世界を君は救えるか【 × NARUTO 】
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師の予言と復讐編
「ご苦労だったな。今回の任務はこの報告で問題無いだろう。」
「よっしゃあ!んじゃあ俺ってば一楽のラーメンでも…」
『五代目、ちょっとお話良いですか。』
意気揚々と出て行こうとしたナルトと入れ違いになる様な形で火影室に入って来た黒凪に綱手の額に青筋が浮かぶ。
まだ"入って良し"とは言ってないぞ。間。低い声でそう言った綱手に「あはは、スミマセン」と笑ったままで黒凪が彼女に近付いて行く。
任務の報告で火影室に居たナルト、サクラ、カカシは現れた黒凪に思わず足を止めた。
『…あ、第七班さんも聞きます?面白い報告ですよ。』
「面白い報告…?」
『ええ。ああでもその前に綱手様、』
「なんだ」
自来也様はいらっしゃいますか?あの人にも一緒に伝えてしまえれば楽なのですが。
そう言って笑った黒凪に綱手がちらりと火影室から里を見下した。
…丁度此方に来る予定だ。そろそろ来るだろう。
そう綱手が言った途端にぼふんっと煙が起こり中から自来也が姿を見せた。
「綱手、例の件だがの…」
『もしかすると同じ件かもしれませんね。』
「ん?間の…おおナルトにサクラ!お前達も呼ぼうと思うとったんだ、偶然だのう!」
実はの、と話し始めた自来也と同じタイミングで口を開いた。
サスケが大蛇丸を殺した。…2人の言葉が重なり、ナルト、サクラ、カカシが目を見張る。
「ん?なんだ、お主も同じ報告だったか。」
『そうですね。あとはサスケが新しく仲間を集め始めている、と言う報告です。』
「はぁ!?大蛇丸が居なくなったらサスケは里に戻る筈だろ!?」
『え、忘れたのナルト…。サスケはイタチを殺す為に大蛇丸の所に修行に行ったのよ、本来の目的がまだ果たされてない。』
恐らく次の目的はうちはイタチと相見える為に暁に近付く事だのう、と微かに眉を寄せて言う自来也。
目を伏せるサクラ、腕を組むカカシ、そして足元を見たまま小さく震えるナルト。
ナルトの様子をじっと見ていた黒凪は勢いよく顔を上げた彼の様子を見守る。
「じゃあ俺達もすぐに動くってばよ!まだ暁狩りの任務は継続中だろ、綱手のばーちゃん!」
「あぁ…」
「だったら俺達はサスケが最も狙う可能性の高い暁のメンバー、うちはイタチを狙えば良い!」
「…そうだな…、考え方の筋は通っているが、相手はうちはイタチだ…。厳しいぞ」
綱手の言葉に「暁を1人でも拘束出来れば、あとはイタチについての情報を聞き出すだけだと思うんですけど…。」とサクラが控えめに言った。
その言葉にも「ふむ…」と微妙な反応を返す綱手。
彼女はこれまでの全小隊に暁と遭遇すればあわよくば身柄確保を、と何度か呼びかけていた。
しかしそれでもこれまで1人も確保出来ていないし、その上殺す事にも随分と手間がかかっている。
そんな綱手の意を汲む様にカカシが口を開いた。
「暁はそう簡単に口を割る様な連中でもないだろうし、今までの能力を見ていても危な過ぎて拘束なんて考えられなかった。」
『(…暁から自分の意志で抜けた所為かな、あの4人は結構他のメンバーについて教えてくれるけど…)』
「…ま、間一族はどうなのか知らないけどね。」
『え?…いやいや、うちだってカカシさんと同意見ですよ。皆うちのメンバーは強いだなんだと勝手に噂してますけどちょっと特殊な能力なだけなんですから。』
じゃあどうするんだってばよ!と苛立った様子のナルトに「根気よく探すしかないねえ。」と黒凪が笑って首を傾げる。
その様子を見たナルトは「くそ、」と悪態を着くと「だが…」と声を発した自来也に目を向けた。
「いざイタチを探し当てた所でどうするつもりだ?拘束出来んと意味がないだろう。」
「それについてですが、俺に少し考えがあります。少し時間を頂けますか。」
『へえ、勝算あるんですね。』
「まあどうにかね。ちょっと君とも話があるから来てよ。」
え、私ですか?と目を見開いた黒凪に「そうそう。」と目を細めてカカシが黒凪を引き摺って行く。
そうして火影室を出て行った2人にナルトとサクラが顔を見合わせた。
『――で、話ってなんですか。』
「うん。とりあえずまずは俺が考えてる編成なんだけどね。」
