世界を君は救えるか【 × NARUTO 】
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風影奪還編
『鋼夜、そのまま追跡お願いね。』
「確か第三班が木ノ葉から直接、そして第七班が砂の負傷した忍の治療をした後に暁のアジトに向かう手筈だったよね?」
うん、と頷いた黒凪が火黒の背に乗ったまま地図を広げた。
アジトの場所は川の国だって聞いてる。
普通ならトラップがあると思うけど、まあ確実に作動するものは前に居るガイ班が突破してくれてるかな。
『トラップに引っかからない為に後を追ってるわけだし。』
【おかげで此処まで楽なモンだなァ】
「…とりあえず戦闘不能にして本家まで持って帰るんだよね?」
『うん。今のところの目撃情報は1人だけど、暁はツーマンセルで動くっていう話だしもう一人いるのが妥当だろうね。』
「じゃあ私たちも手分けして…」
『そうだね。今回は火黒と時音ちゃん、私と鋼夜で分かれて戦おうか。』
能力の関係で時音ちゃんは爆遁使いの方。
私と鋼夜はもう1人の方を倒す。
彼女の言葉に4人が小さく頷いた。
途端に鋼夜と火黒の耳に微かな破壊音が聞こえ、同時に足を止める。
【岩が砕ける音がしたなァ、今。】
【…。あの九尾の小僧の臭いがするな。】
『じゃあその音の近くに居るのはカカシ班かな。ナルトがいるんだもんね』
【あぁ。】
んー…。と眉を寄せた黒凪が徐に呪符を2枚放り投げる。
ボンッと鳥の形になった式神がそれぞれカカシ班とガイ班の元へ飛んで行った。
とりあえず状況を確認してから動こうと言う黒凪の判断に従って鋼夜と火黒は式神の帰りを待つ様にその場に留まる。
暫くして戻ってきた式神に状況を確認した黒凪はチラリと左側を見た。
『…成程ね。ガイ班はアジトを開く為のトラップに引っかかって戦闘中。標的はアジトの中。対峙してるのはカカシ班。』
【アジトはどっちだ?】
【…こっちだ】
鋼夜が走り出し火黒もその後をついて行く。
目的地が明確になった為に今までの速度とは比にならない程の速さで其方に向かった。
アジトと思しき場所に着いた時、中からナルトの大声が聞こえてくる。
顔を見合わせた鋼夜と火黒はその入り口の側に着地した。
「我愛羅!……立てよ…!!」
「しつこいな…。コイツはもう死んでる、うん。」
「…くそ…っ」
チラリと顔を覗かせる。
倒れた我愛羅の上に金髪の青年が座り、その隣に年を取った風貌の男が立っていた。
確か我愛羅と戦った男は金髪だった筈。
黒凪と目を合わせた時音が小さく頷き鋼夜から降りた。
火黒から降りた黒凪が指示を出そうと口を開いた時「くそ!」とナルトの声が響きばっと目を向ける。
「我愛羅を返せ!!」
『おっとっと、』
ナルトの前に結界を作り彼を強制的にストップさせた。
ふう、と息を吐いた黒凪は「中に入ろうか」と率先してアジトに足を踏み入れる。
目を細めた鋼夜は黒凪の影に入り込んだ。
暁の2人は現れた3人に目を向ける。
『私達が向かったのに人柱力を奪われたとなれば大目玉を食らうからね。』
「っ、黒凪!?」
『明らかに我愛羅は死んでる。君まで死んだら本末転倒。』
暁に目を向けたままナルト達の側まで歩いて来た黒凪達。
サソリはじっとその様子を見ていると徐に舌を打った。
その様子にデイダラがチラリと目を向ける。
「…木ノ葉の間一族か…」
「あ?なんだそれ。聞いた事ねーぞ、うん」
「俺もよくは知らねえ…ただ厄介だとは聞いている…」
ゆっくりと火黒の手から刀が伸びる。
チラリと黒凪が彼に目を向けた瞬間、火黒が姿を消した。
そして一瞬でサソリの真後ろに移動してニヤリと笑う。
しかし一瞬で彼の服の下から蠍の様な尾が伸び火黒の刀を受け止めた。
【さっさと殺ろうぜェ?寂しいじゃねえかよ、話してばっかだとさァ】
「…チッ」
「それじゃあ旦那、九尾はオイラが貰うぜ。うん」
「あぁ?」
火黒から目をデイダラに向けた瞬間、デイダラが粘土を練り巨大な鳥を作り出した。
その鳥が倒れている我愛羅を口に銜えデイダラを乗せて上空に飛び立つ。
サソリは小さく舌を打つと火黒を尾で払い退けた。
「デイダラ…テメェ…」
「じゃあな旦那。後で落ち合おうぜ」
「チッ…」
「待てこの野郎!」
アジトを抜けて進み始めたデイダラにナルトが付いて行く。
それを見たカカシは振り返りサクラとチヨバアを見ると「アイツは頼みます」と一声かけてすぐさま後を追って行った。
火黒もサソリから離れると時音を抱えてアジトを出て行く。
それを見送った黒凪は残ったサクラとチヨバアの隣に立った。
『ねえサクラ。そのお婆さんは?』
「…チヨバア様よ。アイツ…サソリはチヨバア様の孫。」
『孫?…へえ、あいつのお婆さんなんだ。』
それじゃあまた挨拶しとかないとねえ。
ボソッと言った黒凪にサクラが微かに眉を寄せた時「とっくに引退したって聞いたがな…」とげんなりした様な声が響いた。
サソリに目を向ければその目がカッと見開かれ、そのすさまじい殺気が黒凪たちを包む。
