世界を君は救えるか【 × NARUTO 】
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不死の破壊者編
サソリもデイダラが間一族にやってきてから約1週間。
まだぎこちなくではあるものの、彼らも間一族の雰囲気に慣れてきた様だった。
「…志々尾と影宮は今日も任務から帰ってこねーの?」
「そう言えばもう3週間になるわね…」
「あれでしょう?暁の動向調査。」
「そ。母さんの言う通り。」
2人がマークを付けてるツーマンセルが居るんだけど、徐々に火の国に近付いてるらしくてね。
まあそろそろ気付かれそうだって言ってたから今日ぐらいには帰って来るんじゃない?
その会話を聞いていたサソリとデイダラが箸を止めて顔を上げる。
「そのツーマンセルってどんな奴等だ?うん」
「――角都と飛段って奴だよ。」
『あ、お帰りー』
襖を開いて入ってきた閃と限は随分と疲れた様子だった。
この場で報告を頼めるかな、と声を掛けた正守に頷き閃が口を開く。
「俺等が付いて回った間に殺したのは主に賞金首ばかりでした。1番最近で雲隠れに入ったんですけど、そこで気付かれて」
「そっか。…ま、今回は情報収集が目的だったし無事で良かった。」
「ありがとうございます。限が居てくれたおかげでだいぶ楽に動けました」
かなり疲れはしましたけど。
乾いた笑みを浮かべて言った閃と限に黒凪が手を上下に振って彼等を呼び寄せる。
顔を見合わせた限と閃はデイダラとサソリの間に座る黒凪の側でしゃがみ込んだ。
チラリと向けられたデイダラとサソリの目に警戒する様に眉をよせる。
『大丈夫、もう打ち解けたから。案外良い奴よ?』
「…力分けて大丈夫なのかよ、お前。"こっち"じゃ神佑地の数が少ないからって…」
『大丈夫。この前黒兜と戦って根こそぎ奪って来たから。』
黒兜と言う名に目を細めた閃。
そんな閃の隣から無言で手を伸ばした限の手を黒凪が掴む。
一気に顔色が良くなった限に続いて閃も黒凪の手を掴んだ。
「…人体実験の話なんだけどさ。やっぱりそれらしい話は出てきたぜ。」
『!…やっぱり出て来るよね。こっちで平和な里なんてあるわけないと思ってたのよ。』
「でも表じゃ平和主義って言ってるだけあるよ。結構細かく探ってみたけど殆ど情報は出て来なかった。」
もう少し時間があれば出て来ると思うから俺なりにもうちょっと調べてみるけどさ。
目を逸らしてそう言った閃は一旦息を吐いて「とりあえず今の所で分かってるのは、」と話し始めた。
「湯隠れが発祥だって言われてる宗教団体の中で冥安らしき人間が人体実験に加担してたって事ぐらいだ。…その宗教団体の名前はジャシン教」
「…ジャシン教?」
「あんた等暁なら知ってる筈だ。俺達が追跡してる間にも飛段がジャシン様ってずっと喚いてたからな。」
「あー…、そういやずっと神がどーたらって言ってたな…うん。」
ま、何にしてももう少しだけ時間くれ。そしたら全部調べ上げられる筈だから。
そう言った閃に小さく頷き黒凪が徐に「2人の能力はどんな感じだった?」と話を変える。
徐に閃が口を開いた。
「さっき話に出た飛段は不死身だ。致命傷を受けてもケロッとしてた。間違いないと思う」
『不死身…』
「…その飛段とジャシン教が繋がっていて、その上人体実験に冥安が関わってたなら有り得るかもね。」
術を発動しての不死身ではなく、本物の不死身なんて事が。
正守の目がサソリに向けられた。
サソリも小さく頷き「確かにあいつは正真正銘の不死身だ」と言い放つ。
「そのメカニズムは分からねえ。…勧誘する際にイタチが調べてたが、穢土転生じゃない事以外は不明なままだ」
『ふーん…。…で、もう1人は?名前何だっけ』
「角都だ。そいつの場合は俺達が追跡している間は特に戦ってない。ずっと飛段の戦いを眺めて、ちょくちょく手助けする感じだった」
「角都も言っちまえば不死身だな、うん」
え゙。と一瞬部屋の空気が固まった。
不死身が2人はかなり厄介な上に気味が悪い。
心なしか夜行の面々の視線がその暁担当の黒凪に向いた気がした。
「角都は地怨虞って術で心臓を5つストックできるんだ。うん。」
『って事は5回殺せば死ぬ?』
「あぁ、殺せる。ただし角都は心臓を奪う際に相手の性質変化も奪う。あいつが使える術は無数にある」
『へー…。…とりあえず飛段は絶対死なない?』
あぁ。としっかり頷いたサソリとデイダラに黒凪は考え込む様に目を伏せる。
まあ不死身レベルで言うと私より飛段は上だよね。
ぼそっと呟かれた言葉に「うんうん」と食事をしている夜行の面々が一斉に頷いた。
その様子を見ていたデイダラは「そう言えば!」と黒凪を覗き込む。
「お前も死なねーよな?うん」
『私も死なないねえ』
「…人体実験か」
『違う違う。私はそう言う体質なの。』
…お前本当に人間か?
