世界を君は救えるか【 × NARUTO 】
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不死の破壊者編
「おいコラ角都!折角啖呵切ったのに早速1匹殺られてんじゃねェかよォ!」
「煩い黙れ。3体でも事足りる」
「んだと!?つか俺の生贄連れ帰ったあのハザマだかスキマだか言う女は来てねェのかオラァ!」
「(どうやら俺の雷切が仕留めたのは奴の身体から出て来た途端に倒れたあの仮面らしいな…)」
喚き散らす飛段と冷静な様子で立っている角都。
彼等を遠目に見ていたカカシはネタの分からない角都の能力に微かに眉を寄せた。
いのの能力によって暁の2人の動向を探り、隙を見て攻撃を仕掛けて最初に角都を仕留める。
それがまず1つ目の作戦だった。
作戦通りにカカシが角都の心臓を雷切で貫いたが、当の角都は平然とした様子で立っている。
「まあ良いぜ…さっさとコイツ等ぶっ殺して引き摺り出せば良いんだからなァ…。オイ角都!いつもので行くぜェ!」
「…フン、良いだろう」
ニヤリと笑って飛段が走り出し、カカシに鎌で攻撃を仕掛ける。
シカマルによって飛段に血液を奪われてはいけない事を知っているカカシはクナイで鎌を上手く往なしながら攻撃を避けて行った。
すると飛段の背後に角都の身体から現れた仮面の1つが現れ角都が印を結ぶ。
「風遁、圧害」
「――!」
飛段の不死身を利用して彼ごと放たれた巨大な一撃。
カカシは思わず反応が遅れ腕を目の前で交差させて攻撃をまともに受けた。
その様子を上空から見ていた黒凪は結界でカカシを受け止め竜巻から護る様に周りを結界で囲む。
結界に気付いたカカシは顔を上げるが吹き荒れる竜巻の影響で視界が悪く何も見えなかった。
「ほう、中々の威力だな。」
『あー…やっぱり実力的には角都も中々…』
止んだ風に合わせて結界を解き、カカシを自由にする。
そして角都に目を向けると彼の目はカカシの安否を心配しているシカマルとチョウジに向けられた。
角都の側に立つ仮面の1つから微かに放電される。
その様子を見た、いのは仮面に蓄積されるチャクラに気付くと居ても立っても居られず2人に向かって走り出した。
「シカマル、チョウジ!あの一撃はヤバい、逃げて!」
「雷遁…、偽暗」
巻物を取り出して開こうとするが間に合わない。
槍状の雷が物凄い勢いでシカマル達に迫って行った。
そんなシカマル達の前に降り立ったカカシが攻撃を受け止めようと両手を伸ばす。
しかし攻撃が当たる寸前にカカシの前に無道が降り立ち目の前に巨大な黒い玉を出現させた。
「!?(こいつは…)」
『無道さんに任せてれば大丈夫です。…あの玉は受け止めるっていうより"食べる"ので。』
カカシの隣に降り立った黒凪が笑って言った。
彼女の言う通り、黒い玉に引き込まれる様にして消え去った雷撃にいの達が安堵の息を吐く。
角都はその様子を無表情に眺め、微かに眉を寄せた。
「…確かにこの世界にいる人間にしてはかなりの手練れだな。」
『でも蓄えられない訳じゃないですよね?』
「勿論だとも。」
そう言って黒凪を見下した無道の目がチラリとシカマル達に向いた。
ごくりと生唾を飲み込むシカマル達を見た無道がくるりと体を向けて彼等にニコッと笑う。
そんな無道にいのとチョウジは驚いた様に固まった。
「いやあ、初めましてだな。俺は間一族の夜行所属…かな?」
『はい、夜行所属です。』
「…の、無道と言う者だ。今日はどうぞよろしく。」
『あ、私達の方にもあの2人を始末してくれって依頼が入ってね。今日は私達と貴方達の任務が偶然かぶったわけです。』
火遁、頭刻苦。
巨大な炎が迫り「おおっと、」そう軽い調子で言って無道が受け止めた。
その熱気を背中に感じながらも黒凪は着物の中を探り「あ、見つけた。」と紙を1枚取り出す。
そんな呑気な黒凪の様子にいのもチョウジもどんな顔をすれば良いのか分からない様子だった。
『はい、これが証拠。なので私達も君等の弔い合戦に参加します。戦力的にも中々ピンチだし良いでしょ?』
「…(確かに、間一族の2人が居るだけで戦況は一気に…)」
「やっぱテメェかァ!!」
炎の中を笑顔で走り抜けて来た飛段が黒凪に鎌を振り降ろした。
それを結界で受け止め、黒凪がゆっくりと顔を上げる。
ギリギリと結界に鎌で圧力を掛ける飛段はその顔を見ると一層笑顔になった。
「成程なァ…さっきの段取りでコイツが死ななかったのもテメェの仕業だろ!なァ!?」
『あー、君には色々と言いたい事あるんだよねぇ』
「ゲハハハァ!俺にも山ほどあるぜェ!!」
鎌を持ち上げて結界の無い横から振り降ろす飛段に同じ様にして結界で攻撃を塞いで走り出す。
角都の術を全て食い尽くした無道の目が黒凪に向いた。
足が壊滅的に遅い黒凪はすぐに飛段が追いついて行き、鎌をすぐ側で振り降ろされている。
飛段は運動神経の悪い黒凪に片眉を上げ一旦足を止めた。
「何だァ?テメェ足すんげー遅ェな。」
「(そうだ、黒凪の運動神経はアカデミーの中でもナルトを抑えてビリだった!)」
「ああそうだった。君は運動神経が壊滅的だったな、黒凪ちゃん」
『え、何その察した様な顔。』
じーっと黒凪を見ていた飛段は「あ゙ー…」と気だるげな声を発して後頭部を掻いた。
なんなんだよ木ノ葉はよォ…。楽しませてくれるかと思ったら弱ェし…。
ピクリとシカマル達が眉を寄せた。
「大体あの髭野郎も…、…あ、木ノ葉って土葬か?あの賞金首の死体はどーなったァ?」
「!」
「あの野郎も見かけ倒しっつーか…最初は勢いが良いのに後が駄目っつーか…。あ゙ーだりぃ。」
「土葬なら掘り返す。そして換金する」
ほーら言うと思ったぜ!これだから角都はよォ…。
ぐっとシカマルが拳を固めて目付きを鋭くさせていく。
んでェ?お前等は敵討ちのつもりで来たのかァ?ご丁寧にスキマって奴も呼んでよォ。
『え、ちょっと待って。はざま。はざまだから。』
「あ?…あー、ハザマ。ハザマなァ」
「っ、…テメェ…!」
「んで何だっけ?…あ、敵討ちの話か。そうそう、お前等じゃ役不足だって言いたかったんだよ!」
お前等みたいな弱い奴等じゃ仇撃つどころかあのクッソ弱ェ髭野郎と一緒に棺桶行きだってなァ!
