世界を君は救えるか【 × NARUTO 】
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不死の破壊者編
そうして辿り着いたのは先程シカマルに説明した通りのまじないの場所だった。
それを見た無道は微かに目を見開き感心した様に口を開く。
「ほう、君が約束を守るのか…」
『あの子は随分と頭が良い子でね。誤魔化しが効かないんですよ』
まじないに呪力を籠めて2人で屋敷に戻る。
戻ってきた2人を偶然見つけたのは修行帰りに部屋に戻ろうとしていた時音だった。
「あ、お帰りなさい。」
「久しぶりの屋敷だ、ぼうやでもからかいに行くか!」
『どうぞどうぞ、いってらっしゃい。』
フフフフ、と一瞬で消えた無道を見送って救護室へ向かう。
アスマを治療したであろう菊水に一言礼を言って入院棟の奥へ向かい、アスマに宛がわれたベッドへ近付いた。
そうして隠す様に閉められたカーテンを開くと顔の火傷にガーゼを貼られ、腹部の傷にも包帯を巻かれたアスマが眠っている。
彼の身体中にはまじない殺しの紋様がまだ残っていた。
「――そいつ、飛段にやられたんだろ」
『うん。…驚いた?うちの人間が呪いを解除したって言った時。』
「…ふん。まだ立証はされてねぇだろうが」
サソリの言葉に小さく笑って「そうなんだけどさ」と振り返る。
振り返った黒凪の笑顔にサソリが微かに眉を寄せた。
『飛段がさ、一瞬怪訝な顔をしたのよ。耳を押さえて。』
「……」
『丁度その頃に呪いが解除されたって聞いたし、彼自身何かを感じ取ったんじゃないかな。』
サソリの目がチラリとアスマに向けられる。
彼はアスマが屋敷に着いた頃、良守達の焦った様な声を聞きつけまた怪我人が帰って来たのかとデイダラと共に外に出た。
そうして目の当たりにしたのは服などには目立った外傷が無いのに流れ落ちる大量の血液。
菊水が服を破り傷を確認した所で見えた傷に2人は顔を見合わせた。
《間違いねえ、飛段のヤローの呪いだな…うん》
《あぁ。あの術に掛かって生きてた奴を俺はまだ知らない。…もう手遅れだろうよ》
《――良守!それ黒凪との無線か!?あ、文弥君この紙に詳細書いてるからまじない殺し作って!》
もう無理だろうと結論付けた2人の横を走り抜けて行ったのは影宮閃と言う少年。
夜行の面々からは彼は黒凪の数少ない"お気に入り"だと聞いている。
情報収集に長けている上に頭も良い。ただ戦闘能力はどうしても夜行の中でも低いままだと聞いた。
《…わ、びっしりだね。しかも字が汚い…》
《…、》
《分かってるよ絲。すぐにまじない殺しを作ろう。》
文弥と呼ばれた青年はサソリの身体のまじないにも関わっている為に2人には面識があった。
しかし彼と共にアスマに駆け寄ったツインテールの少女は初めて見る。
彼女はアスマの側に座り、じっと彼を見つめて手を触れた。
その様子をじっと見ていた染木は「うん」と頷くとまじないの紋様をアスマの身体に施し始める。
《今回はあんまり時間も掛けてられないし、向かってくる呪いを食うってイメージよりは飛段ってやつと繋がってる状態をどうにかしようか》
《――ああ、つまり飛段の……は…………攻略……って事だ》
遠くの方で声を潜めて話している為に断片的にしか聞き取れなかったが、閃は確かに"攻略"と言った。
つまり彼等…間一族には飛段の呪いに対抗する術があると言う事。
染木も必死と言うよりはむしろ人相が悪くなりつつも楽しんでいるかの様な表情をしている。
《文弥君、黒凪になんか言いたい事ある?》
《…あ、黒凪?》
無線を近付けられアスマの身体にまじない殺しを施しながら染木が口を開く。
絶対に呪いは解くから安心して、そう無線に向かって言う染木の側で絲が両手を祈る様に組んだ。
そして彼女が目を閉じた途端、アスマから禍々しい蛇の様な…細い何か黒いものが浮かび上がる。
《またキモイ呪いの形だなー…》
《タチの悪いまじないは全部あんな感じね。》
《!…あれが飛段の呪いだってのか、うん》
《ん?あぁ、あの絲って子は呪いの解読と解除が得意なんだ。多分今は呪いを視覚化させて染木さんに殺してもらおうとしてんだろうな》
染木も視覚化された呪いを見て絲にそのままキープする様に伝え、黒凪にまじないを殺すまでに必要な時間を伝える。
そうして通話が切られると一層速く手を動かしてまじない殺しを制作していった。
そしてやがて5分程経った頃に筆が止まり、アスマの胸元に染木が手を翳す。
《行くよ絲。引き剥がす。》
《…》
ギャアア、と人の声では無い何かの叫び声が一瞬だけ響いた。
途端に蛇の様に先程から視覚化されている呪いが蠢き苦しげにのた打ち回る。
それを上手く抑えつつ徐々にアスマの身体から引き剥がしていった。
「――なぁ角都。」
「なんだ」
「さっき変な音が耳元でしたんだけどよォ」
「知るか。」
なんかこう、ブチッて感じ?
