世界を君は救えるか【 × NARUTO 】
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遥かなる再会編
「――あ、もしもし閃ちゃん?」
「!」
火影の執務室がある建物の屋根の上。
そんな場所に立つ青年の声に偶然通り掛かったナルトが顔を上げた。
え?黒凪の居場所?
そう聞き返す様に言った言葉に微かに目を見開く。
「(そっか、見ねー顔だと思ったら間んとこの…)」
「…あ、そう言えば大蛇丸の所に行くって言ってたよ。」
「!?」
「え、そんなに怒らないでよ閃ちゃん。でも多分まだ近くじゃないかな、僕が火影様への連絡に行く時には準備してたし」
走り出したナルトはすぐさまサクラを探しに走り、彼女とサイ、そしてヤマトとカカシをひっ捕まえて火影の執務室へ入り込んだ。
何の前置きも無く入り込んだ第七班の姿に綱手が顔を上げ、ナルトの剣幕に微かに目を見開いた。
「綱手のばーちゃん!今すぐ俺達に里から出る許可をくれってばよ!」
「何だ急に…。何かあったのか?」
「黒凪が大蛇丸の所に向かったらしいんだ!」
此処で初めてその事を聞いたのだろう、サクラ達も少し驚いた様に目を見開いた。
大蛇丸とは彼のアジトに侵入しサスケと対峙して以来だ。
あの時は逃げられてしまったが、サスケを連れ戻す為にはなんとしてでも再び会わなくてはならない。
黙る綱手に「早く許可をくれってばよ!」と今すぐにでも命令無しで飛び出しかねない剣幕でナルトが言った。
「…、綱手様。大蛇丸は間一族の暗殺リストにも載っている人物です。大蛇丸を相手に半端な人間を間一族が送る筈がありません」
「…そうだな」
「サスケを取り戻す為にも、大蛇丸をこんな所で殺されるわけにはいかねえんだってばよ!」
綱手の目がヤマトとカカシに向いた。
しっかりナルトの手綱を引けよ。そう言っている様な目に2人が静かに頷く。
そんな2人を見た綱手は再びナルトを見上げた。
「良いだろう、間一族を追う許可を出す」
「っしゃあ!ありがとだってば…」
「但し。…間一族の邪魔を表立ってする事は禁止する」
あっちも里の任務で動いているんだ。それを邪魔する事は許されない。
ナルトが真剣な顔をして頷いた。
もしもの時は"協力する形で"動け。
彼女の言葉に全員が頷き、執務室から去っていく。
そうして彼等はすぐさま準備をして黒凪を追い始めた。
「暑いな…うん」
『あんた達は顔を見られると駄目だからねえ、その笠はしっかりかぶってて。』
ぽん、と右隣に居るサソリの頭の笠を軽く叩いた。
ヒルコに入ったサソリは舌を打つと何も言わずに歩いて行く。
今回大蛇丸に会う事になったのはサソリが大蛇丸の元へ送っていた部下と連絡を取った為だ。
本当は随分と前から連絡が来ていたらしいが、間一族の領域に入っていた為に連絡を受け取る事が出来なかったらしい。
最近は任務も任される様になって外に出る機会が増え、そこでやっと部下からの連絡に気付いたのだと言う。
『草隠れの天地橋ねえ…』
「本当に信用出来る部下なのか?うん」
「あぁ…俺の部下だった記憶は戻してある…問題ねぇ…」
『はー…。大蛇丸相手だとどうしても不安になるんだよね…』
そう言った黒凪の首元にヒルコの尾が一瞬で近付けられた。
テメェ…俺より大蛇丸の方が上だって言いてぇのか…?