その殺気にサクラは思わず硬直するが、すぐさまその背中を黒凪が叩いた。
『深呼吸。…大丈夫だよ、サクラは絶対死なせない』
「っ、…うん、ありがと」
「恐れるな、サクラ。…わしはあやつをよーく知っておる」
静かに前に出たチヨバアが懐に手を差し込み一気に引き抜いた。
チヨバアの前にクナイがチャクラ糸に操られて浮かぶ。
徐に手を動かすとクナイが独りでにサソリに向かって行った。
サソリは尾を動かしそのクナイを弾く。
弾かれたクナイが彼の暁のコートを引き裂いた。
「…俺に楯突こうってんなら仕方ねェ…」
「っ…」
『……』
「3人まとめて…俺のコレクションになるか…?」
コートの下の左腕には武器、背中には鬼の様な巨大な甲羅。
その異様な姿に黒凪が影に目を向ける。
影の中ですんと息を吸った鋼夜がぼそりと言った。
【あれは本体じゃないな…傀儡の臭いだ…】
「?…今の声、」
『あ、気にしないで。私の声。』
「(え、黒凪の声だった…?)」
あれはヒルコ。
チヨバアの声に其方に目を向ける。
傀儡師の接近戦に対する弱点を克服したサソリの十八番じゃ。
あの傀儡は操っている人間の武器にも、鎧にもなる。
カタ、と首を傾げてヒルコの中でサソリが口を開いた。
「…俺のコレクションの作り方を知ってるか…?」
「!」
「まずは臓物を全て抜き取り…次に血を抜いて…」
最後にその死体に武器を仕込む…。
カタ、とまた傀儡独特の音がした。
あぁそう言やあ…お前等3人で俺のコレクションが300を超える…。
低くしわがれた声が洞窟に響いている。
間一族がコレクションに加われば…そりゃあ良い作品が出来るな…。
サソリの目が黒凪に向いた。
『…君に私が殺せたらの話だね、それ。』
サソリから殺気が発せられる。
まずはサソリをあのヒルコから引き摺り出す。そう言ったチヨバアに目を向けた。
その為にはまず、あの背中の甲羅を叩き割る必要がある。
サクラもチヨバアに目を向けた。
「綱手姫直伝の怪力…使ってくれるな、サクラ」
「…はい。」
「決して奴の仕込みには当たるな。…少しでも攻撃を受ければ致命傷の毒が体内に入り込む」
全てを完璧に避けるのじゃ。
サクラの頬を汗が伝った。
それじゃあ私はそのサクラのサポートといきましょうかね。
緩く笑って言った黒凪に鋼夜が舌を打つ。
【(自分でやりゃあ早いものを…)】
「安心せい。わしはあやつの癖を知っておる。…それに戦闘経験もあやつの比では無い…」
「!」
「迂闊に手を出してこない所がその証拠じゃ。…間一族の者とわしが居て、お主に攻撃が及ぶ筈がない。」
サクラ、耳を貸せ。…そこのお主もな。
チヨバアに呼ばれて側に寄る。
彼女の作戦を聞きながらサソリを警戒してはいるが、チヨバアの言う通り迂闊に手は出してこなかった。
作戦を聞き終わり頷いた頃「もう良いだろう…」とサソリの低い声が響く。
「俺は待つのも待たされるのも嫌いだ…」
「知っておる。…すぐに終わらせるつもりじゃ」
「フン…ぬかせ…」
サクラとチヨバアが一斉に走り出す。
黒凪は一歩背後に動き構えた。
サソリがヒルコの口布を剥ぎカカカ、とヒルコの口が大きく開く。
その口から無数の毒針が吐き出された。
『…あれは結界術じゃ捌き切れない。鋼夜』
【チッ】
黒凪が鋼夜に力を与え彼の尾がサクラの前に伸びる。
鋼夜がサポートし易い様にと薄く絶界を纏ってサソリに近付いた。
妖力が高まった鋼夜の尾は鋼の様に固くサソリの毒を体内に通さない。
目にも止まらぬ速さで針を弾く鋼夜の尾に隠れつつサクラが徐々に近付いて行った。
『……。』
ヒルコの左腕が動く。
その腕を結界で囲み一気に押し潰した。
それにサソリが目を見開いた瞬間に針も数が底を付きサクラが拳を固める。
チッと舌を打ってヒルコの尾がサクラに向かうがその尾が不自然にピタリと止まった。
尾にはチャクラ糸が絡まっている。先程のチヨバアの攻撃で尾に仕込んでおいたのだろう。
「今じゃ!サクラ!」
「(チヨバアのチャクラ糸か…!)」
一気に距離を詰めたサクラがヒルコの背中の甲羅を叩き割る。
すると粉々に砕けた甲羅の中から布をかぶった人間が1人その場から離脱した。
それを目で追ったサクラの身体に鋼夜の尾が巻き付き彼女を出てきたサソリ本体から遠ざける。
サクラは己を移動させた尾をチラリと見てサソリを睨んだ。
「…あれが、本体」
『……。』
「20年ぶりかのう、サソリ。…その顔を拝むのは…」
ゆっくりと本体が立ち上がる。
布の下に隠れたままサソリが右手を微かに動かした。
バラバラになったヒルコの頭が宙に浮かび、外れた首の部分から無数の針が飛び出す。
チヨバアが指先を細かく動かしつつ両手を手前に引く仕草をした。
するとその動きと共にサクラが飛び上がり針を回避する。
「…やっぱりな。俺の動きを見切れるババアがその小娘をチャクラ糸で操っていたか…」
「(ばれた…!)」
「しかもご丁寧にヒルコの尾にまで…。その上間一族のガキが加われば攻撃が1つも当たらないのも合点が行く」
ヒルコの尾にチャクラ糸を付けたのは最初の攻撃だろう…?
