第1章 開花する力

男は顔色も良くなり、麗蘭の手を握った後、笑顔で去っていった。


初めて陰陽の術を使えた事に喜びを感じた麗蘭は後ろにいた2人に笑いかける。

それを見た2人は陰陽師になるための一歩を踏み出したのもあり、忠行は声をかけた。


「…見事だ麗蘭。清明を見ている気分であったぞ」

「…ありがたきお言葉、感謝致します」

「…ここまで出来たのなら1人前だな」

そう言った清明は麗蘭の頭をよしよしと撫で、それを微笑んで見た忠行は再び口を開いた。


「…だが、今のでお主の霊力は徐々に高まるだろう。実際、見えるようになってきたのではないか?」

忠行の問に麗蘭は辺りを見回すと、無数の霊が見えたので頷いた。



「…はい。まだ完全ではありませんが、見えてきております」

「…やはり。完全に見えるようになるにはそう時間もかかるまい。……それと同時に襲われやすくもある。……用心するのだ」

忠行は声色を変え、厳しい顔になった。それを見た麗蘭も目付きを鋭くして頷いた。




「………麗蘭、これを」

清明は懐から、呪符を取り出し麗蘭に渡した。

その呪符は退魔の力が込められたものであった。

「…ありがとうございます、清明様」

「…肌身離さず身につけていなさい。……少しは役に立つだろう」

「…さて、もう薄暗くなってきた。屋敷へ帰ろう」

そう言った清明は麗蘭の手を取り歩き出し、待って下さい、清明様と麗蘭は清明に引っ張られるように歩く。

それを見て、心配性な親を持つと大変だのぅと、忠行の笑い声が後ろから追いかけてくる。


傍から見れは、戯れているようにも見え滑稽であろう。


………だが、昨日言っていた事が気がかりな麗蘭は念のため気を凝らしたが、何も感じなかったので、悪霊は集まっていない事を確認した。

最も、その気配があるのならこの2人には筒抜けだろうとも思いながら……。



しかし、それに気づかれぬようにジワジワと奥底から湧き上がるどす黒い影がある事に、今は誰も気付かずにいたー。
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