第2章 彷徨う闇

「……我を呼んだか、清明」

「…翔聖。暫く麗蘭と夜回りを頼みたい。……京には良くない何かが潜んでいる。鼻の効くお前なら何か分かるかも知れん」

「……つまりは、この小童の面倒を見ろ……そう言いたいのだな?……我はこんな小童の命令など聞かぬぞ?」

「…そう言うだろうと思っていた。ただ、側に居てくれるだけで良い。………あとは麗蘭が怨霊調伏なり、邪鬼払いなりするだろう」

清明は麗蘭の頭を撫でながら翔聖を見つめた。


「……あ、あの。よろしくお願いします」

麗蘭が翔聖に頭を下げたが、それを鼻で笑うようにして口を開いた。


「…ふん、世迷言を。清明、お前が夜回りすれば良かろう」

「…私はここで見守るのみだ。……麗蘭の霊力と、術。そして、彷徨う者が何であるかをな」

「………我に見定めよと?…笑止。………前にも言ったが、主は清明、お前だ。これは変わらぬ。……それにこの小童は、お前ほどの霊力は備わってはおらん」

「……今は、な。…事が起きれば分かるだろう」

清明は麗蘭の頭を再び撫でると、翔聖は何も言わず式札へと戻った。


「……全く……変わらず困った奴だ。麗蘭、気にするな。少なくとも翔聖はお前に気がある」

「…私を………ですか?」

「…ああ。鬼女と出くわした時、私は見守る為、鬼には見えぬよう結界をはった。…鬼女にお前がやられそうになった時……翔聖が、助けに行かぬのか?と聞いてきたからな」

「………翔聖が…?」

麗蘭は式札の紙を見つめた。

「……あれ以来、不服は言ってはいるが変化を感じる」

本当にそうだろうか?と疑問に思ったが、清明が言うならばと、麗蘭は言葉を飲み込み、忠行の屋敷へと帰り床についたー。
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