アスマ先生を悪く言うなぁ!!
耐え切れずに言ったチョウジの肩をシカマルが掴んだ瞬間、黒凪の結界が飛段を真正面から殴り飛ばした。
「いってぇ!またその箱でぶん殴りやがっ…」
『人の痛みを知れ!』
「…あ?」
『あんたはまだ本当の痛みを知らない。…その痛みも知らないガキに負ける気はないね。』
予想していなかった言葉に固まっていた飛段はやがてすぐに笑い始めた。
俺は誰よりも痛みを知ってる人間だァ…。
そう呟きながら立ち上がり、側に転がった鎌を手に取る。
「意味分かんねェ事喚いてんじゃねェよこの無神論者がァアア!!」
ぐっと眉を寄せ、身体に蓄えた力を流す。
すぐさま黒凪の手助けに回ろうとカカシが走り出すが、飛段の攻撃を紙一重で躱した彼女に思わず足を止めた。
そして黒凪はその場で鎌に足を掛け飛段の顎を蹴り上げる。
「!(力を身体能力に回したか…)」
「え゙、なんで?なんで黒凪があんなに動けてるの…?」
「…これも間一族の力なのか…?」
ひょいひょいと軽い身のこなしで飛段から離れた黒凪は無道に目を向けた。
角都はよろしくね。そんな彼女の声に無道は何も言わず小さく笑みを浮かべて頷く。
途端に黒凪の真上から鎌が迫りまたそれを数センチ動いただけで回避した。
それを見たカカシは眉を寄せ黒凪の援護に回る様に飛段に向かって行く。
ニヤリと笑った飛段は走り出したカカシに目を向け、木を駆け登るカカシについて行った。
『…結。』
「おおっとォ!」
「…!黒凪、後ろだ!」
攻撃を仕掛ける飛段にカカシの援護をする様に結界をぶつけていく。
そんな中で角都から出て来た仮面の内の1体が黒凪に炎の玉の様なものを吐き出して行った。
それを横目で見つつ飛段への攻撃の手は緩めない。
術を発動しながら攻撃を避ける黒凪の着物の袖は攻撃を掠めて若干焦げていた。
「(黒凪の奴、攻撃を恐れてないのか…?)」
「ヒャッハァ!」
飛段の背後から雷の攻撃が迫る。
それを回避し、また微かに眉を寄せた。
似ているのだ。飛段と黒凪の戦い方が。
まるで万が一にも攻撃を受けても構わないと示している様なギリギリの戦い方。
一方の無道は角都から繰り出される拳や蹴りを避けつつシカマル達へ向かう仮面からの攻撃を黒い玉で相殺して行った。
「…フン、随分と面倒な戦い方をする…」
「残念な事に我々は里の忍とやらを護らなければならない立場にあるのでね」
無道を援護する様にシカマルの影が角都に襲い掛かる。
一旦離れて行った角都を見た無道は距離を取ってシカマルの隣に移動した。
「気付いているとは思うが、奴には心臓が合計で5つある。今は1つ潰されているがね。」
「ええ、気付いてますよ…っ」
「って事はあと4回殺さなきゃならないの!?」
「そんな…」
飛段の方に向かっていた雷の仮面が近付き攻撃が降ってくる。
それを黒い玉で飲み込みながら「あぁちなみに…」と振り返った途端、側に立っていたいのとチョウジが角都の手に首を掴まれ引き摺られて行った。
「…、どうやらチャクラとやらが宿る経絡系ごと心臓と共に奪う事で性質変化も5つあるらしい。あぁついでに言っておくと奪ったのは奴が戦ってきた敵からで…」
「んな事よりいのとチョウジを…!」
「もうやっている。」
角都の腕と腕を繋いでいる触手を黒い玉をカッターの様に平たく圧縮させてスパッと切り裂いた。
いのとチョウジが地面に倒れ込み、切り裂かれた触手が伸びて落ちた腕とを繋ぐ。
肩で息をして咳き込む2人を遠目から見て無道が声を掛けた。
「おーい、戻って来られるかい?」
「っ、げほっ」
「…は、…っ」
「…無理そうだな。」
シカマルが影を伸ばしていのとチョウジに向かわせる。
しかし角都の拳がシカマルに迫り腕を交差させるがその威力に無道の影から放り出された。
無道の目がチラリとシカマルに向いた時、黒い玉に掛かっていた圧力がふっとなくなり顔を上げる。
雷の仮面がシカマルに攻撃を始めシカマルが走り出した。
「…、ふむ。敵に忍を護らなければならない事を言わなければ良かったな。」
「きゃあ!」
「っ、うぐ…っ」
「!…やれやれまたか…」
またしても蹲っていたいのとチョウジが角都に捕まり首を締め上げられる。
その様子を困った様に見た無道の隣に仮面の攻撃を避けて来た黒凪が着地した。
無道さん、あの炎の奴止めてて下さい。
そんな黒凪の声より先に迫ってきた炎を受け止める。
「どうするんだね?正直俺は忍達が邪魔で仕方がないんだが。」
