序章

ーその数年後。

魔法が共通して使えるようになった人々はどんどん魔法を広めてゆき、ようやく浸透してきた頃…。

今度は自分達で国を治めるよう民に伝えたサルマニクスは、一つだった大陸に雷を轟かせ北、東、西の三つの国境を造り上げた。


それを間近で体感した人々はどよめきながらも言われた通り国に城を築く事から始め…。



北をパーム、東をジーク、西をパシェと、今まで国名が無かった事もあり、国名と民衆の中で、最も魔力が強く周りの信頼もある者を指導者(国王)と決め、崇めるようになっていった。

その成り行きを密かに見守っていたサルマニクスは、後の事は皆に任せようとしたのだが、この先も国を守って欲しいという人々の願いを聞き入れ、北の国王として長きに渡り国を統一し、平和に導いたというー。




……それから時は経ち、西暦六百年のある日。

北のジョン・モーリス国王と東のラーテ・ルパート国王は、西のセヴァンド・シムズ国王が何者かに操られ、とんでもない事をしようとしている…という噂を耳にした。

だが、シムズ国王がとても温厚な人柄で国民からも信頼されている事をよく知る二人はこの噂を信じれなかった。


…それなのにその性格が二、三年で豹変し、何かを得る為なら手段を選ばなくなってしまったというのだ。


もし、これが本当ならば一刻も早く対処しなければならない。

…そう考えた二人は同盟を結ぶ事で、シムズ国王の計画を阻もうと試みたのだが、現実はそう甘くはなかった。


シムズ国王の狙いは、計画が台無しにされたと思わせ、同盟を結ぶ事により出来た時間を利用し、更に練り直そうとしていたのだ。

この時点で、その意図をより深く理解し素早く判断していたならば、未来は大きく変わっていただろう。


そう。これはほんのちょっとした前触れに過ぎなかった。

本当の狙いはこれから先に待ち構えている事を…。

この時は誰一人として予想していなかったー。
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