世界を護るには【 × BLEACH 】
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新隊長天貝繍助篇
『――…え、道を開く事が出来ない?』
「あぁ、どうやら断崖で問題が発生したらしくてな。その影響で尸魂界と現世との行き来が出来なくなった。」
『…出来ない事は』
「出来ねえ。」
ギロッと睨み上げてくる日番谷に眉を下げて肩を竦めた。
そんな黒凪に「余計な事はするなよ」と今一度釘を刺して日番谷が襖を開き部屋を出て行く。
現在黒凪は隊長である日番谷に護廷十三隊が与えた屋敷の一室に案内され、断崖が使える様になるまでこの場所で過ごす事となった。
『…ねえ冬獅郎君』
「日番谷隊長と呼べ。」
『暇だし遊びに行っても構わないかな。』
「……。」
『何なら顔見知りの隊長格の元へだけ行く事にするからさ。』
…いや、面倒事は避けたい。あまり…
そこまで言って日番谷が不自然に言葉を止める。
言葉を向けていた相手が忽然と消えていた為だ。
「…あの野郎…」
地を這う様な声に少しだけ笑って黒凪が歩き出す。
彼に嘘は言っていない。隊長格の様子や各隊の様子を覗きに行こうとしているだけだから。
そんな事を考えながら歩いていると「そっちへ行ったぞ!」と声が耳に届き、顔を上げる。
「よし!皆、あっちだ!」
「「おう!」」
『……。(侵入者かな)』
懐かしい。そう思う。
あの時も死神達が真剣な顔をして走り回っていた。
そして私を見つけて叫ぶのだ。
旅禍だ、旅禍が居たぞ!…と。
興味本位で走り出した隊員達の後を追う。
すると前方に金色の髪をした青年の背中が見えた。
「流石です、貴船三席!」
「いえいえ。…吉良副隊長、確認を。」
「あ、あぁ…はい。」
『何を捕まえたんだい?』
え、と隊員達が一斉に振り返りキョトンとする。
そんな中で唯一反応を示したのは金髪の青年だ。
彼は驚いた様に目を見張ると「え、ええっ!?」と露骨に驚いて見せる。
彼は副隊長と呼ばれていたし、恐らくこの間の隊首会議に参列していたのだろう。
『どうやら断崖とやらが使えなくなってしまった様でね。現世に帰れず暇だったから歩いていたんだ。』
「あ、あぁ…成程…」
「吉良副隊長、彼女は?」
「え、…いや、彼女はその…」
すぐに言葉を濁した彼に微かに目を見張る。
成程、私の存在は上級の者にだけ知らされる事になっているのか。
そう察すると黒凪がにっこりと笑った。
『えー…、と、朽木家の者です。散歩しておりまして。』
「ああ、四大貴族の…。」
『ね、副隊長さん。』
「え、あ、その…はい…。」
なんでこの人、貴族がこの瀞霊廷内に居る事を…。
しかも貴族の着物が死神のものとは別のものを着ている事まで…?いや、偶然か?
怪訝な顔をして考える吉良に笑顔を向けて「それじゃあ私は散歩に戻るよ」と声を掛けて背を向ける。
そんな黒凪にはっと目を見開いて「お、お待ちください!」と焦った様に声を掛けた。
「お供致します!…その、お一人では危険ですので…」
『…。分かった。それじゃあついて来ておくれ。』
「は、はい。…じゃあ皆、お疲れ…」
おずおずとそう声を掛けて歩き始めた黒凪の元へ小走りに近付いて行く。
そんな吉良の背中を見て隊員達が顔を見合わせた。
「吉良副隊長、いつの間に朽木家の方と顔見知りになったんだろうな?」
「さあ…」
そう会話をする隊員達に混じって貴船もじっと吉良と黒凪の背中を眺める。
一方の2人は特に会話を交わすでもなく暫く歩き、吉良は居心地が悪そうに目を泳がせていた。
そんな吉良を見兼ねて黒凪が徐に口を開く。
『どうして私について来たんだい?…もしかして見張りのつもりかな?』
「っ!…そ、その意味合いもあります。何故貴方が1人で行動しているのか…。」
『冬獅郎君の屋敷に居たんだがね、暇だったから抜け出して来た。』
「無断でですか!?それはいけません、戻って…」
そんな事言われると逃げたくなるなあ。
わざとらしく言った黒凪に言葉を飲み込み、吉良が目を逸らす。
そして暫しの沈黙の後に彼が絞り出す様に言った。
「分かりました、何も言いません。…ですから、せめて僕の目の届く範囲に居てください…。」
『…。あはは、良いよ。君の隣なら居心地良いし。』
「…え」
『冬獅郎君は堅物っぽくて苦手だから。…君は良い意味で私に流されてくれそうだし。』
笑って言った黒凪に「もう流されてますけどね…」と心内で呟いて吉良が彼女の隣に立って歩く。
吉良は日の光に当たってキラキラと光る黒凪の白髪にちらりと目を向けた。
銀髪と言う感じはしない。どちらかと言えば浮竹隊長の様な真っ白な髪だ。
『…あ、君の名前を聞いてなかった。君名前は?』
「え、あ…吉良イヅルと…」
『イヅル?良い名前だね!』
黒凪が"イヅル"と名を呼んだ途端に脳裏に市丸の顔が過った。
同時に彼が己の名を呼ぶ声まで一瞬だけ過る。
途端に彼女の白髪が市丸のものとかぶって、思わず吉良の足が止まり、生唾を飲み込んだ。
『…イヅル君って呼んでいい?』
「……ぁ、いや…」
『置いてくよ、イヅル君。』
「っ、……は、はい」
自然と足が踏み出される。
自然と彼女の背中を追ってしまう。
…自然と、
「待ってください、」
彼女を見失わない様にと、瞬きすら恐ろしく、感じて。
――あ、此処何?