『それうちの人間みーんな言いますよね。』
「ぐあっ!」
『ん?…あ。』
カカシが飛段の鎌に殴られ倒れ込む。
ニヤリと笑った飛段がそんなカカシの身体を真っ二つに鎌で切り裂いた。
しかし木の下から走り出したカカシの姿に「あ、影分身…」と呟き角都に目を向ける。
すると木の上でもボンッと消えたカカシに飛段の「ハァ!?」と言った間抜けな声が聞こえた。
『んじゃあシカマルの援護に行きましょーか。』
「分かった。」
炎を受けとめつつも黒い玉をシカマルの方に向かわせ、迫った雷の攻撃を受け止める。
枝分かれした攻撃は黒凪が結界で受け止めた。
それを見たシカマルは巻物を取り出しチャクラを流し込んで巻物から水が溢れ出す。
黒凪と無道はそれを見ると角都の足元にまで水が向かった所で攻撃を受け止めていた玉と結界を消し去った。
「っ、ぐ…!」
途端に水に雷が直撃し水の上に立っている角都が感電した。
身体の痺れに角都がぐったりとした途端に腕を無道が切り裂き落ちたいのとチョウジを結界で受け止める。
続けてシカマルが起爆札の付いたクナイを投げ角都が回避する為に走り出した。
『わ、危なっ』
起爆札がいの達の方向へ進んだ為黒凪が結界で囲み中で爆発させる。
そんな中でシカマルとカカシがいのとチョウジを抱えて無道と黒凪の側まで退避した。
角都の触手が再び両腕を元に戻す中、カカシと戦闘を行っていた飛段も角都の隣に戻って来る。
「おいおい角都さんよォ、見事にやられてたなァ」
「影分身に気付かない貴様に言われたくはないな」
「あっちゃー、見てた?」
余裕の表情で会話をする飛段と角都を警戒する無道、黒凪、カカシの背後でシカマルがいのとチョウジに目を向ける。
咳き込む2人に「大丈夫か?」と声を掛けると2人はしっかりと頷いた。
「どうする、シカマル」
「…引き離しましょう。不死身の方をどうにか捕まえて、マスクの方を集中攻撃する」
「じゃあ私が引き離す役目をするわ。心転身の術で捕まえれば…」
「駄目だ。失敗すると身体に数分間は戻って来られない…リスクが大き過ぎる。」
じゃあ残りはシカマルしかないね。
黒凪の目が向くと彼は小さく頷いた。
俺が影真似で縛って引き離す。あの役も、俺がやります。
"あの役"と言う言葉に黒凪が微かに眉を寄せるが、時間が無い為何も聞かずに前を向いた。
「だがどうやって縛る?どちらにせよ陽動は必要だ」
『じゃあそれを私がやる。』
「!」
『元々飛段は私、角都は無道さんってこっちでも決めてんの。…構わない?シカマル』
黒凪を見たシカマルが頷いた。
カカシも納得した様に小さく頷くとポーチから何かを取り出しシカマルに手渡す。
その何かをしっかりと受け取ったシカマルは黒凪に目を向け共に歩き出した。
前に出て来た黒凪とシカマルを飛段と角都が黙って見据える。
「…行くぞ、黒凪」
『連携はアカデミー以来だねぇシカマル。』
影真似を発動し飛段に向かわせる。
そうして走り始めた飛段の行き先に結界を設置し彼の進む道を限定させていった。
それを見た角都にはカカシが攻撃を仕掛け、無道が角都の仮面を抑止して行く。
「そんなに俺と俺の鎌が怖いかよォ、あぁ!?」
『結。』
「っ…、」
アカデミーでの演習の日々がシカマルの脳裏に過る。
毎回の演習でメンバーが変わる中、黒凪と限が組んだ時だけは負けなしで。
何年も共に戦って来たのではないかと錯覚してしまう程の息が合った連係プレイを見せていた。
結界が飛段の前に突発的に現れ、それを予測しながら影を伸ばしていく。
《すげー、限も黒凪もなんかすげー》
《(あんな急に出て来る箱に限が反応してんのか…?)》
《…あ。ごめん》
《チッ》
ボソッと呟かれた黒凪の言葉、そして限の舌打ち。
それを見たシカマルは"黒凪が限に合わせている"事に気が付いた。
しかし限も自分の思うままに動くだけではなく、予想外の場所に作られた結界に瞬時に反応する程の力量を持っている。
《(あーいうのが本当の連携って奴なんだろうな…)》
子供心に思っていた。あんな風になれたら、きっと忍になっても大丈夫なのではないか。
あんな風になれたら。
――あ、ごめん。
ボソッと呟かれた彼女の声に小さく笑みを浮かべ、影を操作する。
黒凪の驚いた様な目がチラリと自分に向けられた様な気がした。
《(あんな風になれたら…怖いもんなんてねーんだろーな…)》
「…はは、確かに。」
『ん?』
