世界を君は救えるか【 × NARUTO 】
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雪の国編
牢屋が並ぶエリアから抜け出すと「おーい」と声を掛けながらデイダラとサソリが起爆粘土で出来た鳥に乗りながら姿を見せた。
『あ、やっぱり奇襲掛けてくれたんだ?』
「まあな、うん」
「…ねえ黒凪。六角水晶は?」
『六角水晶ですか?…どっちか持ってる?』
おらよ、とサソリが放り投げ小雪姫が掴み取る。
手に入れた六角水晶を覗き込み「こんなものの為に…」と小雪姫が悲しげに呟いた。
すると向かいの道から飛段と角都、再不斬と白がほぼ同時に姿を見せる。
互いに鉢合わせた事に少し驚いているようだった。
『あれ、偶然。そっちのエリアは全滅?』
「あぁ」
「聞けよ黒凪!角都のヤロー祈りも捧げさせてくれねェんだぜ!?」
『まあ今は緊急事態だし帰ってからやりなよ。』
「んだとォ!?」
喚く飛段を無視して「ドトウは?」と再不斬達に聞けば首を横に振った。
それを見た小雪姫は「こっちよ!」と声を掛けて走り出す。
黒凪達は顔を見合わせ徐にその後に続いた。
そうして入り込んだ部屋は暗く皆が周りを見渡していると奥に明かりが灯り玉座についているドトウが姿を見せる。
『あら、ドトウだ。』
「……。」
「…よくやったな、小雪」
ドトウの言葉に「はァ!?」と飛段が声を上げれば小雪姫が逃げる様にドトウの元へ走って行く。
眉を寄せてその後を追おうとした白の前にナダレ、ミゾレ、フブキが立ち塞がった。
ドトウに六角水晶を渡す小雪姫に黒凪が困った様に後頭部を掻いて「あれれ?」と口を開く。
『改心してくれたんじゃないんですか、小雪姫様。』
「…言ったでしょう。私は女優なの。」
『……あちゃー…』
「余計な事を…こうなればあの女も殺すか?」
『いやいや駄目だって。』
イライラしだした角都に困りながらも黒凪が小雪姫に目を向ける。
小雪姫は黒凪を見つめ、徐に目を伏せた。
「そう、私は女優。これは全て…芝居よ!」
そう言って懐から取り出した小刀をドトウの胸に突き刺す。
その様子にまた「はァ!?」と声を上げる飛段に「おお!」と目を見開く黒凪。
しかしすぐさまドトウの片手が小雪姫の首に回りぐっと締め付けた。
息を詰まらせる小雪姫に「おー、頑張れ頑張れ」なんて言いながら見ている飛段や無言で眺めている角都達。
そんな中で「小雪姫様!」と焦った様に声を掛けたのは白。
「この国の忍は皆チャクラの鎧を身に着けています!その頂点であるドトウが鎧を身に着けていない筈がない!」
「っ、ぇ、」
「くく、はははは!あの忍の言う通りだ小雪!」
「っ!」
苦しんでいたふりをしていたドトウが笑いだし、小雪姫を突き飛ばした。
咳を繰り返す小雪姫の前で着物を脱いで装着している鎧を見せる。
ドトウの身体に装着された鎧を見た小雪姫は顔を青ざめた。
「これは最新型のチャクラの鎧だ。お前が持ってきたこんななまくら刀では傷1つ付かん。」
「そんな…、っ!?」
「さて行こうか小雪。虹の向こうへ。」
ドトウが小雪姫を抱えて鎧に装備された翼で飛び上がる。
角都達が掛けた奇襲の影響で城の天井が崩れ始め、瓦礫から逃れる様にナダレ達が走り始めた。
それを見て一先ず小雪姫達を追わず黒凪達も瓦礫から逃れる様に動き始める。
黒凪を抱えて走り始めたデイダラを見上げてすぐ側に居るサソリに目を向けると黒凪が口を開いた。