怪訝な顔で言われた言葉に「勿論。」とドヤ顔で返すとサソリの顔が更に歪んだ。
説明しろ。そう言われているようだった。
『私は魂蔵持ちって言って、力を無限に蓄えられる体質なの。その蓄えられる力って言うのはチャクラじゃなくて…こう…パワースポットにしかない感じの…まあとにかくちょっと特別な力なのね。で、その力はあまり容易には蓄えられないの』
だからそこまで余裕がある訳じゃないんだけど、その力が残ってる間は何度でも生き返るのよ。
かなり省いて話された説明にデイダラは頭に"?"を浮かべ、サソリは黙って理解しようと考えていた。
『でもまあ逆に考えれば力が尽きれば死ぬのよね。』
あははは、と笑って言った黒凪に閃と限は笑う事をせず目を伏せた。
そんな2人に眉を下げて同時に頭をぽんと撫でる。
途端にどたどたと廊下の方から走る様な足音がした。
スパーン!と思い切り開かれた扉に全員の目が向かう。
「姉上!」
『え、宙心丸?』
「やあ。皆久しぶり」
「あ、時守」
時守。その名前にサソリがピクリと反応を示す。
彼は笠を深くかぶり錫杖を片手に持って部屋に入って来た。
異様な風貌にデイダラも少し警戒した様に目を細める。
『食事場に来るなんて珍しい…。どうしたの父様』
「!?…親父なのか、あれ…うん」
『ん?うん。』
現れた暁が不死だと聞いてね。
薄く笑って言った時守に黒凪の目が閃に向く。
彼はブンブンと首を横に振って否定した。
…閃が教えた訳ではない、か。相変わらず何処から情報を仕入れているんだか。
「父上に力を分けてやれと頼まれたのだ!」
『あ、そうなんだ…。ありがとう』
「うむ!」
黒凪に抱き着いた宙心丸が彼女を一層強く抱きしめる。
途端に部屋中を形容しがたい巨大な力が充満した。
やばい、と呟いて限や閃など妖混じりが距離を取る。
やがて宙心丸から力を受け取った黒凪は時守を見上げた。
『ありがとう父様。』
「お安い御用さ。…行こうか宙心丸」
渋々黒凪から離れて時守と共に部屋から出て行く宙心丸。
名残惜しそうに振り返る宙心丸に手を振り、襖が完全に閉じられた。
それを見送り徐に立ち上がった黒凪は部屋を出て行く。
限と閃もその後をついて行く様に部屋を出て行った。
「…まだ完全には克服出来てないのかな、黒凪ちゃん」
「いつものやつだろ。…やっぱり長年のトラウマは簡単には消えないんじゃねーかな」
【――よう大将。黒凪は何処だァ?】
音も無く天井から降りてきた火黒。
彼も先程時守と宙心丸を見たのだろう、黒凪を探しに来た様だ。
さっき出て行った事を伝えるとすぐに火黒も後を追う様に出て行った。
その様子を見ていたサソリとデイダラが正守に目を向ける。
「…気になるなら君達も行くと良い。話を聞けば黒凪に対する認識が変わるかもしれないよ。」
箸を置いて立ち上がり気配を絶って2人も出て行った。
その背中を見送った正守は手元の汁物を飲み込み肘をついて微笑む。
黒凪は食事場から少し離れた縁側に座り、その両側に限と閃、3人に最も近い柱に火黒が凭れ掛かっていた。
サソリとデイダラは気配を絶って屋根の上に座る。
『…いやあ、ごめんね。』
「別に。あの2人に会ったらいつもこうなるのは分かってるからな」
「…。まだ慣れないのか」
『うん。…実際は全然父様と過ごさなかったわけだし、やっぱり長年のトラウマは深いと言うか』
大事な父様と弟なのに、酷いよね。
膝を抱えて項垂れる黒凪の頭を限がぎこちなく撫でた。
ホント君って不器用なんだか器用何だか分からないよなァ。
半笑いで言った火黒に「うー…」と生返事を返し項垂れる。
閃も眉を下げて彼女の背中を擦り始めた。
『…いやー、情けない。もうかなりの時間を生きてんだよ?…何してんだって話だよねえ…』
「なんだよ。そんなに年取ったか?」
『年取ったよー…。なんかデイダラとサソリに話す内容だって長いわ婆臭いわで…』
自分達の話題が出た事に少し驚いた様に眉を上げるデイダラとサソリ。
でもさ、そう言った黒凪に閃達の目が向いた。
『これだけ長く生きてると伝えてあげたい事、沢山あるんだよね。…分かる?』
「…あぁ」
『で、それを伝えようとすると沢山言葉が出て来るの。…どうすれば伝わるかなって考えてても上手くまとめられない。』
伝わってるかなぁ。伝わってるといいなあ。
ちょっとでもあの子達のトラウマを取り除いてあげられたら。
腕を組んで黙って聞いていた火黒がゆっくりと口を開いた。
【人間ってのはさァ、どうやったって1回受けた傷は消えないもんだろ?】
『…、』
【俺の場合は人間を捨てても消えなかった。…どうやったって消えるモンじゃないと思うけど?】
だから君が馬鹿みたいに同じ事で悩んでるのだって当たり前の事だろ?
