番外編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
It came fromParallelworld ...?
結界師原作の方の良守、時音、閃、正守が「世界は君を救えるか」の世界へトリップしてくるお話。
『――…ん?』
神佑地の修復を行っていた少女が顔を上げる。
ざあ、と風が吹いた。そして彼女がぽつりと溢す。
妙なものがこの世界に"来た"な。…と。
「おい。…おい!良守!」
「時音ちゃん、」
「…っ!?」
「あ、目が覚めた?」
「んの、いい加減起きろ!」
まだ寝惚けている良守の額に閃が鋭い爪を突き刺した。
ギャー!と叫ぶ良守の隣で一足先に跳び起きていた時音は声を掛けて来た正守に目を向け、その目をまんまるにさせる。
そして「正守さん…?」と不思議気に呟いた時音の声に良守もやっとこさ己の兄に気付き、目を大きく見開いた。
「あ、兄貴!?」
「よ。」
「よ。じゃねーよ!なんで兄貴が……、……つか何処だよ!?」
「見た所神佑地っぽいね。多分此処の主の力か何かで飛ばされたんじゃないかな。身に憶えないけど。」
よっこいせと立ち上がった正守が時音に手を差し伸べ、彼女を立たせて座り込んだままの良守に目を向ける。
むす、と時音と正守を睨んでいる良守に手を差し伸べた閃は良守の手を引いて彼を立たせ、不安気に周辺を見渡した。
確かに正守の言う通り、此処は神聖な感じがするし神佑地なのだろう。…入り口は丁度正面にある。
巨大な鳥居の先には長い階段が見えていた。
「とりあえず出よう。多分東京だろうし一先ず裏会に行こうか。竜姫さんぐらいは居るだろうし。」
「はい。」
「…チッ」
「…お前雪村とまだ付き合ってねーのか」
正守の言葉に頷いた時音を見て良守が舌を打ち、その様子を見て閃がぽつりと言った。
その言葉に「ななな何言ってんだお前!?俺と時音はだなあ!」そんな風に露骨に慌てた良守に「あー、分かった分かった。もう良いよ何も言わなくて。」そう気を遣って言った閃だったが、良守はふと目を見開いて振り返る。
ん?と目を微かに見張った閃も彼の視線の先を追った。…しかし特に気になるものは無い。
「…良守?」
「え?…あ、いや、なんか見られてる様な気がして…」
「……。…そうか?」
「…影宮が気にならないなら多分気の所為だよな。」
そう自分に言い聞かせる様に言って良守が歩き出す。
そんな彼等の背中を眺めているのは、黒凪だった。神の力を使って彼らを観察していた彼女は目を伏せ…考えるように右上へと目を向けた。
一方の良守達は正守を筆頭に裏会総本部に到着する。
悠々と中へ入っていく正守に続き、奥へ奥へと進んだ良守達はやがて正守の読み通り総本部に居た竜姫と顔を合わせた。
「あら墨村君じゃない。どうしたのよ、今日は会議無いでしょ?」
「そうなんですけど…気づいたら傍の神佑地に飛ばされていたもので、念の為に。」
「この近くの神佑地に?…ふーん。で、あんたと一緒にそこの弟君とかも一緒に居たってワケ?」
「ま、そんな所です。」
ふーん…。と正守の言葉に目を細め、竜姫が「こういうのは黒凪に聞いた方が早いわね。」と正守に笑顔を向けた。
しかし正守は「黒凪?」と怪訝に言葉を繰り返すだけ。
そんな彼の反応に怪訝な顔をした竜姫は正守達の背後に現れた青年に「あ。」と眉を上げて口を開いた。
「そんなに急いでどうしたのよ、――…限。」
「「「「っ!?」」」」
「いや、頭領が急に消えたので…」
「墨村君なら此処に居るわよ?」
目を極限まで見開いたままで固まっている正守達に限が怪訝な顔をする。
すると限に続く様に秀も姿を見せ、唖然と立っている閃にぱあっと笑顔を見せた。
「あ、閃ちゃん! こんな所に居た!」
「…え、俺…?」
「そうだよ!もー、急に消えるから僕ビックリして…」
「…なんだ、ふつーに居るじゃねえの」
続いて聞こえてきた声に目を見開いて振り返る。
竜姫の背後に携帯を片手にした人皮をかぶった火黒が立っていた。