『デイダラ、サソリ。私達はデイダラの起爆粘土に乗ってドトウを追うよ。』
「分かった、ちょっと待ってろ。うん」
「了解…」
『後の4人は残党の片付けね。』
黒凪の指示に我先にと飛段が鎌を持ち上げてナダレの後を追う様に速度を上げていく。
そんな飛段の後ろ姿にため息を吐いて角都もついて行った。
それを見た再不斬と白は「なら俺達は…」と空を飛んでいるフブキとスノーボードの様なものに乗って移動しているミゾレに目を向ける。
黒凪達はデイダラの起爆粘土に乗って逆方向に進み始めた。
「…どっちが良い、白。」
「そうですね…」
「氷遁・ツバメ吹雪!」
氷で出来たツバメが襲い掛かり、すぐさま白が千本で応戦する。
正確に撃ち落とされたツバメにフブキが目を細め、鎧に装備された翼で翻弄する様に飛び回った。
それを見て「相性が良さそうなので彼女を僕が。」と白が言い「俺もそう思っていた」と言いながら再不斬がスノーボードで駆け回るミゾレに向かって首切り包丁を投げつける。
ミゾレは首切り包丁を避ける様にスノーボードを離れて地面に足を着いた。
そして途端に周りに霧が立ち込めミゾレとフブキが眉を寄せる。
「何処だ!…何も見えないぞ!!」
視界が悪くなり周りを見渡しながら声を張り上げるミゾレの背後に音も無く再不斬が降り立った。
あまり喚くな。余計に音が聞こえなくなるぞ。
すぐ背後から聞こえた再不斬の声にミゾレが目を見開いたと同時に彼の首が真っ白な雪の上に落下した。
首切り包丁に付着した血を払う様に振り下してから肩に担ぐとそれと同時に空を飛んでいたフブキが白と共に落下してくる。
「っ、氷遁使い…!?」
「秘術・魔鏡氷晶。…ご存じありませんか?」
「!…お前、雪一族――」
「…ご存じなんですね」
遠い昔にこの雪の国に居たとされる、私達と同じ血継限界を持つ一族…。
唖然と呟くフブキに白が顔を近付けた。
雪一族について他に知っている事は?そう問い掛けられ首の落ちたミゾレを見てフブキが徐に口を開く。
「雪の国で最強だったと教えられている、」
「他には?」
「っ、魔鏡氷晶を扱えるのは雪一族だけだ…!」
「他には?」
その戦力を見込まれて忍五大国に連れて行かれた!
…そうですか。そう言って目を細めた白は一瞬でフブキの上から飛び退いた。
途端にフブキの腹部に首切り包丁が突き刺さり、白が再不斬を見上げる。
「やはり此処がお前の一族の故郷らしいな。白。」
「その様ですね。…この国から連れ出されなければ、母は死なずに済んだのに」
「……」
「でも僕は再不斬さんに出会えたので悪い事ばかりと言うわけでもありません。…黒凪さん達を追いましょう」
あぁ。と返答を返して再不斬と白が走り出す。
一方ナダレを追っていた飛段は足を止めたナダレにすぐさま鎌を振り下した。
ナダレは鎧を使って鎌を受け止め、飛段のバランスを崩して後方に飛び退く。
「だぁああクソ!鎌の刃が通らねえぞオイ!」
「殺すならさっさとやれ飛段。」
「っせェ!すぐに終わらせてやるから待ってろ!」
「すぐに終わらせるだと?舐められたものだな」
ナダレが印を結び氷の狼達が飛段に襲い掛かる。
それを見た飛段は笑って鎌を振り上げ物凄い勢いで狼達を破壊して行った。
その飛段の動きにナダレが目を見開く中、不意を突く様に飛段が鎌を放り投げナダレの頬を微かに斬りつける。
っしゃあ!と声を上げた飛段はすぐさま血を舐めとり自分の腹部を切り裂いた。
