第2章 彷徨う闇

木の葉は青々と茂り、気温もぐんぐんと上がる葉月。

弥生の月に陰陽寮に入った麗蘭も、半月が経ち13歳になった。

だが、中には毎日毎日同じような作業を繰り返しているので、根を上げる者、見回りだと称し仕事を放棄する者、愚痴をこぼす者もいた。


麗蘭はこれも修業だと思っていたので、淡々と作業してゆく。

それを横目で見ていた男が麗蘭に話しかけた。


「……よく飽きぬな、麗蘭殿」

「…はい?」

男の言葉の意味が分からなくて首を傾げる。

「…毎日毎日疲れるだろう。……この作業をどれくらいやれば陰陽師になれるのかすら分からん」

ここに集まる修習生の中には、陰陽師を目指している者が多くいると聞く。

この者もまた、陰陽師を目指しているのだろう。

そう思った麗蘭は口を開こうとしたが、斜め前に座っていた男がこちらを振り向き、先に口を開いた。



「…陰陽師になるには見鬼の才がなければ務まらん。……それもただ見えるだけではなく、祓えるほどの霊力が必要だと言うぞ?」

「…確かにな。見鬼の才か………。麗蘭殿は忠行様譲りの才があるのか?」

隣に座っていた者に尋ねられた麗蘭は、答えに迷った。

………と、そこへ。吉平がやってきた。



「……どうやらここには新入りに熱を上げる者がいるらしい」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべるその顔を見るなり周りの者も慌てふためいた。

まだ15歳とはいえ、役職は陰陽頭も務める陰陽師だ。

そんな吉平に下手な事は言えないのか、2人は冷や汗をかいていた。



「……いや、その……吉平様……」

「……吉平様、申し訳ござらん!……直ぐに自分の仕事に戻ります故……清明様には申し付けないで下さい!」

清明の名を聞いた他の者は、再び慌てるようにして自分の仕事に取り掛かる。

よっぽど清明が怖いと見た吉平はわざとからかうように口を開いた。


「…そんなに私の父が怖いか。…良い事を聞いた。……その方、こちらへ来なさい」

吉平は麗蘭を手招きし、人影がない所へ連れていくと、周りを確認してから頭を撫で優しく問いかけた。
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