世界を君は救えるか【 × NARUTO 】
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星隠れの里編
「黒凪、シカマルが来てる」
『…あ、アスマさんのお見舞いね。』
「中に入れるか?」
『大丈夫。丁度今日アスマさんの退院の日だから。』
アスマさんを入り口に連れて行くから限はシカマルの相手してて。
そう言って奥に向かった黒凪を見送り、限は再び入り口に向かった。
"間"と書かれた札がぶら下がった扉の横で待っていたシカマルは再び開かれた扉に振り返る。
「丁度今日に退院らしい。黒凪が連れて来る」
「あ?…あぁ…」
「……」
それきり黙った限がシカマルの隣に移動して彼と同様に壁に凭れ掛かる。
そんな限をチラリと見てシカマルも空を見上げた。
シカマル自身もあまり話すのが好きな方ではないし、アカデミーでも比較的静かな限とは付き合いやすかった。
それに黒凪が側に居ればサスケ程近寄りがたい事も無かった。
「…なぁ」
「?」
「お前と黒凪、最近一緒に居る所見ねえけど喧嘩でもしたか?」
「…俺と黒凪は喧嘩しない」
そ、そうか。
そう返してからまた沈黙が降り立った。
空をゆっくりと雲が動いて行く。
…喧嘩しないって言い切れるもんか…。
そう思いながら空を見上げていると再び扉が開かれた。
『あ、居た居た。』
「…よう。よく今日が退院だって分かったな。」
「いや、偶然見舞いに来たら退院だって聞いてこっちが驚いたんすよ。」
「ははは、そうか。」
んじゃあアスマさんは紅さんの元に帰ってあげてくださいねー。
そう言って扉を閉めて限と共に中に入ろうとした黒凪に「あ、おい」とアスマの声が掛けられる。
閉まる寸前で扉が止まり、黒凪が顔を覗かせた。
「助けてくれてありがとな。」
『いーえ。間一族も捨てたもんじゃないって思いました?』
「元々俺は邪見に思ってたわけじゃないがな。でも見直した部分はある。」
『私達もそこまで非道じゃないんですよ。…それじゃ、お元気で。』
おいおい、もう会えなくなるみたいな言い方すんなよ。
眉を下げて言ったアスマを見上げ、黒凪も眉を下げた。
会えませんよ、当分は。きっと。
彼女の言葉にシカマルは「確かにな、」と思わず納得してしまう。
ここ数日連続で顔を合わせる事自体珍しい事なのだ。
ましてや間一族の領地に近付く事すらも里の人間としては珍しい。
「…行くか。」
歩き出したアスマについて行き、完全に閉じられた門を振り返る。
アカデミーの頃は毎日顔を合わせて、めんどくせー授業を受けて、演習を受けて。
大人になってもずっとあの3人とは一緒に任務を行っていくのだろうと思っていた。
…でも今となっては全く違う居場所に居て。
「(任務がかぶって珍しい事もあるかと思えば、暁並に意味の分からねー能力を持ってて。)」
本当、いつからこんなに差が付いたんだか。
どんなに考えてもそれは解りそうにない――。
「――あ、黒凪。」
『ん?』
「1つ任務頼んでも良い?サソリとデイダラも連れて3人で。」
手渡された資料を見て黒凪が露骨に眉を寄せる。
また面倒なのを渡されたね。
不機嫌に言った黒凪に正守も満更でもない様子で苦笑いを返した。
『星隠れの護衛任務か…。って間一族にやらせろって態々書いてあるし』
「プライドの高い里だしね。しかも例の"あれ"もあるし。」
『んー…』
眉を寄せて唸っている黒凪を偶然通りかかったデイダラが見つけ、彼は不思議気に片眉を上げた。
そんなデイダラを見つけた正守は「やあ」と笑顔で片手をあげ、黒凪が振り返る。
そして此方を見ているデイダラをじっと見ると「仕方ないか…」と呟いてぐるっと身体を向けた。
『今から任務に行くよ。サソリも連れて行くから声掛けて。』
「今からか?うん」
『今から。…プライド高いからさっさと行かないと怒るし』
「?お、おう」
黒凪に背を向けて自室に戻っていくデイダラを見送り、深いため息を吐いた。
星隠れの里はとても小さな忍び里で、その規模と共に忍の数もかなり少ない。
そんな小さな里が狙われる理由は今から400年前に里に落ちたと言われている神秘の力を蓄えた星の存在があるからだ。
「――神秘の力ぁ?」
『なんでもチャクラに影響を与えるとかなんとか。…私には関係ないけど。』
「フン。くだらねぇ…」
起爆粘土で作られた鳥に乗っているデイダラ、黒凪、サソリで任務内容の資料を覗き込んだ。
サソリの身体は例に倣って既に傀儡のものに戻っている。
そしてそんなサソリはこれまた例に倣ってヒルコの中に隠れていた。
『…ヒルコって足遅いよね』
「うるせぇ。デイダラの鳥に乗ってりゃ変わらねぇよ」
『まあ私も足遅いから良いんだけどさ。』
「うわー…オイラ以外のろまだな、うん…」
随分と空を進み、やがて星隠れのある熊の国の国境を通過して行く。
下を覗き込めば国境にある谷に黄色い毒ガスが目に見える程に充満していた。
黒凪と共に下を覗き込んだサソリは鼻で笑って口を開く。
「自然が作り出した毒物なんざ生温い…俺が作ったガスなら近付いただけで殺せる…」
『その程度の毒ガスだったから谷の向こう側に里が作れたんだろうね。…ん?』
「…迎えじゃねぇか?うん」
丁度熊の国に入った途端に見えた小さな人影にデイダラと黒凪で目を凝らす。