「!(なんだ、何をしている…?)」
「これでテメェは終わりだ氷遁野郎ォ!」
「何だと…?」
ゲハハハァ!と笑っていた飛段はずぶ、と沈む足元に目を向け「あァ!?」と声を上げる。
彼の視線の先を見て角都が呆れた様にため息を吐いた。
地面が雪に埋もれている所為で飛段の呪いに必要な図式が上手く書けないのだ。
もたもたしている飛段にしびれを切らした角都が一瞬でナダレの背後に回って殴りつけ、心臓に触手を伸ばす。
「テメェ角都!何横取りしてんだァ!」
「どちみちその足場ではお前の術は発動出来ん。丁度血継限界の心臓を一度奪って見たかった所だ…」
「…っ、はー…。しょうがねェなァ、ったくよ。…ドトウは俺に寄越せよな」
「あぁ。そのドトウの足場に雪が積もってなければな」
そう言って心臓を完璧に取り出した角都はストックしていた心臓を1つ取り出して代わりにナダレの心臓を取り込んだ。
そうして立ち上がった角都は「行くぞ飛段」と声を掛けて共にドトウを追う。
「…何処だ、秘宝は何処だ!」
六角水晶を鍵穴に差し込み、温かい空気が周りに流れ始める。
そんな中で辺りを見渡すドトウを呆然と見つめながら小雪姫は周辺の温かさに地面を見下した。
足元や周りの雪が瞬く間に熔けていく。
「発熱機だと!?こんなものが風花の秘宝だと言うのか!」
『あ、いた。小雪姫様ー!』
「!…黒凪、」
追いついた黒凪達に歯を食いしばりドトウが印を結ぶ。
氷遁・黒龍暴風雪!そんな声が聞こえると同時にドトウの右の拳から黒い龍が出現し向かってきた。
その龍に起爆粘土を放り投げ相殺させると一旦距離を取る様に上空に飛び上がる。
『ここらに秘宝があるとするならあんまりデイダラの起爆粘土で壊すわけにもいかないなぁ…』
「げ、まじか。ならオイラはテキトーにやるぜ、うん」
『わかった。んじゃあサソリ、手伝って。』
「あぁ…」
ヒルコの中から出て黒凪を抱えてからデイダラの鳥の上から降りて行く。
そうして地面に足を着けるとサソリが徐に巻物を取り出し"三代目風影"を出した。
三代目風影の口から砂鉄が溢れ出し、上空で巨大な武器を作り上げる。
『鎧の周りにある結界?みたいなのは私がこじ開ける。』
「分かった。」
「氷遁・双龍暴風雪!」
「きゃあ!」
先程の術よりも強力な暴風が吹き荒れ、小雪姫がすぐさま近くの氷河にしがみ付く。
黒凪も風に少し煽られたがすぐにサソリと共に足を結界で固定し向かってくる2頭の龍は上空に居るデイダラが起爆粘土を投げて破壊してくれた。
その様子に目を見開くドトウにすぐさま細い結界を無数に突き刺しドトウの身体を包む結界の様な膜を破壊する。
その隙間を縫う様にして砂鉄がドトウの鎧の中心部分に突き刺さった。
「ぐあぁああ!!」
巨大な鉄の塊がドトウに突き刺さり、その勢いのままドトウが吹き飛ばされ巨大な虹の氷壁に直撃する。
無数のヒビが入りドトウが落下して行くと丁度夜が明けたらしく太陽が姿を見せた。
途端に6つある虹の氷壁に光が反射して瞬く間に周囲の氷を解かし一気に景色が変わる。
そして六角水晶の鍵穴の真上に虹の氷壁に光が反射し映像が映し出された。
≪――…未来を信じるんだ。そうすればきっと春が来るよ。…小雪は春になったら何をしたい?≫
≪小雪はね、お姫様になるの!≫
≪ほー。どんなお姫様かな?≫
≪あのね!優しくて、強い正義の味方なの!≫
はははは、そりゃあ大変だ!