「いや、」
何よ、と笑い交じりに言った黒凪がシカマルの背を叩く。
はっと顔を上げると飛段は木の上、彼の足元から鋭い結界を作って足を貫いた。
ぐらっと揺れた身体の下にまた鋭い結界を作り体を突き刺す。
血を吐いた飛段は伸びる影に目を向け、鎌を木に引っ掛け結界から身体を抜いて鎌を足場にしてから走り出した。
「いってー…、あの女ぜってぇ殺…」
「終わりだ…!」
「な、」
シカマルが飛段の側に駆け寄り拳を振り上げる。
背後に飛ぼうと動いた飛段の背中部分に結界を作り、胸元の武器に伸ばそうとした腕を結界で固定した。
残ったのは左手。左手は咄嗟にシカマルの拳を受け止め、2人はそのまま離れて行く。…影を繋げて。
「影真似、成功。」
『…あの子、よく背中叩いただけで分かったなぁ…』
「っ、テメェ…!」
「んじゃまぁ、アンタのお気に入りと俺の3人で楽しい散歩と行こうぜ。」
走り出したシカマルと飛段について行く様に黒凪も走り出す。
森に入り、徐々に里の方向へ向かっていた。
黒凪は徐に影の中に居る鋼夜に声を掛ける。
鋼夜は臭いを嗅ぐと目を細め口を開いた。
【…鹿の臭いが近付いている。里にある奈良一族の土地に向かっているな】
『え、そんな所あったっけ?』
「おいコラテメェ!俺と角都を引き離すつもりかよ!」
「……」
何も答えないシカマルに飛段の額に青筋が浮かぶ。
黒凪は徐に足の速度を上げてシカマルの隣に並んだ。
シカマルの目がチラリと黒凪に向く。
『ね、あの役目って何?』
「…耳を貸せ」
走りながら耳を近付け、シカマルが小さな声で説明し始める。
予めカカシが取っておいた角都の血液を飛段に取り込ませ、呪いを使わせて角都の本体の心臓を潰す。
それがシカマルが最初から考えていた作戦だったらしく、その作戦を聞いた黒凪は内心で舌を巻いた。
『…あぁ、確かに単細胞が相手なら出来るかもね』
「……」
『でもまだまだ最高に焦ってはないからなぁ』
黒凪が飛段を見てそう言い、シカマルが微かに目を見開いた。
あいつに本当の痛みってやつを教えてから殺そうよ。
彼女の言葉に怪訝な目を向けているとにっこりとした笑顔が返って来る。
自信がある時の表情だ。俺はこの顔を知っている。
「…無理そうならすぐに作戦に移るぜ」
『はいよ。』
「(でも正直、コイツが始めた事が失敗した例を俺は知らないんだよな…)」
そうして目的の場所に辿り着き、シカマルが周辺に起爆札の付いたワイヤーを張り巡らせる。
それが終わった頃に影真似が自然と効力を切らし、消えて行った。
飛段に既に自分は戦力外だと見せる為にシカマルは力尽きた様に座り込む。
その前に黒凪が立って飛段を見据えると彼はニヤリと笑った。
「ありがてェぜ…ずっとムカついてたこのガキとサシで殺り合えるんだからなァ!!」
『!』
胸元から棒状の槍を取り出して振り回し始めた。
それを黒凪は軽く避け続け「あのさ」と飛段に声を掛ける。
飛段は槍を振り回す腕を止めず「あぁ!?」と律儀にも返答を返した。
『私が言った本当の痛みっての、何か分かった?』
「だから言っただろォが!俺は誰よりも痛みを知ってる人間だってなァ!」
結界で攻撃を受け止め、飛段の横っ面を結界で叩く。
今のが君の知ってる痛みでしょ?
薄く笑みを浮かべて言った黒凪に飛段が再び槍を振り上げる。
それを紙一重で避け、地面に突き刺さった部分を足で踏みつけた。
『これなんだか分かる?』
「あ?――!」
飛段が黒凪の手にぶら下がっているネックレスを見て目を見開いた。
呪いを成功させる為に必要なサークルと同じ形のネックレス。
恐らくジャシン教のネックレスなのだろう、飛段が見ている前で胸元に仕舞った。
『本当の痛みにあんたが気付く事を祈るよ。』
「あぁ!?」
『ジャシン教の神は死んだ。もうあんたに神のご加護は無い』
「…ククク…急に何意味わかんねー事言ってんだテメェはァ!!」
飛段が振り上げた槍にシカマルが目を見開く。
ブンッと振り降ろされた槍が黒凪の腕を傷付けた。
シカマルは目を見開いて立ち上がろうとするが、黒凪の目を見て動く事を止めた。
黒凪の血を舐め取り、身体に模様が浮かび上がる。
そして飛段はすぐに己の手を傷付け血で地面に図面を描いた。
「喜べクソガキィ…。これでテメェも本当の痛みを知るんだよォ!!」
『本当の痛みを知らないのはあんただよ』
「…まぁたそれかよ…」
『私は死なない。』
だったら試してやるぜェ!