『……あー成程…。今の状況ではベストな感じですけど…。…此処にうちの人間を入れたいって事ですか?』
「うん。誰か空いてる人いる?」
うーん…、と迷う素振りを見せるが実際はカカシに誰かを貸すつもりは毛頭ない。
此方もイタチを間一族に加える為に色々と計画が動き出している所だし、彼等には悪いがサスケも連れ帰るつもりでいる。
困った様な笑みを浮かべて黒凪がカカシを見上げた。
『すみません、貸せる様な人は…。実力が高いのは全員出払ってますし、その他で言うならいっぱしの暗部程度の実力しかありません。』
「あらら、それは残念。」
『もしも任務先で何かあれば近場の誰かは向かわせます。それでも良いですか?』
「うん。ありがとね。」
いえいえ、と笑みを張りつけて立ち上がり屋敷へ向かって歩き出す。
カカシがわざわざ呼び出すのだから何か核心を突いた質問でも飛んでくるかと思ったが、それも幸いな事に杞憂だったらしい。
しかしこの短い間の2人の会話はあまりにも内容が無く、殺伐としたものだった。
『――はい。と言う事で今回はこの編成で行ってきます。』
「うん、分かった。気を付けて。」
そう言って微笑んだ正守の視線の先に立つのは閃、染木、白、黒凪の4人。
4人も正守の言葉に微笑み頷くと一瞬で姿を消した。
そうしてイタチ探索の為に閃が染木を、白が黒凪を抱えて走り出す。
少し進んだ辺りで黒凪の耳元にある無線が着信を知らせた。
『はーい。何か情報が入った?』
《どうやらうちはサスケが暁に居た頃の俺の部下にイタチについての情報を聞き出しにきたらしい。》
『…あ、角都か。オレオレ詐欺じゃないんだからちゃんと名乗りなさいよ。』
《…。切るぞ。》
ブツッと切られた無線に「頑固ジジイめ…」と呟いて無線の電源を落とす。
そんな黒凪に「角都はなんだって?」と聞いたのは少し前を走っている閃。
振り返った彼の目は力を使っている為に変化していた。
『角都の部下の所にサスケが来たらしい。角都がわざわざ連絡を入れて来るって事は、その部下は暁の動向に詳しい人だったんだと思う。』
「…って事はサスケは情報を手に入れてイタチさんの後を追ってる感じか。」
『多分ね。サスケの事だしそろそろイタチの側に居たりして。』
「……。へいへい、もう少し範囲を広げて探しますよ。」
黒凪の意を汲んで閃が大きく目を見開いて"影"の範囲を広げる。
その様子を見ながら「確認しておくけど、」と4人に聞こえる様な音量で黒凪が口を開いた。
『サスケが集めた仲間は3人。その3人共が大蛇丸の実験材料だった忍で、…まず1人目が霧隠れの鬼灯兄弟の弟、水月。』
「!霧隠れ…」
『再不斬の再来だとかって言われてた神童だってさ。再来だから再不斬よりは弱いかもだけど厄介だろうね。』
「……。」
再不斬さんの再来…。
そう呟いた白の頭をぽんと撫でて「2人目は天秤の重吾。大蛇丸が与えて回ってた呪印のオリジナルだってさ。」と言えば閃が「呪印か…。サスケも大蛇丸に付けられてたな…」と懐かしむ様に言った。
そして最後が大蛇丸の南アジト監獄の管理人だった香燐。
『この香燐はよく分かってないんだけど、まあ木ノ葉出身のサスケなら感知タイプか医療忍者を仲間に引き入れるだろうしそう言ったタイプの忍だと思う。』
「分かりました。…でもそのサスケ君の仲間と鉢合わせても極力戦わず、あくまで標的はサスケ君とそのお兄さんであるイタチ…ですよね?」
『うん。なんやかんやでサスケとイタチの事しか考えてない編成になってるし。…それより文弥君、言ってたまじない出来そう?』
「んー…、そうだね…。色々考えてはいるんだけど、イタチさんの状態次第かなぁ。」
染木の言葉に頷いた黒凪は「よろしくね」と笑って前方に目を向ける。
すると暫し黙っていた閃がぴくりと顔を上げて「見つけた。何処かのアジトみたいな場所にサスケもイタチも居る。」と呟く様に言った。
閃の言葉に3人が微かに目を見開き、全員の目が彼に集中する。
「今は会話してるみたいだ。」
『内容は?』
「…サスケがイタチさんに恨み言を言ってる感じだな、今の所は…。あ、イタチさんをサスケが刺した。」
「…随分と簡単に情報が洩れるんですね。サスケ君や彼のお兄さんはそれほど甘くないと思うのですが…」
白の言葉に「多分態と筒抜けさせてくれてると思う。」と閃が目を細める。