ボソッと言ったサソリにチヨバアが笑みを見せる。
よく分かったのう、と軽い調子で言ったチヨバアの言葉を聞きつつサソリの手が布に伸びていった。
「俺に傀儡遊びを仕組んだのはテメェだろババア…俺ならそれぐらいは気付く」
「ふん。…じゃがもう遊びは終わりじゃ、サソリ」
「俺とて遊びのつもりでババアと戦おうってんじゃねぇ。…すぐに終わらせてやる」
体がサクラ達に向き直りその手が布を掴んだ。
する、と降ろされた布。
その下に見えた顔にチヨバアが目を大きく見張った。
「チ、チヨバア様…?」
「……っ」
『(…あの身体はどんな臭いがする?)』
【(…傀儡の臭いだ。人間の臭いじゃねぇな…)】
あれがサソリ、なのですか。
震えたサクラの声を聞きながらチヨバアが唖然と口を開いた。
どういう事じゃ…。そんなチヨバアの声にサソリがニヤリと笑う。
「…昔のまま、歳をとっておらぬ…」
「どういう…サソリは20年も前に砂隠れを抜けたって…っ」
『傀儡だねえ、その身体。』
「「!」」
いやあ、30歳ぐらいになってくると身体能力に支障を来してたりするじゃん?
だからヒルコの中に隠れてるのかなって思ってたけど…。
小さく笑って黒凪が前に出る。
『良いね、申し分ない』
「(申し分ない…?)」
「…得体の知れねぇガキは嫌いだ…」
だが。そう言ったサソリの手に巻物が収まった。
そんな奴ほど研究し甲斐がある。…殺してから存分に調べ上げてやるよ。
巻物が静かに開かれる。そこには大きく"三"と記されていた。
「数十年ぶりの再会のついでだチヨバア…。殺すのに手間取った分、1番気に入ってる作品…」
ぼふんっと煙が起き、その煙が消えた時…またしてもチヨバアが大きく目を見開いた。
三代目、風影。
震えるチヨバアの声にサクラが大きく目を見開き黒凪が片眉を上げる。
「もう10年以上も前の事じゃ…三代目風影が突然里から消えたのは…」
『(確か三代目は風影の中でも歴代最強…)』
「…まさか我が孫が三度も風影を手に掛けるとは…!」
「三度…?」
サクラの声に頷いたチヨバアは我愛羅の父である四代目風影を殺したのは大蛇丸だがそれを手引きしたのはサソリだと言った。
しかしサソリは「おいおい、四代目風影を殺った大蛇丸を手引きしたのは俺じゃなく俺の部下だぜ?」と言い返す。
眉を寄せたチヨバアは上司がお主なら同じ事だと即座に言い返した。
「くく、…確かに大蛇丸と組んでた時は色々やったがな…」
「…大蛇丸と組んでたんなら、貴方に聞きたい事が山ほどあるわ」
『…。』
サスケの事を思い返しているのだろう。サクラの目付きが変わった。
ニヤリと笑ったサソリが右手を引き三代目風影が動き出す。
すぐさまサクラをチヨバアがチャクラ糸で引っぱりその前に黒凪が立った。
おい、と影の中から不機嫌な声がする。
『あの武器、壊しちゃ駄目だよね。』
【…そこまで気を使う必要があるとは思えねぇがな…】
三代目風影の右腕から飛び出した刃には毒が塗られている。
その刃を結界で受け止めサソリの真横から結界を伸ばした。
それに気付いたサソリは顔を背けくいと左手を動かす。
三代目風影の左手がパカ、と開きそこから無数の手の様な傀儡が現れた。
無数の手は束になり蛇の様に黒凪に近付いて行く。
「黒凪!」
「駄目じゃサクラ、動くな!」
「でも!」
ドンッと鈍い音が響き無数の手が黒凪の真上から降り注ぐ。
しかし手応えの無い事にサソリが微かに眉を寄せた。
しかも己の頭を横から叩こうとしていた結界もまだ存在している。
「(この術…一体どういった仕組みになってやがる…)」
『あー…。ちょっと傷物にしちゃったなぁ』
【フン。無傷で捕らえようとするからこうなる】
降り注いだ無数の手は黒凪の周りのみ絶界で消滅した。
出来る限り破壊したくなかった黒凪は最少まで絶界を縮めている。
微かに眉を寄せサソリが小指を微かに動かした。
無数の腕から毒煙が溢れ出す。それを見た黒凪はチラリと背後を見た。
『(私は問題ないけど…)』
無数の手から縄が飛び出し躱そうとしたサクラの胴体に巻き付いた。
ぐっと引き寄せられチヨバアが眉を寄せる。
毒霧が大きく広がり黒凪と共にサクラも包み込んだ。
「(これで小娘と間一族の女は…)」
『結。』
「!!」
サクラを掴んでいた縄を結界で千切りチヨバアがすぐさま彼女を引き戻す。
咄嗟に息を止めていたサクラはチヨバアに受け止められると思い切り息を吸った。
サソリは眉を寄せ煙に包まれたままの黒凪を見る。
「(既に呼吸は限界の筈だ…)」
「サクラ、無事か!?」
「だい、じょうぶです…」
サクラとチヨバアも黒凪が居る方向を見る。
出て来ない様子にサクラが眉を寄せていると彼女とチヨバアに向かってサソリが傀儡からクナイを放った。
チヨバアはすぐさま巻物を2つ取り出し出現させた傀儡でクナイを弾く。
「…あぁ、"ソレ"か」
「そうじゃ。流石のお主も覚えておったか」
「一応俺の作品だからな…」
その声を聞きつつ黒凪は耳元の無線の声に耳を傾けた。
無線の向こうでは閃が話している。
サソリの過去をざっと洗い出した。聞くか?
