本編
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風をまとうエクソシスト
「ええ!?神田君と一緒に行きたくない!?」
ガターン!と椅子から勢いよく立ち上がって言ったコムイに「そう言う意味じゃない。」と黒凪がすぐさま否定した。
しかし再び椅子に座ったコムイは彼女をまじまじと見つめ、そして神田に目を移す。
神田は何も言わずたた立っているだけ。
「…喧嘩したの?」
『「してない。」』
重なった2人の声に余計に意味が理解出来ないと言う様にコムイの眉間に皺が刻まれた。
ならどうして自分の師であるティエドール元帥じゃなくてソカロ元帥の元に行きたいだなんて、
困惑した様なコムイの声に面倒臭そうに後頭部を掻いた。
『…何となく…』
「何となく!?何となくで神田君と一緒に行かないの!?」
『ユウは関係ないでしょ。とにかく私はソカロ部隊。』
「…、ちゃんと理由を言ってくれないと分からないよ。黒凪ちゃん」
打って変わって真剣な顔をして言ったコムイ。
彼女の提案が決して冗談ではないと悟った為だろう。
ため息を吐いた黒凪は目を逸らし徐に口を開いた。
『…ソカロ元帥の方がカッコいいから。』
「……。…黒凪ちゃん…」
『本当だって。そりゃあユウとは離れたくないけど、』
…。私にだって色々あるんだよ。
目を逸らしたまま言った黒凪にコムイがため息を吐いた。
分かった。それじゃあ君はソカロ元帥を護衛する班に入って。
どうにか納得してくれたコムイに頭を下げる。
『ありがとう。』
「うん。…とは言ってもソカロ部隊はもう既にインド近くまで進んでいる。急いで追い付かないと間に合わないよ」
『了解。じゃあ今から行くね』
頭を上げた黒凪はコムイに背を向けて部屋から出て行く。
その背中を見送ったコムイは神田を見ると眉を下げた。
やはり機嫌は決して宜しくない。
「…。本当に珍しいね。神田君と一緒の任務を態々断るなんて。」
「フン。知るかよ、アイツの考えなんて。」
「そんな事言っちゃって~…、…え、ホントに知らないの?」
「知らん。」
ええ!?神田君にもホントの理由話してないの!?
また椅子を盛大にひっくり返して言ったコムイに神田の額に青筋が浮かんだ。
ねえホントに知らない?これっぽっちも?全くもって?
知らねえっつってんだろ!と執拗な言葉にキレた神田。
そんな彼に事実だと理解したコムイは一気に顔を青ざめさせた。
「…ホント何考えてるんだろ…連れ戻した方がイイカナ…」
「ほっとけ。…アイツは無謀な事はしねえタチだ。」
死にはしねぇよ。
眉を寄せて言った神田にコムイが徐に眉を下げる。
椅子を元に戻して座ったコムイが静かに言った。
「…心配かい?」
「るせえ。」
「…あの子は一体、」
何の為に動いているんだろうね。
天井を見上げて言ったコムイに神田はまた「知るか」と返して背を向けた。
話はそれだけか。神田の言葉に「うん。」とコムイが返す。
その返答を聞いた神田は無言のままに部屋を出て行った。
それを見送ったコムイは手元の珈琲を一口飲み、指を交差させる。
「(…どうかエクソシスト諸君に神のご加護があらん事を。)」
本部を出てから1週間。
黒凪はインドに程近い国境に差し掛かっていた。
≪ガガ、…黒凪≫
『あぁスーマン。そろそろ国境だよ。』
≪…教団から向かってるとなると国境の前に森があるだろう≫
『うん。今からその森に入る所だけど』
なら丁度良い。恐らくお前が居る町に同じく合流する予定のファインダーが居る筈だ。
スーマンの言葉に足を止めた黒凪は「名前は?」と周りを見渡しながら問いかける。
「ゴズと言う。」そんなスーマンの言葉に「男?どんな?」と続けて特徴を訊くとどうやら頼りなさそうな男だそうだ。
そんなスーマンの言葉に微かに眉を寄せた時、背後から驚いた様な声が聞こえてくる。
振り返るとリナリーがファインダーと共に背後に立っていた。
『リナリー』
「良かった、会えた…。兄さんからソカロ部隊に合流する話は聞いてるわ。彼も同じく合流する予定なの」
『…あぁ、って事は彼がゴズ?』
「は、はい!」
屈強な体つきとは裏腹に自信が無さ気な顔をしている。
成程、確かに頼りなさそうだ。
黙って納得しているとゴーレムから「会えたのか?」とスーマンの声がする。
会えたよ、と答えた黒凪は迎えに来た方が良いかと言う彼の問いに来てくれと頼んで通信を切った。
