番外編
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異世界から来た少女
世界を君は救えるかの番外編if。
オリキャラ1人登場注意。
火の国、木ノ葉隠れの里。
その末端に位置する巨大な屋敷には間と言う一族が住んでいる。
各地に生きる忍達は総じて間一族をこう表する。
…忍五大国御抱えの暗殺一族、と。
《――これが今から君が行く世界の概要ね。覚えた?》
《…ねえ、本当なのぉ?ナルトと結界師が混合した世界に行くなんてぇ~…》
《本当だよ。ナルトの世界では結界師の人気キャラ達が間一族として暮らしている。君の大好きな扇七郎とか志々尾限とかも居るよ。》
更に懐かしの敵キャラの鋼夜とか火黒も居るし…。
そう上機嫌に話すのは自称神だと言う少年だ。
そんな"神"の前に立つ少女はルリコ、通称ルリ(自称)である。
何度もブリーチをしたであろう髪はばさばさだがパーマによって大ぶりのカールを持ち、色は綺麗な桃色。
ばっちりと決められた化粧はもはや芸術の域である。
《火黒も居るのっ!?私彼可哀相だと思ってたのよね、独りぼっちで…》
《うんうん。その火黒を助けるのも君かもネ☆》
《ちなみにナルトの世界の時間軸はどんな感じぃ?少年編?疾風伝?》
《どっちが好み?》
ぱちっと片目を閉じて"神"が問うと彼女は迷わず「疾風伝に決まってるじゃない!!」と食い気味に言った。
それまた何故、と問う質問にも凄い勢いで「暁が居るからに決まってるでしょおっ!?」とさも当たり前の様に言う。
《じゃあ君にもう1つ良い情報だよ。間一族は暁の力を見込んで仲間にしていってるんだ。》
《えっ!?なになにどういうことっ!?》
《暁は原作でどんどん死んで行くだろう?でも間一族はそれを悉く阻止して彼等を仲間にしていってる。》
《そんな神展開あるっ!?キャー!》
それがあるんだよなぁ。と声に出さず呟いた"神"は「早く連れて行ってよぉ!」と暴れ出すルリににっこりと笑顔を向けた。
そんなに行きたいなら連れて行ってあげるよ。君の夢の世界へ…。
"神"のそんな声が響きルリの意識が落ちていく。
完全に眠ったルリを見下して"神"がニヤリと笑った。
《君が悪いんだよルリちゃん。まだ君以外のイレギュラーの話をしてないのにさ――…》
そんな"神"の言葉などルリに届く筈もなく、彼女は現在真っ暗な牢屋の並ぶ部屋に居た。
視界の悪い周辺を見ていたルリはヒラヒラと落ちて来た紙を掴み取り目を凝らして文字を読む。
"そこは間一族の地下牢だよ。目の前の扉を出れば外に出られる。あ、そう言えば君に1つ能力を授けておいたんだよ。詳細は次の紙に☆"そうとだけ書かれたメモをぐしゃ、と握り潰せば塵となって消えて行った。
そして再び落ちて来た紙を掴み取り中身を読む。
"君の能力は君がよく妄想してた天使の翼を持つ妖混じり。癒しの波動的なものも君が望めば出ると思う。それじゃあ頑張って~。"そんな紙も前と同じように隠滅して立ち上がった。
そして早速背中に力を籠めてみるとばさぁっと豪快に開く純白の翼。翼は光を帯びていて薄暗い地下牢を照らしていた。
「最高!最高だわ…!」
「(あはは、喜んでる。何だよ天使の翼って)」
翼を引っ込めて扉を勢いよく開けて飛び出して行ったルリの背中を眺めて意味も無く手を振る。
さあ頑張ってね。イレギュラーが支配する間一族の中で…。
そう呟いてあくどい笑みを見せる。その表情はこの状況を心の底から楽しんでいるものだった。
「(わあ、すっごく大きな部屋…)」
天使の翼と言う特殊能力を授かったとは言っても此処は未知の世界。彼女は自然と微かな恐怖を抱きながら息を潜めて地上へと這い出た。
そして何処に向かえば良いかも定まらぬままに右往左往する。
その様子を見ていた"神"は「まあ最初はあんなもんだよね…」とあまり動こうとしないルリに退屈そうに欠伸を漏らした。
しかし途端に現れた影にはっと目を見開きにやりと笑って口を閉ざす。
「おーい飯まだか飯ィー」
「え、…あぁ飛段君!お昼ご飯はそうだなぁ…、あと15分後ぐらいかな?」
「15分後ォ!?クソ長ェなオイ!」
そんな会話にルリの目がキラッと光る。
どちらもアニメで聞いた声だった。それだけでルリの気持ちは一気に高ぶる。
恐らく話しかけられたのは良守君のお父さんの修史さんね!こっちでもご飯作ってるんだぁ…、それに今話しかけたのは飛段よねぇ!?
