第1章 開花する力

翌朝。

朝餉を食べた3人は、歩いて辰一つ時(7時〜7時30)には、左京にある大安寺へ着いた。

そこには既に数人の人が集まっており、清明と忠行の姿を見た人々は歓声を上げる。


「…おお!加茂様だ!」

「…清明様!清明様もおるぞ」

「…ああ!ありがたや!」

「………してあの者は?」

「…見かけない顔じゃな」

麗蘭を見た人々は少し不審に思い、それを口にしていた。

忠行は人々に近寄ると、それを遮るように語りかけた。


「…よく来て下さった!皆に紹介しよう!……私の息子……麗蘭だ。……この者は私の弟子でもあり、陰陽師を目指しておる」

「…皆さま、お初にお目にかかります。加茂 忠行の息子、麗蘭にございます」

麗蘭は集まった人々に深々とお辞儀をすると、人々は安堵したのか、その美貌に見とれる者、なんだご子息かと話し合う者もいた。


「…さて、本日皆さんに集まって頂いたのは他でもなく、皆さんの悩みを解決する為。1例にお並びになってお待ち下さい」

清明がそう言うと、皆1例に来た順番に並ぶ。

寺の縁側を借り、そこに腰を下ろした3人は1番前に並んでいた女を呼んだ。

女は平民の町娘といった所か。麗蘭より4つ上ほどの綺麗な顔をした娘だった。

「…お悩みはなんでしょうか」

清明は問いかけた。娘は少し恥ずかしそうに目をそらしながらか細い声でこう言った。


「……毎晩、恋い焦がれている殿方の夢を見るのです。でも、気持ちを伝えれず………どうして良いのやら」

恋の悩みだった。清明と忠行は麗蘭に見立たせようと、2人して頷くと清明は麗蘭の耳に手を当て口を開いた。

「……麗蘭。私達は助言はするが自分で見立ててみなさい。これも勉強だ」

麗蘭は頷くと、持ってきた式盤を取り出し占う。
そして、答えが出て口を開いた。


「……その殿方も、貴方を好いています。貴方同様、一歩踏み出せずにいるのです。……恋文を書いてその方へ渡すと良い方向に向かうでしょう。………文に香の匂いを染み込ませば、貴方の思いは伝わりましょう」

それを聞いた女は目を輝かせ、お礼を言い去っていった。

見立てが正しい事に2人は麗蘭を見守るようにそっと後ろへ下がる。
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