サスケに気付かれるつもりはねーけど、イタチさんには多分気付かれてると思うし。
少し悔しそうに言う閃に白がごくりと生唾を飲み込んだ。
「(凄い、間一族の人にそんな風に言われる程の忍なんだなぁ、うちはイタチと言う人は…)」
『…あんまり気張らなくて良いよ白。あんたにはサスケの相手しかさせないから。』
「…正直僕は成長したサスケ君に勝てるのかどうかさえも…。」
『大丈夫大丈夫。絶対あんたは死なせない。』
笑って言った黒凪をちらりと見上げて白が木の上を跳び越えていく。
すると閃が突然足を止め、片耳を片手で覆った。
そして暫し黙るとくるりと方向を変えて白に目を向ける。
「イタチさんがサスケに場所を指定した。…うちはのアジトだ。」
『うちはのアジトは1つだけだったし場所は覚えてる、先回りしよう。』
「あぁ。…あとイタチさんと暁でツーマンセルを組んでる鬼鮫って奴も近くにいる。でも多分サスケの仲間の足止めに回ると思う。」
『分かった。万が一鬼鮫が来たら私が応戦して突破する。』
相変わらず凄い自信だよね黒凪って…。
そう呆れた様に言った染木に「何よ、私が負けると思うの?」と目を細めた途端に「ドーモ!」と能天気な声が掛けられた。
そして目の前に現れた暁の装束を着た仮面の男を見上げると閃が「あー…」と目元を覆う。
「…ごめん。他の事に集中してて目の前が見えてなかった…」
『いやいや、多分これは気付いてても回避不可能だったと思うわ。』
「あの装束は暁…?」
「そうです暁です!いやー、間一族の皆さんとお会い出来るなんて嬉しいなぁ!」
オーバーなリアクションをしてくる男に白が怪訝に眉を寄せていると「んん!?おやおやぁ!?」と男が身を乗り出して来る。
君は鬼人・再不斬と共に死んだ筈の雪一族の白さんじゃないですかぁ!?あれれ、もう死んだって聞いたけどなぁ…。
そう言いながら腕を組む男に黒凪が目を細める。
『…ねえ、君の名前はなんて言うの?』
「え、僕ですか!?僕はトビって言います!暁にはつい最近入ったばっかりで…」
『("トビ"か…確かに聞いた事無いな。って事は新入りってのは本当なのね。)』
「それよりどうして白さんが生きてるんですかぁ!?…あ、まさかあの鬼人・再不斬も生きてるのかな!?…まさかまさか、今まで死んで行った暁の先輩方も生きてたりして!」
核心をついて来るトビの言動に皆表情を変える事はしない。
しかし今の言動で只の実力が高いだけの忍ではない事は分かった。
目を細めた黒凪がちらりと閃を見る。
閃は暫しトビを見つめると徐に口を開いた。
「あれは分身だ。本体は他に居る。」
「ええっ!?僕は本物ですよぉ!」
『分かった、――ありがと。』
黒凪が時空を歪めて一瞬でトビの目の前に現れる。
トビの仮面に1つだけ開いた穴の中から微かに見開かれた瞳が見えた。
途端に黒凪を中心に禍々しい気が膨れ上がり絶界が発動される。
その絶界に触れる寸前でトビが木の幹に吸い込まれる様に姿を消した。
それを見た黒凪は絶界で木を塵にすると揃えた人差し指と中指を軽く揺らして、
『滅。』
…と呟いた。
そして絶界を解いて落下して行く黒凪を受け止めた白が徐に周りを見渡す。
さっきの男は、と問いかけて来た彼ににっこりと笑った黒凪は「始末した」とだけ言うと閃に目を向けた。
閃は既に走り出しており、白もその背中を見ると慌てた様に黒凪を抱えたままで走り出す。
「さっきの技は避けられていた様に見えましたが…」
『トビが好き勝手しゃべってる間にここら一帯を結界で囲んでおいたの。姿を消した途端に結界を押し潰してトビだけを滅した。』
「結界の中に居たんですか?」
『うん。結界の中は私の領域だから逃げられないよ。…ほら、急いでイタチの所に行こう』
笑顔で言った黒凪に白の頬を汗が伝う。
改めてレベルの違う術者だと感じた。
…次元の違う人だと。
そんな中でナルト達の足止めに向かっていた本体のトビがぴくりと顔を上げて黒凪達の居る方向に目を向ける。
「(…流石は間一族と言った所か。まともにやり合う気は無かった為に分身だけにしておいたが、数分も保たなかったな)」
「何なんだってばよお前はぁああ!!」
「おおっとぉ!そんなに睨まないで下さいよ怖いなぁ~」
向かってくるナルト達を小馬鹿にする様に往なしていく本体のトビ。