飛段ってちょっと頭可笑しい所があるけど、きっと何か深い傷を抱えているんだわ!だから私が正気に戻してあげて、あんな呪いなんて止めさせなきゃ!
そんな事を一気に考えて足を踏み出せば丁度台所から引き返してきた飛段と衝突してしまった。
きゃあっと声を出して倒れると「お?」と別段驚いた様子も無い気だるげな声が真上から降ってくる。
「…間んトコのガキかァ?」
「え、間…?」
「……あ!テメェさてはまた前のガキンチョみたいに屋敷に入り込んだパターンか!?」
ずびし、と指を刺してそう言った飛段にまた一瞬だけ言葉を忘れる。
そうよ、この世界は結界師との混合なんだから原作に無い事も起こるわけで…っ!
あー、こういう時は報告すんのが良いんだよな。でも今アイツ出かけてるし…。
そんな事をぶつぶつ呟く飛段の前でばっと立ち上がった。
「ち、違うのよぉ飛段!」
「あ?」
「私はね、は、間一族の…そう、ガキなのぉ!」
ガキって何よバカバカバカ!こんな言い方じゃ飛段だって更に…。
おー、そうか。此処のガキか。じゃねえと俺の名前知ってる筈ねェモンな。
…予想の斜め上を行った飛段の回答にどっと肩の力を抜いた。
そして「じゃーな。」とのそのそ歩いて行った飛段に「えっ!?」と振り返る。
ちょ、ちょっと!此処は私を他のメンバーの所に連れてってくれるパターンでしょおっ!?
「ひ、飛段!」
「んあ?」
「角都とかって、今居るぅ?」
「…居るけど?」
ああもうっ、私の言おうとしている事を察しなさいよ!…でもそんな所も可愛い!ってそうじゃなくて!
そんな事を考えて1人で頭を左右に振るルリをぽかーんと見つめる飛段。
そんな飛段にもじもじしたポーズを取って顎を引き、上目使いになって「連れてってほしいのぉ…」と渾身の甘え声で言った。
「………………ついて来るか?」
「行く♪」
暫し此方を見つめてくるルリをじーっと眺めてから回答した飛段。
完全に引いている顔だがルリの中では確かな手応えを感じていた。
一方の飛段は角都に用があるなら何でもいいや、とやや投げやりな考えで彼女の同行を許した。
どこまでも能天気な男飛段。ある意味彼に最初に出会ったのはルリとしても幸運だっただろう。
彼のおかげで彼女は間一族の人間として暁と接する事が出来るのだ。部外者スタートよりは断然よいスタートである。
「角都ー、開けんぞー」
「…何の用だ。任務か?」
「なんかコイツがお前に会いたいって言うからよォ…」
ん?と此方に目を向けてくれる角都に思わず驚いてしまうルリ。
原作の彼は賞金首とお金にしか興味が無いイメージだった為、素直に此方を向いてくれるとは思っていなかったのだ。
これは間一族の一員となった事で彼が少し丸くなったと言う事なのだが、ルリの脳内ではこれがトリップ補正なのね…!と言った具合であった。
「初めましてぇ、ルリコって言いまぁす!ルリで良いよぉ!」
「………。……」
角都が何と返して言いのか分からない様子で飛段に目を向けた。
しかし問題のルリを連れて来た飛段はお役御免だと言う様に去ろうとしたので彼の目の前にクナイを投げる。
何すんだよ!と睨んで来た飛段に角都がそれを上回る程の殺気を持って睨み返した。
「戻れ飛段。殺すぞ。」
「……ケッ、ガチで言うなよな…」
「あの女を連れて来たのはお前だろう」
「嫌ならお前が部屋出てきゃいいだろーが。」
「馬鹿を言うな、此処は俺の部屋だ」
そうテンポよく話す不死コンビに「キャー!生で不死コンビが話してるぅ!」とルリの脳内はお花畑状態である。
暁好きな彼女は芸術コンビは勿論不死コンビも大好きであり、彼等の仲睦まじい様子がそれはそれは大好きなのだ。
そしてそんな彼女には彼等の会話など何1つ耳に入っていない!!