笑いながら振り上げられた槍が真っ直ぐに胸元に向かって行く。
グサッと槍が突き刺された途端に黒凪の胸元にじわ、と大量の血が滲みだした。
ごふ、と血を吐いて黒凪が項垂れる。
「ゲハハハハァ!神の裁きだァ!ジャシン様…は……」
ゆっくりと黒凪の頭が持ち上がり、その瞳が飛段を捉えた。
シカマルはその背中を唖然と見つめている。
背中にも血が滲んでいるのだ。確かに先程の飛段の攻撃は黒凪にもリンクしている。
飛段の瞳が揺れ、再び心臓部分に槍を突き刺した。
また血が溢れ出し、黒凪の口から大量の血液が吐き出される。
しかし数秒後には何事も無かったかのような顔で、飛段を見るのだ。
「んだテメェは…」
『…だから言ったでしょ。ジャシン様は死んだって』
「ふ、ざけんなァアア!!」
ざくざくと物凄い勢いで胸元を刺していく。
痛みに顔を歪め、下を向く黒凪の表情は確かに苦痛に満ちていた。
痛みも感じている、傷も出来ている。…死んでいる筈なのだ。
「なんで死なねェ!!」
「(…なんで、)」
『…あ゙ー…、痛い。』
「なんでテメェは…!!」
何で死なない、黒凪…。
シカマルの唖然とした目と彼女の目が合う。
もう彼女の着物は血だらけで、でも彼女は死なない。
…いや、違う。
シカマルが見ている前で彼女の目の光が失われた。
しかしやがて息を吹き返した様に目に光が宿る。
「(死んで、何度も生き返ってる…?)」
「嘘だ…ジャシン様が死ぬ筈がねェ…!」
『だったらさ。…ジャシン様ってのがあんたを見捨てたんじゃないの。』
「あぁ!?」
私1人殺せないあんたを、見捨てたんじゃないの。
口元から血を流しながら言った黒凪に飛段の見開かれた目が向いた。
ふざけんなァ!そう言って黒凪の肩を槍で突き刺した。
図面から出た飛段は黒凪をめった刺しにする。
そうして飛段自身も返り血で血塗れになり、地面に広がった血にシカマルも眉を寄せた。
「っ、…ジャシン様が…裏切る筈ねェ…」
「――…ぁ、」
「ジャシン様は……」
シカマルの微かな声に飛段が振り返る。
血塗れになって倒れていた黒凪がゆっくりと起き上がった。
そして顔の血を片手で拭おうとして、その手も血に濡れている事に気付くと気だるげに息を吐く。
「…ん、でだよォ…!」
『痛いでしょ。』
黒凪の声に飛段がピタリと動きを止めた。
ぽん、と自分の胸元を叩いて、再び言った。
痛いでしょ。と。
その言葉を聞いて唖然と飛段が胸元に手を持って行く。
そしてぐっと服を握りしめるとシカマルを見て槍を振り上げた。
「テメェなら…!!」
「っ!」
シカマルが咄嗟に後ろに下がるが、ピッと舞った血液に黒凪が目を見開く。
そして彼の頬を見ると斬られたように血が頬に付着していた。
焦った様に血を舐め、先程書いた図面の上に飛段が戻っていく。
黒凪はシカマルの目を見ると安心した様に眉を下げ、飛段を睨み付けた。
「痛みを知れ…神の裁きを受けろォ…!!」
飛段が一思いに胸元を突き刺し、シカマルが胸元を抑えた。
そして声も出せず倒れて行ったシカマルに黒凪が駆け寄ろうと立ち上がる。
しかしその前に飛段が立ち塞がった。
「あいつは死んだ…テメェだって分かってんだろォが…」
『……。』
「なぁ!?そうだろうが――」
ザッと飛段の背後で地面を踏みしめた音が響く。
目を見開いた飛段が振り返った途端、シカマルがクナイを振りおろし飛段の首を切り裂いた。
倒れ込んだ飛段をすぐさまシカマルが影を巻き付け縛り付ける。
飛段の目が生きているシカマルに向いた途端、彼の眉が寄せられた。
「テメェまで…生きてんのかよ…!」
「…あんた、ホントにその神って奴に見放されたな」
薄く笑って言ったシカマルに黒凪の目が向いた。
飛段には肉体的な痛みのダメージは殆ど無いと言っても良いだろう。
しかし今飛段は黒凪によって初めて与えられた精神的な苦痛を味わっている。
その痛みを今まで知らなかった飛段は酷く動揺し、今。
「…っ、んでだよ…!」
その"痛み"に顔を歪めている。
泣きそうなその表情は今まで飛段が見せた痛みに耐えるどの顔にも当て嵌まらない。
その表情は黒凪の言う"本当の痛み"を知った顔だった。
「…それが"痛み"だ」
「!」
「それが大事なモンを失うって言う、ホントの痛みなんだよ」
シカマルがチャクラを練り、飛段に影寄せの術で周りに張り巡らせた起爆札付きのワイヤーを引き寄せる。
そうして体中を起爆札付きのワイヤーで拘束された飛段は覇気のない顔でシカマルを睨み付けた。
もう喚く事はしない。…疲れたのかもしれない。
そんな飛段を見てシカマルは予め仕掛けておいた罠を発動させ、飛段の足元に深い穴を作った。
「…勝手に疲れんなよ。」
「……」
「アスマを殺されかけた俺や、あの人の奥さんも疲れてんだ。あんたが今まで殺した人間を大事に思ってた人も、今のお前みたいに疲れてんだよ」
お前は今までそれすらも理解せず、自分の気分の赴くままに他人を殺して来たんだろう。
シカマルがアスマのライターを取り出して火を灯す。
