第1章 開花する力

……それから時は流れ、麗蘭は12歳になった。

その容姿は、桃色の髪を背中まで伸ばし、頭の後ろで1つに結い、大きな目だが、少し切れ長。醸し出す雰囲気もどことなく清明と似ていた。


朝早くから清明に呼ばれ、麗蘭は正座しながら口を開く。

「…父上、お話とはどのようなご用でしょう?」

「…麗蘭。落ち着いて聞いて欲しい」

清明の声色が変わり麗蘭は静かに返事をする。

「…昔、お前を授かる前に占いで、お前が12になった時ここから出なければならない。さもなくば魔が襲うと、出てな……」


「…そうですか………それで私の能力を封じていたのですね」

麗蘭は清明が見鬼の才を封じたのを密かに感じ取っていた。

「………やはり気付いていたか。そうでもしなければ魔が襲うと思ったからな」


「……ですが、父上の事です。もう策をお考えのはず。結果がどうであれ、この家を守れるのであれば従います」

感の鋭さと意志の強い所も、まるで水鏡に映る自分を見ている気分になった清明は苦笑しながら口を開いた。


「……まったくお前はまだ12だというのに、肝が座っている。とんでもない強者になりそうだな。………お前に加茂様の養子になって欲しい。これは占いでの結果だ」

「……加茂様……加茂 忠行様ですか?」

「…私の師で陰陽の術に長けている。お前の助けになってくれる筈だ」

清明の言葉に分かりましたとだけ言う麗蘭。

「…ならば、これから加茂様の屋敷へ出向こう。もう話は通してある。それに、皆お前がもうここにはいられぬ事を知っている」

「………そうですか」
どこか不安そうな目をした麗蘭に清明は頭を撫でた。


「…案ずるな。いつでも顔を出すと良い。…そこまでは占いには出ていない。……なに、私と知り合いだとでも言えば怪しまないだろう」

「……ありがとうございます!父上!」

目を輝かせ笑う麗蘭。だが清明はその額を人差し指で軽く小突いた。

「…父上はここでのみ呼んでも良いが、外では呼んではならんよ?」

「…分かりました。……清明……様…」

「…それで良い。さあ参ろう」

麗蘭は自分の部屋へと戻り着物だけを何着か袋に包み、荷物を整理して家の門を出た。
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