第1章 小さな魔法使い

子猫を抱いて自信満々に答えたエレンの顔を見た二人は微笑み、そう遠くないであろう未来に胸を膨らませていた。



ーそれから三年が経ったある日。

子猫にミーシャと名付けたエレンは、王妃が何者かに連れ去られたという報告を受け、宮殿へと向かっていた。

急いで宮殿の扉を開けると、真っ先に目に入り込んだのは、今まさに何かに触れようと机に手を伸ばしている国王の姿だった。


「……触っちゃ駄目っ!!」

叫び声と共に、気付けば国王の手を掴んでいた。

そしてすぐさまエレンは、国王が触れようとしていた、机の上にある一通の茶や封筒に近付き観察してみると、そこには無数の小さな穴が開けられていた。


これを見たエレンは、自分が間一髪の所で止めた事に胸を撫で下ろした。


…というのは前に噂で、封筒に穴を開けるのはシムズ国王が置き手紙をする時の癖で、それは何らかの仕掛けがしてあると、聞いた事があったからだ。


静かにその封筒に息を吹き掛けてみると…(仕掛けられたものを刺激するため)

案の定。
ゆっくりと宙に浮いたかと思うと、激しく燃えだした。


「…ウルハイラ・コロッセタ!」"汝、見えぬ姿を解き放て″

すかさずエレンが呪文を唱えると、燃えカスが黒い塊となり、火を吹く怪物のような姿に変身した後、煙となって消えていった…。


「…これはシムズ国王が仕掛けた罠だわ。…お母様はシムズ国王に連れ去られた。…ただ……」

「…何かを感じるのだな?」

国王の問いに頷いたエレンは更に続けた。
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