するとその人影が此方に向かってボウガンの様なもので縄の付いた矢を放ち、それをデイダラが掴み取った。
その縄に足を掛けて人影が昇ってくる。
うお、と重みに目を見開いたデイダラはどうにか持ち堪え、鳥に飛び乗った少年に目を向けた。
「間一族の者達だな。」
『ええ。君は星隠れから来た迎えの人?』
「ああ。スマルと言う者だ」
よろしく頼む。そう言って律儀に頭を下げたスマルは黒凪を見て微かに目を見開いた。
自分と同じぐらいの少女が乗っている事に驚いたのだろう、固まっているスマルに黒凪がにっこりと笑う。
気の強そうなスマルを見たサソリは対照的に不機嫌に舌を打った。
『木ノ葉から来た間黒凪です。こっちのおじさんはサソリ、この子はデイダラ。』
「…よろしく頼む」
「……」
「……」
『あはは、よろしく。』
返事を返さないデイダラとサソリに代わって黒凪が再び返答を返した。
そんな彼等にスマルは微妙な顔を黒凪に向けつつ3人を里の中心部分へ案内して行く。
今から案内するのはアカホシと言う男の居る場所だとスマルが言った。
丁度里の中心にある建物の中に招き入れ、座っているアカホシの正面に3人を座らせてスマルは脇に寄った。
「よく来てくれた。三代目星影は1年前に急死し、今は私が代理を務めている。アカホシだ。」
「…影を名乗れるのは五大国だけじゃなかったか?うん」
「そんなの関係ない!今は小さくとも、いずれ五大国と並ぶ程の大きな里になる!」
「(チッ、プライドの高い小国が…)」
そして俺は本当の星影になるんだ!
スマルの言葉に「あー、はいはい。」とデイダラがげんなりした様子で言った。
するとアカホシが「黙れスマル。お前は修行場へ戻れ」と厳しく声を掛け、スマルは黙って出て行ってしまう。
それを見送り黒凪が再びアカホシに目を向けた。
『失礼しました。貴方方が影を名乗ろうが我々には関係の無い事でしたね』
「いや、此方こそ。…確かにこの里はまだまだ小さい…。だが此処には五大国も羨む星がある」
「御託は良い…。要はその星を護れば良いんだろうが…」
『こら。口が悪い。』
肘で軽くつついて黙らせアカホシに「続けて下さい」と声を掛ける。
小さく頷いたアカホシは「星が狙われていると言う情報を星隠れの探索隊が手に入れたのだ」と話を再開した。
敵の目星は付いていない。今は若い忍達が星の側で修行を続けているが、いつ敵が奪いに来るか…。
『…今星の周りには若い忍だけなんですか?』
「あぁ」
「馬鹿か。大事なモンは実力の高い忍が護るのが鉄則だろうが…」
『だから口が悪いって…』
アカホシ様!
バンッと扉が勢いよく開かれ全員が振り返る。
数十分前に出て行ったスマルが血相を変えて戻ってきたのだ。
どうした、とアカホシが問い掛けると「星が、盗まれました」…と。
その報告を聞いたサソリは「だから言ったんだ」と眉を寄せる。
「敵は何処に向かった!」
「分かりません…、孔雀妙法を使って空を飛び、かなり遠くまで逃げて行きました」
「!…孔雀妙法を…!?」
孔雀妙法とは星隠れが護る星を使った修行を極めなければ出来ない術の事。
つまり孔雀妙法を扱える忍は星隠れの忍と言う事になり、今回星を盗んだ忍も星隠れの忍と言う事になる。
スマルがアカホシに向かって頭を下げた。
「俺に命令を!星を盗まれたのは俺の失態です…俺が取り戻します!」
『いえ、我々が。護衛を任されているのにみすみす奪われたのは結果的に我々の責任となりますから』
「…うむ。星の捜索は間一族の者に任せる。スマル、お前は倒れた仲間達を診ていろ」
「しかし里の事は里の忍が…!」
スマル。アカホシの咎める様な声が響きスマルが押し黙る。
そうして話は終わり、スマルを含めた4人で外に出た。
ムスッとした顔で歩いて行ったスマルを見送り、3人で顔を見合わせる。
「あのアカホシって野郎…何か知ってやがるな…」
「あぁ。くじゃくなんとかって術の話になった途端に顔色を変えてやがったしな、うん」
『この里の忍しか使えない術を使ってたらしいし、十中八九この里の忍が関わってるだろうね。』
とりあえずサソリはアカホシの監視、デイダラは里を見回って情報収集。
私はこの若さを使ってスマルの方から探るわ。
薄く笑って言った黒凪を呆れた様に見て「好きにしろ」と返して2人が姿を消す。
その背中を見送った黒凪は「何よ反応悪いな…」とスマルの元へ向かった。
「……。」
『見つけた。』
「っ!?」
じっと宝石の付いたネックレスを見ていたスマルのすぐ真横から声を掛けた。
すると面白いぐらいに跳び上がって驚いたスマルに小さく笑う。
すぐさま焦った様にネックレスを懐に戻し「な、何の用だ」とスマルが取り繕う様に返答を返した。
『暇だから君の所に来たんだよ。歳も近いし。』
「…ふん。どうせ星の情報でも聞き出しに来たんだろう」
『そんな事無いんだけどねぇ』
「信用出来ないな。他国の忍は皆星を狙ってる。」
ふーん、星は本当にどうでも良いんだけどね。
で?その大事な星をみすみす奪われた君はこんな所で何してんのさ。
黒凪の言葉にスマルがむっと眉を寄せる。
「…別に。星を見ていただけだ」
『星ねえ…。…あの赤い星、凄く綺麗に見えるんだね。此処って。』
「…ナツヒボシ。いつも俺を見守ってくれている…」
『ん?』
見守って…?
