第2章 出会いと旅立ち

「…モール・ガーセター!」"水よ渦を巻け"

「メイプー・クーセ!」"我を鳥に変えよ"

二人の魔法の効力はほぼ同時だった。

大量の大きな渦を巻いた水はエレンの居た場所まで押し寄せていた。

それを鳥の姿へと変身したまま見つめ、自分の勘が冴えていたと、あと少しでも魔法を使うのが遅れていたら、試験はその時点で終了していた事に思わず身震いした。


そっと安堵のため息を漏らした後、渦の中心に向かったエレンは、この試験で最も重要である、黒魔術を使うためそこに意識を集中させた。



……本来なら、黒魔術は白魔術より強い魔法をかける時のみ使うものだが、 上級を取るには黒魔術を使うのが不可欠で、黒魔術を操る事が出来るかを見極める為でもある。

「ディゼー・バグナータ!」"水を焼き払え"

中心めがけ呪文を口にした瞬間…瞬時に蒸発していったのを見たエレンは、鳥の姿から元の姿へと戻り、箱の底に足を付けた。



「…よくやったエレン。…これにて試験終了とする」

近付いて来た国王の言葉にはっとしたようにエレンは前を見た。

まだ試験は続いているものだと思っていたので、何が起こったのか直ぐには理解出来なかったからだ。

気持ちを落ちつかせようと辺りを見渡すと、そこはもう箱の中ではなく、見慣れた宮殿の中だった。

その後、国王から認定証を受け取った事で、無事に合格できたのだと理解したが、その日の夜。

興奮のあまりエレンが寝付けなかったのは言うまでもない…。
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