番外編 祝福の時

 ~氷雨の場合~


…物音を立てないようにして、こっそりと寝所に戻った氷雨を見つけた冬牙は声をかけた。

「…なにやら花の匂いがするな」

「…比叡山の姫と双ヶ丘の姫と花見に行っていた」


「…それは?」

握られていた花を指差した冬牙に氷雨はああと呟き、言葉を続けた。

「…山奥に咲いていたものだ。二人にも差し上げた」

「…楽しめたか?」

「…そうさな。良い日和だった」

今日の事を思い出し、微笑んだ氷雨を見た冬牙は、あまり見たことのない表情に少し驚きつつも、こっそりと微笑んだのであった……。
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