チラリと黒凪の目がサソリに向けられる。
『分からないよ?実際は大蛇丸の方があんたより長く生きてんでしょ。』
「…んだと…」
「そうカッカするなよ旦那。黒凪はもしもの話をしてるだけだ、うん」
「もしもでも気に食わねえもんは気に食わねえんだよ俺ァ…」
ほらほら、尻尾降ろして。
そう言って手を伸ばした黒凪にサソリがすぐさまヒルコの尾を引っ込める。
それを見た黒凪は微かに目を見開くとへら、と笑った。
『大丈夫だよ、私は死んでも生き返るし』
「…テメェが俺の毒で死んだら胸糞悪ィだけだ…」
『あら可愛い。』
「あ゙?」
本当に殺しに掛かるヒルコの尾を結界で弾いて回避する。
そんなサソリから少し距離を取った黒凪はデイダラを挟んでヒルコを覗き込んだ。
『そう言えば聞いてなかったけどさ、なんであんた大蛇丸の事嫌いなの?わざわざ部下を送って動向を調査して殺すタイミング見てたんでしょ?』
「…別に今はそこまででもねェ」
『あ、そうなの』
「え゙。ずっと大蛇丸を殺してえって言ってたじゃねーかよ旦那…」
確かにあの野郎は気に食わねえが…今は後を追ってでも殺そうとは思わねェ…。
最も鉢合わせれば殺すつもりでは居るがな…。
ぼそぼそしゃべるサソリにデイダラと黒凪は2人して小首を傾げる。
『そもそも不思議だったのよね、他人の事なんでどうでも良い筈なのに大蛇丸に関してはあんたしつこいから』
「オイラは暁でゴタゴタがあったとした聞いてねーが…」
「…あの野郎の俺をなめた態度が気に食わなかっただけだ」
『"気にくわない"って思ったんだ?』
黒凪の言葉にヒルコの目が此方に向いた。
少なくとも暁に入った時はまだあんたも子供だったのかもね。
小さく笑って言う黒凪にデイダラの目も彼女に向く。
『…ほんと、一体何処で感情全部落っことして来たんだか。』
「……フン」
『うふふ、私に対してもしつこくなって良いのよー?』
「お前に執着する様になったら終わりだ」
サソリの言葉にデイダラが笑った。
そんなデイダラに「え゙」と振り返った黒凪はクツクツ笑うデイダラを見上げる。
「確かに黒凪にべったりの旦那なんか見たくねえな、うん」
『えー、あんたサソリが意外と純粋だって事分かってんの?』
「旦那が純粋!?」
「テメェふざけた事ぬかしてると殺すぞ…」
はいはい、殺さないでねー。
そう言ってサソリとデイダラの間に戻ってきた黒凪にサソリが舌を打つ。
…草隠れの天地橋まで後少し。
『とりあえず大蛇丸のアジトとうちはサスケの居場所の特定を最優先にね』
「…別に構わねェが、俺の用事も済まさせてもらうぞ…」
『お好きにどうぞ。さっき言った2つの情報が入れば何やっても良いよ。』
「…フン」
天地橋の上に立つ人影に目を細めてサソリがゆっくりと歩き出す。
暁のコートを羽織ったヒルコの後姿にデイダラが微かに目を細めた。
そんな顔を見た黒凪が「懐かしい?」と問うと彼は素直に頷く。
「…つかやっぱり捕まえんのかよ、イタチの弟。」
『しょうがないでしょ、依頼されてんだから。』
「誰に。」
『秘密。』
はーあ、と深いため息を吐いてデイダラが気だるげに天地橋を見る。
一方のナルト達はサイによって黒凪達の居場所を把握し少し離れた位置に辿り着いた。
ナルト達は暁の羽織を着た男に目を見開き顔を見合わせる。
「サクラちゃん、あれってば…」
「うん、サソリにそっくり…」
「…おかしいな、噂では間一族は変化や口寄せなどの基礎的な術の類はからっきしだって聞いたけど。」
ヤマトが眉を寄せて言うとナルトとサクラも再び男の背中を見る。
カカシがサイに黒凪達の様子を問うとサイは暫し目を瞑り、徐に口を開いた。
「橋の上に居る男以外だと隠れているのは2人ですね。1人は間黒凪、もう1人は笠を目深にかぶって顔が見えません」
「間一族の家紋は確認出来るか?」
「…。はい。笠をかぶっている男も間一族の家紋が入った羽織を着ています」
「…そうか」
微かに眉を寄せたまま再び橋を見る。