振り返った黒凪は背を向けて歩きだしたスマルの背中を見て眉を下げる。
彼の背中が何処か限と重なって見える。
己の姉を傷付けた手をじっと1人で見下して、踏み込もうとすると背を丸めて離れて行く。
『ねえスマル。星の捜索は年上の2人に任せちゃって私暇なの。あんたの敵にやられた仲間の所とか行っても良い?』
「は?何故そんな所に行きたい」
『若い忍が居るんでしょ?って事は歳近いんじゃないの?』
「……」
間一族って歳上ばっかりなの。歳が近い子と話したいのよ。
首を傾げて言った黒凪に「此処を真っ直ぐ言った先の修行場の側に居る」と呟く様に言って去って行った。
そんなスマルを見送り、前方を見てゆっくりと歩き始める。
そうして見つけた巨大な穴とその中心にある建物に近付いて扉を軽くノックし、反応が無い事に首を傾げて扉を開いた。
『(…中に居るのは2人だけか。天井に1人、奥の布団の中に1人。)』
真上から近付いてくるチャクラの塊に目を細めて天井に向けて結界を突き刺した。
きゃあ!と声を上げて降ってきた少女を結界で受け止め、がばっと起き上がった奥の少年に笑みを見せる。
少女は黒凪を睨むと孔雀妙法の印を結んでチャクラの塊を突き刺す様に向かわせた。
それを結界で受け止め「ああちょっと待って」と両手を上げる。
『私は星の警護で此処に来た木ノ葉の間一族の一員よ。つまり仲間。』
「…え、仲間…?」
『あー…、額当てとかないけどこの家紋で分かる…?』
背中を向けて正方形の家紋を見せる。
それでも頭に?を浮かべる少女に困った様に笑うと奥の少年が黒凪をじっと見て口を開いた。
多分悪い人じゃないと、思う。
彼の言葉に少女もやっと警戒を解いた様だった。
「ご、ごめんなさい!全く感じた事の無い気配だったから…その…」
『チャクラを感じなかったとか?』
「…うん…。」
『あはは、それは驚くね。私チャクラを隠すの得意なの。』
驚かせてごめん。
眠っている少年の側に座ってそう声を掛けると少女は思い切り首を横に振った。
そして彼女は「私はホクトって言うの」と呟く様に名前を明かし、側で眠っている少年の名前はミヅラであると教えてくれる。
貴方は、と言った風な目が向けられ黒凪も口を開いた。
『私は間黒凪。…他の人は?』
「ああ、敵は私達を眠らせただけで怪我人は居なくて…。」
「ゲホッ、ゴホッ!」
『…そっちの子は無事そうに見えないけど?』
ミヅラは星の修行を始めてから具合が悪くなってて、最近は殆ど寝たきりで…。
そう言ったホクトに「駄目だよ、他国の人に星の話をしたら…っ」と少し顔色を変えてミヅラが言った。
ミヅラの言葉に口元を抑え、謝りながら彼に水を呑ませるホクト。
『随分警戒心が強いよね。特にスマルなんて頭1つ飛び抜けてる』
「…スマルがああなったのには理由があるの。」
『?(お。)』
「あれは確か、10年前。」
星を護っていたスマルの両親が、星を奪いに来た他国の忍に殺されたの。
だから余計に他国の人を警戒してるっていうか…。
言葉を濁して言ったホクトに「そう」と相槌を返して周りを見渡した。
それにしてもこの2人以外の気配がない。
『…ねえ、他の人達は何処へ行ったの?この周辺じゃないでしょ?』
「それが…星を取り返そうってスマルと一緒に外に行っちゃって…」
『…えー…?』
もう、これだから子供は嫌いなんだよね…。
呆れた様に言って立ち上がった黒凪にホクトの「へ?」と言った素っ頓狂な声と怪訝な目が向けられる。
そんな目を見返した黒凪はにっこりと笑うと扉を開いて外に出た。
『鋼夜、スマルの居場所分かる?』
【あぁ。臭いは覚えてる】
鋼夜の背中に乗ってスマル達の後を追う。
一方のサソリはアカホシと他2人の星隠れの忍との会話を盗聴していた。
やはり敵はあいつか。あいつが相手なら敵わない。
そんな風な会話をしている彼等に「やはりな」と目を細める。
「問題無い。奴の弱点は我等の手中にある」
「…あぁ、確かに。」
「ククク…すぐに引っ立てて…」
「まあ待て。…まずは邪魔なハエ共の目を逸らさんとなぁ」
ピクリとサソリが片眉を上げた。
ハエとは恐らく我々間一族の事だろう。
フン、三下が…。俺等に敵うと思ってんのか。
そう心の中で毒づいてその場に留まる。
一方のデイダラの方は受信した黒凪からの無線に耳元に意識を向けた。
≪デイダラ、あの毒ガスが充満してる谷あったでしょ?あそこ辺りに向かってくれない?≫
「今丁度その辺りだ。つっても妙なもんは…、ん?」
≪あ、居た?スマルと他の子供達が敵を追ってそっちに行ってるみたいでさ≫
「あー…。そのガキ共、敵に一発で眠らされたみてーだぞ。うん」
