番外編
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君のため。
完結前のお話。
『…嫌になるねぇ。こう多いと』
「無駄口叩いてる暇があるなら1体でも多く破壊しろ」
『へいへい。』
巻き付けた包帯のイノセンスで鉄の強度を誇る拳はアクマを殴り瞬く間に破壊していく。
その背後では彼女の背中を守る様に神田が六幻で応戦していた。
アクマを破壊しつつ周りを見渡した黒凪は微かに眉を寄せ視線を上空に上げる。
幸いな事にこの場は廃墟と化した建物や古びた木が多い。
『(一旦離脱した方が良いか)…ユウ』
「あ?」
『一旦逃げよっか』
「!」
神田の腰に片腕を回し包帯を木に括り付ける。
一気に攻撃してきたアクマの隙間を縫って抜け出した2人はギロッと此方を睨んだアクマ達を横目に移動していく。
神田は移動する中で器用に刀を鞘に戻し黒凪に密着する様に彼女の背中に左手を回した。
『アクマは無視してイノセンスだけ持って帰った方が良いと思うんだけど、どう?』
「あぁ。それでいい」
『んじゃあこのまま…』
「!離せ、」
目を見開いた神田が刀に手を掛け黒凪の横腹を蹴って右側に飛び込んだ。
神田に蹴り飛ばされ「ぐえっ」と木にぶつかった黒凪は神田が向かった方向に目を向ける。
そこには待ち伏せでもしていたのだろう、3体のアクマが立っていた。
『あー…もう』
「黒凪、さっさとアレをやれ!」
『はいはい』
両手を広げ目の前に差し出す。
手に巻かれていた黒い包帯が動きだし瞬く間にアクマ3体を拘束した。
それを見た神田はすぐさまその場から離脱し黒凪が両手をぐっと握りしめる。
そのまま思い切り手前に引き込めばアクマが一斉に爆発した。
『お、今日は調子良いねぇ』
「さっさと行くぞ」
ゆるゆると戻ってきた包帯に語り掛ける様に言った黒凪を抱えて走り出す神田。
そんな神田を手助けする様に包帯を伸ばした黒凪は木に括り付けぐいと引く。
浮いた足元に神田は黒凪を一気に引き寄せた。
一気に近付いた神田の顔にへら、と笑う。
『綺麗な顔してんねぇアンタ』
「るせぇ」
『ね、そう言えば私の下着どっかやったでしょ』
「3日前にお前のベッドの上に置いた」
洗濯機に入ってた?と問えば当たり前の様に頷いた。
そんな神田にまたへらっと笑って「ごめんよ」と彼の頭を撫でる。
不機嫌そうに寄せられる眉にまた笑って一気に包帯を引き寄せた。
バサッと森から外に抜けた2人は足元を走る列車に目を向ける。
『お、良いの発見。』
「…教団の方向に走ってるな」
包帯をしゅる、と手に戻し2人でドンッと着地する。
微かに足元がへこんだが知らぬふりをして窓からするりと入り込んだ。
中に居た乗客達は入り込んできた2人に眉を寄せるが乗務員が気を利かせ2人を個室へ。
2人は礼を言って個室の椅子に向かい合わせでドカッと座った。
『ほれ、腕見せてみ』
「……」
素直に差し出された左腕を掴み服を捲り上げる。
腕の傷は既に塞がり歪な形の傷跡を残していた。
この傷跡も後数分もすれば跡形も無くなってしまうだろう。
『元気な腕ですねー』
「テメェもだろ」
『ほっぺたどうなってる?』
血が滲んだ頬に手を伸ばし親指で血を拭う神田。
彼の指によって拭われた血の下には既に傷口など存在していなかった。
治ってる。そう一言言ってぺろりと血を舐めた神田の腕の傷跡もその瞬間に消え去った。
≪ガガ、…神田と黒凪、今何処だ?≫
「列車の中だ。イノセンスは回収した」
≪そっか、お疲れさん。…そう言えばアレンとラビも列車に乗ってるって言ってたな…任務先もそう遠くない。どの列車に乗ってるんだ?≫
『解んない。でもとりあえず教団には向かってる筈――…』
えぇ!?もう部屋無いんですか!?