その様子を黙って見て居た黒凪は背後に近付いてきた鹿達に目を向けた。
【やはりな…此処は奈良一族だけが立ち入る事を許されている場所だ。】
『…そう。』
掘り返すのに時間が掛かりそうね。そう呟いて飛段を見上げる。
シカマルがアスマのライターを飛段に向かって放り投げた。
ライターの火が起爆札に引火し、一気に大きな爆発を起こす。
『…え、大丈夫かなこれ…。菊水さん治せるかな…』
【さあな】
爆発が収まり、シカマルと共に穴を覗き込む。
中には見事にバラバラになった飛段の身体が散らばっていた。
その中から頭を探し出すとゆっくりと両目が開く。
『(あ、良かった生きてる…)』
「じゃあな。暗い穴の底で、ずっと自分の罪を悔い改めてろ。」
穴の側面に起爆札を放ち、爆発の衝撃で瓦礫が飛段に降り注いでいく。
そうして穴が完全に塞がると、黒凪の影から飛び出した鋼夜の尾が土をえぐり爆発の衝撃で埋まっていたライターを掘り起こした。
そして尾でシカマルの前へ放り投げる。
ライターを掴んだシカマルは黒凪を振り返ると小さく笑い、ライターに目を落とした。
「…アスマの所に、持って行かねえとな」
『それじゃあまたうちに見舞いに来ないとね。』
「あぁ、そうだな。…とりあえず皆の所に……、」
シカマルの言葉が止まり、黒凪をじっと見て固まった。
血塗れになった顔をごしごしと片手で拭う黒凪の髪が少し伸びている。
それに身長も少し伸びた様な気がした。
シカマルの怪訝な顔に気が付いた黒凪は小さく笑い、彼に手を伸ばす。
『悪いんだけど、戻るなら私を抱えて行ってよ。』
「…は?」
『もう速く走れないの。…お願い。』
「…分かった」
黒凪を背負ってシカマルが走り出す。
すると増援で向かっていたサクラとサイに出会い、シカマルが小さく笑顔を見せた。
しかしサクラとサイは背負われている血塗れの黒凪の方が気になったらしく、目を見開いた。
「え、黒凪!?血塗れじゃない!ちょっと待って、治療を…」
『別に良いよ、何処も怪我してないし。』
「嘘よ、そんな血塗れで…」
『良いから。とりあえず戻ろうよ』
ほら早く、と有無を言わせぬ声で言う。
小さく頷いたシカマルにサクラも眉を下げつつ頷き、元の道を戻り始めた。
サイはシカマルに背負われた黒凪に目を向け、微かに目を細める。
「間一族の人ですよね」
『ん?…誰?』
「サスケ君の代わりに第七班に入ったサイよ。サイ、この子は黒凪。」
「…初めまして、サイです」
あーうん、よろしく。
軽く返した黒凪をじっと見てから何も言わず前を向く。
少し険悪とも取れる2人の様子にサクラは少し眉を寄せ、シカマルもチラリとサイを見た。
「…飛段に2人、俺の方に4人か…。お前達、飛段を見縊り過ぎだ」
「……」
「だがお前達の判断は正しい。俺とお前達では戦闘経験が違い過ぎるからな。」
お前達の額当てを見ていると最初に戦った木ノ葉の忍を思い出す。
角都の腕から触手が溢れ出し始めた。
…初代火影をな。彼の言葉にカカシ達が一斉に目を見開いた。
「(初代火影と戦ったと言う事は80年前には既に忍だったと言う事か。)」
「そんな、アイツ何歳なのよ…!」
「(と言う事は俺の年齢とあの頃の年齢を足しても…)」
はっと無道が目を見開いた。
気付いたのだ、戦闘経験値は同等かあちらの方が上である事に。
この世界にも腕のある人間が居ると思っていたが、そう言う事か。
若干顔をキラキラさせて考える無道にいのとチョウジの怪訝な目が向いた。
「はたけカカシ…、減らされた分はお前の心臓を頂く」
「…。」
「どうやら奴の狙いは君にあるらしい。」
無道がカカシの隣に移動し「少し残念だが君の援護に回ろう。」そう言って仮面の方に黒い玉を向かわせた。
それを見た角都は「また"それ"か…」と呟くとカカシに向かわず無道に向かって行く。
少し目を見開いた無道は角都の攻撃を避け、後ろに後退して行った。
角都はその背後にいるいのとチョウジを見ると無道を其方に誘導し仮面が雷を2人に向けて放つ。
「(…。仕方がないか)」
黒い玉をいのとチョウジの前に出して攻撃を受け止める。
その一瞬の隙に角都が手を硬化させて無道の心臓を突き刺した。
血を吐いて倒れた無道を一瞥して火と風の仮面が相手をしているカカシを見る。
仮面に集中しているカカシの一瞬の隙をついて触手を向かわせ、捕えた。
「カカシ先生!」
「ちょ、ちょっと!死んじゃったの!?」
倒れたままの無道に駆け寄ったいのが声を掛けるが起き上がる気配はない。
一方のカカシは角都の触手に捕えられ身動きが取れず、角都の手がカカシの心臓に伸びていく。
「っ、」
「終わりだ…。っ、ぐ!?」
突然胸元を抑えて苦しみだした角都。
その様子を見たカカシは「間に合ったか、」と息を吐いた。
いのとチョウジもそんな角都に気付いた様で、脳裏にシカマルを思い浮かべ微かに笑みを浮かべる。
「ま、まさか…っ」
「お前の相方の儀式に、お前の血を利用した。」
ドンッと角都が横に倒れた。
それを見下して起き上がり「何処で…俺の血を…」と呟いた角都に応える様に口を開く。