何処からか映像に合わせて声まで聞こえてくる。
その映像を見上げながら小雪姫がぽつりと「私あんな事言ってたんだ…」と呟いた。
≪でも、諦めないでその夢を信じるんだよ。そうすれば必ず叶うからね。≫
映像の中に映る早雪が六角水晶を小さな小雪姫の首に掛けてやる。
見えるだろう?此処にとっても綺麗なお姫様が立っている。
そう言って微笑む父の姿に小雪姫は思わず涙を流し、涙が地面に落ちて行った。
≪…あ!でもね、小雪にはもう1つなりたいものがあるの!それにもなれるかなぁ!≫
≪うん?それはなんだい?≫
≪女優さん!≫
「…ふ、はは。何よ、ちゃっかり夢を叶えちゃってるじゃない…」
思わずそう言って笑った小雪姫に黒凪も微笑んだ。
すると遅れて到着した白、再不斬、角都や飛段が変わり果てた景色に顔を上げ周りを見渡す。
「お?…んなトコ雪の国にあったか?」
「……。」
「…凄い…」
「お前の故郷も綺麗な所だったらしい」
白を見下して言った再不斬に顔を上げ「はい!」と白が嬉しそうに笑う。
草が生え、蝶々も舞っている景色は雪の国とは思えない程に絶景で、また暖かいものだった。
やがて1週間ほど新しい君主となった小雪姫の計らいで雪の国の宿に泊まり、彼女の継承の儀を見守った。
そうして開かれた食事会に全員でお邪魔させて貰い、間一族で固まって食事をしていると他の人と話して忙しそうにしていた小雪姫がやっと姿を見せる。
君主となった彼女は何処か吹っ切れた様子で笑顔を見せ、此方に駆け寄ってきた。
「黒凪!」
『忙しそうですね、小雪姫様。』
「小雪で良いわよ。それに敬語も無し。」
『え、そう?…それじゃあ小雪ちゃんで。』
良いわよ、と笑った小雪に黒凪も笑う。
そして小雪は「そう言えばね、」と遠くに微かに見える虹の氷壁に目を向けて口を開いた。
「あの機械はまだ完成されたものではないらしいの」
『え、じゃあまた冬に戻るって事?』
「ううん。これから改良を重ねて、いずれ国全体を春にしてみせるわ。」
『へー…』
黒凪と小雪の会話を小耳に挟みつつ少し悲しそうに遠くに見える雪山を見る白。
そんな彼の隣で水を飲んでいた再不斬は「今の内に焼き付けておけ。お前ならそう簡単に忘れはしないだろうからな」と慰める様に声を掛けた。
再不斬の言葉に「はい」と頷いてじっと雪山を見つめる白に小雪が近付いて行く。
「貴方、此処の国の一族の末裔なんだって聞いたんだけれど…」
「はい。実はその様で…」
「雪一族、なのよね?実はこの1週間で雪一族について何か残っていないか調べたの」
そしたらこんなものが…。
そう言って差し出されたのは遺影の様に額縁に入った1人の女性の写真。
どうやらこの国に雪一族が居た時の君主の様で、貴方にそっくりだったから持ってきたの。
小雪の言葉通り、写真には白と瓜二つの美しい女性が映っている。
「…母にそっくりです」
『もしかしたら白はこの君主の子孫なのかもね。』
「ええ。これだけ似ているならそうかもしれませんね。」
「どうする?持っていく?」
そう問いかけてくれた小雪に微笑み、白が写真を彼女に返した。
その写真は雪の国に置いておきます。…また、見に来ます。
その言葉ににっこりと笑い「いつでも帰ってきて。此処は貴方の故郷なんだから。」と小雪が言った。
はい、と笑った白に黒凪が「よかったねえ」と微笑んでいると「オイ黒凪!」と飛段の声が掛かる。
「伝書鳩が来てんぞー」
『え、伝書鳩?こんなとこまでだったら大分飛んでたんじゃ…、あ、式神か。』
「間のとこからか」
『うん』
サソリと共に手紙を覗き込む黒凪を小雪がじっと見つめ、徐にサソリに目を向けた。
そこの彼、ずっと居た?と問う小雪に「あ、これサソリだよ。ほらあの不気味なおっさんの。」と黒凪があっけらかんと言えば「えええっ!?」と小雪が目をひん剥く。
彼女の声にサソリが無表情のまま顔を上げた。
