天色の花かんむり
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今日は雨、
晴れだったら夕焼けが見える時間だけれど諦めるしかない。窓の外は薄暗さが増して刻々と夜に近づいていく。
地球に来てから叔父上の日常のルーティンに合わせる日々にもすっかり慣れて、叔父上のお仕事の合間はホテルの部屋の中で自由に過ごしている。
「一人でのおでかけはだめですよ」って言いつけられている、それは叔父上に面倒を見てもっている以上守らなきゃいけないルールだから仕方ない。たまにだけどお仕事の合間に外に連れ出してもらえることもあるし、一昨日はオーロラだって遠くまで見に連れて行ってもらえた。
大戦中にこんな楽しい思いばっかりさせてもらえていいのかな…?
私が日中にしていることは筋トレと読書…なんだけれど。毎日それだけじゃ物足りなくなってきている…、だけど叔父上のお仕事の邪魔はできないし、夜には必ずここへ帰ってきてくれるから…それだけでも良しと思わなきゃいけない。
顔を合わせている時は、どんな小さなことでもお話をしてくれる。タブレットごしなのに、面倒くさがらずに。それは当たり前のことじゃない。
もし兄がいたらこんな感じだったのかな?
でも叔父上は私より15歳も年上だし…、父って思えるくらいのおじさんでもないし…。世間の一般的な叔父と姪ってこんな感じなの…?
不思議な関係だなって思うけれど、叔父上と一緒に過ごす時間がとても楽しくて。
そろそろ夕食の時間だからお腹が空いてきた。空腹に耐えるザフトの訓練を思い出せば全然凌げるけれど、みんなとのアカデミーの訓練の日々も思い出してしまう。イザークに会いたくて堪らなくなるから、これはこれで辛い。
1ヶ月過ぎても、私がザフトに繋がれるチャンスも筋道も、手がかりは何も掴めていない。
みんなは無事なのかな?、イザーク、ディアッカ、ニコルにアスラン、クルーゼ隊長も…。みんなに怪我がなければいい。みんなが元気でいてくれれば…、それだけでいい。
ガチャンと大きな音が入口の方から聞こえた。叔父上が帰ってきたみたい…!
お出迎えで入り口まで向かう。叔父上は扉に寄りかかって、肩で息をしているみたい、まっすぐ立とうとしているけどふらふらしてる。叔父上の様子が変…?!
「ラーラ、ただいま帰りま…」
絞り出すような声で言い終わる前に、力がふっと抜けて身体が大きく傾いた。とっさに叔父上の体を支えたから倒れ込まずに済んだ…間に合って良かった。
体が密着しているところから叔父上の体温が伝わってくる、かなりの高熱、呼吸も辛そうだし、目もつむったままで苦しそう。
このまま体を預けてくれたらいいのに、私を支えにはしてるけど、叔父上は踏ん張って姿勢を保とうとしてる。
体調を確認できたらいいけど今はできない、タブレットを取り出す手が今は塞がっている。こんな時に声を出せれば…良かったのに。
とにかく早く、ベッドに叔父上を寝かせてあげなきゃ!
………今は非常時だから!叔父上の膝下と肩甲骨をしっかりと自分の腕と手に固定してから、叔父上を抱えて持ち上げた。お姫様抱っこスタイルでベッドまで運ばせてもらうね。
薄目で私を不服そうに睨んでる、でも真っ赤なお顔で怖くないし、ちょっと可愛くて笑っちゃいそうになる。我慢しなきゃ!
抱っこで運んでいる途中に、叔父上のジャケットのポケットから何かがポトンと落ちちゃったけど回収はあと回し!
ベッドルームに行って、大きなベッドの上に叔父上を横向きで寝かせる。
改めておでこを触ると、私の手が火傷しそうなくらいに熱い。
今日の帰宅時間は遅くも早くもないけど、こんな体調が悪くなるまでいつも通り仕事をこなしてたのかな…。
オーロラ鑑賞から帰ってきたばっかりでお仕事たくさん溜まっていたとか?生のオーロラはすごかったけど、現地は寒かったし…、そういえば叔父上はずっと鼻をすすっていた!あの時から無理をしてたのかな…
ずっと働き詰めで疲れているのに、あんな極北をリクエストした私にもこの体調不良の原因があるかも…
…なら私が叔父上をしっかり看病しなきゃだめだね!