最初に雷切で攻撃した時だ。角都が目を見開いた。
「あの時に一緒に血を抜かせてもらった」
「く、…そ…」
角都が目を見開いたまま動かなくなる。
その隣で起き上がったカカシは心臓部分に張り付いている触手を抜き取り、走って此方に向かってくる3つの仮面に目を向けた。
すぐさまチョウジが前に出て身体を巨大化し、張り手で叩き潰す。
しかし仮面から伸びた触手がチョウジを締め上げ、すぐさま大きさを元に戻した。
途端に火と風の仮面がカカシ達に攻撃を仕掛け、その隙に雷の仮面が角都の心臓部分に入っていく。
「っ、しまった…!」
「え、何…」
「…まさか仮面の心臓を…!?」
ドクン、と角都の身体が大きく跳ね上がり、ゆっくりと立ち上がっていく。
そうして向けられた角都の目にいのとチョウジが固まった。
火と風の仮面も角都の元へ戻って行き、体中から触手が溢れ出す。
マスクも外れ、口からも触手が溢れ出した。
「…本体も化物だな…っ」
「そんな、生き返った…?」
「……俺の心臓を2つ潰されたのは久方ぶりだ…」
一瞬でカカシ、いの、チョウジを地面から現れた触手が拘束した。
そして角都から溢れ出す触手の中から火と風の仮面が顔を出す。
「カカシ…貴様の心臓を奪って補充する気だったが、気が変わった」
「っ…」
「この場で全員塵にしてやる」
開いた仮面の口から炎と風が同時に吐き出され巨大な一撃が3人に向かう。
眉を寄せた3人はぐっと目を瞑った。
しかしその瞬間、風と水の攻撃が角都の攻撃を相殺しカカシ達が顔を上げる。
カカシ達の前に増援で駆け付けたナルト、サクラ、サイ、ヤマトが立っていた。
「…増援か」
ボソッと呟いた角都を警戒しつつサイとサクラが刀とクナイで触手を切り裂く。
そうして解放されたカカシ達は増援で駆け付けたナルト達を見て安堵の息を吐いた。
ナルトが角都を睨む後ろでサクラがシカマルを視線のみで探す。
するとそんなサクラを見てカカシが口を開いた。
「サクラ、サイ。シカマルがもう1人と少し離れた場所で戦ってる。パックンに案内させるからそっちに向かってくれ」
「!…解りました」
「はい」
カカシが口寄せしたパックンが臭いを嗅いで走り出し、その後をサクラとサイがついて行く。
そうして残った5人で角都に目を向けた。
そんな中で徐に角都を睨んでいたナルトが1歩前に出て口を開く。
「此処から先は…俺がやるってばよ」
「…ヤマト、完成したのか」
「…。いえ…5割程度です」
でも以前のナルトとは別人ですよ。
薄く笑って言ったヤマトから視線をナルトに移す。
そんな5人を離れた木の上に座って見ている無道は足を組み、顎に片手を持って行った。
「(この先あの男をこっそり掻っ攫うなら死んだままで居た方が楽ではある。ただ手を出さなければ下手をすれば里の忍が殺されるか、逆にあの男が殺されるか分かったものじゃない。)」
さて、どうしたものか。
じーっと角都を眺めながら考える。
カカシは新しく現れたナルトとヤマトに角都の能力について説明していた。
するとナルトが軽く影分身で様子を見つつ足を止め、3体の影分身でチャクラを圧縮していく。
キ――ン…と高音が響き渡り、無道がナルトに目を向けた。
風が巻き起こり、そのチャクラの強さに無道が微かに目を見張る。
「(あれは飲み込むのに随分と時間が掛かりそうだな)」
「(…食らうとまずいな、あれは)」
「(あの男が直撃すれば確実に死ぬだろう)」
無道が立ち上がり気配を絶って近付いて行く。
術が完成し、3体の影分身が角都に攻撃を仕掛けていく。
それら3体を角都が倒した途端に生じた一瞬の隙を見てナルトが術を片手に飛び込んできた。
完全に角都の隙を突いた。無道が黒い玉をナルトに向けて放とうとする。
しかし角都に直撃する寸前で消え去ったナルトの術に攻撃を止め、隠れて様子を窺った。
「(なんだ、失敗したか)」
すぐさまヤマトとカカシが援護をしてナルトを角都から引き離し、尻餅をついているナルトに皆で駆け寄って行く。
まだ完全に完成していない術なのだろう、失敗したナルトに皆が微妙な顔をしているのが見えた。
そうしてヤマトとカカシが角都を睨んで戦闘態勢に入るとナルトが再び先程の術を角都に放ちたいと言い始める。
その言葉に無道はげんなりとしてナルトを見下ろした。
「危ない橋だってのは分かってるってばよ…でも此処を越えねーといつまで経ってもサスケには追いつけねえ。」
「…ヤマト、お前はどう思う」
「任せて大丈夫だと思います。…それにまだナルトの格好良いとこ、見てないでしょ?」
「……決まりだな。」
「(やれやれ、これだから力の持った子供は苦手だ。)」
恐らく次は成功するだろう。
あの術から角都を助け、尚且つ連れて帰るとなれば。
…屋敷に帰ってから一度死ぬぐらいの覚悟は持っておこう。
ため息を吐いてタイミングを見計らう様に覗き込む。
話していた通りにもう一度ナルトが前に出て影分身を作り術を発動した。
「(…全く同じ方法で来るつもりか?)」
「(これだから単細胞は…)」
