私立ドミニオン高校1年生の女の子です。
3話
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ラーラ・アズラエルは、私の幼馴染の女の子。
最初に出会ったのは小学校にあがってすぐくらいの頃だったかな。
私のパパと、ラーラのおじさんが知り合い同士で、年も一緒で女の子同士だったから私達は保護者を介して顔合わせをした。
初対面の時のラーラは…、
暗い顔で、全然目が合わなくて、おじさんの手を握りしめたまま不安そうにしていた。
お友達になるとしても、可愛い私と全然釣り合わない、それに言葉も話せないって、パパには悪いけどこの子と友達になるのは嫌だなって最初は思った。
だけどパパに「ラーラさんはお父さんが事故で亡くなったショックで声が出なくなってしまったんだよ、優しくしてあげなさい」と聞かされて、その話があまりにショックで私は泣いてしまった。
パパがいなくなるなんて想像しただけでも悲しくて、幼い私はその場で泣きじゃくってしまった。
するとラーラが私のそばに来て、笑って、ぎゅっと優しく私を抱きしめてくれて、背中をポンポンとしてくれたの。
この子の方がずっとずっと悲しかったはずなのに…。
言葉は話せなくても、行動で自分の気持ちを伝えられるラーラと、この日からお友達になった。
それが私達の出会い。
ーーーーーーーーーー
私とラーラは、図書室にむかって校舎内を歩いていた。
ラーラの腕の中には、中庭でお昼寝していた先輩が抱えられている。
結構な距離を移動したけれど、先輩はよく眠っている。ラーラの抱き方が上手だから?ラーラも体を鍛えているのは知っているけど、だとしてもこんな力技と行動力を目の当たりにすると、ラーラのやろうとしていることを止めるのは気が引けちゃう。
「え?えぇ…?!!!シャニ?!」
廊下の曲がり角を曲がった先で、向こう側にいる男の先輩が大きな声で反応して、私達の方へ駆け寄ってきた。
オレンジ色?明るくて、ラーラが抱っこしている人もだけど二人とも派手な毛色をしている。
「キミたち1年生?なんでそいつを運んでんの??どっかで倒れてたとか?って、なんでお姫様だっこ??キミ女の子だよね?!」
男の先輩はラーラと私と、抱えられてるシャニ?っていう先輩の顔を交互にみている。
信じられない!という感じですごく驚いている。
「あ、あの…!先輩!私は止めたんです。だけどラーラが中庭のベンチで寝ていたこの人を抱っこして図書室まで運ぶって…」
「は???どういうこと?全然分かんないんだけど…」
説明の仕方が悪かったのかしら?
先輩の目尻のシワがさらに深くなっちゃった
「シャニを図書室に運ぶ…?なんで??」
「わけ分からないですよね?私もです!文芸部員のスカウト活動でラーラと2人でぶらぶらしてたら、この先輩がベンチで眠っていらっしゃって。私は止めたんですけど、ラーラが図書室まで抱っこして運ぶって言ってきかなくて…」
もうちょっと詳しく話してみたけど、…どうかしら?ラーラがジト目でこっちを見ている気はするけど、気のせいね…!
「え〜と、ちょっとキミも説明してくれない?黙ってないでさ!」
オレンジの髪色をした先輩はラーラに話を振った。
「先輩、あの…ラーラは言葉が話せないんです」
「なんで?どういうこと?」
「この子、筆談でお話しするんです」
「そうなんだ!それは…なんか…ごめんね」
全然大丈夫です!ってラーラは思ってそう
笑顔でにっこりして、可愛く首を少し傾けている。あら可愛い、私がやったらあざといって言われちゃう。
先輩もさっきまで怒ってるとまではいかないけど、すごく荒っぽかったのに、落ち着いてくれたみたい。
「でもさ、君たちめちゃくちゃだね」
「…先輩はこの人と知り合いなんですか?」
「ただの…クラスメイト!そいつさー、寝起きめちゃくちゃ悪いよ?連れていっても、ろくな事にならないよ?」
先輩がそう言ってくれても、ラーラは一度決めたらやることを曲げない子だし…
「ラーラ、図書室まで運ぶんでしょ?」
うん!とラーラは屈託のない笑顔で勢いよく頷いた。
「仕方ないな、僕もついて行くよ」
「そいつの為じゃないよ、寝起きのコイツに絡まれるキミたちが不憫だからね」
「先輩ありがとうございます!」
「お礼なんていらないよ」
先輩も体を私たちの進行方向を同じにしてくれた。
知らない人を拾っちゃって、正直このあとのことがすごく不安だった。こんな人数の多い学校で、この出会いはラッキーだったかも。
「先輩のお名前はなんですか?」
「クロト・ブエル、二年だよ。あとそいつはシャニ・アンドラス。キミたちは?」
「私はフレイ・アルスター、1年です。この子はラーラ・アズラエル。私達もお同じクラスで、幼馴染なんです。」
「へぇ…そうなんだ、よろしくね」
簡単に自己紹介をしたら、ラーラは図書室の方へ先輩抱えながらまた歩きだした。
ラーラはご機嫌に先輩を運んでいる。
もしかして、クロト先輩も巻き込もうって考えていない??