まずはお水?冷蔵庫にミネラルウォーターはある。ストローはない、あとで貰いにいこう。
洗面所でふわふわのタオルを水に濡らしてしぼる。1枚は叔父上のおでこに乗せる用、もう1枚は首筋を冷やす用!氷嚢はホテルにあるかな、ないなら代用品を用意しなきゃ
叔父上のところに行って、膝を床につけて屈んだ、手に持った冷たいタオルを叔父上のおでこと首筋にピタっとあてる。
「気持ちいい…」
叔父上は薄目を開けてぽつりと呟いた。
良かった!お顔を覗き込もうとしたら
「これくらい何ともないで…」
て言って、体を起こそうとしたけれど、途中で力が抜けてバタンとベッドに倒れてしまった。叔父上は真っ赤なお顔で悔しそうに口を尖らせている
病気なら仕方ないのに叔父上は意地っ張りだなぁ…。
叔父上も可愛いところあるんだなって思ったら、もう我慢できなくて吹き出して笑ってしまった。天井を恨めしはそうに睨む叔父上のお顔を覗き込んで、
『わたしが、おじうえの、かんびょー、するね』
人差し指で私の鼻を軽く触ってから、ゆっくりと口パクで叔父上に伝えた。
薄目を開いたまま、叔父上は観念したようにため息を吐いて
「…お願いします」
と言ってくれた。
いいよ!叔父上!しっかり看病させてもらうね…!オッケーの指の形を顔の横で作って叔父上に笑いかける。
頼ってもらえて、お腹がくすぐったくなるくらい嬉しい…!
だけど…?何からすればいいのかな…?
体を冷やすことは知識で知っていたけど、プラントじゃ誰も風邪引かないし、体調を崩す人もなかなかいない。
フロントに行って、ホテルのスタッフさんに聞いて教えてもらえばいいかな?
お世話になっている叔父上の為だもの
私にできることは何でもやってあげたい
恩返しみたいな邪なものじゃなくて、ただ好きな人に何か気持ちを行動で返したい
父みたいにいつ命が尽きるかわからないから、大切な人には、真摯に、今やれる最善を尽くさなきゃいけない
とりあえず基本の基本、情報収集から始めなきゃ!
叔父上にフロントに行きたい理由をタブレットで説明したら、ルームキーを渡してくれた…!
フロントに行って、ボーイさんに看病の基本だけ教えてもらって、体温計と血圧計を借りてきた。お医者さんの手配の申し出をされたけれど、叔父上の確認をもらってからだから遠慮させてもらった。
筆談で叔父上以外のナチョラルの人と話す経験がまだ少ないから緊張しちゃったけど、上手く行って良かった。
部屋に戻ってみると叔父上はまだ寝ずに薄目でだけど起きていて。私の顔を見るなりため息をつかれた。…私、何かした?
貰ってきたストローを挿したミネラルウォーターのボトルを叔父上の口元まで運んだら、一瞬ためらわれたけど飲んでもらえた。
次はお着替えをしてもろおう。汗をかいたらお着替えをするってフロントの人が教えてくれた。
叔父上のカバンの中から新しいシャツをとってきて、叔父上の所にいく。
ベッドの上で片方ずつジャケットを脱いでもらって、ネクタイも解く。胸元のボタンに手をかけたところで、叔父上に「自分でやります」と言われて手を止められちゃった。
だけど、着替えてもらわないといけないし…どうしよう?
お湯を汲んだ洗面器とタオルを持ってきて、体を拭かせてもらうよ!ってジェスチャーをしたら、笑顔で首を横に振られちゃったけど、『お願いしますって言ったのは叔父上です♡』ってタブレットに打ち込んで見せたら、「上半身だけなら」って観念してくれた。
汗をかいたあとの体を温かいタオルで綺麗にして、お着替えが終わるまでは、大人しく従ってくれた。
あんなに不服そうにしていたけど、体を拭着終えたらスッキリしたみたい。さっきより呼吸が落ち着いてる。気持ちよくなったのかな?それとも体力の限界?
横になると叔父上はやっと眠ってくれた。
こんな時、ラクスみたいに優しい声かけとか気遣いが出来たらいいのにな…。
気を取り直そう!次はご飯の準備…!叔父上が横になってもらっている間に終わらせよう。
ホテルの厨房に行って、食材や道具を分けて貰って運ばせて貰った。お部屋には簡単なキッチンスペースがある。そこで貸してもらった小鍋と、分けてもらったチキンスープを温めたり、貰った果物をカットしたり、いつでも食べられるように準備を進める。
私、お腹が空いてたよね…?それなのに叔父上の看病が楽しくて空腹感はどこかにいっちゃったみたい
今、私ができることを済ませて叔父上の顔をのぞきにいく。ぐっすり眠ってくれているけど、普段の叔父上は?叔父上が深く眠ったりするイメージが湧かない。
あ、そうだ、忘れてた!叔父上を運んだ時に何か物が落ちたんだった。拾って叔父上に渡してあげなくちゃ。
物が落ちていた場所に行くと、濃紺色の手帳が落ちていた。これって、シャトルで地球に降下した時に叔父上が持っていたものと多分一緒。
拾ってみると、シャトルの中で見せてもらった母の手紙と母の写った写真が栞みたいに挟まれていた。
どんなに薄く畳んでても厚みがあるからか、自然とそのページが開いてしまった。…でもこのページだけ開きやすくなってない…?何度も開かれたような癖がついている。
もしかして叔父上は、この手帳をいつも持っていた?あのシャトルの中だけじゃなくって、普段から、とても大切にしている?この手紙と写真を………?