『それじゃあ一緒に国境に向かおうか。リナリーはこれからどうするの』
「私は今からスペインに向かうの。」
『スペイン?…あ、そっか。リナリーってクロス部隊だったね』
「え?…そうだけどどうして…」
何となく。
緩く笑って言った黒凪は森に向かって歩き出した。
しかしその腕をガッとゴズが掴んで彼女の足を止める。
「ま、待ってください!森には人食い狼が出るって…っ」
『人食い狼?…それが?』
「こここ怖いじゃないですか!ちょっと心の準備が、」
『…。リナリー、一緒に来て。』
え?とリナリーが目を見開いた。
こんな奴と一緒なのは無理。
はっきり言った黒凪にゴズが「えええ…」と眉を下げる。
でも私、早くアレン君達と合流しないと…。
困った様に言ったリナリーに黒凪が右上を見上げた。
『…間に合うよ。大丈夫。』
「大丈夫って、」
『ほら行くよ。スーマンと会うまでで良いから。ね。』
「ちょ、黒凪ー…」
リナリーの手を掴んで強引に森へ向かう。
森に入ると彼女も諦めたのか黒凪に大人しくついて行った。
森に入って数分程経った頃、狼の遠吠えが響き渡る。
ビクッと目を見開いたゴズは恐怖のあまりに一気に顔を青褪めさせた。
ふーん。本当にいるんだ、狼…。そう呟かれた黒凪の言葉に「やっぱり無理ですよぉお!」と走り出しゴズが2人からどんどん離れて行く。
『あ。逃げた。』
「ゴズ!」
走って追いかけるリナリー。
はー…とため息を吐いた黒凪もその後を追った。
するとガチャ、と金属音が鳴りはっと足を止めるゴズ。
その背中を見たリナリーは彼の前方に居る複数の男が猟銃を向けている様を見て荷物を放り出しゴズの前へ移動した。
「待って、撃たないで。」
「何だお前達は!此処で一体何をしている!?」
『旅の者だ。怪しい者じゃない』
リナリーの荷物を持って現れた黒凪の言葉に猟銃を降ろした男達。
彼等にリナリーが「貴方達は?」とすぐさま問いかけると彼等は森の奥にある開拓村の住人達だと言う。
それを聞いたゴズが目を見開き「あの狼に襲われた!?」と驚いた様に言うと男達が目を見開いた。
「町で聞きました、狼に襲われた村があるって…。町まで降りてきたんですね…」
「全員が逃げて来られたわけじゃない。しかも此処に来るまでに大半が狼の餌食になっている。」
「ええ!?」
「村に残して来た者達も無事かどうか…、」
町にはまだ人が残ってるの!?
驚いた様に問うたリナリーに逃げてきた人々が顔を歪めた。
恐らく動けない病の者や高齢者は連れて来る事が出来なかったのだろう。
そんな様子の彼等に何と声を掛けようかと迷っている内、1人の女性が焦った様に周りを見渡した。
「ジェシカ?…ジェシカが居ないわ!」
「何だって!?あの子はまだ小さい子供だ、ちゃんと見ていろとあれ程…!」
「きゃあああ!」
森に響いた叫び声に一斉に顔を上げる。
微かに舌を打った黒凪が包帯を木に括り付け一気に遥か上空まで飛び上がった。
その瞬間に周りを見渡すとそう離れていない場所で少女が狼に囲まれている様子を目にする。
眉を寄せた黒凪は地面に着地すると其方に向かって走り出した。
「黒凪!そっちに女の子が居るの!?」
『あぁ。…手遅れかもしれないけど。』
「ジェシカ!」
村の人々も黒凪の後を追い少女の元へ辿り着く。
しかし途端に狼が飛び掛かり眉を寄せた。
しまった、間に合わない。
そう思った瞬間に突風が吹き狼が上空に飛び上がる。
その風が吹いた方向に目を向けると団服を着た1人の男が姿を見せた。
『…スーマン』
「何だ、思ったより森の中を進んでいなかったんだな」
『まあ色々あってね。ソカロ部隊は?』
「森を抜けた先で待機してる。…時間が惜しい、さっさと行くぞ。」
歩き出したスーマンに黒凪がついて行く。
そんな彼等を困った様に見てリナリーを見下したゴズ。
ゴズに眉を下げたリナリーが「待って、」と2人を引き止めた。
同時に振り返るスーマンと黒凪にリナリーがチラリとジェシカを抱きしめている人々に目を向ける。
「あの人達を私達と一緒に町まで護衛してほしいの。」
『…え、まだ面倒見るの?』
「当たり前じゃない。私達が居ないとまた狼に襲われちゃうわ。」
「それは本部からの任務か?」
違うけど。あっけらかんと言ったリナリーに「ならば護衛する必要はない筈だ」とスーマンが眉を寄せて言った。
そんなスーマンと黒凪の態度にゴズが「待ってください!」と食って掛かる。
あれだけの人達を見捨てる気ですか!