図書室に到着すると、人の気配はなくって、いつもいるオルガ先輩はいなかった。
だからシャニ先輩をどこに寝かせるかの問題がおこった。
私は椅子の方がいいって言ったけど、クロト先輩は「シャニはどこでも寝るやつだから机の上でいいよ、起きたらすぐ分かるしさ」って笑いをこらえながら話してた。
ラーラも、はい分かりました!って顔で入り口入ってすぐの大きな机の上にシャニ先輩を寝かした。ふーーっと大きく息を吐いたけど、特に息も乱れてなくて、幼馴染の有り余った体力にびっくりしちゃった…。
ラーラはそっとシャニ先輩靴を脱がせて、机のすぐ下に靴先を揃えて綺麗に靴を置いた。
私の方を向いてグッ!と親指を立てている。
そこだけきっちりしても、あとで絶対怒られるわ。
ラーラは用事が済んだとばかりに、本棚の方へ消えて、クロト先輩は机で寝ているシャニ先輩の写真を撮ったあと、椅子に座ってスマホを横に向けてゲーム?を始めてしまった。
それから30分後くらいに、シャニ先輩が目を覚ました。
気だるげ体を起こしたシャニ先輩は、アイマスクとイヤホンを外して周りをキョロキョロしている。
「…は…?」
「お、シャニ起きた?」
クロト先輩はニヤつきながらシャニ先輩に声をかけていた。
私とラーラはクロト先輩の声を聞きつけて、盾にするようにクロト先輩の後ろに隠れて、目覚めたシャニ先輩の様子を伺った。
シャニ先輩はクロト先輩を睨んでいた。前髪のせいで片目しか見えないのに圧がある。
この学校の男の人ってなんでみんな雰囲気が
怖いんだろう…。
「クロト…?どこここ?お前が連れてきたの…?」
「ここは図書室だよ、そこの文芸部の1年に運ばれてきたんだよ」
クロト先輩が、後ろにいた私とラーラを親指で軽く指さした。シャニ先輩は確かめるように私たちを交互に見ている。だけど、シャニ先輩の頭の上には「?」が浮かんで見えた。
机から足を下ろして机の下に置いていた靴を履いているけど、動作が荒っぽくてシャニ先輩が怒っていることが伝わってくる。
「女の子じゃん、無理でしょ。気持ちよく中庭のベンチでうたた寝してたのに…うっざ…。とりあえず謝ってくれない?クロト」
「なんでボクが謝るんだよ!その子達が連れてきたって言ってるだろ!」
「は!女の子が俺を担げるワケないじゃん」
「じゃあ、みろよ!この写真!!」
クロト先輩は面倒くさそうに、画像フォルダを開いて、その中の写真を1枚シャニ先輩に見せつけた。
「うわ…マジじゃん、しかもお姫様だっこ?最悪…」
写真を見て、シャニ先輩の表情が曇った。
クロト先輩を睨んでいた目が、今度は私達の方へ向きそうで、私はラーラの後ろに隠れた。
オルガ先輩がいれば、なんとかしてくれたかもしれない…、だけど今は私達でどうにかしなくっちゃ!だけど怖い!
なんて思っていたら、ラーラがクロト先輩とシャニ先輩の間に割り込んだ。
筆談用のメモ帳を取り出して何かを書いている。
先輩たちは怖いけど、ラーラがなんて言い出すかも不安だから、私はラーラの横についた。
『シャニ先パイ!ごめんなさい!』
『雨予報が出ていたので、ここまで運ばせてもらいました。』
え?なにその話?雨予報って何?
口から出まかせでその場で切り抜けようとしてる…???