再び3人の影分身が走り出し、後方に術を片手に持つナルトが居る。
角都は目を細めると触手を上手く使って上空に飛び上がった。
ほう、と無道が目を見開く中で角都が触手を後方にいるナルトに向けて一気に伸ばしていく。
ズドンッと突き刺さった触手にカカシ達が眉を寄せた。
「(よし、オリジナルを仕留めた)」
「(…菊水と白菊に連絡を入れておくか)」
角都の触手に貫かれたナルトが倒れている。
それを見た無道は無線に手を伸ばしたが、ボンッと消えたナルトに目を見開いた。
そして顔を上げると陽動に走らせたと思われた3人の影分身が角都の背後に向かって行く。
「!?(陽動にオリジナルを…!)」
「(おっと、これはまずい。)」
角都に術が直撃し、吹き飛んで行く。
それを追った無道は巨大な竜巻と物凄い突風に眉を寄せた。
これは確実に死ぬ。そんな言葉が頭に過ったが致し方ない。
黒い玉を周りに付けて飛び込み血塗れの角都を血塗れになりながら救出した。
黒い玉に乗って突風に後押しされる形で森の方へ向かって行く。
その勢いのままで森に入った途端に力尽き、角都と共に地面に落ちて転がって行った。
「っ、なんて術だ、全く…」
「……」
虫の息である角都を横目に黒い玉を細く圧縮させて自分の心臓を貫いた。
そうして倒れ、やがてけろっとした顔で立ち上がる。
ボロボロになった帽子をかぶり直し角都を肩に担いだ。
「黒凪ちゃん、そっちはどうなったんだい?」
≪まあどうにか。そっちは?≫
「死にかけているが捕獲したよ。救護班に回しておく。」
≪分かりました。≫
そうして通話を切り、角都を背に担いで黒い玉に乗って屋敷へ向かう。
屋敷に戻ると血だらけになっている無道にまず正守が驚き、角都の状態に菊水がため息を吐いた。
やがて黒凪がカカシ達の元へ辿り着けば、術の影響か何かで大きく抉れた地面。
その周りにナルト達が立っていた。
「…まさか死体さえもナルトの術で…?」
「そこまでの威力は無いと思いますが…」
「でもあれだけの威力だったら死体もバラバラになって消えちゃいそう…」
「う、うん…」
「うーん…、俺も本気でぶつけたからなぁ…。でも死体が無いってことはそう言う事なんだってば…?」
どうやら修行していたナルトの術で角都との戦いは終結したらしい。
しかしその死体が見つからないとの事だった。
その状況を目の当たりにしたサクラは微かに目を見開いた。
殺したのに、死体だけが忽然と消える。
ゆっくりとシカマルに背負われたままの黒凪に目を向けた。
「(サソリの死体も結局見つからなかった。…あの時も黒凪や間一族の人が関わってて、)」
「…ま、仕方ないですね。ナルトの本気の攻撃なら死体がバラバラになって消える程の威力も出かねません」
「そうだな。とりあえず里に戻ってこの事を報告しよう」
「(…思い過ごし、よね?)」
「あー!ちょ、黒凪!あんたの仲間が向こう…で……(え?死体が無くなってる…?)」
へ?無道さんがどうしたの?そう問いかけた黒凪が一瞬固まると徐に耳元に手を伸ばした。
サクラがさり気無く近付いて会話を聞く。
まあどうにか、そっちは。…わかりました。
たったそれだけの会話だった。
任務で暁と戦っていたと聞いているし、仲間に安否を知らせるように言った言葉の様に感じられる。…ううん、きっとそうなんだわ。
顔を上げた黒凪が「あ、生きてるってさ」といのに伝えると彼女とチョウジは顔を見合わせる。
不可解な事は沢山ある。消えた死体の事、死んだと思われていた間一族の1人が生きている事。
しかしまずは里に戻る事が先決だと皆微妙な顔をしつつ里に向かって走り始めた。
「…つか黒凪ってばすげー血塗れだけど大丈夫なのか?」
『血塗れだけど全然大丈夫。ただ足が遅いから担いで貰ってるだけだよ。』
「あー、そういや黒凪ってめちゃくちゃ足遅かったてば…」
少し疲れた様な笑顔で言ったナルトに「あはは」と黒凪も笑う。
何処と無く疲れた様な黒凪にカカシが微かに眉を寄せると「よォ」と声が一行に掛かった。
声のした方向に目を向けるとカカシ達に合流する様に火黒が近付いてくる。
【その大量にトマトぶつけられたみたいなの、こっちにくれねェ?】
『トマト…』
【放り投げてくれりゃあ良いからさ。な?】
「…分かった。行くぞ。」
シカマルが黒凪を横抱きにして火黒に向かって放り投げる。
木の上を移動しながらも器用に放り投げたシカマルから黒凪を受け取りニヤリと笑った。
【どーも。】
『ありがとねシカマル。また後でうちにおいで』
「…あぁ」
そう言葉を返したシカマルを見て火黒がすぐに方向を変える。
そうして離れて行った黒凪を見送り、一行は再び正面に目を向けた。
飛段&角都 捕獲成功
(はっはっは。彼を助ける為に一度死んだのでね、血みどろで失敬。)
(え、死んだんですか無道さん…あ、どうぞこれタオル)
(ああ。華麗に自殺してやったさ!)
(自殺に華麗も華麗じゃないも無いですよ。)
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