「今は何をしてたのぉ?お金でも数えてたぁ?」
「……。」
「…オイ、なんか返せよ角都。」
「うふふ、緊張してるのぉ?良いのよ私は怖くないからぁ♡」
誰が誰に怖がってるっつーんだよ…、と飛段が呆れた様に目を座らせる。
彼がこんな状態になるのは珍しいと言えるだろう。そして余程の事態だと見て取れる。
そんな飛段の横で何もせずただ黙っている角都は完全に目の前の少女の扱いに困り果てていた。
それを見兼ねたのか、観念した様に息を吐いて飛段がとりあえず話題を出そうと口を開く。
「…なぁ、あんた前から此処に居たか?俺初めて見んだけど」
「あ、えーっとぉ、……実はねえ、飛段…」
ねちっこく名を呼ばれて「ゔ」と眉を寄せる飛段。
そんな飛段に気付かずもったいぶらせるようにもじもじするルリに角都と飛段が顔を見合わせた。
言っちゃおうかなぁ、言っちゃって大丈夫なのかなぁ…。
そんな風に呟くルリに何も言わない。
言いたくないなら言わなきゃ良いんじゃね?とは思うが話しかけたくないと言う考えの方が上回っている状況である。
「…実はルリ…異世界から来たのぉ。」
「……イセカイ?」
「おい飛段、この女を救護班に連れて行け。」
「ちょっと待ってよぉ、私本当に異世界から来たんだよぉ!?」
ずいっと近付いてきたルリに「こんな女ごときに逃げた」と言う事実を作りたくないのか角都は目を逸らしながらもその場から動こうとはしない。
飛段は正直に「うぉおっ!」と言いながら勢いよく後ずさったが。
スゲェな角都…、と言った飛段の称賛のまなざしを受けながら早く離れてくれの一心で角都が口を開いた。
「…確かに此処の人間でないのなら、この屋敷に入れたのは異世界から来たと言う裏付けにもなり得る…」
「でしょお!?それに私知ってるんだからねぇ、飛段がシカマルと戦った事とかぁ…」
「お?…お前マジでイセカイから来たのかァ?」
「そうよぉ、面白い~?」
にこっと笑って小首を傾げる。
面白ェ!と馬鹿正直に答える飛段に「ふふ、飛段は完璧に落ちたわね…」とルリが内心でほくそ笑む。
その様子を角都は呆れた様に眺めて「早く出て行かないだろうか…」と考えに耽る。
そしてこの場に黒凪でも居れば容易にこの女を押し付ける事が出来るのに、と任務に出かけている少女に珍しく思いを馳せた。
「イセカイって別の世界とかそういう意味のあれだろ?だったら空間術とか使う…」
「あ、正守さん!?そうよねぇ、事情を話さなきゃあ!」
「…マサモリ…」
「正守さんって何処ぉ?こっちでも夜行の頭領してるんでしょお?」
あ、とーりょーか。と1人納得していると角都が「飛段、案内してやれ」と声を掛けてふいと顔を背ける。
あ゙、逃げやがった。と気づくも時既に遅く、飛段の片腕をぎゅうっとルリがホールドした。