身振り手振りを交えて言った飛段に興味など無い様に無表情で歩き続ける角都。
おいおい角都ー…、大事な相方の耳がやばいかもしれねーんだぜェ?
そう言って絡んでも反応のない角都に小さく舌を打ってそっぽを向く。
そして少し黙ると腹部を自分で刺し、その血ですぐさま地面にサークルを描いた。
その中に入った途端に体中に模様が浮かび上がる。
「…おい飛段…」
「まあちょっとだけ待てって。一瞬だから…よ!」
ドスッと心臓部分に武器を突き刺す。
広がる痛みに「あ゙ー…」と苦しげな声を出して飛段が武器を引き抜いた。
すうっと消えた体中の模様を見下し、飛段は何も言わず角都の側に戻る。
黙った飛段を怪訝に思いつつ角都はペインの命令に従う為に再び歩き出した。
『…あ。』
「!」
アスマの側に置いてある瓶。
その中でゆらゆらと動いていた蛇の様な物が一瞬苦しむ様にうねり、消えて行った。
その物体は染木と絲によってアスマから引き剥がされた飛段の呪いで、それが消えたと言う事は呪いが死んだと言う事になる。
『…コイツがまだアスマさんの中に居れば、きっと今頃死んでたね』
「……。」
「黒凪、火影様が呼んでる」
救護班の部屋へ訪れた正守に目を向け、何も言わずに黒凪が部屋を出て行く。
眠っているアスマを黙って見下していたサソリもそれに続いて部屋を出て行った。
『…あぁ、お帰りなさい。』
「「「!」」」
何食わぬ顔で火影の執務室に入った黒凪にシカマル、コテツ、イズモが目を見開いた。
恐らくシカマルから報告は既に受けているのだろう、綱手の疑った様な目も黒凪に向く。
横に並んでいるアスマ班の隣に並び、にっこりと笑って頭を下げた。
『お呼びですか、火影様。』
「…報告は受けた。どうやら本当に帰っている最中だったようだな」
『ええ。偶然とは言え里の大事な忍を護る事が出来て良かったです。』
「…。アスマの容体は」
暁によって掛けられていた術…"呪い"は解除しました。
今は救護班の手当てを受けて眠っています。
黒凪の報告にシカマルが明らかに安堵したのが視界に入った。
「至急木ノ葉病院に移送しろ。その方が…」
『いいえ。呪いを解いたとはいえ彼の傷は重傷です。うちの救護班に最後まで任せてください』
「……助かるんだろうな」
『間一族の名誉にかけて必ず治します』
あ、見舞いは私の同期の第十班と仲の良い教師仲間だけでお願いします。
あんまり大人数は嫌なので。
薄く笑って言った黒凪に綱手が微かに目を見開いた。
「…驚いたな。お前達間一族は我々にも屋敷に立ち入る事を禁止しているだろう」
『私が居る間は別に構いませんよ。ただ、』
妙な真似をされればその場で殺しますけど。
…私の前で里の忍を殺すと言うのか。
綱手から発せられた殺気に細まっていた目が開く。
彼女の殺気に当てられても平然としている黒凪にコテツとイズモが息を飲んだ。
『その威圧的なの、どうにかなりませんかねえ。』
「お前こそその胡散臭い態度をどうにかしろ」
「――五代目!」
「!…紅、」
執務室に飛び込んできた紅の目が立っている黒凪に向いた。
恐らく派遣されていた20小隊の内の誰かからアスマの事を聞いて此処まで走って来たのだろう。
彼女は顔を青ざめたまま黒凪に駆け寄った。
「アスマは何処!?アスマに会わせて!」
『…。良いですよ。シカマルも来る?』
「…あぁ」
「……報告ご苦労だった。」
いーえ、と笑顔で返して紅、シカマルと共に執務室を出る。
そして屋敷に向かうと入り口にアスマの事を聞き付けた者達が群がっていた。
