第1章 開花する力
忠行にお礼を言った後、占術を行う部屋へと入ると清明が微笑んで迎え入れる。
「…早かったな。他の者はまだ作業に追われているというのに」
目で麗蘭の後ろを見た清明。
それにつられて見ると、陰陽生は遠くだがまだ墨を刷っている者。書物を書き写している者。巻物を沢山かかえて持ってきた者がたくさん居るのが見えた。
「……私が最初なのですね」
「…そうだな。だからこそこうしてゆっくり話せる。なに、心配はいらない。ここには誰も来ない。……私は嫌われ者らしいのでな」
清明は誰もいない部屋を見ながら苦笑する。
「……それは違います。恐れ多いだけなのです。……本当は皆、清明様を敬っております。…かく言う私もその1人です」
誰もいないとはいえ、聞かれている可能性もあると麗蘭は考え、あえて父とは呼ばなかった。
それを分かっているかのように、柔らかく微笑んだ清明は麗蘭の頭を撫でながら式盤を取り出し、麗蘭の前に置く。
「…さて、明日の吉凶を占うとしよう。麗蘭、やってみなさい」
「…はい」
麗蘭は式盤の前に座り直し、円盤を見ながら動かした。
そして、答えが見つかったのか手を止めて口を開いた。
「…明日は酉の方角に注意せよ。物を落とす、忘れる事あり。また、午の方角に向かうと良し。全てが解決し、物事が明快になります」
「…良い見立てだな麗蘭。吉平、吉昌に並ぶ陰陽師になれるやも知れん。だが、1つだけ言うならば、災いを防ぐにはどうすれば良いかまで言い当てねばな」
清明は円盤を指さしながら麗蘭を見つめた。
「……災いを防ぐには……あ!…水で手を清めし。さすれば、災いは消えよう、ですね」
「…その通りだ。もう少し時間がかかると思っていたが、半刻で終わってしまったな」
「…ありがとうございます。清明様が教えて下さったお陰です」
「…さて、私の仕事も終わった。帰ろう麗蘭。家に遊びに来ると良い。他の者には、修業だと言ってな?」
小声で耳打ちし、ニヤリと笑った清明に麗蘭は苦笑しながらも、久々に我が家に寄れる嬉しさから笑みが溢れた。
「…早かったな。他の者はまだ作業に追われているというのに」
目で麗蘭の後ろを見た清明。
それにつられて見ると、陰陽生は遠くだがまだ墨を刷っている者。書物を書き写している者。巻物を沢山かかえて持ってきた者がたくさん居るのが見えた。
「……私が最初なのですね」
「…そうだな。だからこそこうしてゆっくり話せる。なに、心配はいらない。ここには誰も来ない。……私は嫌われ者らしいのでな」
清明は誰もいない部屋を見ながら苦笑する。
「……それは違います。恐れ多いだけなのです。……本当は皆、清明様を敬っております。…かく言う私もその1人です」
誰もいないとはいえ、聞かれている可能性もあると麗蘭は考え、あえて父とは呼ばなかった。
それを分かっているかのように、柔らかく微笑んだ清明は麗蘭の頭を撫でながら式盤を取り出し、麗蘭の前に置く。
「…さて、明日の吉凶を占うとしよう。麗蘭、やってみなさい」
「…はい」
麗蘭は式盤の前に座り直し、円盤を見ながら動かした。
そして、答えが見つかったのか手を止めて口を開いた。
「…明日は酉の方角に注意せよ。物を落とす、忘れる事あり。また、午の方角に向かうと良し。全てが解決し、物事が明快になります」
「…良い見立てだな麗蘭。吉平、吉昌に並ぶ陰陽師になれるやも知れん。だが、1つだけ言うならば、災いを防ぐにはどうすれば良いかまで言い当てねばな」
清明は円盤を指さしながら麗蘭を見つめた。
「……災いを防ぐには……あ!…水で手を清めし。さすれば、災いは消えよう、ですね」
「…その通りだ。もう少し時間がかかると思っていたが、半刻で終わってしまったな」
「…ありがとうございます。清明様が教えて下さったお陰です」
「…さて、私の仕事も終わった。帰ろう麗蘭。家に遊びに来ると良い。他の者には、修業だと言ってな?」
小声で耳打ちし、ニヤリと笑った清明に麗蘭は苦笑しながらも、久々に我が家に寄れる嬉しさから笑みが溢れた。