番外編
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奴が現れた昼下がり。
※ゴキ○リが登場します。苦手な方は逃げてください。
完結前のお話。
『……。』
「……。」
「…あれ?」
神田の部屋の前。正確には扉のすぐ目の前。
そんな場所で2人仲良く並んで直立不動。
何処からどう見ても奇妙な状況に偶然通りかかったラビが足を止めた。
「…何やってるんさ、2人して」
そう声を掛けるが2人は無言のまま。
暫く黙って立っていた黒凪がゆっくりと隣の神田を見上げた。
『…ユウ、あんた』
「俺の所為じゃねえ」
『でも床にいっぱい服とか』
「あれは大半はお前のだろうが」
そんな会話の後に再び扉に目を向ける。
2人の様子を不思議気にラビが眺めていると続けてアレンとリナリーも神田の部屋の前を通りがかる。
彼等も奇妙な黒凪と神田の様子に首を傾げた。
「…何ですか、あの状況」
「いやー…俺も何が何だか…」
「?」
3人が様子を窺っていると意を決した様に神田が六幻に手を掛ける。
しかしその手を黒凪がすぐさま阻止した。
待って、それでアイツを斬ったら一生あんたに近付けない。
いつにも無く真剣な顔で言った黒凪に黙って刀を収める神田。
続いて黒凪がゆっくりと包帯の巻かれた拳を持ち上げた。
『…やっぱり此処はこの子に犠牲になってもらうしか』
「待て、お前がそれで殺れば床に…」
『多少の犠牲は必要だと思う。』
「…待て、少し考えさせろ」
如何に奴の細胞を飛び散らせないかが重要だ。
うん、違いない。
無表情且つ真剣な声色で会話をする2人に遂にアレンが声を掛けた。
「あの、一体何事ですか。」
『……。アレン、あんた潔癖ある?』
「潔癖ですか?…人並みには…」
『…あれはあんたの許容範囲?』
すっと指差された方向を見てしっかりと閉ざされた扉に目を向ける。
扉ですか?と問い掛けたアレンに「扉の向こう側に居る。」と黒凪が言った。
扉の向こう側…、そう呟きながら取っ手に手を掛けたアレンに機敏に反応して黒凪が物凄い勢いで神田の腕にしがみ付く。
「…。」
ゆっくりと扉の向こうに目を向けたアレンが物凄い勢いで扉を閉ざした。
スパァン!と清々しいまでの音を響かせて閉ざされた扉に皆がシーンと沈黙する。
そんな中でゆっくりとアレンが振り返り口を開く。
「あれは無理です。」
『だろうね』
「いい加減教えてくれよ。一体何が出たんさ。」
「…ちょっと待って、私分かったかも…」
顔を青ざめて言ったリナリーは流石に感が良い。
ラビは「え?何?」なんて呑気に問いかけてアレンとリナリーを交互に見た。
暫し名前を口に出す事を躊躇っていたアレンだったが、遂に決意をした様に顔を上げる。
「良いですかラビ。一度しか言いませんからね。」
「ん?うん。」
「…ゴキブリです」
「……。なーんだゴキブぐはぁっ!」
きゃあ!ごめんなさいラビ!
以外にもラビを間髪入れずに殴り飛ばしたのはリナリーだった。
私本当にあの虫だけは駄目で…!
本当に申し訳なさそうな顔をして言ったリナリーに「大丈夫大丈夫、」と笑顔を見せてラビが立ち上がる。
どう見たって大丈夫じゃない腫れ方をしているが、まあ彼の言葉を信じておこう。
「僕も正直奴には幾度となく出会っていますが…、どうも慣れません…」
「………。」
「…神田も駄目なの…?」
「……」
へー、意外さね。ユウならゴキちゃんぐらい大丈夫だろ?