とりあえず軽く奇襲は掛けとく。
そう言ったデイダラとの無線を切って谷に向かって急ぐ。
そうして谷に着くとデイダラの起爆粘土を孔雀妙法で受け流す形で1人の忍がスマルを片手に走り回っていた。
『(スマルを抱えてる?)』
「喝ッ!」
「チッ…!」
忍がデイダラの爆風に紛れて谷へ落ちて行く。
そしてすぐさまチャクラで翼を作って飛んで行った。
黒凪がデイダラに向かって念糸を飛ばし引き寄せてデイダラの鳥に飛び乗る。
そして忍を追うが、それに気付いた忍が毒に紛れる様に高度を下げて行き濃度の高いガスに紛れて見えなくなった。
「逃げられると思うなよ…うん」
小型の起爆粘土を落として爆発させ、その爆風でガスを散らせる。
再び見えたスマルと忍に黒凪が構えた。
舌を打った忍は上空を飛ぶデイダラと黒凪に目を向ける。
すると里の方向からクナイや手裏剣が2人に向かって投げられ、デイダラと黒凪がその攻撃をしゃがんで避けた。
振り返っても忍の姿は森に隠れて見えない。
「チッ、サソリの旦那は何してんだ…!」
『なんか妙に邪魔が入るなぁ…。』
続けざまに放たれた武器を避け、再び谷の方を見れば既に忍はガスに紛れて何処かへ消えていた。
舌を打った2人は高度を落として倒れている若い忍達の元へ向かう。
そうして鳥に眠っている全員を乗せているとヒルコに入ったままのサソリが姿を見せた。
『あれ?サソリだ』
「ん?」
「…尾行に邪魔が入ってな…」
不機嫌に言ったサソリも鳥に乗せ、星を祀っていた場所へ向かう。
そうしてホクトやミヅラの元へ戻ると倒れている忍達を布団に寝かせていく。
その様子を少し離れた位置で見ていたサソリは具合が悪い様子で起き上がったミヅラに目を向けた。
「……。おい黒凪…」
『ん?』
「あのガキ…もうすぐ死ぬぞ…」
仲間を寝かせていたホクトの手が止まった。
…星の、所為なんです。
震えたホクトの声に黒凪達が振り返った。
ミヅラはふらふらになりながら外に出て行く。
「星の力はチャクラを増幅する力を持っています。でも多くの忍はチャクラをコントロール出来ずに体を壊して、悪ければ死に至る」
『…ふーん。それを皆喜んでやってると。』
「里の為に強くなって、この里を盛り上げる事が出来れば私達はそれで本望なんです!」
声を荒げたホクトに「そう」と興味が無い様に返して忍達を寝かせていく。
ホクトはぐっと拳を握り、顔を伏せた。
そうして全員を寝かせ、3人で外に出て行き地面に座る。
「どうも引っかかる…何か裏があるな…」
『そうねえ。スマルを連れ去ってまだ動きは無いし、空から監視してるのが1番得策かも』
「だったらさっさと行くか、うん」
再びデイダラの鳥に乗って上空に飛び立ち里を監視する。
すると毒ガスの谷の方でアカホシらしき人影が見えた。
上空に留まって様子を見ていると日が昇ると同時にガスマスクを付けた忍が孔雀妙法の翼で飛行し谷の向こう側に降り立つ。
『あー、閃が居れば会話が聞こえるのにな…』
「…大した忍だ…。傀儡に欲しい」
『確かにアカホシじゃあ敵わないぐらいの忍だねえ』
「……。さっきから星隠れの奴等がオイラ達の事を探してるみてーだぞ、うん」
デイダラの言葉に下を見下せば周りを見渡しながら走り回っている忍が2人見える。
それを見たサソリは「アカホシの側にずっと仕えてた忍共だ」とボソッと呟いた。
間一族を探すアカホシの部下、何故か星を奪ったにも関わらず再び戻ってきた敵。
そしてその敵と待ち伏せていたかのように戦闘を開始するアカホシ。
『敵が戻ってきた理由が怪しいね』
「…あいつが戻って来る事を勘付いてたアカホシもな…」
『…。もしかして敵の弱点か何かがスマルで、アカホシはスマルを使って誘き出したとか?無理やり過ぎ?』
「……だったらそのスマルってガキを探すまでだ…」
黒凪が影に目を向け鋼夜が姿を見せる。
毒ガスの臭いがきつくて追い辛いが、今なら大体の場所は特定できる。
そう言った鋼夜の背に乗りデイダラの鳥から黒凪が降りて行った。
それを見送ったサソリとデイダラは敵の忍に迫られるアカホシを見て舌を打つ。
「クライアントを殺されるわけにはいかねェからな…」
「助太刀するか、うん」
鳥を一気に急降下させてデイダラが起爆粘土を放つ。
はっと顔を上げた敵の忍は孔雀妙法でそれらを弾き爆風で巻き上がった砂埃で塞がれた視界に舌を打った。
そして砂埃の中で警戒した様に周りを睨むと途端に正面の砂埃の中から無数の毒針が迫り回避して行く。
回避した末に地面に着地するとその足元に起爆粘土をデイダラが仕込んでいた為、ずるっと足が地面に沈んだ。
「喝ッ!」
