってたんだけど、渡しそびれちゃって。それに……」
そこまで言うと、チャコは小さく口を閉ざした。
言うべきか否か迷っているのか、視線を揺らしながら落ち着かない様子でこちらを見つめてくる。
続きを促すように顔を覗き込むと、ほんのりと頬を赤らめながら、おずおずとチャコは口を開いた。
「……いたずら、アルに何されるのかなって。ちょっとだけ気になって。でも、まさかあんなことされるとは思わなかったよ?」
「えっ!チャコ、オレにいたずらされたかったん?」
「そういう意味じゃなくて……!その話はいいから、早く買い物に行こう?」
照れくさそうに微笑んだチャコが、右手をそっと差し出してくる。
その仕草が愛しくて、今すぐ抱きしめて口づけたくなる衝動を、なんとか押さえ込んだアルペックは、その手をしっかりと握りしめた。
「へへ、ハロウィンって楽しいな!チャコ!」
「急にどうしたの?……でも、そうだね」
チャコと顔を見合わせて微笑み、アルペックは握った手を再び恋人繋ぎの形へと繋ぎ直した。
おつかい先の雑貨店へ向けて、寄り添うように並んで歩き出す。
——このあと、こっそりと二人のやり取りを見守っていた人々の噂話と、その場に居合わせた“FRAGARIA Times”記者の手腕によって、二人の関係がポチャッコ王国中に知れ渡ることを、このときのアルペックはまだ知らなかった。
ハロウィン当日を迎え、どこか浮き立つようなポチャッコ王国の街並みを、アルペックとチャコは肩を並べて歩いていた。
「すげーなチャコ!あっちにもこっちにもハロウィンの飾りがあって賑やかだ!」
「ポチャッコ様が『今年のハロウィンは去年よりも賑やかにするんだ』って、一カ月前から意気込んでてさ。それならってことで、国全体で準備を進めたんだ」
「だからこんなに飾りでいっぱいなんだな!」
付き合って半月になる恋人とのデート気分を味わいながら、アルペックは辺りを見回す。
すると、近くの店の外壁に、大きなかぼちゃに腰かけたポチャッコさんの絵が貼られていることに気がついた。
その隣には、ジャック・オー・ランタンのように顔の形にくり抜かれた“おばけにんじん”を手に、笑顔を浮かべるポチャッコさんの写真も貼られている。
この王国の人々が王様へ向ける愛情と、ハロウィンにかける熱意を感じられ、アルペックの口元に自然と笑みがこぼれた。
「ペックルさんとオレもハロウィンパーティーに誘ってもらえたし、楽しみだなー!ポチャッコさんのおつかい済ませたら、オレもお城の飾りつけ手伝うぞ!」
「ありがとう、助かるよ。——えっと、まずは雑貨店で飾りつけ用のリボンを……」
そこまで口にしたチャコが、何かに気づいたように視線を右へ向けた。
つられてアルペックもそちらを見る。
そこには、魔女の仮装をした小さな女の子が、ポチャッコさんの形を模したお菓子入れを手に立っていた。
よく見ると、その子は「トリック・オア・トリート」と口にしながら、自分の父親らしき男性にお菓子をねだっているようだ。
「ハロウィンって感じだね」
「そうだな!……あの子、お菓子貰えて嬉しそうだな〜」
お菓子を受け取ってはしゃぐ女の子の様子を眺めていると、不意に左腕が軽く引かれた。
そちらへ目を向けると、アルペックの左袖を右手でそっとつまんだチャコが、何か言いたげにじっとこちらを見つめている。
「どうしたんだ、チャコ?」
「お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ〜。……なんてね?」
イタズラっぽく微笑んだチャコの言葉に、アルペックは「ああ!」と声を弾ませた。
思い出したように上着の右ポケットへ手を差し入れ、取り出したいくつものお菓子を、チャコの手のひらへ乗せていく。
「はい!」
「——え、ありがとう。こんなに貰っていいの?」
