第3章 百鬼をうち払え!

だが、もう時刻は寅2つ時(3時30〜4時)になろうとしている。

この時刻になると朝が近いのもあり、あやかし達も姿を消す。

麗蘭も一瞬だが、感じた気配に後ろ髪を引かれていたが、言伝しようと清明の屋敷へと向おうとした。


……しかし大安寺を離れようとした時、誰かの声が聞こえ立ち止まる。


『……これほどの霊力。なるほど。極上じゃ………今宵、お前と相まみえるのを比叡山にて待っておる』


「………誰だ!」

麗蘭は霊力を研ぎ澄ますように、刀印を結びながら辺りを見回すが、あやかしの妖気も邪気も感じられない。



『……同じ時に待っておるぞ』


「……待て!」

必死に気を凝らすが、薄っすらとした気配は糸を切ったように消えた。


麗蘭は、屋敷に帰り清明の部屋を訪ねた。

「……父上、今よろしいでしょうか?」

「…帰ったか麗蘭」

部屋に招き入れた清明は、水を麗蘭に飲むよう言った。

それをありがたく飲んだ麗蘭は口を開く。

「…父上、がしゃどくろは調伏しましたが裏で操っている者と思わしき声が聞こえました」

「…翔聖からも聞いたが、女の声だったのだな?」

いつの間に先に戻ったのか、式札を指さした清明。


麗蘭は頷くと、声に言われた事を伝えた。



「…また今宵か………それに場所が、鬼門である比叡山となると……相手はがしゃどくろよりも強者だろう」

「…はい。がしゃどくろより強者となると、茨木童子か牛鬼か………」

「…どちらもあり得るな」

清明は眉間にシワを寄せた。


「…相手がなんであろうが調伏するまでです」

「……なら、翔聖の力を借りると良い」

「…ですが………」

「……翔聖は、がしゃどくろを調伏したお前を見込んだのだ」

清明は麗蘭の頭を撫でながら微笑むと翔聖を呼び出した。
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