「くっ…」
爆発力は最小にしてあった為、敵の足が吹き飛ぶ事は無かった。
しかし数を多めにした為ガスマスクを吹き飛ばし本人も気を失って転がって行く。
そのまま谷に落ちかかった女をヒルコの尾で受け止めた。
「(くそ、間一族め…何故ナツヒを助けた…!)孔雀妙法!」
「!…旦那」
「あぁ…。俺達に喧嘩売ろうってんなら仕方ねェ…」
ニヤリと笑ってサソリを攻撃しようとしたアカホシにデイダラが大量の起爆粘土達を放り投げる。
その起爆粘土達にアカホシが対応している間に鳥の上に女と共にサソリが飛び乗り上空に飛び上がった。
気を失っている女をチラリと見下すとはっと目を覚ました女がクナイを構えてデイダラとサソリを睨む。
するとデイダラの無線が着信を知らせ、デイダラが電源を入れた。
≪スマルを見つけた。そっちは?≫
「アカホシと戦ってた奴は捕まえたぜ…うん」
≪そう。多分その人が色々知ってると思うから話聞いてて。私達もそっちに向かう≫
「分かった。」
無線を切って徐にデイダラがその場に座り込み両手を上げた。
攻撃する意思はない、そう示すデイダラに女は少し驚いた様に目を見張る。
クナイを降ろした女にデイダラが説明しようと一度口を開きかけるが、上手い言葉が見つからなかったのか何も言わずに隣に目を向けた。
その視線を受けたサソリはため息を吐いて口を開く。
「俺達は木ノ葉の間一族ってモンだ。星隠れにはテメェが盗んだ星を護る任務で来てる…。任務を忠実に熟すってんなら此処でテメェを殺してるところだが…」
「っ…!」
「…生憎うちのリーダーはテメェの言い分も聞いてから判断するつもりらしい…」
低い声で淡々と話すサソリに怪訝な顔のままの女。
気だるげに息を吐いて「スマルってガキは保護した」と伝えれば彼女は完全にと言う訳ではないが警戒を解いた様だった。
正当な理由があるなら話せ…そうでないとテメェの味方はしてやれねぇぞ…。
そんなサソリの言葉に目を伏せ、少しの沈黙の後に女がゆっくりと口を開いた。
それに合わせてデイダラが無線の電源を入れ、黒凪も間接的にその話を聞く。
スマルは上手く力の入らない身体に眉を寄せながら黒凪に目を向けた。
≪まず、私の名はナツヒ。…スマルの母です。≫
『!(成程、だからスマルを…)』
≪私が星を盗んだ理由は星の修行による犠牲者を出さない為≫
私は過去にも星を夫と共に盗んだ事があります。
数年前の星隠れでは現在と同じように星を使っての修行が行われていました。
しかし星による修行は忍の寿命を縮め、身体を蝕み…やがて死亡者や忍として戦えない程に衰弱した者が多発したのです。
私と夫はその犠牲者をこれ以上出さない様にとかつての星影、三代目星影様の目を盗み星を里から持ち出しました。
≪しかしすぐに追い忍部隊に追いつかれ、やがて星影様が私達の前に現れたのです≫
「…っ、俺にも聞かせろ、」
『しっ。聞こえない。』
「っ…」
三代目星影様は、星がなくなれば小国である星隠れはすぐに滅ぼされてしまう事を真摯に私達に話して下さりました。
…そして、星の修行を止めさせる事も約束してくださったのです。
私達はそんな星影様を信じる事にして、星を里に返しました。
≪しかしいつまた修行を始める人間が出るか分からない。だから三代目は私達を里から抜けさせ、里の外から星を見守る事を命じたのです≫
また修行が再開された時に止められる様にと。
…そして案の定数年後の現在、アカホシの手によって再開された修行を目の当たりにして星を奪ったのです。
話を区切ったナツヒに黒凪は「それじゃあ一応確認。その人はスマルを攫ってないのね?」と確認する様にデイダラに問いかける。
デイダラが全く同じ問いをナツヒに向ければ彼女はしっかりと頷いた。
「私が此処に戻ってきた理由はアカホシによって呼び戻された為です。…スマルを人質にされて。」
≪あー…やっぱりねえ。アカホシがスマルを攫わないと星の人間に邪魔される理由が無いし≫
「アカホシは私がスマルの母だと知っていましたから。…だからスマルを…」
そこまで話した所でナツヒが目を見開いて地上に目を向ける。
アカホシとその部下2人が星を封印した場所へ向かっている為だ。
一方のスマルは先程の黒凪の言葉で自分を攫った人物がアカホシである事を知り、驚きのあまりに固まり、徐に口を開く。
「…アカホシ様が、俺を…?」
『みたいだね。』
「……1つ、頼みがある」
『うん?』
俺を里の皆の元へ連れて行ってくれないか。
そう言ったスマルに黒凪の目がちらりと向いた。
皆と共に星を奪った忍の元へ行きたいんだ。
その忍が全てを知っているんだろう?