少し離れた位置に居る閃はそんな状況下にあるナルト達に気付いていた。
本体はあっちか、とちらりと目を向けた閃は何も言う事はなく再び前方に目を向ける。
サスケと相見えるのは実に中忍試験以来だ。…あの頃からサスケに勝てる気など毛頭なかった。
あんなに小さな頃から彼は才能に満ち溢れていたし、自分とはまるっきりタイプも違った。
「(…サスケとはどうも考えが合わなくて苦手だったよな、あの頃は…)」
そう頭の中でだけ呟いて、そして強く地面を蹴り上げる。
そんな閃を眺めていた黒凪は小さく笑みを見せた。
「――居た。イタチさんとサスケが戦ってる。」
『それ以外に周りには誰も居ない?』
「…暁のゼツが居る。どうする?」
『……。そろそろサソリ達の事が暁にばれる頃だろうしね。やり方は選ばずやるよ。』
黒凪が徐に構えて目を細める。
そしてうちはのアジトなど優に超える程の規模の結界を作り上げた。
トビと交戦中のナルト達のすぐ目の前までを結界で囲み、中に居る人間の数を把握して行く。
己のすぐ側に作られた巨大な結界に目を向けたトビは微かに目を細め、ナルト達は結界を見上げて目を見張った。
サスケとの戦いの中でアジトの外に出ていたイタチも2人の戦いを見ていたゼツも結界に気付き空を見上げる。
サスケだけは長らく黒凪と会わず、更に彼女に興味が無い為に周りに見える半透明の箱が何なのか分からなかった。
「(…これって間一族の術だよね?)」
「(アァ…観戦ハ此処マデカ…)」
「(隠れててもばれるんだっけ?この箱の中では。)」
「(ソウダ。全クフザケタ術ダナ…)」
ゼツの居場所を特定した黒凪が目を細めたと同時に彼等がふっと場所を移動する。
そして範囲の大きな結界の荒い部分を探し当てて器用に抜け出したゼツに徐に肩の力を抜いた。
『(まあ牽制の意味で張った結界だし良いか…)』
「…ゼツは?」
『結界の中から出た。これで邪魔者は居ない……、!』
黒凪達が一斉に顔を上げ、目を見張る。
彼女が作った結界は範囲が大きく雲の上にまで達していた。
そんな結界の中に在る雲が巨大な雷雲を形成し、大きな雷を発生させている。
そしてその真下にはサスケとイタチが向かい合って立っていた。
「…なんだあれ、雷…?」
「あんな大規模な術を…!?」
「いや待て、あの雷にチャクラは通ってない…でもサスケのチャクラに吸い寄せられてる感じだ…。」
あんな術は見た事が無い。多分サスケのオリジナルだろうけど…。
閃が唖然と雷を見上げたままでそう呟くと同時に瞬く間にイタチに雷が降り注いだ。
そのあまりの威力と眩しさに目を細め、物凄い爆発音にしゃがみ込む。
そうして顔を上げると黒い煙が大量に生み出され、サスケとイタチが立っていた場所は見事に崩れ去っていた。
『(おっと、結界で閉じてると窒息する)』
黒凪が結界を解くとアジトの周りに蔓延っていた煙が風の流れに沿って動いて行く。
閃は距離を離したままで目を細めてサスケとイタチの状況を確認した。
そして微かに眉を寄せると黒凪に目を向ける。
「イタチさんは生きてる。でももう虫の息だ。」
『…。文弥君、』
「分かってる。…でもそれだけ消耗してるなら君を犠牲にする事になるかもしれないよ、黒凪。」
『…イタチを助ける為にする事はどんな事でも犠牲なんかじゃないよ。』
染木の言葉に笑ってそう返した黒凪は結界を解除したことによって流れた雲の切れ間から降り注ぐ日光に目を細める。
そしてその下に立つイタチが発動した須佐能乎に目を向け、徐に口を開いた閃の言葉に耳を傾けた。
「イタチさんの言葉からしてさっきの雷撃がサスケの渾身の一撃だったらしい。それを受けてイタチさんもかなりヤバかったけど、あの須佐能乎って術でどうにかなったみたいだ」
『サスケはさっきのでもう策は尽きたの?』
「…うん。そうっぽい。今はどうにか対抗しようと呪印でなんか羽とか出してるけど…、あ、なんか苦しみだした。」
どうしたんだ…?と呟いて目を細める閃を見て再びイタチとサスケに目を向ける。
イタチは恐らく本気でサスケを殺すつもりはないだろうし、とにかく殺す意思がある様に見せる為にあの須佐能乎を出したのだろう。
それか私達が側に居る事はさっきの結界で気付いただろうし、サスケを力尽くで倒してから私に引き渡すつもり…?
