第3章 魔女の抜け道

翌朝。

木陰で一夜明かしたエレン達はシェレーナの昔話を聞きながら、森の中を進んでいた。

シェレーナは、魔女と魔法使いとの間に生まれ、双子の妹…アグムが居た。

当時はまだ、魔法使いと魔女が協力し合い生活しており、二人は魔女の掟に従いおそれ山を守っていた。(魔法使いには、魔法使いの掟がある)



…それは二人がおそれ山と魔女の抜け道を造り出したからだ。

加えて、魔法使いの操る白魔術と黒魔術を魔女の能力である回復能力を使い、その両立を図れないかと考えていたという。


だが、そんなある日。事件は起きた。

妹のアグムはあろう事かモンシャルベンの弟子となり、黒魔術の虜となってしまったのだ。

そして禁術の一つである"闇の精霊”を呼び出した。

闇の精霊と契約を交わしたモンシャルベンとアグムは、命を絶った…。


その後、美しかった森は生態系を失い、再び人の体を操る亡霊と甦ったアグムによって呪いをかけられた生き物達は怪物へと姿を変え、今でも呪いをかけられた苦しみから解放されずに、元の姿に戻れる日がくる事を強く望んでいるのだと……。


そう言い終えたシェレーナは悲しそうな目をおそれ山へと向けていた。




…その頃。

西国では未だにおそれ山について何も情報が得られない事に苛立ちを覚えた人物が玉座に腰を下ろした。

怒りのあまり血走った眼をしたシムズ国王は酒の入った瓶を一気に飲み干すと、毎日のように気に入らない兵士を次々に牢獄へと閉じ込めるようになっていた。


それを知った国民はいつしか操られている国王をアノン"可哀想な王”と呼ぶようになった。

この呼び名は直ぐ国王の耳に入り、怒りが爆発してしまい、自分の国までを巻き込んだ戦争を起こしてやろうと、不適な笑みを浮かべ窓から見えた町並みを見下ろしていたー。
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