『……』
「どうせお前等の事だ、既にその忍の居場所は分かってるんだろ。」
『…分かった、良いよ。あんたの言う通りにしてあげる』
スマルにそう言って再び無線に意識を移してスマルの要求で里の忍達の元へ向かう事を報告する。
するとデイダラの方でも動きがあったらしく、アカホシ達がナツヒが封印した星の元へ向かっている事を報告された。
止めるか?と指示を仰がれた黒凪は悩む様に空を見上げる。
「…どうした?」
『アカホシ達が星の場所へ向かってる。…あまり私達の立場からすると手は出したくない所だけど…』
「頼む、アカホシ様達を止めてくれ」
続けて掛けられた要求に黒凪が再びスマルを見下した。
俺達がアカホシ様の所へ行くまでで良い。
それまでで良いから。
必死に言うスマルに黒凪が呆れた様に息を吐く。
「アカホシ様が俺を攫った理由や、俺達に何を隠しているのか…何も分からない…」
でも俺達はその理由を知るべきだと思う。
皆を連れて、星を奪った忍の所へ行って。
アカホシ様の所へ行って。…全ての真実を知りたい。
スマルをじっと見つめた黒凪が徐に口を開いた。
『アカホシを止めてて。スマルと他の子達を連れて追いつくから。』
「!」
黒凪の言葉にスマルが安堵した様に眉を下げた。
そして続けざまに呟かれた「ありがとう」の言葉に黒凪が笑顔を見せる。
デイダラは黒凪の指示を聞くと一気に起爆粘土で作られた鳥を操作して速度を上げ、アカホシの前に降り立った。
率先して地面に着地しナツヒがアカホシに向かって行く。
「アカホシ!」
「!」
行く手を阻まれたアカホシ達が足を止め、印を結んだナツヒに眉を寄せた。
すぐさまアカホシも印を結んで孔雀妙法を発動させ、2人のチャクラがぶつかり合う。
実力的にはやはりナツヒの方が一枚上手の様で、アカホシが徐々に後退して行きやがて吹き飛ばされた。
尻餅をついたアカホシはナツヒの隣に降り立ったデイダラとサソリに目を見張り口を開く。
「っ、貴様等は我等の要請で来たのだろう!何故其方についている!?」
「うちのリーダーの考えだ…俺は知らねえ」
「オイラも黒凪に従ってるだけだ。うん」
あの小娘か…!とアカホシが眉を寄せて部下達に目を向ける。
部下2人はその目を見て頷くとチャクラをアカホシに分け与え始めた。
途端に3人分のチャクラを纏うアカホシにナツヒが眉を寄せ再びチャクラを使って攻撃を仕掛ける。
3人掛かりでやっと両者が同格となったかに思われたが、ナツヒが星の修行の影響で衰退し始め次は彼女が押され始めた。
そんなナツヒににやりと笑ったアカホシは好機とばかりに意気揚々と口を開く。
「どうしたナツヒ…先程までの勢いがないぞ…!」
「……。」
「ククク…お前にも星の修行の副作用が出ているらしいな…」
ぐっと眉を寄せ、ナツヒが力を籠める。
すると一旦は後手に回っていた彼女のチャクラがアカホシのチャクラを上回り彼女が優位に立った。
「何、」
「この命尽きようとも…お前だけは…!」
「――アカホシ様!」
響いた声にアカホシとナツヒが思わず動きを止める。
振り返った先には星隠れの若い忍達とスマルと黒凪が立っていた。
ナツヒはスマルを見ると大きく目を見開き、思わず顔を歪める。
その隙を見たアカホシがスマルにチャクラを伸ばし、そのチャクラを見た黒凪が庇う様に咄嗟に一歩前に出た。
伸ばされたチャクラは黒凪に巻き付き、ぐんっと黒凪が引っ張られる。
『っ、と』
「今…スマルを狙ったよな…?」
「…まさか本当なのですか!?本当に皆を倒してスマルを攫ったのはアカホシ様なのですか…!?」
「全ては星を奪い返す為だ!皆武器を取れ!この女は里を陥れようとする重罪人だぞ!!」
怪訝な顔をしつつも現在の星影はアカホシ。忍達が従う様に徐に武器を取った。
ナツヒは迷いながらも武器を持つスマルに目を向け、眉を寄せる。
それを見た黒凪は絶界でアカホシのチャクラを消滅させると徐にアカホシに近付いて行った。
『アカホシ様。我々の任務は星を護る事、奪われた星を奪い返す事。…ですね』
「!…あ、あぁ…」
『なら封印を解いて私が星を奪い返しましょう』
「!」
右手を側の岩に触れ、ぐっと力を籠める。
まずは閉じられた空間の術を読み、同調して…。
開く。黒凪が目を細めたと同時に破られた封印にナツヒが目を見開いた。
そして星を念糸で掴み取りアカホシに投げ渡す。
『それが星ですよね?』
「…あぁ、確かに…」
『ならそれを持って里へお帰り下さい。』
この人には手を出さずにね。
ナツヒの前に立って言った黒凪にアカホシが微かに眉を寄せ、舌を打った。
…戻るぞ。背を向けて言ったアカホシの言葉に頷いた忍達が姿を消していく。
しかしスマルとホクトだけは去ろうとせずこの場に留まった。
「っ、何故アカホシに星を返したのです!」
『うわ、』