そう言った閃に「うん」と小さな声で返した。
「サソリ…お主が最初に作った傀儡、」
≪サソリは幼い頃に父と母を木ノ葉の忍、カカシの父親であるはたけサクモに殺されている≫
「父と母じゃ」
チラリと目を向ける。
顔を上げた2つの傀儡は確かにサソリの面影を帯びていた。
チヨバアって言う祖母が居て、その人がサソリに傀儡を教えた張本人だ。
そのチヨバアの弟の記憶を読んだ所、
≪サソリが最も最初に作った傀儡は父親と母親。両親の愛に飢えていたが故の作品だったんだってよ≫
『うん』
≪ちなみに父と母は普通の傀儡だが、今のサソリが扱っている傀儡の殆どは人間の死体を使った人傀儡ってものらしい。≫
その人傀儡は元の人間のチャクラを使う事が出来るって話だ。
閃の言葉に片眉を上げる。
…とりあえず分かったのはこれぐらいだな。
今は側に限がいねーから暁に近付くのは流石に怖いし、最近の情報はまだだ。
一旦言葉を切った閃に「ありがとう」と返して無線を切った。
両親の愛に飢えて父親と母親の傀儡を、ねえ。
『やっぱりこの世界には可哀相な子が多い…』
【……】
ぐぐぐ、と周りにあった無数の腕が動き始めた。
それに気付いた黒凪は絶界を止め戦い始めた三代目風影と父と母の傀儡に目を向ける。
黒凪に気付いたサクラが駆け寄り彼女の手を引いた。
『わ、』
「チヨバア様が下がっている様にって、」
『…解った。』
2人で少し離れた場所からチヨバアとサソリの一騎打ちを眺める。
チヨバアとサソリは互いに目にも止まらぬ速さで傀儡を操り互角の戦いをしていた。
やがて傀儡同士が離れ術者の元へ戻っていく。
互いの傀儡の武器はボロボロになっていた。
「…流石に面倒だな…。さっさとやるか」
「!」
ガコ、と三代目風影の口が開きそこから黒い砂がゆっくりと姿を現した。
砂は宙に浮かびざらざらと嫌な音を立てている。
「…やはりその傀儡、三代目風影の術を…」
「三代目風影はこの術で最強と詠われた。俺が使わない筈がないだろう」
「チヨバア様、あれは…?」
「あれは砂隠れで最も恐れられた武器、砂鉄じゃ。三代目風影はチャクラを磁力に変えられる特別な忍でのう…」
そのチャクラを使って砂鉄を様々な形に変化させ、状況に応じた武器を作り上げていたのじゃ。
砂鉄がアジトの中に広がっていく。
チヨバアがチラリと出口を見るが今更サクラを逃がす事は出来ないだろう。
次にサクラの隣に立つ黒凪に目を向ける。
「…間一族の、」
『!』
「お主、…あの武器からサクラと己を護る術はあるか…?」
『……あるって言えばあるけど』
サクラを護ってくれぬか。
チヨバアの言葉に黒凪がピクリと眉を寄せた。
あの術はとても厄介なもの。…わしでないと太刀打ち出来ぬ。
「砂鉄時雨!」
「(いかん…!)」
チヨバアが傀儡を前に立てチャクラを練る。
サクラと黒凪の元にも砂鉄が向かった。
黒凪の顔を見た鋼夜が物凄いスピードで彼女をサクラとチヨバアの前へ運んで行く。
そこに砂鉄が突き刺さる様に降り注いだ。
「……!」
サソリが目を見張る。
構えていたチヨバアとサクラも大きく目を見開いた。
双方の真ん中に立つ黒凪の周りに禍々しい球体の結界が出来上がっている。
絶界の禍々しさにサクラの背中を寒気が駆け抜けた。
「(何あれ…、なんだか怖い…っ)」
『…。もう無理っぽいですね、チヨバア様もサクラも。』
「(何だあの術は…)」
「(あれが間一族の…?)」
2人共、外に…。
そこまで言った黒凪の真上から砂鉄で作られた無数の針の様な物が降り注いだ。
それでも無傷な彼女の様子にサソリの眉間に皺が寄って行く。
『無駄だよ。この術は領域に入った自分以外の全ての物を消し去る。』
「…どす黒い力だな」
『あぁ。世界を憎み、途方に暮れていたら完成した術だ』
サソリがピクリと片眉を上げた。
サクラとチヨバアを黒凪の結界が包む。
結界の中に入った2人は己を囲った結界に顔を上げた。
『その中に居ればとりあえずは安心なので。そこで大人しく。』
「…フン、ガキ1人で何が出来る」
サソリが傀儡を操り砂鉄の巨大な塊が降り注ぐ。
その攻撃を受けつつ黒凪は歩きながらサソリに近付いて行った。
舌を打ったサソリが攻撃をサクラ達に向ける。
2人を囲っている結界を3重に作り直した。
「…チッ」
『結構頑丈に作ったから壊れないと思う。…それより良いの?』
私、もう君の目の前だけど。
サソリの目の前に立ち小さく笑った黒凪。