サソリは既に部下の前に到着しており「お久しぶりです」と言った部下の言葉と共に顔を上げた。
部下はサソリに顔を見せる様に目深にかぶったフードを持ち上げる。
見えた顔に黒凪やナルト達が微かに目を見開いた。
『…部下ってカブトの事か…』
「知り合いか?うん」
『まあね。…ちょっとキナ臭いな…。閃を連れて来るんだった。』
そう呟いた黒凪から再びサソリに目を向ける。
サソリは徐に周りの気配に意識を向けると再びカブトに目を向けた。
「つけられてねェだろうな…」
「勿論です。この場にも細心の注意を払って来ましたから。…ですがあまり長居は出来ません、いつ気付かれるか」
「あぁ…手短に済ませる…」
「よろしくお願いします」
大蛇丸のアジトの場所と…うちはサスケの情報を寄越せ…。
そう言ったサソリにピクリとカブトが片眉を上げた。
恐らくうちはサスケの情報を欲するサソリに違和感を感じたのだろう。
しかし彼は何事も無かったかの様に口を開く。
「アジトは複数あり一週単位で移動しています。今は北の湖の小島のアジトに潜伏中で、恐らくあと3日程で移動する事になるかと」
「…そこにうちはサスケも居るんだな…」
「…はい。」
雑な質問の仕方に黒凪が目元を覆う。
サソリの全身から溢れ出すサスケなんてどうでも良いと言った風な態度にデイダラは小さく笑っていた。
まあサスケの事を問う事自体が不自然な事だから、どんな態度でも構わないと言えば構わないのだが。
まだ笑っているデイダラをじと、と横目で見て黒凪が徐に口元に片手を持って行く。
『それにしても怪しいな…。まさかサソリの部下になる以前から大蛇丸の部下だったなんて事無いよね…』
「…流石に気にしすぎじゃねーか?うん」
『んー…でも大蛇丸が相手だとそんな小説みたいな話があり得る様な気もするのよね。』
サソリとカブトが出会ったのは大蛇丸が暁に入ってから少し後の事だ。
…その頃から仕組まれていたのだとしたら?
眉を寄せる黒凪にデイダラがため息を吐く。
サソリの旦那がそんな風に利用されるとは思えねえけどな。
それでも微妙な顔をしている黒凪を横目に見て再びデイダラがカブトに目を向けた。
カブトは何度か周りを見渡して警戒する素振りを見せると徐に口を開く。
「そう言えば、随分と連絡が取れませんでしたが…何かあったんですか」
「…テメェが気にする事じゃねえ…」
「…そうですね。…頼まれていた情報ですが、転生後の遺体の標本データには強力なプロテクトが掛けられていて解読は出来ませんでした」
「チッ…」
不機嫌に舌を打ったサソリに「申し訳ございません」とカブトが言った。
サソリ、とりあえず殺さない様に注意しながらカブトを捕まえてくれる?
黒凪の言葉に目を細め指をくいと折り曲げる。
しかし次の瞬間に感じ取った気配に目を見開くと一気に腕を手前に引いた。
「っ!?」
「あら、流石ね。」
傀儡の仕組みでカブトを引き寄せ、己も一気に後ずさる。
先程までカブトが立っていた位置には大蛇丸が立っていた。
サソリがまた不機嫌に舌を打ち、カブトを解放する。
「あ、ありがとうございます…サソリ様…」
「チッ…カブト…テメェつけられてやがったな…」
「…申し訳ございません。」
「懐かしいわねサソリ…。元気にしてたのかしら?」
大蛇丸が出て来たなら好都合。
黒凪が目を細め構えた。
デイダラもポーチに片手を突っ込み、サソリが指示を仰ぐように沈黙する。
サソリの隣で大蛇丸を睨みながらカブトが右手にチャクラを集中させ刃の様に尖らせた。
≪サソリ、隙を見て私が捕える。あんたは――≫
「――!」
大蛇丸に向かったと思われていたカブトが一瞬で振り返りヒルコの頭を削ぎ落す。
咄嗟に動いたサソリはカブトの一撃を避け、ヒルコの中から抜け出した。
布を頭からかぶり顔を伏せたサソリに大蛇丸がニヤリと笑う。
「…カブト…どういう事だ…」
「…すみません大蛇丸様。仕留め損ねました」
「良いわよ。サソリを一撃で殺せるだなんて最初から思っていなかったわ」
「……そう言う事か…」