「メモ帳で筆談…?なんで…?雨予報ってほんと…?」
あ!だけどシャニ先輩のとげとげしさがマシになったかも?私もラーラの話に合わせよう!
「本当です!このお天気アプリを見てください!」
「…本当だ、ふーん…、避難?させてくれたのはお礼言うね、ありがとう…」
たまたまだけど、これからお天気が雨で良かったわ。もう大丈夫?シャニ先輩はもう怒っていない?
『シャニ先パイ。これからは図書室でうたたねして下さい。お天気の心配もなく、空調完備で快適ですよ!』
なるほど、そういう流れにしたかったのね
「…いい提案だとは思うけど、俺はあのベンチが好きなんだよね。…それに何か裏がありそうだし…、普通に起こせばいいのに、ここに運ぶのは変だろ?」
シャニ先輩はニヤリと笑って、ラーラの企みを簡単に見破っちゃった
『するどい!』
ラーラもそう思うよね!
シャニ先輩って見た目より思慮深い人かもしれない
「ラーラ…やっぱり無理やりすぎたよ」
「…とりあえず、俺の許可なく運んだこと、謝ってくれない?」
『ごめんない!』
「軽くない?」
「無褒美であんなところで寝るからこんな目に合うんだよ」
「はぁ?クロトうっざ…」
クロト先輩がもっとフォローしてくれることに期待してたけど、どうにも上手くいってない。話もあっちこっちに飛んじゃうし、ラーラも謝っているけど、悪びれてないのがバレバレだし、そもそも勧誘だって諦めてないはず。この状況を見守るしかできない。
「何騒いでんだ?」
声のする方に、全員が一斉に振り返った。
声の主はオルガ先輩だった
とってもいいタイミング!オルガ先輩は、二人より体格がいいし男の人がどうにかしたらいいと思うわ!
「「「あ」」」
先輩たちが三人同時に顔と声を合わせて、三者三様、苦虫潰したよう表情をしている。
どうしてかしら?
「オルガじゃん、なんでキミがここに来たの?」
「クロトとシャニ…お前らはなんでいるんだよ、今、部活動中なんだけど」
「…部活?…お前が…?」
「そうだよ、文芸部だよ、悪いか?」
「あ〜、キミいっつも教室で本読んでるもんね、頭悪いのに」
「あ!?スマホゲーが手放せねークロトがなんでここにいるんだよ?シャニもよ、ここはお前が寝る寝室じゃねーんだけど」
喧嘩かしら?3人とも荒っぽい口調で言い合っている。罵り合い?っていうのかしら。
そんなものに私は慣れていないから、怖くて指先が震えちゃう。ラーラは私が怯えているのに気づいてくれて、私を庇うように一歩前に出てくれた。
ラーラはまたメモ帳に文字を書き始めて、書いたメモを三人の間に割って入るように3人に見せつけた。
『先パイ達はお知り合いなんですか?』
メモを掲げながら、ラーラはにっこりと笑う。先輩たちの話の腰に折って、先輩たちが静かになった。
「幼稚園からのクサレ縁ってやつ?」
「ほんとうざい…」
「なんで放課後もキミ達の顔見なきゃいけないわけ?」
先輩たちは、三人同時にため息を出した。
『先パイ達、仲良しの幼なじみなんですね』
「「「違う!」」」
ラーラはきょとんとしている。ラーラにはさっきの言い合いを仲良くじゃれてるように見えたのかしら?
「オルガさ、後輩にどんな教育してんの?俺ここまで拉致られたんだけど」
「は?どういうことだ?」
思い出したかのように、シャニ先輩がオルガ先輩を責め立て始めた。
矛先をそちらに向けてもらえるのは嬉しい。
「写真見る?シャニさ〜、中庭からここまで抱っこでラーラって子に運ばれたんだよね」
クロト先輩は半笑いのまま、オルガ先輩の肩を掴んで自身のスマホの写真を見せている。
「は???ラーラ、お前がこれやったの?」
『ちょっと体力には自信があるんです!』
オルガ先輩は写真を二度見している。
ラーラは腕に力こぶを作って、オルガ先輩に笑顔でアピールしている。
普通の男の人は引くと思うから、そのアピールは辞めたほうがいいと思うわ!ラーラ!