彼女の背後に迫った三代目風影。
しかし三代目風影はその場でぴたりと動きを止めた。
『傀儡の口と関節…固めればやっぱり動かないんだ?』
「!」
サソリの目が傀儡に向かう。
確かに全ての関節と口元に結界が掛けられていた。
無表情のサソリと黒凪の視線が交わる。
サソリが黒凪から目を離さず指を動かした。
傀儡の動きを止められてもチャクラを止められたわけじゃない。
「(…何を考えてやがる)」
『…!』
「(この至近距離で何故俺を殺しに来ない)」
ぎゅるぎゅると回転した砂鉄の武器がサクラとチヨバアの結界を破壊しに掛かる。
3重に作っていた結界が徐々に破壊されていった。
結界を作り直そうと構えた黒凪の真上にも砂鉄の武器が降り注ぐ。
黒凪の意識が一瞬自分の絶界に向いた途端、結界が破壊された。
「ソォラァ!」
『!』
砂鉄が一気に分裂し鋭い刃が木の幹の様に細かく細かく伸びていく。
砂鉄が物凄い勢いで広がり、その衝撃で天井までも破壊されていった。
流石のサクラもそんな勢いで広がる砂鉄を殴り飛ばす事は出来ずチヨバアがサクラをチャクラ糸で操りその攻撃を避けていく。
天井が崩れ始め、瓦礫がサクラに意識を集中させているチヨバアに降り注いだ。
それを見た黒凪はすぐにチヨバアの周りに結界を作り丸腰の彼女を護る。
そしてサクラに目を向けた途端、細かい刃がサクラに降り注ぎ彼女が見えなくなった。
『(しまった、死んだかな)』
【…血の臭いがする。怪我を負ったのは確かだ】
「サクラ…!」
チヨバアの声に目を凝らしサクラを探す。
砂鉄の刃に囲まれ顔色の悪いサクラが立っていた。
鋼夜の言った通り、彼女の腕に傷がいくつかある。
サソリの攻撃に当たれば致死量の毒を飲んだ事と同じ状態になる。…砂鉄はどうか。
ふらりとサクラの身体が大きく揺れた。
「!やはり砂鉄にも毒を…っ」
「クク、じきに身体が痺れて動かなくなる」
サクラが倒れ込む。
その様子にサソリの顔に笑みが浮かんだ。
放っておけば3日は持つが…。
黒凪がサソリに背を向けサクラに向かって行く。
その真上を物凄い速度で三代目風影が進んでいった。
「お前は此処で殺す。」
「サクラー!!」
『…。(また上層部にどやされるな…)』
三代目風影の右腕にある武器。
それを見た黒凪は諦めた様に眉を下げた。
しかし起き上がったサクラが三代目風影を一撃で粉砕し「あ゙」と思わず声を出す。
『(あー…三代目風影壊しちゃった…)』
【(フン。即戦力は諦めるんだな)】
チヨバア、黒凪、サソリ。
3人の唖然とした目がサクラに向かった。
周りにある砂鉄が崩れサクラがチヨバアの元へ向かう。
黒凪が結界を解いてやりチヨバアもサクラに近付いた。
「(…どういう事だ…?あの小娘、俺の毒を受けて自分の意志で動いてやがる…)」
『…鋼夜、分かる?』
【……。薬草の臭いがする。解毒薬でも持ってきていたんだろう】
絶界を身に纏ったままサクラの側に行くとチヨバアに鋼夜が言った通りの事を話していた。
作った場所は砂隠れ。どうやらサソリは我々と戦う以前にカンクロウを毒で倒していたらしい。
その解毒の際にもう2つ程解毒剤を作り、持って来ていた。
『よく作ったねサクラ。五代目の教え?』
「うん。随分修行したから」
『…そっか。その解毒の効果はいつまで?』
「3分間。…それまでに方を付けないと」
分かった。そう言って頷いた黒凪がサソリを見ると小さく舌を打ち自分のコートに手を掛けた。
ゆっくりと外されていくコートのボタンに黒凪が小さく笑う。
恐らく三代目風影を壊された事に他の人傀儡を使っても無駄だと考えたのだろう、
「仕方がねぇな…」
「(黒凪が言っていた通り、自分の身体も傀儡に…!)」
「随分と久方ぶりだ、自分を使うのは」
コートを脱ぎ捨て、サソリが腰を落とす。
黒凪はじっと彼の身体の仕組みを見ると微かに眉を寄せた。
鋼夜も「分かり易い弱点だな」とボソッと呟く。
『(あの丸見えの弱点だけは改良して貰わないとね)』
【(ありゃあ狙い撃ちされると危ういんじゃないか)】
てかどうやって持って帰ろうかな。
傀儡の身体じゃ意識を奪う事は出来ないだろうし、変に攻撃したら壊れてしまう。
うーん、と考えている黒凪に両手を向けたサソリの手の平から炎が噴射される。
その炎を結界で受け止め、徐に無線の電源を入れた。
≪――…はい、刃鳥。≫
『あ、刃鳥さん。そっちにまじない班で手が空いてる人います?』
≪今なら主任の染木が自室に居る筈だけど≫