そんな火黒にまた目を見開いて固まっている彼等を前に火黒が携帯に向けて「居たけどどうする?」と問いかける。
電話の向こうから聞こえた声は、
《え、本当かい!?よかった、2人が勉強中に急に居なくなったから驚いたよ…》
「あー、じゃあそっちに連れていきゃあ良いかァ?」
《うんうん!ごめんね火黒君、助かるよ~》
「へいへい。」
通話を切り気だるげに後頭部を掻いた火黒が時音と良守に目を向けると微かに目を見開いた。
2人が、いや、正確には閃と正守までもが火黒に殺気を向けている為である。
その様子に更に怪訝な顔をした竜姫は同じ様な顔をしている限に目を向け、小首を傾げた。
限はそんな竜姫にちらりと目を向けると怪訝な表情のまま火黒と良守達との間に割り込み火黒を背に彼等に向き直る。
良守達はそんな姿に余計に表情を固まらせ、限にも殺気を向けた。
「…お前、誰だ」
「!」
良守の絞り出すような声に限が驚いた様に微かに目を見張る。
そして彼は「お前こそ何言ってる。」と限が怪訝に問い返した。
そんな限に良守が歯を食いしばり言った。
「志々尾は死んだんだ…!」
「…は?」
「そうよ!限君は私達の目の前で、…そこの火黒に、」
「あ?俺?」
あっけらかんとそう返した火黒を睨み付ける時音。
火黒と限が顔を見合わせる様子を見て「ふざけんな」そう呟いて良守が呪力を籠める。
途端に限と良守達との間に黒凪が音も無く着地した。
「っ…?」
「…黒凪」
『状況は理解出来た。説明するからお互いに落ち着く様に。…って言ってもあんた達は落ち着いてるか。』
そう火黒達に言い「落ち着いてないのは…」と良守達に目を向ける。
彼等は黒凪の顔を見て己の記憶に問いかける。
この少女は誰だ、何処かで会ったか?
酷く混乱している様子の良守達に眉を下げ、にっこりと笑顔を見せて黒凪が口を開いた。
『初めましてだね。私は間黒凪。間時守は私の父親なの。』
「…は…?」
「開祖の、…ええ!?」
「(なんだ、どうなってる?)」
「ちょ、頭領、なんなんすかこの状況…」
とりあえず落ち着いてほしい。信じられない話かもしれないけれど、君達はパラレルワールドに来てる。
此処は君達が生きていた世界じゃない。
そんな筈はない、と否定の言葉を吐き出したかった。
しかし死んだ筈の限が居て、その仇である火黒が居て。そして存在していなかった少女がいる。
『とりあえず居間に行こう。そこで詳しく話すから。』
「「「「……、」」」」
この奇妙な状況で信じられるのは彼女だけだと、何故か不思議と確信出来た。
しっかりとした口調でこの現象の答えを述べた彼女は何故かとても大きな存在に感じられたのだ。
『――…て言う感じね、こっちの世界は。ごめんねえ、もう少し早く修復できていれば君等がこっちに迷い込む事も無かったんだけど。』
先程黒凪が修復していた神佑地の主は時空を司る存在で、その祠が不安定になっていた。
恐らく良守、正守、時音、閃の4人はその隙に此方に迷い込んでしまったのだろう。それが黒凪の見解だった。
そこまでをざっと説明し、そしてこの世界と彼等の世界との違いを確認して行く。
『…つまり君達の世界では私はいなくて、限が死んで、その仇が火黒で…』
「火黒はその、…俺が黒芒楼で…」
『滅した?』
「…おう」
少し驚いた様な顔をして固まった限に少しだけ恥ずかしそうにして良守が言った。
お前が殺されて、…そんで黒芒楼に乗り込んで行ったんだ。火黒とは正直五分五分だったけど…。
ごにょごにょと話す良守に捕捉する様に閃が割り込む様にして言った。
「俺が火黒に殺されそうになったんだよ。そしたら良守が真界を使って。」
『あ、それは一緒だ。私と限と閃が火黒に殺されそうになったら良守君が真界使って…』
「あー、あん時は死んだと思ったわ。」
『私がいなけりゃ死んでたんだって。』
へー、と黒凪と会話をする火黒を複雑な表情で良守達が眺める。
此方の世界での火黒は、自分たちが知る彼とは随分と違っているらしい。