ガヤガヤと喧しい彼等の後ろに着いた黒凪がゆっくりと扉に向かって行く。
紅やシカマル、黒凪が居る事に気付いた者達は次々に道を開いていった。
「黒凪!アスマ先生はどうなったんだってばよ!」
『…ナルト?あんた新術の修行って言ってなかったっけ』
「アスマ先生の事をヤマト隊長に聞いたんだ、修行してる場合じゃないってばよ!」
『…ふうん、ご苦労様。』
待てよ!そう言って扉を開こうとした黒凪の腕を掴んだナルト。
振り返った黒凪は扉の前に立っている面々の顔を見渡した。
『…。入って良いのはナルト、カカシさん、いの、チョウジ、シカマル、紅さん。…あとガイさん。以上。』
「何でだってばコレ!俺もアスマおじちゃんに…!」
『…君は走り回りそうだから駄目。』
「頼む、木の葉丸も入れてやってくれ…!」
ばっと頭を下げたナルトに黒凪が眉を寄せる。
すると黒凪が扉を開く前に開かれ、中から「何の騒ぎだい?」と落ち着いた声が掛けられた。
振り返った黒凪は顔を見ると目を見開き驚いた様に口を開く。
『…父様』
「!(…と言う事はあれが間一族の長、間時守…?)」
「…あぁ、先程運び込まれた方へのお見舞いかな」
笠を深くかぶったまま表情を見せずに穏やかに言った時守はチラリとすぐ側に居る黒凪を見下した。
屋敷にこれだけの人数を入れる訳にはいかない…、人数は絞れるかい?
問い掛けられた黒凪は小さく頷いた。
その様子に微笑んだ時守は「ならお前に任せるよ」と言って奥に消えて行く。
『…。木の葉丸はナルトが面倒見る事。良いね』
「!…ありがとな、黒凪」
「ありがとなんだな、コレ!」
勢いよく頭を下げた木の葉丸をチラリと見て開かれた扉の中に名を呼んだ8人を入れる。
そうしてしっかりと扉を閉ざすと黒凪が大きく息を吸った。
『木ノ葉の忍が見舞いに来たよー!』
突然叫んだ黒凪にナルト達が一様にビクッと肩を跳ねさせる。
すると黒凪の声を聞いた途端に屋敷の中でドタンッと走り回る音が聞こえだした。
そして数秒後、入り口に迎えに来るように姿を現したのは3人。
「ようこそ、間一族の屋敷へ。」
「…こりゃまた多いな…」
「……。」
正守、閃、限。
間一族の中で忍達にとってはまだ面識のある3人だった。
8人を挟む様に最後尾に閃と限が付き、先頭は黒凪と正守が歩く。
木の葉丸やチョウジ、いのが周りを見渡していると「おい、あんま周り見んな」と閃がすぐさま声を掛けた。
屋敷のあらゆる場所から沢山の視線が向けられている事は8人も何処と無く気付いている。
「――あ、こら潜助!」
「ウシシシ!」
何処からともなく表れた潜助がナルト達の足元を駆け回る。
亜十羅はその様子を困った様に見て潜助を捕まえようと手を伸ばした。
しかし中々捕まらない潜助に亜十羅が眉を下げた時、限が手を伸ばし一瞬で捕獲する。
気付けば捕まっていたのだろう、潜助は限を見ると我に返った様にジタバタと暴れだした。
「…ちゃんと見てろ、亜十羅」
「あー、ごめんね限ー…」
『亜十羅も最近帰って来たばっかりだしねえ。嬉しいんでしょ、潜助も』
「かもね…。ありがと、私も奥に居るわ!」
亜十羅に連れて行かれた潜助を怪訝な目で見ていたナルト達。
そんな彼等の視線には気付きつつ黒凪は何も言わずに道を進んだ。
そうして辿り着いた入院棟の扉を開き、黒凪が更に奥へ進む。
救護班が管理している入院棟の最も奥。しっかりと閉められた左右の扉の右側がアスマの病室だった。
そこまで8人を連れて来た黒凪は手招きをして中に入り、アスマのベッドのカーテンを開く。