ドスの聞いた低い声でサソリが呟いた。
…ホントに二重スパイだったのかよ、うん。
思わずと言った風に呟いたデイダラに「らしいね」と返して黒凪が大蛇丸を睨み呪力を籠める。
しかし途端に聞こえた「ナルト!」と言う声にピクリと動きを止めた。
「待てってばよ!」
『…は?』
「…おい、オイラ達もつけられてたみたいだぞ」
『…最っ悪…』
ああもう、と大蛇丸とカブトの両足に結界を突き刺した。
その様子に目を見開いたナルトは周りを見渡して声を張り上げる。
「黒凪!大蛇丸はサスケの手がかりだ、殺すなってばよ!!」
『あ゙、あの子私の名前まで叫んだ』
「…うざってェ奴ばっかり出て来やがって…」
「おい黒凪やべぇぞ、旦那がイラつきMAXだ。うん」
…仕方ない、元々話し合いで終わらせるつもりだったし。
立ち上がった黒凪にデイダラもため息を吐いて立ち上がり共に橋に出て行く。
大蛇丸は現れた黒凪を見るとニヤリと一層笑みを深くした。
「この可笑しな術は貴方よねえ…間さん。忍五大国御抱えの暗殺一族の登場って事は、アタシを殺しに来たのかしら。」
『生憎今日の目的はあんたの暗殺じゃない。…とは言っても邪魔が入ったからねえ』
ちょっと移動しようか。
サソリがヒルコを巻物に納め、ナルトを除いた全員を黒凪が結界で囲む。
そうして一瞬で姿を消した彼等にナルトが目を見開いて周りを見渡した。
完全に気配が消えるとカカシ達も橋に降りてナルトの隣に立つ。
「見事に逃げられたな。」
「アンタ馬鹿じゃないの!?」
「いって!」
「あんなに露骨に邪魔に入ったらそりゃあ逃げられるよ」
…でも行先の検討は大体付いてる。
そう言ったカカシに全員が目を向けた。
どうやら間一族はサスケの事を知りたがっていた様だし、恐らくサスケの居るアジトへ向かった筈だ。
そっちに向かうぞ。カカシの言葉に頷いて一斉に走り出した。
北の湖にあるアジトに辿り着き、大蛇丸の案内で中に入る。
そしてとある一部屋に入ると大蛇丸がゆっくりと黒凪達に目を向けた。
「――…丁度私も貴方と話をしたかったのよ。間一族の時期当主さん」
「…時期当主?」
「あらカブト。貴方気付いてなかったの?」
中忍試験のあの時だって後から現れた間一族の人間や周りの忍達を見ても彼女の実力は規格外。
面白そうだったから木ノ葉崩しの際にあわよくば連れ帰ろうとしていたのに。
大蛇丸の目がゆっくりと細まる。
「…貴方、木ノ葉がぐちゃぐちゃになっても現れないんだもの」
『……』
「あれは一体どうしてだったのかしら?」
『…別に。木ノ葉よりも優先させなければならないものが偶然現れただけ。』
黒凪が目を細めて言った。
脳裏にあの時の事が蘇る。
…大蛇丸が木ノ葉崩しを実行した日、火の国の中でも北端の位置で巨大な力が暴発した。
その力には覚えがあった。…弟の、宙心丸の力だった。
《おい、里はどうするんだよ!》
《構わない。里の忍に護らせる》
《…後から文句を言われるんじゃないのか》
《文句ぐらい後でいくらでも聞いてやる。…それより宙心丸だ》
あれを放っておけば世界のパワーバランスが崩れる。
間一族も扇一族も総出で其方に向かった。
まじない班の手で周りに結界を作り、宙心丸の力を結界師全員で抑え込む。
…宙心丸の力を抑え込むには随分と長い時間を費やした。
「…詳細は教えてくれないようね。」
『あんたに言ったら絶対に手を出すだろうからね。…知らない方が良いよ。あんな恐ろしいものは』
ふうん、と大蛇丸が口元を吊り上げたまま言った。
一方のサソリとデイダラは顔を隠したまま黙っている。
チラリと大蛇丸とカブトの目がそんな2人に向いた。
「…大蛇丸様、あれがサソリの本体ですか」
「……そうねえ。顔を隠しているから分からないけれど」
「…カブト…テメェいつから術を解いてた…」
「掛けられてすぐに大蛇丸様に解いて頂きました。」
あ、そう言えばさ。
黒凪の声にカブトが振り返る。
まさかサソリの部下になる前の時点で大蛇丸の部下だったなんて事ないよね?
