第1章 開花する力

時は平安。鬼や怨霊、妖怪などの魑魅魍魎がはびこる時代。

それらを調伏していたのが、陰陽師である安倍 清明。
 

清明は、霊力が高いばかりでなく母親は狐という説もあり、人々は薄気味悪がったが、その凄まじい霊力と怨霊調伏を見た者は清明を崇めるようになったと言われている。


……そんな彼も恋をし、子を設けた。1人は吉昌、もう1人は吉平。そしてもう1人は女。


男2人の年子に、その2年後に授かった麗蘭。
だが、麗蘭を授かった時…清明は顔をしかめた。

それは占いで、次は女を授かる。だが、12になりし時。その子を家から出せ。さもなくば魔が襲うだろう……とー。


その魔が何を意味するかは分からなかったが、いずれにせよ、良くない事が起きる。

清明は、まだ赤子の我が子の行く先を案じ頭を撫でた。



麗蘭は、清明の事を見ると清明の人差し指を掴み笑ったが、ふとある方向へと目を向ける。

……もしやと思い、つられて見るとそこには清明の式神がいた。

瞬時に我が子に見鬼の才がある事に気付いた清明は、麗蘭に問いかける。


「……麗蘭。お前、これが見えるのか?」

清明は別の式神を側に出させると、麗蘭は手を叩いてきゃっきゃと笑う。

式神も自分の姿が麗蘭に見えている事に驚きつつも、笑いかけている。


それを見た清明は吉平、吉昌には見られなかった見鬼の才がまだ赤子の麗蘭にはある事を確信する。


今となれば、2人も成長したので見鬼の才があるが麗蘭はそれ以上だと見て取れた。


「………そうか、見えるか。まだ赤子だというのに、もう見鬼の才があるのか」

清明はそう呟くと、式神を戻し麗蘭をあやしながら寝かしつけると、心の中で語りかけた。



…麗蘭。すまない。お前は12になれば、この家を出ていなければならない。それが定めだ。防ぐ道は1つしかない。……無力な私を許しておくれ…。


語り終わると清明は麗蘭の見鬼の才を封じ込めた。

時が来るまでは見えぬようにと言霊を用いて。


あまり見えすぎても、見鬼の才を持つ者は、
鬼たちの姿が見える一方で、鬼たちに狙われることが多いからだ。


それを防ぐには能力を封じる必要があった。
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