ベッドの上で寝転がっていたアスマは顔を見せたナルト達に「お、」と目を見開いた。
シカマルは元気そうなアスマの様子に眉を下げ、紅は思い切りアスマに抱き着く。
それを見たナルト達や正守達は一斉に目を逸らした。
「お、おい紅…」
「良かった…っ」
『…お邪魔かな』
「と、取り敢えず出るってばよ…」
「おいおい待てって、」
アスマのその言葉ではっと気付いたのだろう、紅がすぐさま体を離して振り返る。
困った様に笑う面々に紅は一気に顔を赤らめた。
袖に寄った紅に目を向け、アスマが次に目を向けたのはシカマル。
シカマルは沈んだ表情のまま立ち竦んでいる。
「…シカマル」
「っ、」
「…悪かったな。お前に辛い思いをさせて。」
「…違う、俺だ。俺が、…俺がもっと良い作戦を思いついていれば…アスマは、」
何思い詰めてる、俺は無事だ。
にっこりと笑って言ったアスマにシカマルがゆっくりと顔を上げる。
「間違えたんなら何度でもやり直せ。…人間はそうやって成長して行くもんだ。」
「…っ、」
シカマルがばっとアスマに背を向けた。
そんな彼等を見ていた黒凪達は皆部屋の隅に移動して彼等の面会を黙って見守る。
木の葉丸が泣き出してアスマに飛びついたり、いのとチョウジが泣きながら笑ったり。
そんな様子を天井裏や窓の外から夜行の子供達も興味津々に見ている。
『……。』
「…久しぶりに見たね、あんな感じの。」
『そうね。…私達の仲間はまだ誰1人死んでいないし、怪我をしても治せる範囲の話だし…』
でもあれがこの世界の当たり前なんだよね。
眉を下げて言った黒凪に限や閃も目を伏せた。
私達は恵まれてるよ。本当に。
『――で?行くの、弔い合戦。』
アスマとの面会を終え、屋敷を出て行ったシカマルを追いかけてそう問いかける。
振り返ったシカマルは「あぁ」としっかりと頷いた。
ふーん?と片眉を上げた黒凪に向き直りシカマルが口を開く。
「無策で突っ込むわけじゃない。…此処に戻って来るまでに死ぬほど後悔して、死ぬほど考えてた」
『…死ぬほどねえ…』
「……アスマ班の3人で仇を撃つ」
『…。そ、頑張って。』
背を向けて言った黒凪にシカマルも小さく笑って歩いていく。
そうして夜までの間にチョウジといのに声を掛けたシカマルは真夜中になってから里の門へ3人で向かった。
門を潜って出て行こうとしたシカマル達に「待て!」と綱手の静止の声が掛かる。
その様子を上空で見ていた無道と黒凪は現れた綱手に目を向けた。
「弔い合戦のつもりか、無駄死にになるぞ!」
「…勝機はあります。」
「あのアスマがやられたんだぞ、お前達だけでは無理だ!少しは冷静に、」
「それじゃあ俺が隊長として同行しますよ。」
綱手の言葉を遮って言ったカカシに全員の目が彼に向いた。
どうせ止めたって行っちゃいますし、俺が監視役で同行します。
そう言ったカカシは「構わないよな」とシカマル達に目を向けた。
頷いたシカマルとカカシを交互に見た綱手はやがてため息を吐いて口を開く。
「…解った。好きにしろ」
「やった!」
「シカマル…!」
「あぁ!」
一様に喜んだアスマ班の3人にカカシも笑顔を向けて門を抜けていく。
シカマルがカカシに向かって「ナルトは良いんすか」と問いかけるとカカシは「大丈夫」と眉を下げた。
今はヤマトも居るし、俺ももうそろそろ用済みだからね…。そう言ったカカシの右手は包帯に包まれていた。
「ナルト…、確か人柱力の少年だったか」
『ええ。今は修行中なんですって。』
「…力を持つ人間が修行をすれば恐ろしいものが生まれるのが相場だからな…。あの男が怪我をするのも頷ける。」