ルリを正守さんの所に連れてってぇ?と首を傾げたルリに「オ、オウ…」とカタコトで返してガッチガチになりながら歩いて行く。
そうして正守の部屋に着いた飛段は部屋を指差すと腕を離したルリからずざざっと距離を取った。
「すみませぇーん、入っても良いですかぁ?」
「(聞いた事無い声だな、また黒凪が誰か連れて来たのか?)先客が居るんだけど…急ぎ?」
「急ぎでぇーす……、…え!?」
勝手に扉を開いたルリが正守の前に座っている人物に大きく目を見開く。
そこには正守の弟である良守と再不斬、白が座っていた。
何で再不斬と白が居るのぉ!?と混乱した様子のルリにそもそも入って来る前から疑問だらけだった正守が更に増えた疑問に小首を傾げる。
そして彼女と共に来ていた様子の飛段に目を向けるが、彼は既に逃亡済みだった。
「?」
「…兄貴、夜行の人?」
「いや…」
「一旦出るか?」
小首を傾げる正守に気を遣って腰を浮かせた再不斬。
しかしそんな再不斬を簡単に立たせるわけもなく、ルリが彼の背中をどんっと押した。
立ち上がろうとしていた再不斬はガクンッとバランスを崩すとどうにか踏ん張り驚いた様にルリを見る。
「あっ、ごめんなさぁい。でもわざわざ立ってもらうなんて悪くってぇ…」
「…では僕が…」
「白も良いのよぉ!座っててぇ!」
「…えっと、何処かでお会いしましたか…?」
首を傾げる白に「違うのぉ、貴方の名前を知ってるのはぁ…」と言いながら正守に目を向ける。
正守はこの屋敷に居るのだから誰かの知り合いで、誰かが許可を出したのだろうと考えている為に彼女を疑う素振りは見せなかった。
それだけこの屋敷の中は空間としても簡単に入り込める場所ではないのだ。
「私が異世界から来たからなのぉ!」
「…異世界、ですか…?」
「…兄貴、この人何言ってんの?」
「……え…、っと…?」
白、良守、正守、再不斬の4人で早速大混乱に陥る。
え、異世界から来たと言う事は誰の許可も無くこの屋敷に居るのか。
そして実際に誰の許可も無いのであればそれはつまり何か特殊な力が働いてこの屋敷に居ると言う事。
それはつまり、異世界から来たなんて突拍子な話も信じられる程にありえない事であって…。
…とりあえず、
「っ!?」
怪しい物には威嚇を、と言う様に正守を筆頭に再不斬や白の殺気がルリに突き刺さる。
思わず腰を抜かしたルリに目を見開いて良守がその前に出た。
ちょっと待てよ兄貴、マジで怯えてるって!とルリを庇った良守は振り返り震えるルリの顔を覗き込む。
「大丈夫か…?」
「う、うん…」
「…そうだよな。無暗に殺気を飛ばすのは良くないね。」
そう言って正守が姿勢を正し、ルリを見下した。
さて、君は一体何者なのかな?
先程よりも幾分か冷たい声が、響き渡る。
だ、大丈夫大丈夫っ!此処は気丈に振る舞って自分の実力を見せるのよ!そうすれば面白い女だって言ってくれる!それがパターンだものっ!
