第1章 開花する力

忠行の屋敷は鴨川の近くにあり、清明の屋敷からは離れていたが、未2つ時(13時30〜14時)には屋敷に付いた。

門をくぐると茶の間に通され、正座した2人に忠行が麗蘭を見つめる。

麗蘭は深々とお辞儀をしてから口を開いた。

「…ご挨拶遅れまして、申し訳ございません。……麗蘭にございます」

「…この度の事、大変感謝しております」

清明も忠行に深々とお辞儀をしたので、忠行は豪快に笑った。


「…ははは!そう頭を下げるでない、清明。麗蘭。聞けばお主は、見鬼の才を持っているそうだな」

麗蘭の顔を再び見た忠行は、清明に瓜二つだと思いながら笑った。


「…それ故、忠行様に陰陽の術を麗蘭にお教えして頂きたく」

「…それでわしの養子か。考えたものよ。……確かに、身分を伏せた方が清明の娘子だと周りの者に気付かれる事もない。それに、見えるだけでは鬼に襲われても、戦う術がなくてはな……」

「…はい。麗蘭の見鬼の才は私の術で見えぬようにしてますが、いずれそれも麗蘭の奥に眠っている霊力がその力を呼び覚ますでしょう」

「……ならば道は1つだ。麗蘭よ」

忠行に呼ばれた麗蘭は返事をした。

「…お前に申しつける。ここで修業した後、陰陽寮に入るのだ」

「…陰陽寮…ですか?……ですが、女人禁止のはず」

麗蘭は陰陽寮が男に与えられた学問を学ぶ所であり、女や子供は入れない事を知っていた。


「………男として入れば問題なかろう。元服したと申し、立ち会いはわしがした……とな」

「……男として……」

「…なに、心配無用だ。それに気付かれはしないだろう。……だがもし、そうなれば私が術を施そう」

いたずらっぽく笑う清明を麗蘭は苦笑しながら口を開いた。

「……それはいけません。いくら父……。いえ、清明様でもやってはなりません。陰陽師は怨霊調伏するものです」

「…はっはっはっ!こりゃあたまげた!……陰陽師とは何たるものかと良い負かされておるわい!……その器量の良さと賢さ、それに良い意味で誰もお主を女人だとは思わぬ。清明に似て冷淡な雰囲気だからな」

腹をかかえて笑う忠行に2人は顔を合わせて苦笑した。
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