初めに

西暦1200年。

世界には古より、使い魔を連れた魔法使いや魔女が多く暮らす中、このフェシャ国には魔道士と呼ばれる者がいた。

それは言わば、魔法騎士と同じで国の安全を守るのが仕事だが、魔道士になれるのはごく少数だという。

しかも魔道士の多くは、多彩な魔力を持ち合わせており、使う魔法は闇や光、大地や風など種類は様々。

中でも、月の魔力は極めて珍しく世界に3人居るか居ないかと言われている。


セレネもその1人で、月の魔力を持っており、14歳という最年少の魔道士だ。

更に相棒であるリュナも月の魔力を持った使い魔で、魔力によっても異なるが同じ魔力を持つ使い魔はかなり珍しく、人々はセレネをヴィデオン・ジェイラ"月の魔道士"と呼ぶ。


……今日も街を散歩していると、ランタンを持ちながらリュナがキュイキュイと鳴く。

「…どうしたの?リュナ?」

「……キュイ!キュキュイ」

「…後ろになんかいる?」

セレネは振り返ろうとした時、足がもつれ転びそうになったが、間一髪の所でセレナに支えられた。

「……ありがとうリュナ…」

「…キュキュイ!キュウキュイ」

「…え?それよりなんか踏んだよって?」

うんうんと頷くリュナの言葉に下を向くと……。

そこには、セレネに踏まれ目を回す精霊が一匹おり、これは敵国のスパイである小精霊だった。

セレネはカバンの中に入れていた瓶に小精霊を入れ、他にも居ないか街を見て回る。

…すると。あちこちに敵国の小精霊がおり、セレネは街の人々に被害が及ばない内に駆除しようと魔法を使った。

「…見えなき光の糸よ、彼の者を全て捉えよ!」

一瞬にして光で出来たような糸は、次から次へと小精霊の体を縛り上げる。

そして、最後の一体を見つけ縛るとセレネの前で束のように重なった。
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