黒凪がぐるぐるとそんな事を考えているとサスケが立っている辺りから8匹の大蛇が現れた。
『…あれって大蛇丸の術じゃない?』
「あぁ、苦しんでたのはあれだ。多分無理にチャクラを使いすぎた所為で取り込んでた大蛇丸を抑えきれなくなったんだろ。」
『あ、取り込んでたんだ…。物好きな…』
「更なる力を望んで取り込んだんだろうけど、まあこれは…イタチさんに対抗する意味では結果オーライなのか?」
「(…サスケ君…)」
黒凪と閃が困った様に眺める先で大蛇丸の大蛇とイタチの須佐能乎が近付いて行く。
白はその様子を眉を寄せて眺めながらサスケを只管に心配していた。
大蛇と須佐能乎がぶつかり合い、イタチの須佐能乎によって大蛇の首が7本落とされる。
そして最後に残った1本の喉から大蛇丸が姿を見せた。
黒凪達は大蛇と違って小さな大蛇丸を認識する事は出来ないが、閃だけはその様子を認識し「うえ、」と眉を寄せる。
『なに、何か出て来た?』
「蛇の唾液塗れになった大蛇丸が出て来た…。…そんでその大蛇丸の喉から剣が…唾液塗れの」
『えー…』
「話でしか聞いた事無いけど大蛇丸って本当に蛇みたいだよね…。」
閃のある意味分かり易い状況説明に黒凪達が一様に眉を寄せる。
そんな彼等の視線の先にある須佐能乎が刀の様なものを残った蛇の口の中へ突き刺した。
恐らくその先に大蛇丸が居るのだろうな…、と考えた黒凪達がまた一様に嫌な事を思い出した様な顔をする。
そして同じような顔をして状況を見ている閃が徐に目を見張り「おお…」と感嘆の声を漏らした。
『なんだあれ、霊剣みたいだけど…』
「とつかのつるぎ、って大蛇丸が言ってる。珍しく大蛇丸が焦ってるし凄い術っぽいけど…」
「とつかのつるぎ…ですか?」
『あぁ十拳剣?それ確か剣そのものが封印術の刀だよね。…そっか、霊剣か…そりゃあ大蛇丸が血眼になって探しても見つからないわけよね。』
「そんなものがあるんですね…」
白が感心した様にそう呟く間にも須佐能乎の持つ十拳剣に吸い込まれて行く大蛇達。
大蛇達が完全に姿を消したのを見計らい、徐に黒凪達がサスケとイタチに近付いて行く。
徐々に近付いて行く視界の中でふらふらになったイタチが徐にサスケに近付いて行った。
しかし途中で足を止めると胸元を抑えて苦しみ吐血した様な様子が見える。
「まずいな、イタチさんもう限界だ」
「…あのサスケって子は閃と白に任せて良いんだよね?僕イタチさんに集中するよ?」
「大丈夫です。サスケ君は任せてください。」
「俺がミスしたら頼むぜ、白」
閃の言葉に「はい。」と真剣な顔で白が頷いた。
その様子を見た閃は「気楽にな」と肩を叩いて白の様子に眉を下げて笑う。
そんな2人の様子を見ていた黒凪達の視線の端に倒れ込んだイタチを護っていた須佐能乎が徐々に弱っていく様子が微かに見えた。
その様子に皆が視線を2人に向けるとサスケが起爆札付きのクナイをイタチに向かって投げる。
しかし須佐能乎に簡単に無効化され、サスケの表情に分かり易く恐怖が見えた。
『(…サスケ程強くなっても怖いものがあるんだから、困ったものだよね)』
「おい黒凪、イタチさんの須佐能乎があると近付けないんじゃ…」
『多分そろそろ解けるよ。…その時に生きてても死んでても出来る事をする』
「…分かった。」
近付いてみればイタチの容体がどれほど悪いものか見て取れる。
あれを助ける術が本当にあるのかと染木に聞きたいくらいだ。
そんな中でもあの須佐能乎を解こうとしない様はまるで"俺を助けるな"とイタチが言っている様にも見える。
『(…あんたは絶対に助ける。今更やろうと思って出来ないなんてまっぴらだ)』
近付いてくるイタチにサスケがむやみやたらに武器を投げつける。
もうサスケに術を使うチャクラも、写輪眼を発動させるチャクラもない。
そんな中で唯一相手にダメージを与えられる可能性のある武器を投げつけているが、全く歯が立たない様子に更にサスケが顔を歪ませ後ずさった。
『(あの須佐能乎って何なんだろ、多分サスケの攻撃を弾いてる盾も霊器の八咫鏡だし…。でもとりあえず須佐能乎を発動しないとこの世に現れないものなんだろうな、あの霊器は。)』
黒凪がそんな事を考えている間にもイタチがサスケに近付いて行き、サスケは真後ろの瓦礫に行き場を無くした。
早く術を解いて。そんな気持ちで眺める中でイタチが片手を伸ばし、微かな声で言った。
"許せサスケ。これで最後だ。"その言葉に黒凪が大きく目を見開き、白の背中から降りて走り出す。
『文弥君!ついて来て!』
「あぁ!」
「!」
黒凪と染木の声にサスケが肩を揺らして振り返る。
イタチの目もゆっくりと駆け寄ってくる2人に向いた。
そして須佐能乎に触れる事など全く躊躇していない様に手を伸ばして来る黒凪に眉を下げてイタチが術を解除する。
その様子に黒凪が微かに眉を下げた。
『(私が死なない事なんて分かってるのに、態々術を解いて)』