「もちろん!全部チャコに渡すために用意したけん。ほら、チャコが好きなバナナアイスっぽいお菓子もあるぞ!」
一瞬、驚いたように目を丸くしたチャコだったが、その表情はすぐに笑顔へと変わった。
自分の王国ではバナナアイス味のお菓子が見つからず、先日この国を訪れたときに、こっそり買っておいたものを手渡したのだが……どうやら、チャコは喜んでくれているらしい。
嬉しそうに微笑むチャコの姿に、アルペックも自然と頬を緩めた。
「ふふ、アルがお菓子用意してるとは思わなかったよ。嬉しいけど、いたずらし損ねちゃった」
「チャコ、オレにいたずらするつもりで言ってたのか!何するつもりだったんだ?」
「んー、秘密」
「どんないたずらか気になるやん……!」
ウインクをして「秘密だよ」とはぐらかすチャコは、にこにこと、なんだか機嫌が良さそうだ。
その様子につられて、アルペックも笑みを返す。
そして今度は、自分の番だと言わんばかりに、アルペックは意気揚々と口を開いた。
「チャコ!お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ!」
「っえ」
パーカーのポケットにお菓子をしまっていたチャコの動きが、一瞬止まった。
ややあって、お菓子を入れ終えたチャコの表情を覗き込むと、どこか落ち着かない様子で視線を宙にさまよわせている。
「チャコ?」
「……えーっと」
口ごもりながらズボンの右ポケットに手を入れたチャコの姿に、アルペックは首を傾げた。
——きっと、お菓子を持ってきていないんだな。
そう判断したアルペックは、ぐいとチャコの肩を抱き寄せながら口を開いた。
「よーし!じゃあ、オレからチャコにいたずらな!」
「えっ?」
「チャコ、どんないたずらがいい?」
「いたずらする相手に、いたずら内容の希望を聞くんだ……?」
そう言いつつも、何が良いかと考え始めたチャコの瞳を、アルペックはそっと覗き込んだ。
秋の陽射しをやわらかく映し、どこかいつもより輝いて見えるその瞳に、アルペックは思わず見惚れてしまう。
太陽の光を受けてきらめく故郷の川を思い出しながら——綺麗だな、と胸の内で呟いたそのとき、意を決したように「決めた」とチャコが小さく呟いた。
「なになに?何にする?」
「——アルの好きにしていいよ」
「へ?」
聞き間違いだろうか。
抱いていたチャコの肩からそっと左腕を離し、アルペックは向き合うようにその正面に立った。
小首を傾げてこちらを見つめるチャコの瞳に、かすかな期待の色が宿っているように見える——いや、さすがに自分の思い込みだろうか。
「どうせなら、俺がびっくりするようないたずらにしてね?」
「わかった!——でも、チャコがびっくりするいたずらかぁ」
どんないたずらが良いか、腕を組みながらアルペックは真剣に考え込む。
チャコから「好きにしていい」と言われたはずなのに、いざとなると何をしていいのか、アルペックは分からなくなっていた。
「チャコがびっくりすること……」
「そんなに悩むほど難しい?」
「だってチャコ、そんなに驚いたりすることなくない?」
「そんなことないと思うけど。アルと一緒にいると、驚かされることが結構あるよ」
チャコを驚かせた覚えはなかったが、本人がそう言うのなら間違いないのだろう。
納得したアルペックは少しのあいだ考え込み、やがて思いついたように顔を上げた。
「……そうだ!」
「いたずら、何にするか決まった?」
ひらめいたアルペックが声を上げると、興味津々といった様子でチャコが身を乗り出してくる。
アルペックは嬉しそうに大きく頷き、にっこりと笑うと、目の前に立つチャコの両肩に手を添えた。
「アル、何にす……んん!?」
こちらに問いかけようとしていたチャコの唇に、アルペックは自分の唇を重ねた。
恋人のやわらかな感触と温もりを確かめるように、そっと短く触れて——小さく音を立てて離れる。