黒凪に掴み掛ったナツヒは止めに掛かったスマルを見ると動きを止めた。
スマルはじっとナツヒを見つめ、なんと声を掛けて良いか分からないと言った風な顔をしていた。
『…スマル、この人はあんたのお母さんだよ』
「っ!」
「……スマル…」
スマルの瞳に涙が浮かんで零れていった。
そうして抱き合うとスマルが「どうして死んだ事に、」と呟く様に問い、スマルにナツヒが少しずつ経緯を説明して行く。
それを横目に黒凪、デイダラ、サソリが顔を見合わせた。
「これからどうするつもりだ?うん」
『これで終わり…でも良いんだけどね、』
抱き合う2人を見て眉を下げた黒凪は小さく笑って2人に目を向ける。
このまま放って行っても後味悪いし、どうせなら忍達の前で修行の恐ろしさを知ってもらおう。
そんであの星を破壊する。
黒凪の言葉にナツヒが顔を上げた。
『あんな代物、壊した方が良いでしょ?』
「…貴方、最初からそのつもりで…?」
そんな風にしていかないと過ちは何度も繰り返されるからね。
ホクトが此処に残った様に、里の人達だって理解してくれる筈。
貴方がどうしてそこまでして星を奪おうとしたのか。
ナツヒが目に涙を浮かべて頭を下げた。
「ありがとうございます…!」
『頭を上げて下さいよ。…私はただ、』
身の丈に合わない力を持った人間が嫌いなだけなんです。
眉を下げて言った黒凪にデイダラとサソリの目が向いた。
――大きすぎる力は負担になるだけ。
「でも、貴方達は里の任務で此処に来たのでは…?」
『大丈夫。もみ消せるだけの力はあるので。』
「(フン。S級犯罪者を里に黙って匿うだけはあるからな…)」
じゃあ行きましょうかね。アカホシなら奪い返しに来る事ぐらいは承知の上でしょうし。
緩く言った黒凪にナツヒがしっかりと頷き、スマルも涙目のままで頷いた。
里に戻り星の元へと向かえばアカホシの命令で武器を構えた里の忍達が大勢立っていた。
恐らくナツヒ達を迎え撃つ様にとでも命令を受けているのだろう。
そんな彼等の前に堂々と降り立った黒凪はナツヒ、スマル、ホクトの背を押して現れたアカホシを見据える。
「…よく此処に来られたな、裏切り者め!」
「スマル…ホクト…何故お前達が裏切り者に…」
呟く様に言った周りの忍にすぐさま「違う!」とスマルが反論した。
俺の母様は里の皆の為に星を盗んだんだ!
スマルの言葉を聞いたアカホシが眉を寄せ「殺せ!」と命令する。
その声に反射的にボウガンを構えた忍達の手を黒凪が一瞬で結界で拘束した。
『話は最後まで聞く様に。』
「っ、なんだこの術は…!」
「星の修行はとても危険なものだ…!続けていたら全員死んでしまう!!」
スマルの言葉に皆が顔を見合わせ眉を寄せた。
アカホシ様、スマルの言っている事は本当ですか。
震える声で言った忍達に眉を寄せ、アカホシが前に出る。
「戯言を信じるな!星の修行に耐えられないのは里を愛する気持ちが弱いからだ!里を愛する気持ちがあれば、皆が真の忍になれる!」
『見事な感情論…』
「だな」
「なんか宗教みたいだぞ…うん」
呆れた顔で聞いていた黒凪が徐に全ての結界を解除する。
両手が自由になっても忍達は迷った様に顔を見合わせたまま、武器を構えようとはしない。
里の子供か、長か。どちらを信じるのか迷っているのだろう。
「――…僕の話も聞いてほしい!」
「!」
声に振り返ればミヅラがふらふらになりながらゆっくりと此方に歩いてくる。
そんなミヅラに里の忍達が徐に道を開けてやり、その姿に皆が顔を見合わせた。
皆に見てほしいものが、あるんだ。
苦しげに言ってミヅラが一気に服の胸元を開く。
服の下にはチャクラに侵食されてボロボロになっているミヅラの上半身があった。
「っ、なんだあれは…!」
「あれが修行の影響だと言うのか…!?」
「…僕は、里を誇りに思っています。苦しくても里の為にと必死に…必死に修行を続けて来ました…!」
それでも僕の気持ちは、僕の里を愛する気持ちは足りなかったんでしょうか。
そこまで言い切ってから苦しげに咳き込むミヅラにホクトとスマルが駆け寄って行く。
忍達が顔を見合わせる。ミヅラを見てからの彼等の表情は明らかに違っていた。
「あの言葉に、何よりあの身体に嘘は無い!」
「三代目が修行を長らく禁止していた理由はあれだったのか…っ」
「っ、裏切り者の3人を処刑せよ!!」
切羽詰まった様に放たれた言葉に今度こそ忍達の敵意がアカホシに向いた。
何を言う、あの子達は裏切り者では無い!
そんな声に周りで傍観していた子供達もスマル達に駆け寄り護る様に立ち塞がる。
「も、もう無理だアカホシ…」
「そうだ、里の皆の意向に従って、」
「今更何を言っている!今頃良心を見せた所で我等の手は既に汚れておるわ!!」
「お、おいよせ…!」
アカホシ、汚れているとはどういう意味だ!