そう言ったゴズに向けていた目を2人が同時に逆方向に向けた。
『…スーマン』
「あぁ。」
「!…ゴズ、下がって」
「え、」
ドスン、ドスン。
そんな足音が響き村の人々も顔を上げる。
木々の向こう側から巨大な狼の様な風貌をしたアクマが歩いて来ていた。
スーマンの右腕が対アクマ武器に変形し黒凪の包帯も赤く染まる。
『私がやる。』
「!」
赤い包帯に気が付いたスーマンはアクマに目を向けると一瞬で黒凪から距離を取った。
襲い掛かって来たアクマに赤い刃が向かう。
クイーン・オブ・ハート。
黒凪の小さな声と同時に一瞬でアクマの首が宙に舞った。
その様子にゴズが息を飲む。
『こういう速そうな奴は一瞬でやるのがコツだってユウが言ってた。』
「フン、また神田か」
「…え、神田って、」
「あ、此処に来る前まで神田と一緒だったんだっけ。」
神田と仲が良いのよ、凄く。
微笑んで言ったリナリーに「へー…」と信じられない物を見るかの様に黒凪を見た。
そんなゴズを見ていた黒凪は怯える人々を見てスーマンを見上げる。
スーマンは狼に襲われかけていた少女、ジェシカを見ると小さく舌を打った。
「――…これで文句はないだろう。任務に戻るぞ」
『時間が惜しいから私がイノセンスで運んでやろうか?』
「遠慮する。またあのターザンみたいなやり方で森の中を進む気か?」
『ユウは文句言わない。』
「俺は神田じゃない」
あ、あの。
ゴズの声に「あ?」と2人で振り返る。
まだ何かあるのか。イライラした様子で言ったスーマンにリナリーが一歩前に出た。
「まだ開拓村に取り残された人達が居るのよ。彼等も此処まで連れて来てあげないと、」
「…さっきも言っただろう。それは本部の命令か、と。」
命令以外の事は進んでやらない主義だ。
冷酷に言い放ったスーマンにジェシカが涙を浮かべて駆け寄った。
村にはまだお母さんが残ってるの。
ジェシカに目を向ける。
「だからお願い、お母さんを助けて!」
「……。俺の任務はソカロ元帥の護衛だ。」
「スーマンさん!」
『…スーマン、助けてやりなよ。後悔するよ』
お前まで何を…。
…お母さんが本当に困った時にこれを使えって言ってた。
ジェシカの声にスーマンが再び目を向ける。
小さな彼女の手に握られているのは1枚の金貨。
じっと見つめているスーマンを見た黒凪は彼の背中を叩く。
『ほれ。』
「…良いだろう。」
「!」
「余計な任務はするつもりはないが、金を払うと言うならそれも仕事の内だ」
少女の手から金貨を受け取り背を向ける。
そんなスーマンにゴズが眉を寄せて「何て人だ、」と呟いた。
やがて村の人々と話をしたリナリーはジェシカを共に連れて行く事にしたのかゴズの背中に彼女を乗せる。
その様子を横目に見ていたスーマンは「もう良いだろう。日が暮れる前に向かうぞ」と一言言って歩き出した。
「あ、ちょっとスーマン!」
『…時間が無いなら』
「お前のイノセンスは二度と御免だ。」
『なんでさ。任務先で女に抱えられたのがそんなに嫌だったの』
何も言わないスーマンに目を逸らして隣を歩き続ける。
そんな2人の背中をジェシカを背負ったまま眉を寄せて見るゴズ。
その様子を見たリナリーが彼に近付いた。
「あの2人、仲が良いでしょう?」
「え、あ…はい」
「スーマンもちょっと神田に似てる感じがするから接しやすいんだって。…2人は決して悪い人じゃないのよ」
「でもこんな小さな子からお金まで取るなんて…」
それでも動いてくれたのが2人の優しさよ。本当に冷酷な人は動いてくれないわ。
リナリーの言葉に納得出来ないと言う様に眉を寄せる。
やがて開拓村へ辿り着いた一行はジェシカの家へ向かった。
中に入ってジェシカを見せると彼女の母親は涙を流してジェシカを抱きしめる。