『蜈蚣さんは?』
蜈蚣も自室に。
その返答を聞いた黒凪は口を開きかけたが、身体を横に真っ二つに切り裂かれ目を見開き言葉を止めた。
視界にサソリが高圧で放つ水の柱が入る。
恐らくその圧で周りの岩ごと切り裂かれたのだろう。
「黒凪!!」
「まずは1人…」
「まさか間一族の人間までもがサソリの手に掛かろうとは…っ」
【(チッ)】
影から鋼夜の尾が伸び離れた上半身と下半身をくっ付ける。
その様子に眉を顰めたサソリだったが構わずサクラとチヨバアに目を向け水を放った。
走り回るチヨバアとサクラ、その2人を殺しに掛かるサソリ。
それらを横目に見ていた鋼夜は息を吹き返した黒凪を見て息を吐く。
無線からは黒凪の名を呼ぶ刃鳥の声がしていた。
≪黒凪?≫
『あ、すみません。…それじゃあ文弥くんと蜈蚣さんを川の国にある暁のアジトまで寄越してくれます?』
≪了解。≫
『元々洞窟だったんですけど、今は天井が崩れて中が丸見えなんで空から見ると分かり易いと思います』
伝えておく。その言葉を最後に切られた無線に目を細めると鋼夜が黒凪に声を掛けた。
そろそろ3分経つ、解毒の効果が切れるぞ。と。
その言葉に黒凪が顔を上げるとプロペラの様な武器を回しチヨバアに迫るサソリを捕まえ、サクラが拳を振り上げた所だった。
まずい、と結界を作ろうと構えるが一瞬遅くサクラの拳がサソリを殴りパーツがバラバラになり倒れる。
『(あ゙。)』
【(……)】
すぐさまパーツと共に落ちたであろう、サソリの胸元の核を探す。
すると核がぴくりと動き胴体のパーツに戻ると他のパーツ達もゆっくりと元の位置に戻り始めた。
恐らく核を壊さない限りは身体が元に戻る様に作られているのだろう、最後に頭が戻りサソリが復活する。
「残念だったな。この傀儡の体は何も感じない。」
「っ…!」
サクラにとっては己に毒が効かない3分を使い切っての猛攻だったのだろうが、一歩及ばなかったと言った所だ。
唖然とするサクラの背後で分かっていた様に目を細めていたチヨバアが徐にポーチの巻物に手を伸ばした。
「…もう終わりにしよう、サソリよ」
「?」
「これは己に禁じた術。…もう決して使う事は無いと思っておったが」
サクラがばっと振り返るとチヨバアによって開かれた巻物から十体の傀儡が現れる。
その数を見たサソリがゆっくりと口を開いた。
「傀儡使いの能力は一気に扱える傀儡の数で決まると言われている。…それがババア極意の指の数の傀儡共…」
「…!」
「それで城1つを落としたらしいな」
だが。
サソリのチャクラ糸が彼の背中にある巻物に向かい1つの巻物が取りだされる。
開かれた巻物から大量の傀儡達が上空に放たれ、開かれたサソリの胸元から無数のチャクラ糸が傀儡達に向かった。
カタカタカタ、と沢山の傀儡人形の音が響き渡る。
「俺はこれで国1つを落とした」
『…ざっと100はあるね』
「黒凪…!?」
「!(…何故生きてやがる…?)」
しっかりとくっついた身体にサソリが眉を寄せる。
黒凪は特に疲れた様子も無く立ち上がり空を見上げた。
無数の傀儡達が各々で武器を構える。
『…半数を結界で捕まえられたら良い方か』
「赤秘技・百機の操演」
動き出した傀儡達を1体ずつ、確実に結界に閉じ込めていく。
襲ってくる傀儡の攻撃を鋼夜が受け止め、その隙に結界を作り次々と傀儡を捕まえて行った。
全ての結界の強度を傀儡に壊されない程度に保ちつつ徐々に数を増やしていく。
頬を伝う汗に少し眉を寄せた。
「…ほう」
『結!』
「中々悪くない眺めだが…」
一気に攻撃を仕掛けてくる沢山の傀儡に更に眉を寄せる。
さっさと死ね。サソリの言葉に応える様に傀儡達が武器を黒凪に向けた。
目を見開いた黒凪が一気に20つほどの結界に傀儡を閉じ込める。
その様子にサソリが無表情に舌を打った。
続いてサクラやチヨバアの方に向かう傀儡達も結界で閉じ込めて行く。
「サクラ!この封印をサソリに投げつけろ!」
「はい!」
『!(封印?)』
物凄い勢いで走っていくサクラに目を向けその周りの傀儡達を閉じ込めていく。
耳元の無線が着信を知らせ、まじない班がアジトの側に到着した事を知らせた。
無線の電源を入れ手を休める事無く口を開く。
『文弥くん!?今何処!』
≪入り口のすぐそこ。…凄い数だね、あの傀儡を全部屋敷に転送する感じ?≫
『そう!まじないをアジト全体に掛けてて、転送する時言うから!』