柱から背を起こし黒凪の前に立った。
そうして腰を屈めてニヤリと笑う。
【器用に生きようぜェ、黒凪チャンよォ】
『…ん。』
「いつだって話ぐらいは聞いてやるよ、俺等だって」
「…元気出せ」
…元気出すよ、ありがと…。
膝に顔を埋めてくぐもった声で返された返事に3人が笑う。
その様子を真上で聞いていたサソリとデイダラは何も言わずその場に座っていた…ら、そんな2人の前に1つの竜巻が現れる。
そうして現れた青年は項垂れる黒凪を眉を下げて見つめ、そしてはたと此方を凝視しているデイダラとサソリに目を向けた。
「……。黒凪さん、見覚えのない忍2人が貴方達の感動的な話を盗み聞いてますよ」
『ん?』
「あー…面倒な事になったな…うん」
「…チッ」
外に出て天井を見上げた黒凪の目が少し充血している。
泣いた後の顔にデイダラとサソリは一瞬ギクッとした。
しかし彼女は2人を認識するとふわりと笑みを浮かべて。
『ああ、別に話を聞かれても大丈夫なんだよあの子達は。』
そう、あっけらかんと言ったのだ。
黒凪の言葉を聞いた青年は再びデイダラとサソリを見て、そして黒凪を見る。
…そうですか。
戸惑った様にそう言って青年が地面にゆっくりと降りて行った。
デイダラとサソリも隠れる理由が無くなり地面に降り立つ。
『この2人はデイダラとサソリ。ほら、暁の。』
「…ああ!この方々が…」
『こっちは扇七郎。木ノ葉の扇一族って聞いたらサソリは分かるよね?』
頷いたサソリと打って変わって分からない様子のデイダラ。
そんな2人に自己紹介をする様に七郎が笑みを顔に張り付け頭を下げた。
「初めまして。扇一族は木ノ葉では主に里の警護を生業としている一族で、僕はその当主です。」
『七郎君は間一族の人じゃないけど同じぐらい大事な人なの。喧嘩売ったら只じゃ済まない実力者だから仲良くね。』
「えー、なんですかその紹介。僕が凄い実力者みたいじゃないですか」
あはははは。と笑う七郎は傍から見れば気の良い青年だ。
しかしその優しい笑顔に途轍もない力を感じ取った2人は黒凪の言葉に素直に頷いた。
そんな2人に目を向けた七郎は「それにしても珍しいですね」と2人の顔を覗き込む。
「暁の人間を仲間に入れるとは聞いていましたが、自分の秘密を知られても良い程に信用するなんて。」
『…そう?』
「そうですよ。黒凪さん、そんなに警戒心が薄い人でしたっけ?」
少し棘がある様な気がするのは気の所為だろうか。
デイダラとサソリがその違和感に少し眉を寄せていると黒凪は特に気にした様子も無く笑顔で言い放った。
『だって仲良くしたいんだもん。…仲良くしたい相手には自分から全部見せてかないと。』
「…へえ。羨ましいなあ、そんなに思って貰えて。」
ピキーンと凍った空気を閃が機敏に感じ取り震えあがる。
しかし能天気なデイダラと人の感情に疎いサソリは完全には感じ取っていないようだった。
七郎からの露骨なまでの敵意に。
「ああそうだ。黒凪さんこの後用事はありますか?」
『?ううん、別に。』
「じゃあちょっとこっちの屋敷に来てくれません?一族の人間の修行で屋敷が少し壊れてしまって」
『ああ、修復ね。じゃあ今から行くよ』
では遠慮なく。
そう言って黒凪を抱えて飛び上がる七郎。
彼は彼女を抱えた後閃達に「それじゃあ」と笑顔を向けて去って行った。
その様子を見送ったデイダラとサソリは無言のまま空から視線を前方に戻す。
「…なあ旦那」
「あ?」
「なんかあいつムカつかねーか?」
「…あぁ、同感だな」
あ、なんとなくでは勘付いてんだな…。
目付きを悪くして言ったデイダラと無表情ながら不機嫌そうなサソリ。
そんな彼等を見て閃は乾いた笑みを浮かべた。
『あらら。すーごい壊れ方。』
「でしょ?」
見事に砕かれて抜けた扉とバラバラの窓。
式神と共に修復に取り掛かった黒凪の側で七郎がふと空を見上げた。
そして風に吹かれて流れる雲を見、徐に黒凪に目を向ける。
「暁、近付いてますよ。今火の寺です。」
『火の寺…って事はもう火の国の中だね』
そうなりますねえ。
緩く言った七郎の声に耳を傾けつつ扉と窓を修復して立ち上がる。
すると伝書鳩が七郎の側に止まり手紙が彼の手に渡ると飛び去って行った。
「…。あ、火影様に呼ばれた。」
『あれじゃない?暁の動向について。』
「えー…。僕、三代目は結構好きだったんですけど五代目はどうもなあ…」
『一緒に行く?』
是非。即答してにっこりと笑った七郎に風で持ち上げられ共に火影の執務室に向かった。
そうして共に執務室に入ると怪訝な綱手の目が黒凪に向く。
しかし七郎が一歩前に出てにっこりと笑った。
その顔を見ても尚険しい顔を止めずに指を組む綱手。
恐らく彼女のあの態度が七郎が苦手だと言う理由なのだろう。
「カカシの調査で暁のツーマンセルが火の国の側まで来ている情報は入っている。…率直に聞く。暁は既に火の国に侵入しているか?」
「ええ。先程は火の寺に居ましたが…、……。ああ、火の寺の地陸さんお亡くなりになりました。」
多分ですけど。と言った七郎に綱手が椅子から立ち上がる。