そう頭の中で一度シュミレーションをして息を吐く。
そして渾身の冷たい表情を作り正守に目を向けた。
「…私は貴方達を助ける為に来たのよ。」
「助ける?」
「そう。だって私は貴方達より強いんだもの。」
「……。」
全く話の筋が定まっていない所から恐らく彼女の話はその場で作った作り話だろう、と正守、再不斬、白が予想する。
それに無理やりきりっとした顔をしているが実際は口の端の方がぴくぴくと震えて表情が崩れかかっている。
あれは自分に酔っている人間の反応だ、と白が正守と再不斬に耳打ちをした。
「(うふふ、迷ってるわね…。きっと私の只ならない強さを察したんだわぁ!)」
「どうしますか、やっぱり怪しいですよ」
「うん、俺もそう思う。(黒凪に見せるまでも無いかな、これは…)」
「"引っ掛けて"みるか?」
ちらりとルリを見て言った再不斬に正守が小さく頷いた。
それを確認した再不斬はチャクラを使えないにも関わらず一瞬でルリの真後ろに移動してクナイを振り下す。
その様子を見ていた"神"はルリの天使の翼を引っ張り出した。
ばさっと自分の意志に関係なく開いた翼に「ひゃっ」とルリが振り返ると翼に動きを止めた再不斬が居る。
「(え、今私試されたのぉ…?)」
「……。再不斬、戻っていいよ。」
突然の純白の翼に正守も暫し沈黙してから再不斬を呼び戻した。
素直に戻った再不斬はクナイを仕舞いながら再びルリの翼に目を向ける。
この屋敷の中で人間離れした芸当を出来るのは間一族の人間だけ、そんな風に再不斬や白は教えられていた。
そしてその"間一族"と言う括りの中に居る人物には明確な血の繋がりなど無い場合も存在すると。
「(あの世界の人間か…?でもそうなるとなんで俺は覚えてないんだ?)」
「…再不斬ごめんねぇ、驚いちゃったぁ?」
「!」
「怪我、なぁい?」
心配そうに眉を下げて言えば再不斬が警戒した様子で「あぁ」とだけ返答を返した。
そんな再不斬の隣に座っている正守は「まさか俺も記憶を一部無くして…?」と様々な事に思考を凝らしている。
すると良守も同じ状態だったらしく「なあ、」と耐え切れなくなった様に口を開いた。
「此処で変化出来るって事はさ、お前俺等側の人間なんだろ?」
「俺等側ぁ…?」
「呪力を使うって事だよ。…でも俺、お前の事全然覚えてなくてさ。」
「あ、そりゃそうだよぉ。私はねぇ、良守くぅん。貴方達の世界とも別の世界から来たのぉ。」
え、更に別の世界…?と良守が問い返すと正守も驚いた様に顔を上げた。
その様子に確かな優越感を感じたルリは「ふふん」と笑みをこぼすと得意げに話し始める。
私の世界ではねぇ、貴方達は漫画の中のキャラクターなのぉ。だから私は未来を知ってるって事なのぉ!
相も変わらず話の筋がぐちゃぐちゃでよく分からない。しかし彼女が言う異世界が正守達にも知らない世界なのであれば。
「(…ちょっと得体が知れないな…)」
得体の知れない存在は組織の為に排除するに限る。
しかも彼女の面倒を好んで見る程暇がある訳でもない。
どうしたものかな、と考えている間にも彼女は「未来を知ってるって事はぁ、皆をその危険から守れるって事なんだよぉ」などと得意気に話していた。
「…なぁ、ルリだっけ。」
「なぁに?良守くぅん。」
「違う世界から来たっていうけど、なんで?」
「なんでぇ?…皆を護りたいからだよぉ?」
親に言ってきたのか?心配してるんじゃねーの?
そんな良守の言葉に「良いの良いのぉ!どうせ親なんて私の事なんかぁ、どうでも良いんだからぁ!」と言ってぷいっと顔を背けた。
その様子にげんなりとする正守達だったが、良守だけはその言葉を真剣に聞いている。
「なんでだ?何かされたのか?」
「聞いてくれるぅ?実はぁ、ルリの母親も父親も血が繋がってないのぉ。」
「……」
「そんな両親を信じられるわけがないじゃなぁい?優しくされたって嘘なんだろうなぁって思ったりしてぇ~…」
悲しげに言っているつもりだろうが、血が繋がっていない両親が暴力を振るってくるならまだしも優しくしてもらっているのだろう。
それをなぜ彼女はそこまで悲劇な事の様に話せるのだろうか。
遂には真剣に聞いていた良守もその話に首を傾げ始める始末。
ああどうしたものかと考えていると正守の部屋の襖が徐に開かれた。