『あー…確かに。』
「黒凪」
ビクッと無道の腕の中で飛び上がった黒凪に無道の目がチラリと向く。
木ノ葉の上空で黒い玉の上に立つ無道に抱えられている黒凪。
その側に時守を乗せた黒曜が音も無く近付いた。
「これを綱手姫に見せると良い。角都と飛段の始末の依頼だ」
『え、始末?』
「これがあれば表立って暁との戦闘に参加出来るだろう?任務先で同じ里の人間と任務がかぶる事はザラにあるからね」
しかも今回の彼等の任務は火影の独断とアスマ班の勝手な行動によるものだ。入り込むのは容易な筈だよ。
黒凪の目が執務室に戻る綱手に向いた。
それじゃあ頑張っておいで。
そう言い残して黒曜と共に去って行った時守を唖然と見送った。
「なんだ、思っていたより良い父親じゃないか。」
『!』
「…自分にとっての恐ろしいものは、自分の認識で恐ろしくなくなるものだ。」
父親を恐れる理由は君にもあると思うがね。
薄く笑みを浮かべて言った無道を見上げ、小さく笑った。
貴方は本当に人間らしくて、色々と気付かせてくれますね。
そう言った黒凪は無道の腕から抜け出して綱手の目の前に結界を作りその上に着地した。
「っ!」
『五代目、先程間一族にこんな依頼が入りました。』
「……火の国に入った暁を始末しろだと…!?」
『はい。我々はこの依頼に応える為に飛段と角都を始末します。既にアスマ班が向かったようですが、…横取りしても構いませんよね?』
「…っ」
任務となれば火影も容易には断れない。
何故なら依頼を受ける、任務をこなす、その報酬を受け取る。
これらの事は木ノ葉に属しながらも間一族は完全に独立している為だ。
我々の任務は火影が駄目だと言った所で無しにはならない。
「…アスマ班の死亡者を1人も出すな。それが条件だ」
『良いですよ。貴方が断れないのを知っていて報告に来ましたし、私もちょっと意地悪でしたね』
「……」
では、と手を振って無道に抱きかかえられシカマル達の後を追う。
日の登る空に綱手が目を細めた。
「…あ、戦闘が始まりましたよ。凄いですね、すぐに敵の居場所を見つけるなんて。」
『そうだねえ。やっぱりシカマルが頭良いからかなぁ』
「ではおめおめと殺される前に我々も行くとしよう。」
「あの、ずっと気になってたんですけど。」
ん?と無道と共に抱えられている黒凪も振り返る。
七郎が笑顔を見せて問いかけた。
何故無道さんがずっと黒凪さんを抱えているんです?と。
その様子を見た無道は人知れずニヤリと笑う。
「その黒い玉に黒凪さんも乗れば良いのでは?」
「では降ろすとする…」
『わー!駄目ですって無道さん!』
ガシッと首に腕を回した黒凪に七郎が笑みを深める。
しかし無道は容赦なく抱えていた手を離し黒凪が彼の首にぶら下がっている様な状態になった。
『この黒い玉は無道さん以外が触れると熔けるのよ!ちょ、無道さん私筋肉全然ないからそろそろやばいです』
「おっとそうだった。では心置きなく抱えるとしよう。」
「(わー、この人分かっててやってるタチ悪い人だ。)」
ニコニコと張り付けた笑みを無道に向ける七郎、その笑顔に嫌味な顔を返す無道。
無道にとっては正守に続く新しい玩具を見つけた様な気分だった。
そんな無道に気付いた黒凪は「はいはい行きますよー」と宥めつつ肩を叩き、彼に暁の元へ向かわせる。
その背中を見た七郎はため息を吐いて空を見上げた。
必殺、ゴリ押し。
(……。)
(?どうしたんですか、綱手様)
(いや…また間一族にゴリ押しされた様な気がしてな…)
(あー…、)
.