どういう事だ!?そう凄い剣幕で問い掛けた彼女に「まあ落ち着いて」と笑って口を開いた。
「火の寺がボロボロになってます。暁との戦いで壊れたんだと思いますが、暁の2人がすぐそこの換金所の方向に動き始めたので多分賞金が欲しいんじゃないかな」
「…っ、地陸は闇の相場で三千万両の賞金首だからな…。」
「何なんですかね奴等。人柱力が目的なら真っ直ぐ来ればいいのに。」
そしてこの七郎の言葉を考え込む事によって無視するスタイル。
見事に彼の苦手な女性を演じている。
肩を竦めた七郎の目が黒凪に向いた。
成程、確かに苦手な人間と2人きりと言うのは辛いだろう。
「…今すぐ暁の捕獲及び抹殺に新兵制した20小隊を向かわせる。火の国内で大規模な戦いが行われる事になるだろう」
「分かりました。心しておきます。」
『…。(不死身が相手なら私とあの人かなぁ…。ちょっと探すの面倒だけど)』
「間。」
あ、はい。と顔を上げる。
綱手の鋭い眼光が黒凪を捉えた。
最近お前達の不自然な動きについて報告が入っている。
そう言った彼女に黒凪は少しも表情を変えない。
「カカシが向かっていた暁の動向調査でも何度か間一族の者を見たと報告が上がっている。…暁に関わってどうするつもりだ」
『あぁ、それは近付いてきている暁がイタチかどうかの確認です。我々の任務に彼の暗殺も入ってるので。』
「(あ、上手い事誤魔化した。)」
「…。そうか。」
とりあえずは納得した様子の綱手に笑顔を向ける。
…ま、今回は"偶然"暁との戦闘に参加する事になるかもしれませんけど。
内心でそう言って七郎と共に執務室を後にする。
そうして間一族の屋敷まで黒凪を送り届けた七郎は彼女ににっこりと笑顔を向けた。
「ありがとうございました。…相変わらず素晴らしいまでの誤魔化し具合でしたね。…で、どうするんです?今日中には20小隊が派遣されますよ。」
『そうねえ…、ちょっと探しに行かなきゃならない人が居るから暁が簡単に殺されない事を祈るかな。』
鋼夜。と影に向かって声を掛けた黒凪の側に影からずるりと鋼夜が姿を現す。
そんな鋼夜の姿に七郎が小さく微笑んだ。
鋼夜の上に跨った黒凪が「じゃあね」と一言声を掛けて七郎に手を振る。
【…目的地は】
『目的地って言うか、探して欲しい人が居て…。』
ほい、と差し出されたマフラーに目を向け立ち止まって臭いを嗅ぐ鋼夜。
そして臭いを探す様に顔を上げる。
『まあ放浪してる人だから火の国にはいないと思うんだけ、ど!?』
突然走り出した鋼夜に掴まり「え、居た?」と問えば「あぁ」とぶっきらぼうに返答が返った。
火の国に居るとは言ってもかなり端の方らしく、つい最近に火の国に入ったのが分かる。
つまりこのタイミングで火の国に戻って来たと言う事だ。
『…。暁を追って来たのかねえ』
【…そもそも屋敷から出て行った理由は何だ】
『あれ、あんた知らないんだっけ?夜行でまだ見つかってない人達探しに行ってんのよ。巻緒さんとか大とか…』
あ、見つかったから戻って来たのかな。
さあな。そう言って走り続ける鋼夜の上で周りを見渡す。
そろそろ20小隊も暁を探索し始めた頃だろう。
このまま火の国の端まで向かっていれば暁を見つけ出した小隊が戦闘をしている最中に参加と言う形になるかもしれない。
【――!おい、右手伸ばせ】
『え、こう?』
「ゴフッ」
『あ、無道さんおはようございます。』
ズザーッと掴み取ったマフラーを見た鋼夜がブレーキをかけ、共に黒凪に捕まっている無道も引き摺られて止まる。
彼と共に走っていたらしい巻緒、大、亜十羅もすぐさま足を止め振り返った。
『無道さーん。起きてー』
「…やあ黒凪ちゃん…俺は今とても美しい走馬灯を見たよ…」
『大丈夫ですって、走馬灯見ても私達は生き返りますし。…あ、今もしかして1回死にました?』
「…何とかギリギリ持ち堪えたとも…」
流石ですね。と笑っていると無道と共に居た3人が此方に駆け寄ってくる。
そして無道の側に居る黒凪を見ると一斉に目を見開き、まず亜十羅が彼女の元へ両手を広げて飛び込んだ。
「黒凪じゃないのー!」
『亜十羅!?よかった、無道さんに会えたんだ!』
「あー、良かった!前世ではあんな事があったからあんた達が居るって話半信半疑だったのよー!」
「…やはり完全な信用を得る事は難しい様だね」
帽子を綺麗にかぶり直して困った様に言った無道。
亜十羅の言う"あんな事"とはあの世界にて部下達を虐殺した事だろう。
その記憶も持っている無道だったが、生憎この世界にて彼を完膚なきまでに負かした総帥はまだ見つかっていない。
その上あの世界で本当の死を迎えた時(本人によると)改心したそうで、間一族の一員として過ごしている。
「これだけ時間を掛けてまだ3人だ。もう少し集めてから戻ってこようかと思っていたんだがね…。」
そう言って地面に胡坐を掻き腕を組んだ無道に目を向けた。
『あぁ、そう言えばなんで戻って来たんです?戻る気が無かったんなら尚更…』
「呼ばれている気がしたからさ!」
ぴんと人差し指を立てて笑顔で言った無道にため息を吐く亜十羅達。
しかし黒凪は「おー!」と手を叩いた。
正解です!私が呼びました!