少し驚いた様に言ったラビに否定も肯定もせず神田が静かに隣の黒凪に目を向ける。
黒凪は眉間に深い皺を寄せたまま部屋を睨み付ける様にして見ていた。
そんな黒凪に小さく息を吐いて神田が後頭部を掻く。
《ギャー!ちょっと誰だよお菓子持ち込んで放置してたの!》
《トゥイィイイ!トゥイは何処だぁああ!》
《駄目だ、今トゥイは薬品の買い出しに…!!》
まだ神田と黒凪が研究室に居た頃、胎中室に居た2人はそんな叫び声に徐に顔を上げた。
ギャー!と図太い男の悲鳴が聞こえてくる。
そんな声を聞いて放っておく気にもなれず、2人は徐に立ち上がり叫び声の元へ。
そこでヴゥンッ!!と研究室の一室の中を飛び回る黒い虫を見つけた。
丁度向こう側にある扉にはどうにか逃げたであろう研究員達が立っている。
《…え゙、ちょっと待ってあれって…》
《?》
横で顔を青ざめる黒凪とは打って変わり小首を傾げる神田。
彼にとって初めて見たそれは時折研究室の中に入り込むカナブンやカブトムシと何ら変わらぬものだった。
だからこそ彼は必要以上に怯える研究員や黒凪を呆れた様に見て徐に足を踏み出す。
ユウ!?と驚いた様なエドガーの声が放たれるが「こんな虫1匹に大げさな…」と神田が瞬く間にゴ○ブリを掴み取った。
普通の人間よりも幾分か力の強いセカンドエクソシストが奴を掴めばどうなるかなど安易に予想が着くだろう。
…潰したのだ。その手の平の中で。
《こんなもんの何が…》
《……》
《…黒凪?》
足を踏み出すごとに黒凪も同じだけ遠ざかって行く。
少し眉を寄せて勢いよく近づけば顔を青ざめて黒凪が背を向けた。
そして瞬く間に全速力で逃げて行った黒凪にぽかーんとする。
暫し立ち竦んで向こう側に居る研究員達に目を向けた。
ヒィッ!と声を上げてざざっと距離を取った研究員達にも驚いた様に目を見張る。
《…あ、あのねユウ…》
《……エド》
《近付くのは駄目だッ!!》
《!》
エドガーの声にビクッと身体を跳ねさせて足を止める。
そ、その手の中に居る虫をさ…。
声を微かに震わせて言うエドガーに怪訝な顔をしたままで「あぁ」と返答を返す。
すぐにティッシュでくるんでゴミ箱に入れて、すぐに手を洗って来てくれるかな…?
《……分かった》
《よ、よし。じゃあすぐに…。》
《…手を洗えばあいつ、戻ってくんだよな?》
《え?》
黒凪。…あいつ、戻って来るよな。
無表情に言う神田だったがその表情には何処か怯えがある様にも見えた。
その表情に驚いた様に一瞬だけ固まったエドガーはふわりと笑みを浮かべて「うん。」と頷く。
そんなエドガーを見た神田はすぐにティッシュに手を伸ばしゴキブ○を捨て、手洗い場へ急いだ。
その背中を見てエドガーがぽつりと呟く。
《多分、だけど…》
そんな過去を思い起こし神田は腕を組んで部屋を見つめ嫌そうな顔をする。
その表情を見てリナリーやアレン、ラビは一様に「駄目なんだ…」と心内で呟いた。
あの日の事件以来黒凪は約1週間程神田から一定の距離を保ち、神田がその1週間の間をずっとイライラしながら過ごしたことは彼の記憶に根強く残っている。
あれだけ嫌がったのだ、黒凪本人に任せればどうなるか…。
「……。」
『……。』
「…黒凪」
『何?』
俺が殺る。
静かに放たれた言葉に黒凪が神田に目を向けた。
あ、俺ポリ袋持ってるさ。
そう言って手を上げたラビにすぐさま神田が手を伸ばす。
「貸せ」
「お、おお…」
その勢いに袋を手渡し、それを片手に扉に手を掛けた神田にラビが目を向ける。
がちゃ、と扉が開いた音がすると黒凪は思わず一歩下がった。
途端にピクッとゴ○ブリが動き、神田に向かって飛んで行く。
そんなゴキ○リの動きを完全に見切り神田が袋に上手く誘導しその入り口を塞いだ。
袋の中で動くゴキブ○を黒凪に見せない様にと神田が物凄い勢いで部屋を出て行きゴミ捨て場へ向かって行く。
「…さ、流石は神田…」
「やっぱゴッキーぐらい余裕さね…」
『…。』
数分程待っていると袋を捨てて来たであろう神田が戻り、黒凪と微妙に距離を開けた状態で足を止めた。
じっと無表情な表情の中に不安気な気配を忍ばせて黒凪を見下す神田に彼女が徐に動く。
ありがと!と笑顔で首に抱き着いて来た黒凪に神田が微かに目を見開いた。
『やっぱあんた凄いね!もー大好き!』
「……。んだよ…」
『ん?』
にこにこと笑う黒凪に小さく息を吐く。
そんな神田は目に見えて安堵していた。
やっぱ仲良いさー、なんて笑って言ったラビにリナリーも微笑んで頷き、アレンもやれやれと眉を下げる。
そしてふと時計を見上げたアレンは30分程経っている事実に1人驚愕していたのだった。
余計な恐怖。
(……。)
(あれ?ユウ、1人かい?)
(…あいつが逃げる)
(あいつ?)
(…黒凪)
(あー…)
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