第1章 京を練り歩く者達

時は平安。

古代より大きな天災や人災が相次ぐ中、それに加え争いという人の怨念や憎しみが都に渦巻き始めていた。

特に戦というものは人を呪い、時には自分すら殺めてしまう残酷なもの。


中には丑の刻参りや、呪術に頼る者も少なからず居た。




…そうして、その闇に引き寄せられるようにして現れたのが、妖怪やもののけ、鬼など。

彼らはどこからともなく現れ、毎夜のように平安京を練り歩くようになっていた。


これを見た者達は、あまりにも美しい光景と雅やかな笛や三味線、小鼓といった調べに、これは人ではなく、妖の織り成すものだと噂し始めた。




そして今宵も、子の刻になる頃…。

大内裏を通り抜け朱雀門へと近付小さな青白い光がいくつも見えた。


…おそらく、ぞろぞろと列をなして歩いているのだろう。

揺れ動く光と音色が静寂を包み込んでゆく。
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