小さく笑って問いかけた黒凪にカブトがにっこりと笑った。
「その通りです」
「…チッ、最初から仕組まれてたか…」
「ええ。ボクは元々暁なんて大嫌いでしたよ。」
「そうかよ」
殺気の1つでも飛んでくると思っていたのだろう、軽い反応にカブトが微かに目を見開いた。
そんな様子に大蛇丸がゆっくりと口を開いた。
「カブト…貴方本当に何も知らないのね。サソリは暁の事なんて何とも思っていないわよ」
「…そうでしたか」
「フン。生憎俺にはプライドなんてもんは無いんでな」
「……貴方変わったわね。その心境の変化が暁を抜けて間一族に加わった経緯にあるのかしら?」
黙ったサソリに小さく笑って黒凪に目を向ける。
貴方達は一体何をしているのかしら。…どうやら最近は暁に関わっている様ね…。
じっと黒凪を見つめて問いかけた大蛇丸に徐に口を開いた。
『うちも人手不足でね、暁を引き入れてんのよ。』
「へえ…」
『だから下手に暁には手を出さないでね。…横槍入れたら殺すよ』
「あら怖い。…そんな無茶な計画をいとも簡単にやってのける所が間一族だものね…」
実際にサソリと、そこまで言って大蛇丸の目がデイダラに向いた。
もう1人の新人を無事に引き入れた様だし。
ククク、と心底面白そうに笑った。
「私達にとっても暁は邪魔な存在なのよ。好きにやって頂戴。」
『そう。ならよかった。』
「話はそれだけかしら?」
『ううん、あともう1つ。』
うちはサスケに会わせてくれる?
にっこりと笑って言った黒凪に大蛇丸が目を細める。
黙った大蛇丸に黒凪がアジトに探査用の結界を広げた。
アジト全体を飲み込んだ気味の悪い気配に中に居る全員が思わず眉を寄せる。
『――見つけた。』
眠っていたサスケが目を見開いてゆっくりと起き上がる。
ピクリと黒凪が眉を寄せた。
…ああ、邪魔なのも来たね。
黒凪の言葉に大蛇丸とカブトが入り口の方向に目を向ける。
『ナルト達も来てる。…さっさと身支度しなよ、大蛇丸』
「あら、逃がしてくれるの?」
『うん。まだ好きに動いてて良いよ。…でも時が来れば』
「…大蛇丸」
掛けられた声に振り返る。
サスケの目がゆっくりと黒凪に向けられ、捉える。
そして徐に細められた。
「…何処か覚えのある気味の悪さだと思った」
『大きくなったねえ』
「…黒凪」
何故歳を取っていない。
この姿が1番動き易いのよ。
淡々と会話をする黒凪とサスケを黙って見守るデイダラとサソリ。
途端にサスケが目を細めた。
「――!」
「殺気垂れ流してんじゃねーよ。うん」
「…ガキが」
音も無く踏み出して刀に手を掛けたサスケの腕や足に一瞬でサソリのチャクラ糸が巻きつき、抜かれかけた刀の柄尻の部分をデイダラが足で止める。
一瞬で動いた2人にサスケの目がチラリと向いた。
「(…千鳥流し)」
「いって!」
「…オイ、止めておけ。腕が千切れるぞ」
痺れに耐え切れずデイダラがサスケから離れ、動こうとするサスケをサソリが何とも無い様に拘束し続ける。
傀儡の身体に雷は通らない。チラリとサソリを見たサスケは刀を力任せに抜いて糸を切った。
サスケの腕の部分の着物には血が滲んでいる。
「…ずっと気に食わなかった。お前のその目…」
『?』
「戦う事に必要性を感じていない目だ…。悲しみを、憎しみを知らない」
振り下された刀を結界で受け止める。
ぐっとサスケの顔が近付き視線が交わった。
サスケの瞳の奥には増悪が見える。
「…閃や限は元気か?どうせ今ものうのうと生きてるんだろ」
『うん。元気よ。』
「お前はどうせ、大切な人間を殺された事なんて無いんだろうな」
今此処で、あいつ等を殺せば…
チラリとサソリ達に向けられたサスケの目に黒凪が目を細める。
お前のその胸糞悪い目も変わるのか?