………それなら私は、叔父上のことを誤解していたのかもしれない
色々無理やりだし、叔父上の考えてることなんて全然分からないし、ブルーコスモスの盟主とか、国防産業理事だとか、プラントの人間から見たら…、叔父上、ムルタ・アズラエルは、ただただ怖くて得体が知れなくて…"私達"の敵なんだと思ってた。
表面上、今は優しくしてもらって、面倒をみてくれてはいるけど、半分コーディネイターの私は、何かミスをしたら簡単に切り捨てられる、血縁でも例外はない、そんな怖さを叔父上から感じていた、うまく言葉にはできないけれど。
だから1日でも早くザフトに帰らなきゃいけないって思っていたし、叔父上と一時的に仲良くできたとしても、本当に分かり合うことをなんてできっこないって思っていた。
情なんてない、
ナチョラルの、ブルーコスモスの盟主だからって
そんな人が…、
大昔にもらった手紙や写真を大事にしているなんて…嘘みたい…。
そばで叔父上の寝顔を見たくなって、叔父上のベッドの真横に座る。
寝顔を初めてみるから?わからないけど、胸に温かいものがこみ上げてくる。
プラントに、イザークのところに、帰らなきゃいけないのに…、
今の私は、この人の力になりたいって思ってしまっている。
血縁で家族だから?分からない
家族なんて小さい時に無くしちゃったし、こんなに胸が温かくなるものなの?こんなの知らない
シーツからはみ出ている叔父上の手を、ぎゅっと握りたくなる。ベタベタして叔父上に嫌がられたらすごく困るけど、
どうしても今、触れたい…。
全部はだめでも、小指だけならいいかな?
ちょっとだけだから、今だけ握らせてね?叔父上…。
そのあと、私はいつの間にか眠ってしまったみたい。目が覚めたら、ソファーの上で眠っていた。毛布もかけられている…?叔父上の看病をしなきゃなのに!あれ?私…、叔父上のベッドの横にいたはずなのに、いつの間にソファーの上に?
起き上がって叔父上を探したらすぐ近くの一人掛けのソファーに座って、スープを飲んでいる。
スープマグとスプーンを持って…自分でやったんだぁ…そこまで準備してあげたかったな…
だけど、起き上がれるくらいには回復したのかな…?良かった。安心したから?自然に笑顔が漏れ出てしまう。
「起こしてしまいましたか?」
起きた私に気づいてくれた、叔父上の顔色がお仕事から帰ってきた時よりは良くなっている。声のトーンはまだ低いけど、呼吸も楽そう。
ポケットからタブレットを取り出して入力する。
『体調はどうですか?』
「かなり良くなりました、ラーラの看病のおかげです」
『良かった!』
いつもの会話ができるくらいには回復してくれたみたいで…、本当に良かった
「食事の用意まで…大変だったでしょう?」
『いえいえ!』
「今回のことはいずれお礼させて下さいね、貸し1つということで。」
叔父上は私と目も合わせないで、スープをすすっているあんなに顔を赤くしてぐったりしていたのに…、いつものクールな叔父上に戻っちゃった。
『貸しとかないです。私の方がいつも叔父上によくしてもらっています』
「いえ、僕の気持ちの問題なので」
地球に降りてきてすぐの頃ならそれで納得していたけれど、今は違う
『"家族"だったら体調不良の時に助け合うことは当たり前のことです』
「"家族"なら"当たり前"…ですか」
叔父上の気持ちは正直分からない
私の思う家族と、叔父上の思う家族像は多分一緒じゃない
だけど私は、家族として、叔父上の力に………なりたい。
『なので、叔父上はいつでも私を頼って下さいね』
「では…ラーラ、頼りにさせてもらいますね」
プラントでのことは全部大切だけど、
地球でも大切なものが新しく増えた。
いつかプラントに帰るけれど、
私の世界を広げてくれた叔父上との
今の時間を大切にしたい
「自分の言った言葉を忘れないで下さいね?」
親指を立てて、叔父上に笑顔で応えた。
私もお腹すいたし…、カットした果物を机に運んでこよう、それから叔父上と一緒にご飯を食べよう。
(10話に続く)
※2025.07.17 公開