あとがき

平安京へと戻り、清明の屋敷を訪ねた麗蘭。

「…只今、帰りました」

「……麗蘭、ようやく帰ったか」

「…おお!麗蘭!……此度の事、感服いたしたぞ!」

茶の間に正座すると、清明の隣には忠行がおり、麗蘭を見るなり誇らしげに見つめた。

「……もう知っておられるのですか」

「…知っているも何も、今やこの京はお前の噂が絶えんぞ?」

「…それ程までですか……」

忠行の言葉に麗蘭は少し照れくさくなり下を向く。

なんなら、陰陽寮に出向くと良いと何か企んでいると分かる程の笑みを浮かべた2人に、引きずられるように陰陽寮へと連れられる。

陰陽寮に入るなり、なんだなんだと物珍しそうに近寄る陰陽生の前に出された麗蘭は、口々に鬼才の陰陽師!と呼ばれた。
 

鬼才……?何の事かよく分からずに首を傾げると清明が静かに耳打ちする。

「……宋での事はもう、平安京の皆が知っているのだ」

「…え!?」

麗蘭は驚いて目を丸くするが、それを言いふらしたのは他でもない、この2人だと見抜き苦笑する。

「……図りましたね。清明様、父上………」

「…何を言う麗蘭よ!…わしは鼻高々だ!」

「…お陰で私もよい弟子を持つ事になったからな」

2人の会話に麗蘭は、清明の弟子にと既に事を運んだのに気付き、深いため息をつく。

「……最初からそのおつもりだったのですね」

「…お陰で清明の側に居やすくなったであろう?」

忠行に耳打ちされた麗蘭は半笑いして、1枚も2枚も上手な2人に肩を落としながらも、土蜘蛛との見えない縁で結ばれた糸も断ち切った事で、占術で出ていた魔も消え失せた。

そのお陰で、清明の屋敷で住み込みの弟子として再び一緒に暮らせるようになった麗蘭。

全く…こうなるようにと、未来を見通し企んでいた陰陽師2人には敵わない。

そう心の中で思いながら麗蘭は屋敷に戻り、今の幸せを噛みしめるように琴を奏でたのであったー。

                    完。
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