『……ぐぬぬぬ!!』


「…力を入れても無駄だ。この印には退魔の力がある。……あやかしには良く効く印だ」

結界を張るも尚、そこから逃れようともがくがしゃどくろ。

それを静かに見据えた麗蘭は呪文を口にした。

「…風魔、裂傷！」


だが、攻撃の術が効いていないのか、不吉な笑い声を上げたがしゃどくろは、麗蘭の作った結界を再び打ち破ろうとする。


……結界が…もう持たない!
仕方ない、距離を取るしかないか。

そう思った麗蘭は、結界を解き距離を取ろうとした。


……が。がしゃどくろの方が一足早く、手をなぎ払う攻撃をくらい尻もちをつく。


「…っく!」

『…ひひひ！わしの方が早いじゃろう?…このがしゃどくろ様を調伏しようなんぞ百年早いわ!』

肌寒いはずなのに、額から流れる汗を狩衣の袖でぬぐいながら立ち上がった麗蘭は、札を取り出し念を込めながら口を開く。


「…言いたい事はそれだけか?」

『……なんじゃと?』

「…私はお前を調伏する!…それだけだ！」

麗蘭は鋭く睨み、札をがしゃどくろへと投げ付け素早く刀印を結びながら再び口を開いた。

「…謹請し奉る、邪鬼退魔、急々如律令！」


札は、がしゃどくろの体に貼り付き瞬時に灰にしてゆく。

灰と化しながらも、がしゃどくろは麗蘭を指さしこう言った。


『……ぐぬぅぅ！……小癪な陰陽師が……じゃが、姫様のお力にお前の勝ち目はない。あのお方こそ……』

そう言って、完全に消え去る。

同時に、辺りに立ちこめていた邪気も消え去るが、なんとなく違和感を感じる麗蘭。


がしゃどくろは調伏したのは間違いないが、裏で操っている者が側で見ているような………そんな気がしてならなかったのだ。