「え、じゃああのおじさんは何なの!?」
「あれは傀儡だ。あの中にずっと入っていた」
「えええ!?」
『本体はカッコいいでしょ?ずっと出てればいいのにあんまり姿見せたがらないの。勿体無いよねえ』
そ、そうね…。と同意を示しながらまじまじと見つめる小雪を横目に内容を読み終えた黒凪は同封されていた写真を取り出し小雪に近付いて行く。
小雪は流石人気女優とあってそう言った対応は慣れているのか、瞬時に理解してペンを取った。
さらさらと写真に書き込まれて行く小雪のサインを物珍しそうにサソリとデイダラが覗き込む。
「サインか…。誰が欲しがったんだ?うん」
『えっとね、時音ちゃんと亜十羅と秀と修史さん…あ、あと時子さんと繁守さんも。』
「まさかそんなに私のファンが居るなんてね。」
『うん、私も驚いた。…にしても勿体無いね、女優辞めるんでしょ?』
え?誰がそんな事言ったのよ。
驚いた様に言った小雪に「え?」と黒凪も聞き返す。
てっきり君主になったのだから女優は辞めるものだと…。
そんな黒凪の言葉に小雪が不敵に微笑んだ。
「雪の国の君主も女優も両立させるわよ。此処で諦めるなんて馬鹿みたいじゃない、どっちも軌道に乗ってるんだから。」
『あら!前向きになってよかったねぇ。』
「ふふ、何よおばさんみたいな言い方しちゃって。…それじゃあね!」
颯爽と去って行った小雪はすぐにファンの子供達と戯れ始めた。
その様子を見守っていた黒凪は「あ、どうせなら私もサイン貰えば良かった」とふと思い立ちそう声に出して少し項垂れる。
すると「おい」と声を掛けられ振り返った。
そこには封筒を持った角都が立っていて「お前宛だ」と一言言って封筒を近付けてくる。
『私宛?また伝書鳩でも来た?』
「あの女からだ」
『…え、小雪ちゃん?』
封筒を開いて中身を見れば数日前に記念だと言って一緒に撮った写真が入っている。
しかも写真には小雪のサインとメッセージが描かれていた。
"あんまり守銭奴みたいな真似してちゃダメよ!"といったメッセージに小さく笑って豪華なパーティに目を向ける。
『さーて、タダ飯沢山食べますか!』
「黒凪さん、タダ飯なんてはしたないですよ」
『あ、そう言えばあんた達この機会に久々にうちに帰ってきなよ。修史さんのご飯も随分食べてないでしょ』
「元々帰るつもりだ。追加の任務は渡されていないからな」
やった!そう言って微笑んだ黒凪は並べられている豪華な料理の元へ歩いて行く。
…何の前触れもなく暖かい風が軽く吹いた。
長い髪を抑えて思わず風の吹いた方向に目を向けた小雪は緑に囲まれた景色の中で特に目立つ黒凪の白髪に目を奪われる。
雪に包まれていた国ではあまり気にならなかった白髪がこの景色の中ではとても貴重なものの様に見えてくる。
「…姫様?」
「え?」
「どうかしたの? 何かあった?」
「…ううん。何でもないわ」
笑顔でそう言って再び差し出される色紙にサインを書き込んでいく。
あれ程嫌いだった雪がこの国から完全になくなってしまえば、雪を恋しく思う日が来るのだろうか。
そう思わず考えてしまった事は、まだ誰にも言わないでおこう。
おかえりなさい!
(…あ、再不斬さんと白君帰って来たのね。)
(うん。流石に出張が多過ぎるしね。)
(お久しぶりです、時音さん)
(ええ。)
(おーい時音…って白!?)
(ご無沙汰しています、良守君)
(え、帰って早々何話してたんだよ…)
(?何、とは…)
(ぅえ!?いや、そりゃ…)
(あれ、妙にキレの悪い良守君が居る)
(え、お前知らねーの?良守の奴、雪村と白が仲が良いからって柄にもなくビビってんだよ)
(そうなの?顔面ではボロ負けだけど焦る事無いのに)
(あんだけ顔面に差があれば嫌でも焦るだろ…)
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