薄く笑みを浮かべて言ったサスケに黒凪が呆れた様に笑った。
『別に君と不幸自慢をする気はないけどさ。』
「!」
ぶわ、と溢れ出したどす黒い力に目を見開いてサスケが飛び退く。
黒凪を覆う絶界に大蛇丸はニヤリと笑みを浮かべた。
サスケの目が黒凪に向く。
伏せられていた彼女の目がサスケを映した。
『私は一度、大切な人を全員失った事がある。』
「……」
『だけど此処で…この世界で再び会う事が出来た。…だから今は誰1人欠ける事の無い様に必死に戦ってる』
まあ君の大切な人が戻って来る事はもう無いだろうけどさ。
親にも愛されず、大切だと思った人を救えず。
…そんな事を繰り返していたら私はこんな風になったんだ。
彼女の心の奥深い場所に根付くどす黒い部分を目の当たりにしているサスケは何も言わない。
『…うちにはこんな風な痛々しい奴ばっかりなんだよ。そんな人間を何人も見て来た』
「…」
『あんたもこうなる。…絶対に。』
馬鹿な選択したよ、あんた。
眉を下げて言った黒凪にむっと眉を寄せて刀を振り上げる。
ふっと解かれた絶界に瞬時に反応してデイダラがサスケの前に割り込んだ。
目の前に放り投げられた小さな起爆粘土にサスケの目が向く。
黒凪がすぐさま構えた。
「喝ッ!」
巨大な爆発にアジトに侵入していたナルト達が顔を上げる。
一方のデイダラとサソリは黒凪の結界に護られて無傷だった。
サスケ、大蛇丸、カブトは爆発を回避し崩れた屋根から外に出ている。
『大蛇丸。ナルト達が近付いて来てる』
「…あらそうなの。じゃあさっさと御暇しようかしらね」
「待て。あいつを殺す」
「無理だよサスケ君。君が彼女を殺すのは無理だ」
サスケのイラついた目がカブトに向いた。
すると「サスケ」と黒凪が声を掛けサスケが振り返る。
下に立っている黒凪はにっこりと笑った。
『あんたを救うのは私じゃない』
「…何?」
『もうちょっとだけ待ってな。…その内あんたも救われる』
そうしたら迎えに行ってあげる。
サスケが怪訝に眉を寄せる。
黒凪の目がチラリと大蛇丸に向いた時、サスケの名を叫ぶ声が微かに聞こえた。
『…サソリ、デイダラ。適当に変化して』
「サスケー!!」
ナルトの声にすぐさま変化するサソリとデイダラ。
そんな2人から目を逸らした瞬間にナルトを筆頭に第七班がサスケの前に現れた。
サスケはそんなナルト達を見るとすっと目を逸らして消えて行く。
「くそ、また逃げられちまった…!」
『て言うか君達何?私等をつけて来たの?』
「ゔ、そ、それは…」
「そ、そんな事より!」
サソリの顔を覆った布をサクラが一思いに剥ぎ取る。
その下に見えた顔はサソリとは全く違った顔をした青年だった。
思わず固まったサクラは安堵した様に息を吐き、黒凪の視線にビクッと肩を跳ねさせる。
『…あのねえ』
「いやー、君達が大蛇丸の所に向かったって聞いてさ。気になって付いて来た感じ?」
『…カカシさん。またサスケの時みたいに大蛇丸を殺すなって言うつもりですか?』
「…せめてサスケを取り戻すまでは」
駄目です。私達の仕事を邪魔しないでください。
即座にそう言った黒凪に「ゔ」とカカシも固まった。
じと、と全員を見渡して徐にため息を吐く。
『…まあ今回は良いとしましょう。でも次は在りませんからね。』
「お、おう!悪かったってばよー…」
『…帰るよ。』
黒凪の言葉に何も言わずにサソリとデイダラが頷いて彼女について行く。
その背中を見てカカシとヤマトが顔を見合わせた。
「…妙ですね。大蛇丸を取り逃がしたにも関わらず、あの態度。しかもアジトの捜索はしない様ですし」
「そーだねえ。ま、間一族は昔から何考えてるか分からない一族だし。」
「……。」
通常運転。
(…相変わらずだな。お前の相手をイラつかせる会話)
(図星突いたら皆基本的に怒るだけよ。)
(態と図星を突きに来るから厄介なんだよな、うん)
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