「―――…」
『イタチ…!!』
…なんて優しい人なんだろうか。
とん、とサスケの額に指先で触れてから倒れたイタチを黒凪が間一髪で受け止める。
そしてその側に染木が駆け寄りすぐさままじないに必要な道具を取り出した。
黒凪が降り注ぐ雨を結界で遮り虫の息のイタチの顔を覗き込む。
暫しその様子をぼーっと見ていたサスケは徐に口を開いた。
「おい…何をしてる…」
『イタチを助けてる』
「…余計な事はするな…」
「余計な事じゃねーよ。」
サスケの隣に一瞬で降り立った閃にサスケが驚いた様に目を向ける。
しかしその閃は囮で、サスケが閃に目を向けた途端に反対方向から白が彼のうなじを叩いた。
倒れ込むサスケを受け止めると白と閃がほぼ同時に目を微かに見開く。
「(…何かしら抵抗してくると思って覚悟して来たのに、)」
「(余程消耗しているんですね…)」
「…まずい、イタチさんの身体が妙に冷たい…!」
『…。分かった、理を破壊する』
黒凪がそう言ったと同時に小さな真界が形成され全員を包み込む。
彼女の頬を汗が伝い、苦しげな目がちらりとサスケに向けられる。
真界の中に居るサスケの傷が徐々に塞がり始め、イタチの体温も戻ってきた。
「もう少し…っ」
「――…失礼。」
『!』
突然聞こえた声にはっと全員が顔を上げる。
そんな中でもゆっくりと顔を上げた黒凪は真界のすぐ側に立つトビに目を向けた。
トビの仮面の穴から写輪眼が覗き、その目が微かに細められる。
「うちはサスケを頂いて行く」
『っ、』
写輪眼の瞳術による空間の歪みが真界の中に侵入して行く。
真界を作るだけでもかなりの力を消費し、そんな中でイタチの命を必死に繋ぎ止めサスケの治療も行っている。
そんな状況下で写輪眼の力を押し返す程の気力は無く、サスケを歪みが侵食していった。
『…閃、白。サスケから手を離しな』
「良い判断だ。そのままサスケを抑えていれば手首から先を無くすぞ。」
2人の言葉に閃と白がトビを睨みながらも手を離す。
するとサスケが神威によって別世界へ消え去り、トビもまた姿を消した。
それを見送ると閃と白は顔色の悪い黒凪に目を向ける。
「大丈夫かよ、黒凪…」
『大丈夫。今日はイタチを助けられればそれで良いから、』
「……よし、出来た。…黒凪、まだ力は残ってる?」
『残ってる。』
あと何回死ねる?そう言葉を変えて問い掛けてきた染木に黒凪の目が向けられる。
黒凪は小さく笑うと己の髪を持ち上げ、少しだけ長くなった毛先を見せた。
7、8回は大丈夫。その言葉に頷くと染木が黒凪の左手にまじないを彫っていく。
「…よし。じゃあ真界を解いて。」
『……』
黒凪が目を閉じ、真界が熔ける様に消えて行く。
途端にイタチの体温が急速に落ちて彼の瞳から色が無くなった。
その様子を見た染木は黒凪の左手を持ち上げてイタチの右手に重ね合わせる。
途端に黒凪がぐっと胸元を右手で抑えた。
『い、~っ』
「我慢して。…今君が持つ生命力をイタチさんに流し込んでる。」
「そうか、黒凪の魂蔵にある力を生命力に変換してイタチさんに流し込む…」
そうする事でイタチは黒凪の様に生き返ると言う算段だろう。
そして染木の事だろうから黒凪の意志に関係なく生命力が引き出されている所を見て一度道を繋げてしまえば自動的に生命力を失えば送られる筈。
…つまりイタチは黒凪が生き続ける限り、
イタチの目に色が宿り、ゆっくりと瞬きをした。
――…何度でも生き返り、死ぬ事はない――。
「…黒凪さん」
『おはようイタチ。気分はどう?痛い所とかない?』
「…特には」
『そう、良かった。』
笑ってそう言った黒凪をじっと見つめながら身体を起こす。
そして地面にへたり込む様にして座っている黒凪の容姿の変化に眉を下げた。
イタチは里を抜けてから何度か黒凪と会い、彼女の力についてある程度の理解はしている。
力を使えば使う程身体が成長して行く事も知っているし、魂蔵についても彼は知っていた。
「俺の事など見捨ててしまえば良かったのに」
『馬鹿言わないでよ。助けるって言ったでしょ。』
「……」
『約束は守るよ。私は。』
そう言ってくたびれた笑顔を見せた黒凪にイタチも眉を下げて微笑んだ。
全て終わった。彼の笑顔を見て思う。
彼は此処で死んだ事となり、木ノ葉の任務に縛られる事も、非情なふりをして生きる必要も無い。
おいで、イタチ。その言葉と共に差し出された目の前の少女の手を、イタチが徐に取った。
「――ふむ。目に異常は全く無いな。話の通りなら黒凪の生命力を使って全て万全の状態に"再生"したのだろう。」
「魂蔵を持つ人間が死なずに生き続ける理由は魂蔵にある力が宿主を再生させる為だ。その役目は死しても尚継続される。…筈だったんだがな。」
菊水と白菊がイタチから目を離して彼の背後に立っている黒凪を見る。
そう言えばお前はどういうわけか一度死亡してこの世に生まれているな。…それは何故だ?