聞いた事のある声にピクリと反応する。
そりゃないさー。
とまた気の抜けた今度は聞き慣れた声が。
「はい…。あぁでも確かそこの部屋に他のエクソシスト様が」
『……。どうする』
「鍵でも閉めとけ」
『鍵穴無いよ』
ん。と差し出された六幻を扉に噛ませた。
その途端にガタガタと揺れる扉に開かぬ様に包帯も六幻に加勢する。
ぐぬぬぬと扉の外で声がした。
「駄目だ、開かないさー…」
「…まさか黒髪のロン毛男だったり…?」
「お二人とも黒髪の方でした。2人共女性だったのですが」
ピクリと眉を寄せる神田。
黒凪は「くくく、」と笑った。
黒髪の女性…。黒髪…。
そう呟く2人に聞き耳を立てる様に黒凪が扉に近付く。
「あ!リナリーじゃね!?」
「成程!」
リーナーリィー!と扉をガンガン叩きながら言って来る2人に神田を見る。
神田はイライラとした様子で眉を寄せるとガッと六幻を取りガラッと扉を開いた。
見えた神田の姿にビシッと固まるラビとアレン。
「か、神田ぁ!?」
「なーんだ、ユウと黒凪かぁ」
『乗務員さん、この人男です』
「えぇ!?」
心底驚いた様子の乗務員に笑う黒凪の首根っこを掴んだ神田は先程自分が座っていた席に彼女を座らせた。
そしてあまりスペースのないその横に座ると徐に足を組む。
パチパチと瞬きをしているラビとアレンに黒凪が何も言わず向かいの席を指差した。
『今日は任務が上手く行って機嫌良いんだよ。座っときな』
「サンキューユウ!愛してる!」
「うぜぇ」
「ではお言葉に甘えて…」
ちょこんと黒凪の向かいにアレン、神田の向かいにラビ。
そんな配列で座った4人の中に沈黙が降り立った。
沈黙の中で欠伸をした黒凪はチラリと横にある組まれた神田の腕を見る。
そして神田の顔に目を移すと神田の閉じられていた目が薄く開いた。
『肩貸して』
「あ?」
『眠いから。』
「…チッ」
舌を打って再び目を閉じた神田に小さく笑って彼の肩にこて、と頭を乗せる。
そんな様子に目をひん剥くアレンと慣れた様に笑うラビ。
アレンはラビに目を向けた。
「いっつもあんな感じさぁ。兄妹みたいだろ?」
「え、えぇ…」
『…すー…』
「(寝るの早っ!?)」
また目を見開くアレンに「アイツは馬鹿だからすぐ寝るんさぁ」とまたラビが言う。
そんなラビの言葉にギロッと目を向けた神田。
流石と言うべきか、物凄い形相でラビを睨んでいる間にも彼は微動だにしない。
黒凪の為に気を使って動かぬ様にしているのだろう。
「はは、仲良いさぁ」
「……。」
「ユウって黒凪が肩借りて寝てる間は絶対しゃべらねーんさ」
「え、なんでです?」
しゃべったら振動が伝わって起きちまうだろ?
ラビの言葉に驚いた様にアレンが神田に目を向ける。
神田はまた目を閉じ静かにしていた。
驚いた、そこまで気を使うのか。
黒凪は神田の努力の甲斐あってか随分と居心地が良さそうに眠っている。
幸せは2人で作るもの。
(あれで付き合ってねーんだから驚きさぁ)
(え゙。恋人じゃないんですか)
(ぜんっぜん。只の親友。)
(…それって男としてどうなんでしょう)
(アレン、睨まれてる。ユウにめっちゃ睨まれてるさ)
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