そう言った黒凪に「え゙」と固まる3人、そしてぱあっと顔を輝かせた無道。
「俺の予想ではぼうやに呼ばれたのかと思っていたが、まあそこは良いだろう!」
ぐっと両手を握られ黒凪もニコニコと笑顔を向ける。
そんな2人に「なにあれ」と顔を見合わせる亜十羅達。
するとそんな黒凪達の元へ1つの竜巻が近付き中から七郎が姿を見せた。
「暁と20小隊の内の1つが衝突したので一応報告に来ました。」
『あ、やっぱり衝突しちゃったか…』
「何?あんた達任務の最中だったの?」
『うん。その任務に無道さんの力が必要だから此処まで来たの。』
ほう!俺の力が!
笑みを浮かべて陽気に言った無道を見、亜十羅が困った様に振り返った。
木ノ葉の里まではまだ距離があるし、屋敷の場所分からないのよね…。でも無道さんを連れて行ったら黒凪が困るし。
そう言った亜十羅に「じゃあ僕がお送りしますよ」と七郎が笑顔を向ける。
『じゃあ3人をよろしくね。七郎君。』
「はい。」
さて行き先は…と黒凪と共に地図を覗き込んでいた無道が足元に少し大きな黒い玉を出現させた。
そして黒凪を横抱きにし、それを見た鋼夜はすぐさま黒凪の影に戻る。
「それじゃあ出発だ!」
ギュンッと黒い玉に乗って物凄い勢いで進んで行った無道。
黒凪は物凄い風に眉を寄せつつ徐に無道の肩に触れる。
その手をチラリと見て無道が笑った。
「随分と蓄えてあるだろう?」
『そうみたいですね。…抜かりないなあ』
「それは君もだろう?かなり力を蓄えているじゃないか。」
『相手が不死だと聞いて急いで蓄えたんですよ。』
ほう、不死…。
少し驚いた様にそう返した無道に黒凪が顔を上げる。
すると彼女の耳元にある無線が着信を知らせた為音量を上げて2人で耳を澄ませた。
≪ガガ、…黒凪か?伝え忘れた事があったから聞いてくれ。≫
『うん』
≪飛段って奴の能力についてなんだが、多分相手の血を取り込む事で自分と相手の傷をリンクさせる能力だと思う≫
まず最初に相手に傷をつけて血を取る。
そんでその血を舐めると身体に変な模様が浮かぶんだ。
それから自分の周りに妙なサークルみたいなのを書いて…。
≪そのサークルの中に入り、あとは自分自身を傷付けるだけ。それで血を取った相手も自分と同じように負傷する≫
「ほう。とても興味深い能力だな。」
≪…無道さん?≫
『不死には不死をってね。』
へえ、考えたな。
そう言った閃は「角都の方はサソリとデイダラが言ってた通りだ。」そう言って一旦途切れた会話の最中に草の中を駆け抜ける様な音が無線に届いた。
恐らく閃は今朝に言っていた通りにジャシン教や冥安について調べに外に出ているのだろう。
少しぐらい休みなよ。と伝えて無線を切り、黒凪が徐に口を開いた。
『さっき言ってた飛段ってのは銀髪の男らしいです。そいつと一緒に行動してるのが角都。そいつの場合は5つの心臓を持ってるらしくて』
「と言う事は5回殺せば死ぬな。我々よりも死ぬ回数に制限があると。」
『ええ。でも角都の場合は5つの心臓の分、5つの性質変化を持ってるらしく実力は随分と高いそうです』
まあ私達は全然生き返りますし、その最中に5回殺せば良いんで。
どうにかなるでしょ。あっけらかんと言った黒凪と同様に無道も特に焦った様子も無くニヤついているだけ。
そんな2人の会話を聞いていた鋼夜は「これが不死同士の会話か」とため息を吐きたくなった。
彼等に死ぬと言う恐怖は無い。
代わりに他人が死んでしまうと言う恐怖の重みを、人一倍背負う事となるが。
一方のアスマ班は少し離れた場所に立っている角都を除いた飛段1人に劣勢を強いられていた。
飛段の術により、飛段が受けた火傷をアスマも同じく受ける。
そして飛段を攻撃しようと動いたアスマを止める為、彼は自分で左足を突き刺した。
勿論同様にアスマにもその傷が現れ倒れ込む。
「さっさと終わらせてェ…全員皆殺しにしてやらねェとなァ!!」
「っ! くそ、」
アスマ班もこれだけの事が起きれば、現在アスマと飛段の身体がリンクしている事は理解出来ていた。
つまり不死である飛段が致命傷を負った場合、アスマだけが死亡する。
飛段の武器の切っ先が心臓に向かった。
すぐさまシカマルが影首縛りでその攻撃をギリギリで停止させる。
「(どうする…、どうすりゃあのふざけた術を止められる…っ)」
「ぐ、…んの野郎…!」
「(思い出せ、アイツの言動…アイツの動き…)」
あれ程の術なら何処かに穴がある筈だ。面倒な発動条件が、ある筈だ。
影首縛りの術で飛段を止めつつ思考を凝らしていく。
これでテメェは呪われた。これで全ての準備が揃った。…奴はそう言っていた。
最初にコテツとイズモによって受けた攻撃の血で地面に妙な図面を描いている。
そしてアスマに傷を付けた後にアスマの血液を舐めてから突然図面の上に戻り足を止めた。
「(途端にアスマにもアイツの傷がリンクする様になって…っ)」
そこでシカマルは閃いた様に目を見開いた。
そして徐に立ち上がりアスマを見る。
アスマもそのシカマルの様子に気付き、小さく頷いた。