その問いに「今更ですね」と笑い交じりに言った黒凪はちらりと此方を見たイタチに微笑んだ。
『大丈夫、私と同じで死ねない身体になったわけだけど終わりが無いわけじゃない。私は一度自分で"終わらせてる"から』
「終わらせた?」
『うん。…私が知る限りの他の魂蔵は私が力を全て抜き取って殺した。私自身の場合は力を一気に全国の神佑地に向けて出しきってから身体を消滅させた。…まあ私を消滅させてくれたのは私以外の人なんだけど。』
笑って言った黒凪に「ふうん。大変だったな。」と真顔で言った菊水に「そんな言い方は無いですよ~」と黒凪が困った様に笑う。
その様子を見ていたイタチは薬で無理矢理延命していた己の身体が万全の状態になっている事がまだ不思議なのか、何度か手を握ったり開いたりを繰り返していた。
そんなイタチを見ていた白菊は「良かったな」と彼に声を掛けて彼の為にと用意された着物を差し出す。
「これでお前はもう死する事は無いわけだ。余計な事など考えずに戦えるぞ。」
「……。いえ、俺はこれから先に一度も殺されるつもりはありません。」
『!』
「…他人の命を頂いている身ですから。」
そう微笑んで言うとイタチが着物に手を伸ばし背中に大きく描かれた間一族の紋章に目を細める。
そして徐に腕を通すと同時に救護室の扉が開かれた。
「あ、此処に居たぞ。うん。」
「黒凪、新しい任務が…」
「…デイダラ? それに…」
「あ?…なんだイタチ。やっぱりテメェも此処に来たのか。」
木ノ葉の出身だからどうせ来るだろうとは思ってたが。と無表情に言ったサソリにイタチが眉を寄せる。
お前は、と歯切れの悪いイタチにチッと舌を打って「サソリだ」と声を掛ければイタチが驚いた様に微かに目を見張った。
そして黒凪に目を向けると彼女は「驚いた?」と悪戯を成功させた様な顔をして笑う。
デイダラは「テメェもボロボロにされた口か?」と救護室の椅子に座っているイタチに笑いながら言った。
「そうか、殺したと見せかけて仲間に引き入れていたのか…」
『まあそんな所だね。って言ってもあのトビって奴は気付いてたみたいだけど?』
「!…そうですか…。」
そう言って目を伏せるとはっと思い出した様に勢いよく顔を上げるイタチ。
彼の様子に何を言わんとしているか察したのだろう、黒凪が困った様に眉を下げる。
サスケはどうなった。俺と一緒じゃないのか。
目を逸らした黒凪にイタチが微かに眉を寄せる。
『…そのトビって奴が連れて行った。』
「……なるほど」
『ごめんね、普段はみすみす奪われたりしないんだけど…大がかりな術を使ってて余裕が無くて』
「…いや、あの男ならサスケを殺す事はしないでしょう。ただ俺のことをサスケに話されてしまうと厄介ですね」
え、なんでそんなの知ってんのよあの男…。
そんな会話をする黒凪とイタチにデイダラとサソリが顔を見合わせる。
するとイタチが徐に立ち上がり「場所を変えませんか」と呟く様に言って黒凪に目を向けた。
『わかった、私についておいで』
「はい」
そういった黒凪はイタチとともに窓から外にでる。
おい黒凪、任務…。と窓から身を乗り出したデイダラを振り返ると「ちょっと待ってて」と声を掛けて角を曲がった。
その様子に少しむすっとしたデイダラはサソリの元へ戻りすごすごと救護室から出て行く。
一方の黒凪達はとある部屋に辿り着くと呪力を使って異界への扉を開き2人で中に入って行った。
「――此処は…?」
『異界。此処にはとある神様が住んでる。』
「神様…」
『うん、神様。…人間の事なんて何とも思ってない神様らしい神様だよ。』
そう言って手を引いて行くと開けた丘の様な場所に出て視界いっぱいに巨大な城下町と城が見えた。
その様子に微かに目を見開いているイタチの前で偶然側を通り掛かった蟲を捕まえた。
ヒィイイ!なんだぁ!?と話す蟲をイタチが興味深そうに覗き込む傍らで黒凪がその頭部をぐっと両手で掴み顔を近付ける。
『白に映像繋いで。早く。』
【わ、わかったよ…】
ヴヴ、と微かな機械音が入り蟲の真上にモニターが出現する。
そのモニターに映った白は無表情のままにイタチに目を向けた。
それを見た黒凪は「おはよう白。」と声を掛ける事で彼の目を自分に戻させる。
『数分だけ此処に居させて欲しいんだけどさ』
≪…また"補充"か?≫
『それも兼用。でも本当の目的は秘密のお話。』
≪……。了解した。1時間だけそこには蟲も部下も近付けん。≫
ありがと、と笑った黒凪の顔を一瞥してモニターが途切れ、蟲が飛び去って行く。
