第4章 戦いの始まり

「…とうとう恐れていた事がやってきたわね。今、皆を避難させてきたけど、これからが一番大変ね」

「…はい。その事でお願いがあります。…明日の夕方、街の中心で結界を張ってほしいのです。…私が火を放ちに行くので、その火がゆっくりと街を燃やしているように見せてほしいのです」


「…分かったわ。…きっと、今までよりもずっと過酷な戦いとなるでしょう。…それを乗り越えるためにも、一緒に頑張りましょうね」

シェレーナはそれだけ言うと、静かに消えていった。




一人になったエレンはぼんやりと夜が迫りつつある窓に映った空を眺めた。

見えている景色は同じはずなのに、明日の事を考えるだけで孤独感を感じた。




………こんな気分になったのは初めてだった。

ここに来る前までは、明日を思うだけで楽しくて、どんな一日にしようかなんて考えていた。


しかし、おそれ山の怪物にかけられた呪いを解こうと戦うにつれ、怖いと思うようになってしまった。


それまでは、生きるのに喜びを感じ何もかもが輝いて見えた。

だが今は、死ぬかもしれないという恐怖が心を支配する。

それを考えると、喜びよりも苦痛が増し、もし…そうなると、どうしようもなく怖いのだ。

でもその事も含め、強く決意してここまでやってきた。




……きっと上手くいく。

今は自分を信じるしかないと、前向きに考えるよう努め、憂鬱な気分に浸りそうになるのを何とかしようと目を閉じる。

が、募る不安と込み上げる緊張であまり眠れずに、朝を迎えてしまった……。
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