シカマルはゆっくりと飛段と共に彼の足元の図面から飛段を引き摺り出す様に動き始める。
離れた位置から見ていた角都がそんなシカマルに気付き微かに目を見開いた。
「おいシカマル、一体何を…」
「アイツをあの図面の中から引き摺り出すんすよ…っ」
「図面?…図面と一体何の関係が、」
アイツの武器には鎌が3つも付いてる。
あの形状から敵に致命傷を与えると言うより、少しでも傷を負わせる事に特化されている。
そこから推測するにあの鎌で相手を傷付け、その血を自分の体内に摂取する事で術の発動条件が1つ満たされる。
「発動条件の内の1つ…。……まさかもう1つが、」
「恐らくあの図面の中に自分が居る事、…っ」
「ぐ、…くそ…っ!テメェ…!!」
やっと飛段が図面から出る。
途端に術が切れたかどうかを確認する為にアスマが手裏剣を投げ、飛段の耳を切った。
全員の視線がアスマの耳に向かうが、その耳が切れる事は無かった。
よし、とシカマルが影を一気に飛段の身体に突き刺す。
動けない身体に飛段が眉を寄せた。
「っ、クソ!角都、手ェ貸せ!!」
飛段による攻撃で負った傷を庇いながらアスマがゆっくりと近付いて行く。
角都!と飛段が叫ぶが彼が動く様子はない。
これで終わりだ、とアスマがチャクラ刀を横一門に振り降ろした。
途端に地面に落ちる飛段のネックレスと額当て。
「…フン。油断するからこうなる」
「っ、やっと、1人目…」
「これであとは…」
コテツとイズモの目が角都に向いた。
角都はじっと胴体から離れて転がっている飛段の頭を見つめ、徐に口を開く。
「助けが欲しかったならもう少し早めに言うべきだったな」
「うっせえ!テメェ俺が呼んでも動かなかったじゃねェかよ!!」
首と胴体が離れた状態でそう叫んだ飛段にアスマ班が一斉に目を見開く。
正直彼等は首を刎ねれば流石に死ぬと思っていたのだ。
しかし元気に喚く飛段に見事にその予想は打ち砕かれる。
徐に息を吐いて角都が一瞬で飛段の頭の側まで移動した。
「いてっ!いてェって!てめ角都!髪の毛引っぱってんじゃねェ!なんで胴体持ってこねえんだよ!!」
「頭の方が軽い」
「そう言う問題じゃねえっつの!!」
まだ生きているのか、と唖然としたコテツの声が響く。
しかしシカマルは落ち着いた様子で飛段と角都を見据えると「首だけになったアイツに戦う方法はもうない」と冷静に言い放った。
飛段の様子から胴体を動かす事は出来ない様だし、実質残るは角都だけだと見て良い。…筈だった。
「全く手の掛かる…」
「イテ、」
首を胴体の側に持って行き、胴体を立たせた後に首のあった部分に頭を固定する。
そしてその首を角都の腕辺りから出た紐のようなものが縫い合わせて行った。
そうして首と胴体が繋がった飛段がしっかりと己の足で立ち、腕を持ち上げる。
その様子を見てアスマ班は唖然と目を見開いた。
「く、くっつきやがった…?」
「くそ…っ、やっと1人倒せたと思ったのに…!」
コテツとイズモが側のシカマルを見る。
彼は飛段を押さえつけるだけでかなり体力を消耗したらしく、とても戦える状態では無かった。
それはアスマも同じ状態で、飛段が復活した今戦況は明らかに不利になっている。
飛段が蹲るアスマを、角都がシカマル達を見据えた。
「俺はあの3人を殺る…。賞金首はお前が殺れ」
「あったりめーだろ!アイツを殺らなきゃ戒律破る事になっちまうんだからなァ!」
「またそれか」
途端に2人が走り始める。
シカマルを護る様にコテツとイズモが武器を構え、走り出した。
向かってくるコテツとイズモを角都が迎え撃つ。
その様子をシカマルは見ているしか出来ない。
「イズモ!」
「分かってる!…水遁、水飴拿原――」
「無駄の多い攻撃だな。」
「「っ!?」」
イズモとコテツよりも早く動いた角都が2人の首に手を伸ばし、2人を拘束し首を締め上げた。
「…角都の方はもう終わりそうだな。」
「っ、く、」
さてと。そう言って飛段の目がアスマに向いた。
蹲っているアスマに向かって武器を向けた飛段は腕に力を籠める。
途端に起き上がったアスマがチャクラ刀を振り上げた。
それを見た飛段は瞬時に反応し後ろに飛び退きつつ手元の武器を投げつける。
間一髪で避けたアスマを見た飛段は徐にニヤリと笑った。
「アスマ、後ろ――!」
振り返ったアスマの視界に背後から迫る鎌が映り込む。
それを見たアスマはすぐさま身体を地面に伏せ、上を真っ直ぐ通過した鎌は飛段の腹に直撃した。
その様子にシカマルが安堵の息を吐くが、アスマの様子に一気に顔を青ざめさせる。
「ぐ、あぁ…っ」
「だはははは!痛ェか?痛ェだろ!?」
「アスマァ!!」
飛段の足元には術の発動に必要な図面があった。その影響でアスマも傷を負った。
シカマルがアスマと飛段に向かって走り出す。
ゲホッと血を吐くアスマにシカマルが苦しげに眉を寄せた。
笑った飛段が腹部に突き刺さっている鎌を動かすとアスマも苦しげに腹を抑える。
途端にシカマルが足を縺れさせて倒れ込んだ。
「っ、アスマ…ッ」