「どうして戻って来たの…っ」
「お母さんを助ける為だよ!この人達が狼から助けてくれたの…!」
「それじゃあ皆は無事に…?」
涙ながらに微かに笑みを見せた母親にジェシカの目にも涙が浮かんだ。
沢山の人が狼に、
そんなジェシカの言葉に母親が思わず動きを止める。
その様子に眉を寄せたゴズが一歩前に出て言った。
「大丈夫です!僕等が責任を持ってこの村に残った人々を町まで送り届けます!…既に襲われた方々は、その、…残念でしたが」
「…っ、はい、…ありがとうございます…っ」
「…。で、では今すぐにでも、」
「駄目だ」
スーマンの言葉に全員が振り返る。
窓の外を見ていたスーマンは日が落ちた様子に目を細めるとカーテンを閉めた。
狼は夜行性だ。昼間よりも出現確率が高い。
日が昇ってから町に向かった方が良いだろう。
「朝までの見張りは交代で行う。出発は明日だ」
『泊まる場所は?』
「それでしたら此処をお使いください。」
母親の言葉に目を向けたスーマンが「ありがとうございます」と無表情に礼を述べる。
そうしてジェシカの家に泊まる事になった一行は家の側で夜が明けるのを待った。
最初の見張りであるスーマンが家の前に立ち徐に懐中時計を開く。
その様子を見ていたリナリーが彼に近付いた。
「何を見ているの?」
「…交代の時間までまだ時間があるぞ」
屋根の上に座っていた黒凪が2人の会話に顔を覗かせた。
教団に連れて来られてもう5年になるんだね。
ゆっくりとスーマンの隣に移動したリナリーが彼の隣で壁に凭れ掛かる。
「まだ教団を恨んでる?」
「…。俺をこんな戦争に縛り付けた存在を恨むなと言う方が難しいだろ」
「うん、確かにそうね。…私も最初はイノセンスの適合者だと気付かれた時、突然教団に連れて行かれて…地獄の日々だった。」
でも兄さんが来てくれてからあそこは私のホームになったの。
そしてホームに居る仲間は皆私の家族。
リナリーの言葉にスーマンが目を伏せる。
「…家族、か。」
『…!』
村の周りに放っていたイノセンスからの信号に顔を上げる黒凪。
彼女は立ち上がると両手の包帯を一気に森へ伸ばす。
その様子にリナリーとスーマンが顔を上げた。
「黒凪!どうかしたの!?」
『狼が来た。…この量ば赤゙じゃ無理だな…』
「だったら俺がやる。」
「ちょ、ジェシカ!」
スーマンの右腕が対アクマ武器に変形した時、家の中からジェシカがゴズと共に飛び出してきた。
そんなジェシカに目を向けたスーマンは「何かに捕まれ!」と指示を出し一気に風を巻き起こす。
家の周りに立っていた狼達が一斉に吹き飛ばされ黒凪の手元に包帯が戻ってきた。
『ありがと。森の方に居る狼に包帯噛まれてたのよ』
【あーあァ。好き勝手やられちゃったねェ】
【許せないなァ…】
現れた2体のアクマに目を向けた瞬間、外に出ていたジェシカをその内の1体が捕らえた。
それを見たスーマンが目を見開き「その子を返せ!」と手を伸ばす。
しかしもう1体に右腕を噛まれ痛みに腕を引っ込めた。
【フハハハ!俺の牙には毒がある、お前はもうすぐ死ぬんだよォ!】
「ぁ、…おじちゃん、お星さまが…」
「大丈夫だ。俺のイノセンスは寄生型、」
体に浮かんでいたペンタクルが消えていく。
アクマの毒は効かない。
静かに言ったスーマンが突風で1体を一気に吹き飛ばした。
その様子に目を見開いたジェシカを捕まえているアクマ。
そのアクマにリナリーが攻撃を仕掛け離されたジェシカをゴズが受け止める。
【クソ、】
『あんたもちょっと遠くに行って。』
包帯が巻かれた拳で一気に殴りもう1体も吹き飛ばす。
家から離れたアクマに3人で向かって行った。
繰り出されるアクマの弾丸を黒凪が包帯を操り弾いて行く。
『全部叩き落とす、どっちでも良いから破壊して。』