「失礼します。任務を終了したので報告に…」
「イタチッ!?」
「…?」
驚いた様に叫んだルリに目を向けたイタチが無表情のまま小首を傾げる。
すると「何してんだイタチ、早く入れ。うん。」と言いながらデイダラが顔を覗かせルリが更に大きく目を見開いた。
そして更にそんなデイダラの後ろから現れたサソリにルリは溢れ出す喜びを抑えられない様に口を押える。
「(うそ、うそでしょっ、特に好きな3人が居るぅっ!)」
「ん? 誰だコイツ、うん」
「んな事はどうでも良いだろ。…おい頭領、さっさと報告書に記ししろ」
「うん、それはまた後で。それより黒凪居る?」
喜びの真っ只中に居たルリの耳に聞き慣れない名前が飛び込んでくる。
…え?と顔を上げ、必死に記憶をたどった。
黒凪、黒凪…。何度も考えるが該当するキャラクターが出てこない。
混乱するルリだったが、周りの会話は彼女など気にせずどんどん進んで行く。
「黒凪は玄関だ。鼻緒が切れたんだと。」
「鼻緒を修復してから来ると…。」
「あ、じゃあその内来るね。」
誰なの、黒凪って…。
そう呟いた途端に「正守ー。」とこれまた聞いた事のない少女の声がする。
え…?と顔を上げたルリは姿を見せた白髪の少女に目を見開いた。
見たことが無い…いや、漫画の中で似たようなキャラクターを見たことがある。
白髪の子供…。
「…ちゅ、宙心丸…?」
『え』
心底驚いた様に向けられた黒凪の目と凍りついた室内。
え?とルリが振り返ろうとした途端に結界が一瞬で全ての関節を抑えた。
動けない事に目を見開いたルリの瞳が再び黒凪に戻る。
『なんで宙心丸を知ってるの?…君何者?』
「異世界から来たってのは案外本当かもね…」
『異世界? 何それ。』
「彼女異世界から来たって言い張ってるんだよ。あんまり本気にしてなかったんだけど…。」
まさかその名前が飛び出すとは思ってなかった。
そう言って目を細めた正守にルリが暴れていた動きを止める。
ガタガタと震えだしたルリの目がぎっと黒凪に向いた。
「だ、誰なのよぉあんた!私あんたの事知らない!!」
『そりゃあ私も知らないし、お互いに知らないでしょ。…私は黒凪。君が言った宙心丸は私の弟。』
「…弟、って事は宙心丸の姉…?」
そんなキャラ居た?ううん、居なかった。
…何なの、なんなのコイツ!
大混乱。まさにそう言って過言でない程に混乱しているルリを横目に「どうしよう」と話している黒凪達。
その様子にルリが目を向ける。…彼女には少し妄想癖があるが決して馬鹿と言う訳ではない。
決して馬鹿ではないという部分は今回の"神"の遊びにとって重要視された部分でもあった。
「(ルリは悪知恵だけは一級品。一筋縄じゃいかないよ。)」
「(こんなキャラは絶対に居なかった。って事はこの女はこの世界のイレギュラーって事よねぇ。…この女を始末しないと皆に悪い事が起こるとか、そういうパターン?)」
ルリの頭の中に様々な考えがぐるぐると回る。
ほらあるじゃなぁい、夢小説の中でも主人公の前に現れるもう1人のイレギュラー…。そうよ、私のライバルなんだわっ!そしてライバルって言うものは最初は私の前を行っているんだから…!
…つまり既に正守さん達や暁の皆に気に入られてるこの女の化けの皮を剥がす。それが私の使命。…と言う思考に落ち着いた。
「あ、あのぅ黒凪さぁん」
『…何?』
「私ぃ、本気で皆を助けたくて来たのぉ。今この世界で何が起こってるかを教えてくれたらぁ、未来を教えて皆を助ける事が出来るわぁ」
『…いいよ、要らない。根拠のない情報を信じて何かあったら洒落にならないしね。』
何よぉ、折角ルリが言ってあげてるのにぃ!と思わず声に出して言うと黒凪の目がちらりと向いた。
そして暫し沈黙すると座ったまま結界で固定されているルリの前に黒凪がしゃがみ込む。
目の前に近付いた顔は見れば見る程漫画で見た宙心丸にそっくりだった。
『心配してくれてありがとう。でも危険な事が起きても私がどうにかする。…どうにか出来る自信がある。』
「……でもぉ…」
『うんうん、君が本気で助けようとしてくれた事は分かってるよ。…よければ元の世界?に戻れるまでうちにいな。部屋はいくらでも余ってるし』
何なのよぉ、この女なんでそんなに上から目線なのぉ!?