…なんだか、火黒の狂気じみた部分が綺麗に無くなった様な感じだ。そう良守は感じていた。
「…俺が火黒に殺されかけた状況も殆ど一緒だ。」
『ん?…あ。ホントだね。てか思いっきり背中から身体斬られて…』
「そ、そうよ!それで、…限君は…」
「…。なんか、あんたが居たら皆助かってんだな。」
悔しそうな顔で言う良守に黒凪が目を向ける。
途端に零れ落ちた良守の涙に微かに目を見開いた。
「…俺は志々尾を救えなかった。俺じゃ駄目だったんだ。」
「…、」
肩を震わせて言った良守に限がバツの悪そうな顔をした。
その様子を見ていた時音も感極まってしまったのか、じんわりと目じりに涙を浮かべて目を伏せる。
正守はそんな2人を見ると確認する様に限の姿を目に映す。…閃も同じ様にした。
「…多分、分かってなかったんだ。俺は。」
俺が死んで誰かが傷つくなんて、これっぽっちも。
噛み締める様にそう話す限に良守が顔を上げる。
限はそんな良守を見ると徐に此方に伸ばされる彼の手を見つめた。
良守の手は限の肩に置かれ、その存在を確認する様に少し手の力を籠めると頭を伏せて涙を流す。
時音も限に近付いてその顔をもう一度見て、それから涙を流した。
『――!』
その様子を見ていた黒凪がぴくりと反応した途端の事だった。
突然良守達4人の身体が薄く光だし、己の身体の変化に4人が目を見張る。
黒凪がぽつりと言った。
『時間みたいだね。…時空の歪みが元に戻ろうとしてる。』
「っ!」
良守が息を飲む。そして涙でぐちゃぐちゃの顔を上げると何かを言おうとして、そして飲み込んだ。
恐らく本人達が1番分かっているのだろう。もう時間が無い事は。
「っ、俺、志々尾にもう1回会えてよかった。俺じゃ助けられなかったけど、こっちでは生きててくれて、すげー嬉しかった。」
「…あぁ」
「…正直すげえ悔しいよ。もしかしたらお前の事、…いや、今更ぐだぐだ言っても仕方ねえよな。」
…ずっとこれからも生きろよ。志々尾。
真っ直ぐと目を見て言った良守に限が頷き、時音に目を向ける。
時音は改めて限と目を合わせると涙が溢れ出して来た様で、涙を拭って、それから黒凪を見た。
「…限君を助けてくれてありがとう。」
『え、あ…ううん、全然…』
「…。限君、貴方に言えなかった事だけど、限君は凄く大切な友達よ。こっちではこれからも楽しく、好きな様に過ごしてね。」
「…ありがとう」
うん、と涙ながらに時音が頷いた。
そんな良守達を一歩下がった場所で見ていた閃は正守に背中を叩かれ、振り返ってから意を決して限の元へ駆け寄る。
限はそんな閃を微笑んで見上げた。
その限の表情に驚いた様な表情をして、それから照れた様に閃が口を開く。
「…生きろよな」
「…あぁ。お前も元気で。」
「……。」
すん、と閃が鼻を啜った。
その様子に限が眉を下げると最後に正守に目を向ける。
頭領。と限が呼ぶと正守も限と同じ様な顔をした。
「任務、完遂出来なくてすみませんでした。」
「…いや、お前はよくやってくれたよ。…助けに間に合わなくて、ごめんな。」
「いえ。…お元気で。」
「あぁ。限も。」
いよいよ姿が薄まって来た。
その様子に気が付いた良守は己の掌を見るとぐっと握り、足を踏み出す。
そして黒凪の目の前に立つとドカッと座って強いまなざしで彼女を見た。
「こっちの世界に居てくれてありがとな。…何となくだけど、多分あんたのおかげで色んな奴が救われてると思うんだ。」
『!』
「…俺はそう言う存在に成れなくてすげえ悔しいけど、…ありがとな。志々尾に会えてうれしかった。」
ありがとう。
面と向かって礼を言われて黒凪が照れ臭そうに目を逸らす。
そんな黒凪に眉を下げて笑い、良守達が消えた。
途端にどたん、と庭の方で鈍い音が響き振り返る。
ありがとう。
(いって…、って志々尾!)
(っ?)
(お、おま、お゙ま゙え゙ぇ゙え゙)
(限…俺お前の事もうちょっと大事にするわ…)
(限君…)
(限、ちょっとの間だけ良守に抱き着かせてやってくれな。)
.