「お前が防戦に回るなんて珍しいじゃないか…!」
『おっさんに花持たせてやるんだよ。』
黒凪の言葉に小さく笑ってスーマンが右の拳をアクマに向ける。
突風が吹き荒れアクマが上空に浮かび上がった。
2体の内の1体をリナリーが蹴りで破壊する。
そしてすぐさまスーマンが巨大な竜巻を巻き起こしもう1体も破壊した。
『お見事。イノセンスがボロボロになった意味もあるってもんだよ』
「本当だ…、ありがとね。黒凪」
『良いよ。結構護るの大変だったけどスーマンを諦めたらどうにかなったし』
「俺には当たっても良いと?」
だって寄生型でしょ。
痛いものは痛いんだぞ。
はいはい。ちゃんと急所に当たらない様にはしてましたよ。
また始まった2人の口論にリナリーが笑っているとジェシカが駆け寄り2人に抱き着いた。
「ありがと!おじさん、お姉さん!」
『え、ちょっと待って。何か嫌な絵面だ』
「ふふふ、仲の良い親子みたいだよ」
『止めてよ。私はユウとが良い』
俺だってお前とは願い下げだ。
スーマンの言葉にその通り、と頷く黒凪。
何処か可笑しな2人のやり取りに遠目に見ていたゴズも笑った。
「本当にありがとうございました、町まで無事に辿りつけたのも皆さんのおかげです」
「ありがとう!これでお母さんと一緒に暮らせる!」
にこにこと笑うジェシカに近付いたスーマンがしゃがんだ。
怖がらせてすまなかった。
そんなスーマンの言葉に首を横に振るジェシカ。
その様子を見たスーマンは笑みを浮かべると「これはそのお詫びと言ってはなんだが、」そう言って差し出された金貨にジェシカがはっと顔を上げる。
「受け取ってくれるか?」
「…うん、」
ぽんとジェシカの頭に手を乗せ「ありがとう」と笑った。
そんなスーマンと共に外に出た黒凪とゴズはリナリーに目を向ける。
此処まで付いて来てくれてありがとうございました。そう言ったゴズにリナリーが笑みを見せた。
「良いのよ。皆無事でよかったわ」
「これから君は何処へ?」
「私はスペインへ。皆はソカロ元帥の元へ向かうのよね?」
「あぁ。…お互い、無事にこの任務を終えられたらいいな」
ええ。気を付けて、怪我の無いようにね。
笑顔で言ったリナリーに「はい!」と涙ぐみながら言ったゴズ。
そんなゴズに眉を下げたスーマンも「達者で。」とリナリーに笑みを向けて言った。
そしてひらひらと手を振る黒凪を見たリナリーも笑顔で手を振ると3人の前から去っていく。
『さて、やっとソカロ部隊と合流できる。』
「…そう言えばソカロ部隊は俺以外のエクソシストとは初対面なんじゃないのか?」
『そうだよ。だから殆ど話さないと思う。』
「何故そんな部隊に自分から志願したんだ…」
色々あんの。
目を逸らして言った黒凪にスーマンがため息を吐く。
お前はそんなだから変人扱いされるんだ。
そんな言葉に「はぁ?」と黒凪がすぐさま食って掛かる。
『あんたも初対面は全然話さなかったでしょ。私があんたみたいな奴の扱い方を心得てるから仲良くなれたんでしょーが。』
「仲が良いつもりでいるのか?すまないがそれは勘違いだ。」
「ま、まあまあ…」
『初めて教団に来た時はずーっとどんよりしてたくせに。』
それとこれとは話が別だろう。
お二人とも落ち着いて…。
2人の間にどうにか入ろうとするゴズだったが彼等の口論は止まらない。
やがてこれが彼等のコミュニケーションなんだと自分に言い聞かせて諦めるまで、あと何分かかる事か。
スーマン・ダーク
(ちょ、2人共体力あり過ぎじゃないですか!?)
(…君は筋肉質なくせに体力が無いんだな)
(ほってく?)
(ええー!?)
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