第1章 小さな魔法使い

蝋燭の光に照らされた緑色の本には、長い間読まれていなかったのか、開かないように魔法がかけられていた。

それを見たエレンは隣で眠っているミーシャを起こさないよう、その本を膝に置いてから本の表紙をなぞるように指を動かした。(そうする事で、かけられていた魔法が解けるようになっている)



すると…。

″昔の伝説"という文字が浮かび上がり、目次の欄には昔の伝説や魔法使いなどについて主に印されていたが、その次に書かれていた文字を見た瞬間…。

背筋が凍り付くような感覚に襲われた。




…なぜなら、そこには"おそれ山″と書いてあったからだ。

おそれ山とは、西の果てにある小高い山の名で、古代から恐ろしい魔物が棲みついているとされ、山に入った者は魔力を奪われ、たちまち魂までも食い尽くされてしまうという伝説がある。


そんな身の毛もよだつような恐ろしい山に、一体何が隠されていると言うのだろうか。


そのページを開くと″おそれ山の怪物"とあり…。

おそれ山に棲む怪物は鋼のような硬い皮膚をもち、大きな金色の目に鋭い牙。

口から火を吹き、背中から生えた翼で空を自由に飛ぶ生き物だと書かれていた。


だが、エレンはここに印されてある怪物と、封筒にかれられていた魔法を解いた時に見た怪物と違う事に違和感を覚えた。


……ドラゴンは何者かによって呪いをかけられている?

それが浮かんだ答えであった。(怪物がドラゴンであるという事は、魔法を解いた時から予想していたからだ)
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