「これで終わりだ…。これであの痛みを味わえる…!」
コートの中から武器を取り出し飛段が腹部に切っ先を向ける。
そして突き刺すために大きく持ち上げ、振り降ろした。
「止めろー!」
『あ、まずい。』
「何てタイミングだ、まるでヒーロー登場の様じゃないか。」
一瞬で飛段の真横から結界が出現し飛段をサークルの中から弾き出す。
その衝撃で飛段の手から武器が落ち、本人も勢いよく転倒した。
アスマが顔を上げ、シカマルの唖然とした目が突然現れた2人に向く。
角都も振り返ると腕から伸びている触手を結界に押し潰され首を絞められていたコテツとイズモが解放された。
『あーもう、無道さんが道間違えるからですよ。』
「人には過ちが付きものだ。」
『いや貴方もう何回も通った道でしょ。』
「…黒凪…?」
角都と飛段の目が黒凪と無道に向く。
シカマルが唖然と彼女の名を呟くと黒凪は微かに振り返って笑った。
『いやあ、皆さんご無事…じゃないね。でも生きてて良かった。』
「げほ、…ぞ、増援か?」
「っ、…いや待て…あれは間一族の…」
「(間一族だと…?)」
イズモの言葉に角都がピクリと眉を寄せる。
思わず動きを止めた飛段と角都を見た黒凪はアスマの側にしゃがみ込んだ。
そして彼の腹部の様子を見るとすぐさま彼を結界で囲み一気に屋敷へ転送させる。
一瞬で消えたアスマにシカマルが目を見開いた。
『あ、安心して。アスマさんをうちの屋敷に転送させただけだから』
「転送…、屋敷…?」
黒凪が着信を知らせた無線の電源を入れるとその耳元から驚いた様な声が聞こえる。
シカマル達に気を使って音量を上げた。
≪おいこら黒凪!なんだよこの血塗れの奴!≫
『すぐに救護班へ回して。その傷ならどうにかなるでしょ?』
≪…大丈夫だ、助かる≫
良守を押し退けて言った菊水の声にシカマルが安堵した様に眉を下げる。
その様子を見た黒凪は通信を切る事はせず音量だけを落として無線を耳に装着した。
そして飛段に目を向けるとサークルから出た後に再び元の位置に戻ろうとした為黒凪が再び結界で殴り飛ばす。
そんな飛段を見た黒凪は微かに眉を寄せ、無線に向かって口を開いた。
『ねえ、閃はまだ帰ってない?』
≪影宮?影宮ならさっき血塗れの男見て部屋に…≫
≪くっそ無線どっか行った…っておい良守!それ黒凪との無線か!?あ、文弥君この紙に詳細書いてるからまじない殺し作って!≫
≪うおぉ!?≫
ガッと少しの衝撃音の後に閃の焦った様な声が耳に入り込む。
おい、このアスマの傷は飛段の攻撃だな?
掛けられた言葉に「うん」と返しつつ飛段が動かぬ様にと足を結界で固定した。
≪やっぱりジャシン教の人体実験には冥安が関わってた。しかも人体実験を始めた人間の内の1人だったんだ。≫
『!』
≪冥安が人体実験を始めた経緯は後で話す。とりあえず飛段の能力についてまず話すから良く聞け。≫
飛段の呪いの様な能力と不死身の身体、あれは冥安が行った人体実験の末に出来たものだ。
この2つはチャクラで作られたものじゃない。
閃の言葉に微かに目を見張る。
≪2つ共冥安の呪力によって作られたものだったんだ。つまり他人に自分の傷を移す能力は一種のまじないって事になる≫
『…まじない…』
≪ああ。つまり飛段の能力は解呪師の絲と呪刻師の文弥君が居れば完全に攻略出来るって事だ。≫
≪――…あ、もしもし黒凪?≫
耳に入った染木の声に「文弥くん」と返事を返した。
小さく笑った染木は倒れているアスマを中心に"まじない殺し"を作る為にまじないを彫っている。
その手を止める事無く閃によって近付けられた無線に向かって口を開いた。
≪必然的にこの…アスマさん?には実験体になってもらう形になるけど、絶対に呪いは解くから安心して。≫
『うん』
≪あ、そのままでね。絲。…で、まじない殺しを完成させて発動させるまであと5分程欲しいんだ。それまで飛段って奴には絶対に呪いを発動させないで。≫
『解った、やってみる。』
「おおっと」
額に青筋を浮かべた角都の拳が黒凪と無道に迫り、無道が黒凪を抱えてその拳を回避した。
此処に来るまでの間に暁の2人、特に角都を殺してしまわぬ様にと無道には念を入れてある。
その為か無道は黒い玉で積極的に攻撃を仕掛けようとはしない。
「貴様…よくも賞金首を…」
「っ、んだこの箱はァ!全然ビクともしねェぞ、どうにかしろォ角都!」
「知るか。それぐらい自分で抜け出せ」
「あぁ!?」
キレている角都の様子に飛段が思わず言葉を止めた。
先程結界で千切った筈の腕は元の位置に当たり前の様に収まっている。
そんな角都を見た黒凪は小さく笑い、構えた。
『それじゃあ半殺しのつもりでやりましょうか。無道さん。』
「良いだろう。」
「…減らず口を…」
『――…ん?』
黒凪達の真上から落下してくる黒い羽。
それに続いて現れた大量の烏に角都、飛段、黒凪、無道が顔を上げた。
途端にこの4人を中心に群がり始めた烏達に一様に眉を寄せる。
『…あの無道さん、これ多分私達も暁だと思われてるパターンです』