≪了解。まじないを掛けるのに3分ぐらい頂戴ね。≫
ブツッと通話が切られ傀儡を閉じ込めつつサソリを見る。
サクラが思い切り投げた封印が一直線にサソリに向かって行った。
黒凪はすぐに目の前に迫った傀儡を結界で囲い、チャクラ糸を結界でぶつりとちぎる。
そしてちぎられ、一瞬弛んだサソリのチャクラ糸を掴み自分に引き寄せた。
「!」
魂蔵の力で筋力に力を流し込んでいた黒凪の力はすさまじく、サソリがくんっと引き寄せられる。
サソリはかすかに目を見開いて己の胸元から伸びるチャクラ糸を伝って己を引き寄せる黒凪を目に映した。
途端に封印がサソリに直撃し封印と共に壁に衝突した。
すぐさま壁に貼り付けになったサソリの周りに封印の紋章が浮かび上がる。
『…(核は逃げてる)』
【…。チヨバアの真後ろだ】
『文弥くん』
≪ほいよ。あと10秒ぐらい待って≫
核を移動させたサソリがゆっくりと立ち上がる。
チヨバアの元へと戻ろうとしていたサクラが焦った様に走り出した。
耳元で5、4…とカウントが始まった。
サソリが刀を振り上げる。
≪3、2……1≫
『解。』
「チヨバア様…っ!!」
≪転送。≫
大量の傀儡を閉じ込めた結界を解除すると同時にまじないが発動しサソリや傀儡達が一斉に姿を消した。
チヨバアもサクラも目を見開き周りを見渡す。
戦った後は残っているのに相手が何処にもいない。
先程までチヨバアを殺す一歩手前だったサソリさえも。
「…どういう、」
「…サソリ…?」
≪任務完了かな?≫
『うん、ありがと』
無線を切ってチヨバアとサクラに背を向けてアジトの出口へ向かう。
そんな黒凪にサクラの焦った様な声が掛かった。
「ちょっと待って!まだサソリが周りにいるかも…」
『サソリはさっき私が殺した。』
「っ!?」
『私は仲間の所に行かないと。』
影から現れた鋼夜にサクラとチヨバアの目が向いた。
鋼夜の背に乗った黒凪がアジトから出て行く。
時音と火黒の臭いを追う鋼夜の背中の上で無線の電源を入れ口を開いた。
『正守?ちゃんとサソリは転送された?』
≪うん、ちゃんと牢屋に入ってる。傀儡の量が凄くて収まってないけどね≫
『あ、やっぱり?そんな気はしてた。…私が行くまで手出しはしないでね』
≪はいはい。分かってます。≫
「お前等、4人もオイラについて来て大丈夫なのか?うん」
【んな事より左腕をどうしたァ?】
「あ?」
【その腕がなきゃあ…戦力としては微妙な所だなァ…】
ふむ…と顎に手を持って行って言った火黒にカカシが微かに眉を寄せる。
しかしその隣に立っている時音がデイダラに目を向けたまま口を開いた。
「そんな事はどうでも良いわ。任務遂行。」
【っはー…。アンタ部下の鏡だなァ】
「火黒、援護を」
【へいへい】
結!と時音の細い結界が鳥に突き刺さる。
目を見開いたデイダラはすぐさま次の鳥を作りだし上空を進み始めた。
それを見た火黒が時音を抱えて後を追う。
我愛羅を返せ!とナルトもその後に続いた。
「(何だあの女…あんな術初めて見たぞ、うん)」
《ただ厄介だとは聞いている…》
「(厄介ってこの事かよ…!)」
「結!」
うおっと、と回避しながら進む。
そんなデイダラと時音達の後ろを走ってついて来るのはナルトとカカシ。
カカシは耳元の無線を起動し共に任務に当たっていたガイに繋げた。
「ガイ、そっちはどうなってる」
≪っ、悪いがまだ時間が掛かる!≫
「…分かった。」
無線を切り微かに眉を寄せる。
ガイの様子から援護はまだ当分無理だろう。
カカシの目が前を進む火黒と時音に向いた。
火黒と共に現れたあの子…見た事の無い間一族の人間だ。
デイダラに休みなく結界術で攻撃し続けている少女。
見た所、ナルトやサクラと同年代。
【埒が明かねェなぁ…】
「…あの鳥、どうにかして落とせないかな」
【君が1人でこの足場を進み続けられるなら俺が行くけど?】
「…解った。行って、火黒」
そう言った途端、デイダラから3匹の鳥の様なものが放たれた。
チッと舌を打った火黒は時音を抱えたまま回避しようと足を踏み込むが、鳥達は彼等を通過してナルトに向かって行く。
それを見た時音はすぐさまナルトの目の前に結界を作り爆発を受け止めた。
「ナルト、無事か!?」
「大丈夫だってばよ!」
「…。…ちょっと面倒ね。人柱力のあの子も護らなきゃいけないし、その上あの暁も…」
【…人柱力を先に排除するかァ?】
火黒の冷たい目がナルトに向かう。
その目を見たナルトは一瞬固まり眉を寄せた。
