(短編)天色の花かんむり
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【真夜中までここにいてよ】
ただの備え付けの無機質なソファー。
だけどそこは俺の指定席で特別な場所だった。
横に寝転んで足を伸ばせば、少しはみ出すけれど窮屈さは感じない。
ただクッションが硬くて昼寝から目を覚ますと体が痛い。あえて不満を言うならそれくらい。
「ねぇ起きなよ、いつまで寝てるの?」
“体の定期チェック”が終わって、部屋に戻ると、俺の指定席に寝そべっている奴がいた。
ラーラだ。アズラエルのおっさんのメイ……?親戚?のやつ。
こいつもおっさんみたいに、時間も場所も縛られず、好き勝手に過ごしてる。
「んん……」
俺の声が届いたようで、ラーラは気だるそうに目を開いた。
青い瞳と羽根のような睫毛が部屋の照明に当たって、キラキラと光っているように見えた。
「邪魔なんだけど、今から寝るからそこどいてくれない?」
「あ……、ごめんねシャニ」
すぐに体を起こして、申し訳なさそうに両手を合わせて俺に頭を下げている。
謝るくらいなら、最初からそこで寝るなよ。
「あれ?私いつから寝てた?」
「昼ごはん食べた後から寝てたよ」
「あはは、お昼ちょっと食べ過ぎたかな」
普通に会話を続けている。そうじゃないんだけど?早くどいてほしい。空気を読めよ。
「ラーラが寝てる間に“定期チェック”は終わったよ。まだ寝てるとは思わなかった」
「え!私そんなに寝てたの?」
「疲れたから、早くどいて……」
ラーラは目をぱちくりとさせているだけで、まだ腰を上げない。
男なら蹴ってどかせばいいけど、おっさんの身内にやるにはリスクがでかい。
説得?面倒だし、うざい。
少しの間、黙ったまま睨み合いみたいになった。こっちが引く理由はない。
堂々と立ったままラーラを上から見下ろしてやった。
「ここに寝転んだらシャニはすぐ寝ちゃうの?」
「それが何?」
下から俺を見上げながらラーラは口を開いた。
「いつもシャニは、寝ているでしょ?私もっとシャニとお話ししたい……」
「ドミニオンの食堂の1番美味しいメニュー何かなぁとか、フォビドゥンのどこが好きとか、バッテリーの効率のいい運用テクニックとか、シャニと話したいこといっぱいあるの……っ!」
まず、何か提案をしてくるとは思わなかった。
あとなんだよ、そのトークテーマ。
こっちの要求は、どっかに置いて、自分の希望を通そうとしてくるやり方、……おっさんじゃん。
「なんか……おっさんみてぇ」
「叔父上みたい??話し方…かな?嫌だった?ごめんねシャニ」
ラーラは俺とのやりとりを楽しそうにしている。それは悪い気はしないけど……。
「……」
本当にマジで眠い。付き合ってらんない。
もう俺のやりたいようにさせてもらっていいよね?
「動く気がないなら、もういいよ」
ラーラの隣にドスンと座った。座って、ラーラの瞳を直接覗き込むように顔を近づけた。
「膝、借りるよ?」
声を低くした。
ラーラの返答は待たない。
こいつだって俺の要求をスルーしたワケだし、おあいこだ。遠慮なく、ラーラの両膝の真ん中に、仰向けになって頭を沈めた。
は?なんだこれ?いい感じに柔らかいんだけど?
「シャニ??! 」
「起きてからなら話してあげてもいいよ」
「え!本当に? 」
「起きるまで、ラーラがここにいたらだけど」
膝の上で、ラーラの顔を下から見上げた。
胸で顔は半分くらい隠れているけど、眺めは悪くない。
コイツの何かいい匂いも、いつも以上に濃くて、鼻の奥に抜けていく。
膝の温もりと柔らかさが、眠気と混ざって頭の疲れを溶かしていく。
「……分かった、シャニが起きるまで、私ここで待ってるね」
「は? 」
真上からラーラは俺に穏やかに笑いかけている。
それだけじゃない、俺の頭をゆっくりと撫で始めた。
まさか俺を、小さいガキとでも思ってんのか?