その様子を見送った黒凪はその場に座ると隣を示しイタチも徐に腰を下ろした。
そして少しの間の沈黙の後に「何処から話しましょうか、」とイタチが徐に口を開く。
『じゃあトビの事について。』
「…トビは奴の偽名です。本名はうちはマダラ。…奴自身そう名乗っていた上、写輪眼を持っていた事から確実だと思います。」
『うちはマダラ? 伝説の?』
「ええ。…奴は何らかの方法で今の今まで生き延び、ずっと木ノ葉への復讐を企てていた…」
実はうちはのクーデターにも乗ずるつもりだったようです。
その情報を耳にした俺は一族を殺す際に自ら奴に接触をし…。
『それはサスケを守るため?相手がマダラなら、里の人間だけじゃなくうちはも恨んでそうだしね』
「ええ」
『そっか…マダラが関わってたことはうちの父様も知らなかったみたいだね。私も初めて聞いたし』
「上層部にもマダラのことは伏せていたからでしょう。その後は、主に奴の動向を探る目的で暁に加入しました。」
俺が加入後にはマダラはしばらく裏方に徹していたのですが、サソリが姿を消したころから新人のトビとして表に出てきていたようです。
その後はご人事の通り、俺とサスケから木ノ葉を遠ざけ…サスケのみを連れ去った。
「おそらく俺自身の寿命も長くはない中、俺を助けるメリットがないと判断したんでしょうね」
そこで一旦言葉を止めたイタチに黒凪が膝を抱え直して縮こまる。
『…サスケを連れ去ったのは木ノ葉への復讐の手助けをさせる為かな。』
「恐らくそうでしょう。サスケにすべてを話すつもりだと思います。」
『そうなればあんたが護った里も、サスケもただでは済まないって事ね。…だから私にサスケを預けようとした。』
「……一応サスケの写輪眼に天照を仕込んでおきました。奴の写輪眼を見た途端に発動する様に。」
しかし恐らく奴には弾かれるでしょう。
そう言って目を伏せたイタチが沈黙し、その場で暫く無言が続いた。
そんな中で黒凪が徐に顔を上げて立ち上がりぐっと身体を伸ばす。
そしてその様子をじっと眺めていたイタチに向き直るとにっこりと笑顔を見せた。
『話は分かった。とりあえずサスケとマダラが攻め込んで来たら里もサスケも護れば良いわけだ。』
「…まあ、そういう事になりますが…」
『どうにかなると思う。…サスケが全世界を敵に回したとしても間一族が引き取って護るし。』
「!」
サスケが大罪人になったって私は受け入れる。
…あんたもサスケのことを嫌いになったりなんてしないでしょ。
黒凪の言葉に「ええ」とイタチが小さく頷いた。
それを見た黒凪が一層笑みを深め「だったら大丈夫!」と言って空を見上げる。
『止めるのが大前提だけど、取り返しのつかない事をやってもまだ道はある。…とりあえずこれで納得してくれない?イタチ』
「……」
『だから何処に居るかもわからないサスケを探しに行こうだなんて風に今は早まらない事。サスケとマダラが姿を見せたらそこに直行しよう。』
「……分かりました」
条件を呑んでくれたイタチに「ありがとう」と礼を言ってから彼に背を向け、徐に俯いた。
そんな黒凪の元に集まっていく"力"にイタチが周辺に目を向ける。
少しだけ歳を取った姿になっていた黒凪の姿が少女のものへと戻って行き、ふっと力が途切れると黒凪の疲れた様な雰囲気も綺麗に消え去っていた。
『…さて、戻ってデイダラ達が持ってきた任務にでも行こうかな。』
「……」
『イタチも来る?ぼーっとしてると色々考えちゃってしんどいでしょ。』
「…ええ」
小さく頷いたイタチの頭をぽんと叩いて入り口を作る。
そして手を伸ばした黒凪は無表情に此方に手を伸ばして来るイタチに眉を下げた。
もうそんな非情なふりはしなくて良いんだよ、イタチ。
黒凪の言葉にイタチが顔を上げる。
『笑っても良いんだよ、あんたは。』
「……はい。」
そうですね、と穏やかな声が耳に届いた。
(黒凪ー。飯ー……イタチィ!?)
(!飛段…)
(喧しいぞ飛段…。……イタチ、遂には貴様も来たか)
(角都、お前まで此処にいたのか)
(成り行きだ。好き好んで来た訳ではない)
(何言ってんのよ最近居心地良さそうでしょー)
(ふざけた事を言うな)
(…くく、随分と打ち解けてるじゃないか)
(でしょ?)
(!?…オイオイ、イタチが笑ってるぜ角都…)
(そんな馬鹿な事が…、…………。)
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