「だる…もう帰っていい?家で寝直したい」
写真のことで、シャニ先輩はまた不機嫌モードになっちゃったみたい。
机から立ち上がったシャニ先輩の進路をふさぐように、ラーラはシャニ先輩の正面に移動した。
『先パイ、帰宅部ですよね?』
「それが何?」
『先パイが中庭で寝ていたら、またここに運ばせてもらいますね』
「なんで?」
『文芸部、人が足りないんです。先パイも入部してもらえませんか?』
「だから?俺は関係ないよね?」
『じゃあ、あのベンチを図書室に運んできます』
「勝手にダメでしょ」
『全天候対応施設ですよ?ここでお昼寝すればいいですよ』
「オルガ………この子どうにかして?しつこい…」
シャニ先輩はオルガ先輩に匙を投げはしたものの、お互い全然ひかない。シャニ先輩もかたくなだし、オルガ先輩は目の前で起こっていることを面倒くさそうな表情で眺めている。
「シャニ、…その子の言うこと、聞いた方がいいかも」
「クロトまで何?」
そこにクロト先輩がスマホの画面をスワイプしながら意味ありげにシャニ先輩に話しかけた。
「お前のさっきの抱っこ写真、クラスのグループトークで拡散されてるよー」
「は…?クロトお前の仕業?」
「違うよ、ボクのとは写真の角度が違うでしょ?」
シャニ先輩もスマホをスワイプして、事実かどうか確認している様子だった。
「めんどくさいことになってるじゃん…」
本当のことだったみたいで頭を抱えて、机の上にまた腰を下ろした。
私達のせいよね?もっとラーラを止めておけば良かった??シャニ先輩に悪いことしちゃったかも…。
「オルガ、ボクは文芸部に入部してあげてもいいよ」
クロト先輩は勧誘してないよね?急にどうして?
「は?いらねーんだけど。それにお前パソコン部だったろ、兼部は禁止だぜ?」
「退部させられたんだよね~部のやつにFPSやってるのチクられてさ、ムカツク」
「それはお前が悪いだろ」
またさっきみたいにガミガミ言い合いが始まっちゃった。
シャニ先輩は机に突っ伏してスマホをスワイプしている。拡散されている様子が少し見えちゃって胸が痛む。
ラーラは先輩たちの様子にオロオロしながらも、手にはしっかり白紙の入部届けを2枚握りしめている。
「この図書室さ!ちょうど今やってる位置ゲーのスポットに引っかかってるんだよね!ゲームのついでで文芸部もやってあげてもいいよ」
「図書室でゲームすんなよ」
「キミたちがチクらなかったら、バレないんだからいーじゃん!」
オルガ先輩の方が入部を拒んでいるのかな?
廃部の危機で贅沢言っていられないはずよね?
口喧嘩はしているけれど、嫌っている風には見えないし、男と女の友情はちょっと違うのかしら?
『じゃあ先パイ達、入部でいいですね!入部届けにサインしてください!』
「おい!ラーラ!」
話が途切れるタイミングを伺っていたラーラは、すかさず一枚ずつ先輩達に入部届けを手渡した。自分の筆談用のボールペンも添えて。
「いいよー」
「はー…、また運ばれるよりは入部の方がマシかな…」
先輩たちはササっと入部届けを記入して、オルガ先輩に差し出した。
オルガ先輩は今日一番嫌そうな顔をしている。クロト先輩とシャニ先輩は早く受け取れよって感じで紙をピラピラ揺らしている。
「書いちまったもんは仕方ねぇか…お前らと一緒とか最悪だけどな」
「こっちのセリフ…」
「クサレ縁ってほんと厄介だね」
オルガ先輩も諦めて、二人の先輩から入部届けを受け取った。
ラーラは私の方も向いて、ウィンクしながらグッと親指を立てている。
ラーラは今日一番の笑顔で微笑んでいる。
一日で部員が集まって、廃部の危機は去ったのよね?だけど色々あって疲れちゃったな…。
ラーラの行動力は、出会った頃から知っているけど、見ている方はどうにもハラハラしちゃう。
今回は上手くいったから良かったけど…。
優しいキラに会って、話して、癒されたい気持ちで胸がいっぱいになった。
(4話につづく)
一一一一一一一一一一
とても長くなってしまい申し訳ないです。(次は短いです。)
鞄の描写が一切なくてすみません。(長いし、書くのを諦めました!)
女子は部員探しの前に図書室に鞄を置いています。シャニの鞄はフレイが持って図書室に運んだということでお願いします。
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