「……おっさんに呼ばれたらどーすんの?」
「呼ばれても、今日はこのままシャニといる」
ラーラの頬の血色の良さが増す。りんごより赤くね?
「それに叔父上とはいつでも話せるから大丈夫!」
「あっそ」
どかせる為にけしかけたのに。思ってない方向に話が進んでしまった。
この状況、俺の方がどうしたらいいか分からなくなった……けど、次のことを考えるのも面倒くさい。頭の中の動きが悪くなってくる。
「じゃあ膝…このまま借りるね」
「そんないい?私のお膝」
「そこそこ」
眠気が強くなってくる。俺の脳のバッテリーも、もう切れる。
本当に起きるまでラーラはここにいるか?
起きた後に、おっさんにウザ絡みされるだろうし、面倒くさいことになってる。
なのに。
なんでだ?頭をどかす気になれない。力が入らない。
人の膝枕なんて初めてなのに、なんでこんなにしっくりくるんだろう?
「ラーラ、手をパーにしてもらっていい?」
「どうしたの?……こうでいい?」
何の疑問も抱かず、ラーラは素直に掌を広げる。
ヒラヒラと手の内側を俺に向けている。
「うん、そうしてて」
確かめたくなった。
無防備な手を攫うように、俺の掌とピッタリと重ねさせてもらう。
これもしっくりきた。
ぴくぴくとラーラの脈が早くなってるのが分かる。
自分の指の隙間からラーラの白い指が生えている。
照明の明かりに翳すともっと白く、透き通って見えた。
「……綺麗だね」
「シャニ?!」
「じゃ、おやすみ」
繋いだ手を引き寄せて、俺の胸元に置いてから、瞼をゆっくり閉じた。
慌てふためくラーラの声が、右耳から左耳へと通り抜けていく。
面白い顔してそうなんだけどね、それ、見たいけど、……もう限界だ。
意識が夢の中へと引っ張られる。
いつもなら暗く濁った場所へ突き落とされるのに、
手を繋いでいる今だけは、大丈夫な気がした。
体が、じんと温かい。
【了】
ただの備え付けの無機質なソファー。
だけどそこは俺の指定席で特別な場所だった。
横に寝転んで足を伸ばせば、少しはみ出すけれど窮屈さは感じない。
ただクッションが硬くて昼寝から目を覚ますと体が痛い。あえて不満を言うならそれくらい。
「ねぇ起きなよ、いつまで寝てるの?」
“体の定期チェック”が終わって、部屋に戻ると、俺の指定席に寝そべっている奴がいた。
ラーラだ。アズラエルのおっさんのメイ……?親戚?のやつ。
こいつもおっさんみたいに、時間も場所も縛られず、好き勝手に過ごしてる。
「んん……」
俺の声が届いたようで、ラーラは気だるそうに目を開いた。
青い瞳と羽根のような睫毛が部屋の照明に当たって、キラキラと光っているように見えた。
「邪魔なんだけど、今から寝るからそこどいてくれない?」
「あ……、ごめんねシャニ」
すぐに体を起こして、申し訳なさそうに両手を合わせて俺に頭を下げている。
謝るくらいなら、最初からそこで寝るなよ。
「あれ?私いつから寝てた?」
「昼ごはん食べた後から寝てたよ」
「あはは、お昼ちょっと食べ過ぎたかな」
普通に会話を続けている。そうじゃないんだけど?早くどいてほしい。空気を読めよ。
「ラーラが寝てる間に“定期チェック”は終わったよ。まだ寝てるとは思わなかった」
「え!私そんなに寝てたの?」
「疲れたから、早くどいて……」
ラーラは目をぱちくりとさせているだけで、まだ腰を上げない。
男なら蹴ってどかせばいいけど、おっさんの身内にやるにはリスクがでかい。
説得?面倒だし、うざい。
少しの間、黙ったまま睨み合いみたいになった。こっちが引く理由はない。
堂々と立ったままラーラを上から見下ろしてやった。
「ここに寝転んだらシャニはすぐ寝ちゃうの?」
「それが何?」
下から俺を見上げながらラーラは口を開いた。
「いつもシャニは、寝ているでしょ?私もっとシャニとお話ししたい……」
「ドミニオンの食堂の1番美味しいメニュー何かなぁとか、フォビドゥンのどこが好きとか、バッテリーの効率のいい運用テクニックとか、シャニと話したいこといっぱいあるの……っ!」
まず、何か提案をしてくるとは思わなかった。
あとなんだよ、そのトークテーマ。
こっちの要求は、どっかに置いて、自分の希望を通そうとしてくるやり方、……おっさんじゃん。
「なんか……おっさんみてぇ」
「叔父上みたい??話し方…かな?嫌だった?ごめんねシャニ」
ラーラは俺とのやりとりを楽しそうにしている。それは悪い気はしないけど……。
「……」
本当にマジで眠い。付き合ってらんない。
もう俺のやりたいようにさせてもらっていいよね?