その様子を少し離れているカカシも目撃する。
「(あの2人は一体何の為に此処に…援護じゃないのか?)」
「…。私は大丈夫だから、カカシさんの所に」
【あ?】
「多分あいつ、人柱力の子以外全員を排除しに来ると思う。」
私は空身があるから大丈夫だけど、あの人は勿論攻撃を受けるだろうし。
間一族が出動している時点で里の人間の被害は後々面倒になってくる。
開祖に皺寄せが行かない様にあの人の援護に回って。
冷静な判断を下した時音にニヤリと笑い彼女から離れてカカシの元へ向かって行く。
デイダラはまずカカシを片付けようと大量のバッタ型の起爆粘土を落としていった。
【よォ、カカシ】
「火黒!?」
【お前の援護に回れって言われてなァ】
起爆粘土が2人に向かって行った。
そら来た。火黒の手に刀が現れ次々に起爆粘土を斬っていく。
しかし小さな起爆粘土達は殆どがその攻撃を避けカカシと火黒の目の前で爆発した。
ナルトが一瞬振り返るがギリ、と歯を噛み締めデイダラの後をついて行く。
戦闘を始めた火黒とカカシに笑ったデイダラが次に時音に目を向け少し大きなカエルの様な起爆粘土を1体放った。
起爆粘土は大きく口を開くと時音を飲み込み、ナルトがその横を通り過ぎる。
「喝ッ!」
「(空身!)」
ドォン!と大きな爆発が起きデイダラはニヤリと笑ってナルトの前に降りてきた。
ナルトは自分から近付いてきたデイダラに足を止め、上空に浮かぶデイダラを睨み付ける。
「よう、やっと2人きりになれたな。うん」
「我愛羅を返せ…!」
「それは無理な相談だが、顔ぐらいなら見せてやれるぜ」
かぽ、と開いた鳥の口の中で我愛羅が倒れている。
生気のない顔にナルトが更に顔つきを険しくした。
テメェ!と拳を固めたナルトの肩をカカシが掴む。
途端に時音がデイダラを結界で捕まえた。
デイダラは生きているカカシや火黒、時音の姿にげんなりと眉を寄せる。
「チッ、生きてやがったか…うん」
「捕まえ…」
「喝ッ!」
デイダラの爆発によって結界が破壊されまた鳥が上空に飛び上がる。
眉を寄せた時音はすぐさま鳥の頭に結界を作りぐっと眉を寄せた。
そして一気に結界を押し潰すと鳥の頭だけが滅せられ我愛羅の身体が落ちてくる。
「(よかった、上手く行った…)」
「我愛羅!」
「チッ!起爆粘土だけ潰すなんてありかよ、うん!」
我愛羅の身体を受け止めたナルトとその側に着地したカカシ。
取り戻そうと動いたデイダラの背後に火黒が一瞬で移動した。
あんたはこっちだ。
火黒のその一言と共に側の森に蹴り落とされたデイダラ。
時音はすぐさまその後を追った。
「火黒!そいつ捕まえて!」
【言われなくとも】
「しつこいな…うん」
走るデイダラを追いかける火黒。
その背後から結界を何度か作っている時音だったが中々捕まえられない。
眉を寄せた時音は眉を寄せるとデイダラの足首に結界を突き刺し動きを鈍らせる。
その隙に火黒がデイダラを羽交い絞めにするが、一瞬で上空に放たれた起爆粘土に舌を打った。
「喝ッ!」
「結!」
爆発した瞬間の起爆粘土を一瞬で結界で囲み、時音がすぐさま滅する。
その様子を目を見開いて見ていたデイダラは目の前に移動した時音に目を向けた。
時音は胸元から出した呪符をデイダラの胸元に張り付けると一気に呪符に呪力を籠めデイダラの身体にまじないを掛ける。
まじないを掛けられたデイダラはチャクラを練る事が出来ない自分に眉を寄せた。
「捕獲完了。…黒凪ちゃん達は終わったかな」
【流石に終わってるだろォ。随分コイツと走り回ったぜ?】
「…そうね。」
「っ、オイラをどうするつもりだ、うん」
私達の屋敷に連れて行くのよ。
歩き出して言った時音にデイダラが更に眉を寄せる。
彼からすれば風影の奪還または己の殺害が目的だと思っていたのだろう。
怪訝な顔をしたデイダラにニヤリと笑う火黒。
時音はそんな2人に目を向けず無線の電源を入れた。
『――あ。お疲れ時音ちゃん。』
無線を切って足を止めるとデイダラを捕まえた火黒と時音が向こう側から向かって来ていた。
合流した黒凪は捕まっているデイダラの顔を覗き込み軽く手を振る。
デイダラは露骨に眉を顰め黒凪を睨んだ。
芸術コンビ、捕獲。
(手こずった?)
(ううん、大丈夫だったよ。)
(コイツも俺らとは分が悪かったなァ)
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