「チャコ、びっくりした?」
ぺろりと自分の唇を舐めたアルペックは、うかがうようにチャコの顔を覗き込んだ。
キスしたときと同じ体勢のまま、しばらく固まっていたチャコだったが、よく見ると白い頬や耳たぶがじわじわと赤く染まっていく。
その様子が可愛くて、アルペックがもう一度、触れるだけの口づけを落とすと、びくりと大袈裟なほどにチャコの肩が跳ねた。
「チャコー?」
「……び、びっくりした」
呆然としていたチャコだったが、先ほどのキスを確かめるように右手の人差し指で自分の唇に触れ、わかりやすく顔を赤らめていた。
外だからと叱られるかと思っていたが、どうやらそれどころではないらしい。
「チャコ、照れてる?」
「っ……急にあんなことされて、照れない方が無理だから」
「顔赤くなってる、かーわいい。なあなあチャコ、もう一回していい?」
「いたずらは終わったでしょ?……後で俺の部屋でなら、いいよ」
おあずけにはなったものの、恋人からのお誘いにアルペックは笑みをこぼした。
お城に戻ったら飾りつけを手伝って、ハロウィンパーティーをして、それから——チャコの部屋でお菓子をつまみながら、何度も抱きしめて、たくさんキスをしよう。
お菓子よりも甘い恋人との時間を思い浮かべながら、アルペックはチャコの右手をそっと握り、指先を絡めた。
そして恋人繋ぎの形にし、確かめるようにその手を握り込んだ。
「よし!それじゃあ、おつかい済ませてお城に帰ろうー!」
「ふふ、そうだね。とりあえず、一番近い雑貨店から回ろうか?」
そう言って微笑んだチャコに、ぎゅっと手を握り返される。
デート気分のおつかいから、一気に“デート”そのものへ——。
チャコとの間に流れる空気がどこか甘いものに変わり、アルペックは思わず顔をほころばせた。
そんなとき、チャコのズボンの右ポケットから、ラッピング袋のようなものが覗いていることに気がついた。
「チャコ、それ……?」
「えっ?——ああ、これね」
繋いでいた手を離したチャコが、ふと思い出したようにポケットへ手を入れる。そして、綺麗にラッピングされた小さな袋をアルペックに差し出してきた。
それを受け取り、透明なラッピングの外から中を覗く。
そこには、かぼす味のさまざまなお菓子がぎゅっと詰められていた。
「本当は持ってたんだけど、渡しそびれちゃって。それに……」
そこまで言うと、チャコは小さく口を閉ざした。
言うべきか否か迷っているのか、視線を揺らしながら落ち着かない様子でこちらを見つめてくる。
続きを促すように顔を覗き込むと、ほんのりと頬を赤らめながら、おずおずとチャコは口を開いた。
「……いたずら、アルに何されるのかなって。ちょっとだけ気になって。でも、まさかあんなことされるとは思わなかったよ?」
「えっ!チャコ、オレにいたずらされたかったん?」
「そういう意味じゃなくて……!その話はいいから、早く買い物に行こう?」
照れくさそうに微笑んだチャコが、右手をそっと差し出してくる。
その仕草が愛しくて、今すぐ抱きしめて口づけたくなる衝動を、なんとか押さえ込んだアルペックは、その手をしっかりと握りしめた。
「へへ、ハロウィンって楽しいな!チャコ!」
「急にどうしたの?……でも、そうだね」
チャコと顔を見合わせて微笑み、アルペックは握った手を再び恋人繋ぎの形へと繋ぎ直した。
おつかい先の雑貨店へ向けて、寄り添うように並んで歩き出す。
——このあと、こっそりと二人のやり取りを見守っていた人々の噂話と、その場に居合わせた“FRAGARIA Times”記者の手腕によって、二人の関係がポチャッコ王国中に知れ渡ることを、このときのアルペックはまだ知らなかった。
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