「動く気がないなら、もういいよ」
ラーラの隣にドスンと座った。座って、ラーラの瞳を直接覗き込むように顔を近づけた。
「膝、借りるよ?」
声を低くした。
ラーラの返答は待たない。
こいつだって俺の要求をスルーしたワケだし、おあいこだ。遠慮なく、ラーラの両膝の真ん中に、仰向けになって頭を沈めた。
は?なんだこれ?いい感じに柔らかいんだけど?
「シャニ??! 」
「起きてからなら話してあげてもいいよ」
「え!本当に? 」
「起きるまで、ラーラがここにいたらだけど」
膝の上で、ラーラの顔を下から見上げた。
胸で顔は半分くらい隠れているけど、眺めは悪くない。
コイツの何かいい匂いも、いつも以上に濃くて、鼻の奥に抜けていく。
膝の温もりと柔らかさが、眠気と混ざって頭の疲れを溶かしていく。
「……分かった、シャニが起きるまで、私ここで待ってるね」
「は? 」
真上からラーラは俺に穏やかに笑いかけている。
それだけじゃない、俺の頭をゆっくりと撫で始めた。
まさか俺を、小さいガキとでも思ってんのか?
「……おっさんに呼ばれたらどーすんの?」
「呼ばれても、今日はこのままシャニといる」
ラーラの頬の血色の良さが増す。りんごより赤くね?
「それに叔父上とはいつでも話せるから大丈夫!」
「あっそ」
どかせる為にけしかけたのに。思ってない方向に話が進んでしまった。
この状況、俺の方がどうしたらいいか分からなくなった……けど、次のことを考えるのも面倒くさい。頭の中の動きが悪くなってくる。
「じゃあ膝…このまま借りるね」
「そんないい?私のお膝」
「そこそこ」
眠気が強くなってくる。俺の脳のバッテリーも、もう切れる。
本当に起きるまでラーラはここにいるか?
起きた後に、おっさんにウザ絡みされるだろうし、面倒くさいことになってる。
なのに。
なんでだ?頭をどかす気になれない。力が入らない。
人の膝枕なんて初めてなのに、なんでこんなにしっくりくるんだろう?
「ラーラ、手をパーにしてもらっていい?」
「どうしたの?……こうでいい?」
何の疑問も抱かず、ラーラは素直に掌を広げる。
ヒラヒラと手の内側を俺に向けている。
「うん、そうしてて」
確かめたくなった。
無防備な手を攫うように、俺の掌とピッタリと重ねさせてもらう。
これもしっくりきた。
ぴくぴくとラーラの脈が早くなってるのが分かる。
自分の指の隙間からラーラの白い指が生えている。
照明の明かりに翳すともっと白く、透き通って見えた。
「……綺麗だね」
「シャニ?!」
「じゃ、おやすみ」
繋いだ手を引き寄せて、俺の胸元に置いてから、瞼をゆっくり閉じた。
慌てふためくラーラの声が、右耳から左耳へと通り抜けていく。
面白い顔してそうなんだけどね、それ、見たいけど、……もう限界だ。
意識が夢の中へと引っ張られる。
いつもなら暗く濁った場所へ突き落とされるのに、
手を繋いでいる今だけは、大丈夫な気がした。
体が、じんと温かい。
【了】
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