第3章 百鬼をうち払え!

麗蘭は顔をしかめながら、先に百鬼を調伏する方が先だと思い、懐から呪符を取り出し念を込めそれを宙に投げ呪文を唱えた。

「…謹請し奉る、縛鬼伏邪、百鬼消除、急々如律令!!」

呪符から雷のような光が出て、その場にいたあやかしや土蜘蛛を守るように、束になったあやかし達も次々と消え失せる。

呪符が燃え尽き、効力が失われる中、最後に土蜘蛛を庇うように前にいた牛鬼をどうにか調伏した麗蘭は、霊力を消耗しよろけるが翔聖に支えられた。


「…あまり力を使いすぎるな小童。我にも命令すれば良かろう。我はその為に式となった」

「…翔聖………」

「……今しがたより、我が名を呼ぶのも許そう。……我が主よ、我に命令するが良い」

翔聖は、ようやく麗蘭を認めたのか、庇うように前に立つと土蜘蛛に牙をむき出す。

それを見た土蜘蛛は滑稽なものを見るかのようにあざ笑う。


『……なんじゃ?お前が相手じゃないのか?……ほれ、あの百鬼を倒したようにわしも倒さぬか。……それともなんじゃ?先程の術で霊力を使い果たしたか?』

麗蘭は、少し息を荒くしながらも足に力を入れ体を支えながら口を開いた。


「……よく喋る土蜘蛛だな。………翔聖。…少しで良いから、土蜘蛛の気を引きつけて……」

御意とだけ言うと、翔聖は土蜘蛛の周りを駆け毛むくじゃらの手足に牙を立てる。


麗蘭は再び懐から呪符を取り出し念を込めるが、土蜘蛛は勢いよく糸を張り巡し麗蘭の背に素早く回り込むと、前足を2本麗蘭の首へと向けた。

普段なら気配で避けれるはずだが、今は霊力を消耗しているのもあり、気配に気付くのが遅れた麗蘭は後ろを睨むように眉間にシワを寄せた。


『…お主の力はそんなもんか。期待しておったのだがなぁ』

「…っ!土蜘蛛……」

「…麗蘭っ!」

『…そこのお前。今そこを動けば、こやつの首をはねる。……後ろを取られては何もできまい?』

「…っく!」

仕方なく呪符を懐に仕舞う麗蘭だが、手を懐から取り出す祭、一緒に1枚の札が足元に落ちる。

それは前に清明からもらった、朱色の液で五芒星が書かれたものだった。

土蜘蛛はそれに目をやると、空いている足でその札に触れた。

すると………。
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