「と言う事は木ノ葉の増援かい?また随分とチンケな…」
「オイオイなんだこのカラス共はァ!」
「…増援か」
黒凪の目が無道に向き、彼の黒い玉が一気に烏達を一掃していく。
そうして開けた視界に見えた角都と飛段の足元から結界を伸ばした。
それに気付いた角都は飛び退いて回避し、チラリと飛段を見る。
飛段は足を結界で固められた上に全身も大きな結界で囲まれていた。
イラついた様に飛段が武器で結界を攻撃するが、人間の腕力だけで破壊出来る代物ではない。
「チッ、固ェな…!」
「――…!」
「…あ?…いやいやマジかよ…」
突然顔を上げた角都と飛段。
彼等の様子に黒凪と無道も顔を上げると空には白い鳥が5羽飛んでいる。
恐らく誰かと通信をしているのだろうが、生憎此方には閃が居ない為その内容をジャックする事は出来ない。
数秒程空を見上げていた角都は徐に飛段の元へ近付き、彼に掛かっていた結界を全て叩き壊した。
『…わ、破られた』
「うおっしゃ!ありがとよ角都!」
「さっさと戻るぞ」
「はぁ!?マジで戻る気かよ、あとちょっとで全員殺れるだろォが!」
いや、間一族が居る時点で短時間で方を付けるのは無理だ。
そう言った角都に飛段が眉を寄せた時、彼は一瞬怪訝な顔をして耳を抑えた。
それに気付かず角都の目が黒凪と無道に向き、2人は顔を見合わせる。
「どうするんだね?どうやら彼等は引くつもりのようだが。」
『どうせまた戻ってきますしとりあえず見逃しましょ。これだけ人が居ると色々と面倒ですし。』
「…どうやら間一族も俺達を見逃してくれるらしい…」
「あぁ!?テメェ等一著前に気なんか使わなくていーんだよ!来いやオラァ!」
止めろ飛段。行くぞ。
有無を言わせぬ角都の言葉に一旦黙り、舌を打った。
そして飛段は座り込んでいるシカマルと黒凪に目を向けて口を開く。
「言っとくがあの男はもう駄目だぜェ。あいつは俺に呪われた…この呪いは何処に居たって有効だァ…」
「!」
「つまり!この俺が何処かで再び奴を呪った時ィ!」
それがアイツの最期って事だァ!!
笑いながら言った飛段にシカマルが悔しげに眉を寄せる。
飛段の言う"アイツ"がこの場に居ないアスマだと悟った増援のチョウジといのも顔色を悪くした。
「それじゃあなァ!」
ボフンッと消えて行った2人。
それを見たシカマルはふらっと倒れかけ、それをチョウジといのが支える。
黒凪は無道が持っている時計を覗き込み既に8分経っている事を確認すると無線の電源を入れた。
共に会話を聞く様に無道も耳を寄せる。
『…あ、文弥くん。そっちはどう?』
≪まじない殺しを使って呪いは解除した。呪われた彼は今救護班の所で手当てを受けてるよ≫
『そっか、良かった。…でも飛段の方は呪いが切れてるのに気付いてなかったみたいだけど…』
≪え、本当?…もしかするとその飛段って奴、まじないについて何も学ばずに何度も使ってたのかな≫
もしかしたらまじないが解除された事を意識的に認識出来ないのかもね。
ふーん、と黒凪が空を見上げる。
そうしてボロボロになったアスマ班の面々の元へ駆け寄り、その顔を覗き込んだ。
『…アスマさんは今うちの屋敷で療養中です。シカマル、いの、チョウジならお見舞いに来ても良いからまた来てね。』
「…なんで私達だけ…?」
『小さい頃から一緒に過ごしてきた大事な先生でしょ?』
絶対に助けるから安心して。
小さく微笑んで言った黒凪は角都と飛段の後を追う様に里とは別の方向に歩き始めた。
それを見たシカマルは「待て!」と咄嗟に声を掛け無道と黒凪の足を止める。
「あいつ等を追う気か? …五代目の要請なら何も言わねえ。だが俺には20小隊も派遣しておいてあんた等を向かわせる意味が理解出来ない。つまりあんた等は命令無しに此処へ来て、そして暁を追おうとしている事になる。」
そう言ったシカマルに内心では舌を巻きつつ黒凪も無道もピクリとも表情を変えない。
違うか?と目付きを鋭くさせて言ったシカマルに黒凪が徐に口を開いた。
「…あいつ等はアスマにあれだけの傷を負わせた。あいつ等とは俺がケリを付ける。…邪魔すんなよ、黒凪。」
あー…やっぱり。
思わず頭を抱えたくなる。
里の人間が居ない所でこっそり捕えるつもりだったが、またしても邪魔が入るか。
無断で暁に関わっている事が火影にバレればそれはそれで厄介だ。
『…そんな怖い顔しないでよ。私達は任務の帰りに偶然通り掛かっただけ。これから向かうのはうちの屋敷だよ。』
「逆方向だろうが。」
『間一族の事を何も知らないくせに下手に物を言うんじゃないよ。こっちに正規の道で行くより早い方法があるのさ。』
「(…まぁ、間違ってはいないが)」
無理矢理とも取れる彼女の言い分に無道は何も言わない。
実際に現在向かおうとしていた方向には隠された転送用のまじないがある。
火の国内には多数あるまじないは急ぎの場合の時間短縮の為だ。
『そんなに疑うなら後でうちの屋敷においで。アスマさんに会わせてあげるよ』
再び進もうとした方向に進んだ黒凪に無道もついて行く。