暖簾が床の間に付きそうなくらい長く掛けられた寝所に向かって正座をしていた彩は、その奥に座っているであろう黒銀に深々とお辞儀をしてから問いかけた。


「…ああそうじゃ。さあ、皆に伝えるが良い」

暖簾の前に座っていた舞雪の言葉を聞いた三人は一礼した後、部屋を出ていった。




「…しっかし親方様もお忙しいの―。やっとおいらも百鬼夜行楽しくなってきたと思えば、もう配置換とはの～」

優幻はふと立ち止まり、黒銀と舞雪の居る部屋を見つめながら呟いた。


「…仕方なかろう。わしらとて、まだ親方様の望む百鬼とは言えぬ。…数を増やすにも、こういう事は大事なのだろう」

彩は優幻の頭を撫でてから諭すように言い、再び縁側を歩き出した。



「…そういうものでやんすか？」

「…そういうものだとわしは思う」

今まで黙っていた聖の小さな呟きに彩は思ったままの事を答えた。

何故だかは分からなかったが、そんな気がしたのだ。




そして子の刻。

いつもと同じく、練り歩きを繰り返していくにつれ、徐々に仲間が増え……ついには百鬼の群れとなった。




…こうして、本当の意味で百鬼夜行となった事で、人々は彼らを"山の神"と呼ぶようになり、崇めるようになった。


それに気分を良くした三種族は、毎夜の如く百鬼夜行し、合間をみては人里に来るなり、悪戯をしたりするので茶目っ気のある者達だと、後々に語り継がれる事となるー。