案の定聞き返された言葉にアカホシの部下2人が一気に顔を青ざめる。
何も言わないでくれ、そんな目をアカホシに向けるがアカホシの目は血走り、その表情は怒りに染まっていた。
止めに入ろうとした部下2人の両足を黒凪が結界で固定する。
「里の事を1番に考えられぬ里長など不要!だから俺が殺してやったのさ!」
「あ、あぁ…言っちまった…」
「くそ…もう終わりだ…」
「貴様等が三代目を…!!」
忍達が一斉に武器を構え、アカホシの部下2人が縮み上がる。
しかしアカホシはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべたまま。
徐にアカホシの手が胸元に伸びた瞬間、黒凪の結界が全ての関節を止めた。
そしてアカホシの胸元に結界を作ると一気に押し潰す。
さらさらと服の中から落ちた砂を見たアカホシの目が大きく見開かれ、絶叫が響き渡った。
『あれ?何か潰しちゃったみたい。』
「大事なモンをしっかり護らねぇのが悪い…」
「不慮の事故って奴だな。うん。」
まだ叫んでいるアカホシに不機嫌に眉を寄せ、サソリが尾でその背中を軽く突き刺した。
それだけでアカホシはぐったりと項垂れ、結界を解除すると地面に倒れ込む。
ぽいと解毒薬を近くの忍に放り投げ「うるせぇから眠らせた…。それを飲ませれば目を覚ます…」とサソリが低い声で伝えた。
『…ずっと思ってたけどアカホシの事嫌いでしょ』
「基本的に他人は全員嫌いだ…」
『あらまあ暗い奴だこと。』
「あ゙?」
ミヅラ!大丈夫!?
そんな声に振り返って子供達の元へ向かう。
苦しげに倒れているミヅラを抱えているのはナツヒで、彼女の縋る様な目が黒凪に向いた。
『んー…。サソリ、どう?どうにかなるかな』
「俺は医者じゃねェ…」
『…、設備の整った所で見て貰えば治るかもね。木ノ葉の病院に連絡取るよ』
「是非とも子供達を治してやってくれ…!」
黒凪が里へ繋がる無線に手を掛けた瞬間にばっと頭を下げた男。
恐らくアカホシを無くした後の星隠れのリーダー的存在なのだろう。
そんな男を見た黒凪は微かに目を細め口を開く。
『でも子供達全員を完璧に見てもらうだけの医療費はありませんよね?こんな小さな里じゃ。』
「う、そ、それは…」
『間一族が払いましょう。ただその代わりと言ってはなんですが。』
「?」
アカホシの胸元にある砂みたいなものに対するお咎めは無しって事で。
にっこりと笑った黒凪に首を傾げた男の背後で「星が無い!」と他の忍達が焦っている。
ね?と畳み掛ける様に首を傾げると男は「あ、あぁ…」と頷いた。
『よし、早速木ノ葉に連絡だー』
「ゴリ押したな…うん」
『良かったねスマル。これで皆助かるよ』
にっこりと笑って振り返った黒凪にスマルが眉を下げた。
最後まで迷惑掛ける。
困った様に言ったスマルの頭に手を置いて再び無線に手を掛け、口を開いた。
「全く!あの間一族の黒凪は何なんだ!急に木ノ葉病院に星隠れの子供を連れて来たかと思えば最安値で治療しろだぁ!?」
「ま、まあまあ綱手様…」
「チッ…!呼び出して説教をした所でどうせまたのらりくらりと誤魔化すのがオチだろうからな…!」
「そ、そうですよ。ですから此処は穏便に…」
だが最安値はどうも納得が行かん!噂では里より間の方が儲かってると聞くぞ!
えー、そんな噂があるんですか?
突拍子も無く聞こえた声に綱手の眉間に一瞬で青筋が浮かんだ。
「入る時は"失礼します"だろうが!」
『あららご乱心。』
お詫びに甘栗甘の最高級羊羹なんてどうです?
置いて行け!とドスの聞いた声が響き黒凪が笑って綱手に近付いて机の上に置いた。
イライラした綱手の目を見た黒凪はまたにっこりと笑う。
『ささ、お茶でも飲んで落ち着いてください』
「誰の所為でイラついてると思ってる!!」
『あははは』
「綱手様落ち着いて!」
ガチャ、と扉が開きゆっくりとカカシが顔を覗かせた。
あのー…、と間延びした声を掛けられた綱手はカカシを物凄い眼光で睨み付ける。
完全にとばっちりではあるが睨まれたカカシは一瞬固まり静かに扉を閉めようとした。
しかしそれを許さないのは黒凪で。
『ちょーっと待ってねえカカシさん。』
「今度はカカシを巻き込んで話を誤魔化すつもりか!」
『いやいや、誤魔化すつもりなんてこれっぽっちも…』
「笑顔で嘘を付くなー!」
飛んで来たティッシュの箱やらを結界で弾きながらカカシを執務室へ引きずり込む。
そうして黒凪が足で扉を閉めるとカカシはげんなりとため息を吐いた。
…大体最近の間一族は目に余る!好き勝手やり過ぎだ!
シズネに鎮められ羊羹を頬張りながら言う綱手にニコニコと笑顔を浮かべながら頷く。
その顔を見た綱手の額にまた青筋が浮かんだ。
「…ねえ、君わざとでしょその顔。」
『はて何の事やら。』
「少しぐらいは反省した顔をしろー!」
「キャー!綱手様落ち着いてー!」
いやあ、可愛い人ですねえ。
暴れる綱手を見ながら言った黒凪に「え゙」とカカシが振り返る。
…君さあ、綱手様はすごーーく年上なんだよ?もうちょっと敬いなさいよ…。
そう言ったカカシに「そうですねえ」とそれでも尚笑顔を崩さない黒凪にカカシがげんなりとため息を吐いた。
やりたい放題
(…黒凪ってさ…なんかもう無理だよ…)
(え゙、どうしたんだってばカカシ先生!?)
(勝てる気がしないよー…、なんなのあの子…)
(ええええ!?)
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