悔しさに拳を握りしめていると関節を固められていた結界が解かれ畳に両手を着く。
この酷い仕打ちは目に余るでしょおっ!?と正守に目を向け、そして良守に目を向けた。
しかし先程まで自分を援護してくれていた筈の良守は微妙な顔をして後頭部を掻いている。
「っ、…ね、ねえ白ぅ」
「!」
「あの黒凪さんってぇ、何者なのぉ?」
「…彼女はこの間一族の時期当主です。」
じ、時期当主っ!?その言葉を聞いて愕然とする。…なるほどねえ、随分と厳しい壁じゃないのぉ。
目を細めたルリはとりあえず黒凪の確固たる闇の部分を見つけなければならないと心に誓った。
時期当主ともなれば下手な嘘で陥れられる様な女でもないだろう、と理解したのだ。
この世界に来て此処でやっと落ち着いたらしく、その様子を見ていた"神"はルリを選んだ自分にうんうんと頷いている。
『じゃあ良守君、空いてる部屋に連れて行ってあげて。私今から七郎君のとこ行って来るから』
「え、七郎っ!?」
『…あ、七郎君も知ってるの?』
「はい!私、七郎君と会いたいですぅ!」
とりあえずこの女には媚を売っておくべきだわ、とルリが可愛らしく(自称)彼女に懇願する。
んー…、と悩む素振りを見せた黒凪は「ゴメンね」と笑うと「また今度」と言って部屋を出て行った。
………え、と目を見開いてどたどたと黒凪の後を追う。
そうして彼女の手首を掴めば自分よりも小さな黒凪が此方に目を向けた。
こうしてみれば彼女は随分と幼く見える。
「ねえ、お願い…」
『……。分かったよ、一緒においで。』
「あ、ありがとぉ!」
『…うん』
すたすたと歩いて行く黒凪にわくわくしながらついて行く。
そして屋敷から外に出て木ノ葉の町の中を歩いて行った。
その最中には夢にまで見た木ノ葉の忍達が当たり前の様に歩いている。…そう、大好きなカカシも。
「(え、うそっ、あそこに見えるのカカシ先生っ!?)」
『……。曲がるよ、ルリちゃん』
「えっ、あの…」
『何?』
前方を指差すルリに其方を見た黒凪は「そっちの道はまた後でね」と声を掛けて路地に入っていく。
それを見たルリはどうしてもカカシに会いたいが為に黒凪の手首を再び掴んで引きずり出した。
小さな黒凪は随分と簡単にルリに引き摺られ、表の道に逆戻りする。
すると目立つ桃色の髪の少女が連れる白髪の少女、黒凪に気がついたのだろう。
知り合いを見つけて無視するわけにもいかず「やあ」とカカシが片手を上げた。
「あ、こ、こんにちはっ…」
『…オハヨーゴザイマス、カカシサン。』
「なんでそんなカタコトなのさ…」
「あ、あのぉ、お知り合いなんですかぁ?」
ルリがちらちらと黒凪を見てカカシに問うと「ん?うん。」とカカシが頷く。
するとルリは黒凪の腕にぎゅっと腕を絡め「初めましてぇ、私間一族のルリでぇす♡」とカカシを上目使いで見上げて言った。
その様子に少し目を見開いたカカシはちらりと黒凪を見る。
「………へえ、よろしくネ。」
「はぁい!よろしくお願いしまぁす!」
「…あれ?カカシ先生と…黒凪か?珍しいな」
『ワー、オハヨーシカマルー』
「…なんでカタコトなんだよお前…」
キャー!シカマルだぁ!と目を輝かせて「初めましてぇ、間一族のルリでぇす!」とシカマルにもカカシ同様の自己紹介をする。
その様子を見てシカマルも少し驚いた様にルリを見ると黒凪に目を向けた。
カカシ、シカマルと連続で同じ様な反応をした2人にルリが首を傾げる。
「…新入りか?黒凪」
『ん?…うん、まあね』
「ふーん。…よろしく。」
「よろしくお願いしまぁす!」
ばっと頭を下げたルリに「もう良いでしょ、行こう。」と黒凪がルリの手を引いて歩いて行く。
その様子を見たシカマルとカカシはどちらからともなく顔を見合わせた。