そんな黒凪の言葉にふっと彼女の視線の先へ目を向ける。
"八"と記された大きな門に「へ」と呟いていると悠々と黒凪が中に入って行った。
「ちょ、ちょっと!?」
『探検~』
「待ってください、―――」
名前が分からない。えっと。何だっけ。
言葉を飲み込んだ吉良に黒凪が振り返る。
間だよ。間黒凪。振り返って言った黒凪に目を見張る。
飄々としていて、部下を引き付けるカリスマ性があって。
そのカリスマ性は、なんて言うか、実力があったのもあるけれど。
もっと他に、何か人を惹きつける何かがあって。
「――…間さん!」
『ねえ、隊長さんって何処にいるのかな。』
「駄目ですって!急にそんな――…」
「あれ?君は確か…」
聞こえた声に吉良が息を飲む。
黒凪は振り返ると「あ、居た。」と笑った。
その視線の先に立つ京楽は「いやあ、なんだか懐かしい色合いだなあ君達。」とにこやかに言う。
その言葉に心当たりがある吉良は何も言えずに生唾を飲むだけ。
『えっと、お名前は何でしたか?八番隊長さん。』
「あはは、その呼び方も何だか懐かしいなあ。僕は京楽春水。気軽に呼んでくれて構わないよ。」
『じゃあ京楽さんで。貴方どう見たって私より年上ですし。』
「そう言うの分かるんだ?」
あれ、覚えてないですか?120年前、私がまだ10歳の頃に貴方は既にその姿でしたし。
その言葉に吉良が眉を寄せていると「覚えてる覚えてる。いやあ、僕はてっきり君が忘れてると思ってね。」そう京楽が笑って言った。
にしても不思議だなあ。計算が合わないよね。と京楽が吉良が考えていた事をそのまま口にする。
吉良もすぐに黒凪を見下して彼女の返答を待った。
『私は父が掛けた秘術によって成長がかなり遅かったもので。大体100年に1つ歳を取る感じでした。』
「へー、凄いねえ。」
『凄くなんてありませんよ。…それにしても京楽さんはもうかれこれ120年、いやそれ以上に隊長をなさっているんですね。』
「まあねえ…。そろそろ引退かなあなんて思ってるけど。」
貴方の様な古株がいらっしゃるから隊が引き締まるんですよ。もう暫く頑張られては?
え、そうかなあ。そんな会話をする2人に口を挟めるはずもなく、吉良は肩身が狭い思いで口を閉ざす。
すると黒凪と京楽の間に地獄蝶がゆらりと姿を見せた。
「あれ、緊急連絡だねえ。君宛じゃないかな、吉良副隊長」
「え、あ…。……!処刑跡地で不審な影…?」
『仕事?イヅル君』
「あ、はい…」
それじゃあ一緒に行こう!処刑跡地ってどっち?
笑顔で言った黒凪に「え、あっちですけど…」と思わず口を滑らせた吉良の腕に己の腕を絡める。
そして途端にシュンッと姿を消した黒凪と吉良にぽかんとすると京楽が小さく笑った。
「その呼び方もまた懐かしいなあ…」
そう呟いて笠を目深にかぶる。
黒凪と吉良はものの一瞬で処刑跡地に辿り着き、吉良が唖然と周辺を見渡した。
「ど、どうしてこの場所が…」
『うん?ああ、君の頭が思い浮かべてる景色に1番近い所に向かったから。』
「…そんな事が…」
「あ、吉良副隊長!お疲れ様です!」
隊員らしき青年が頭を下げると、それと同時に吉良の側に貴船が姿を見せた。
貴船を見た黒凪はすぐさま吉良に気を効かせて姿を隠す。
建物の影に隠れた黒凪を横目で気にしつつ、隊員の報告を聞いて処刑跡地である穴の底へ落ちたと言う人影を探した。
しかし途端に足元が崩れ、貴船、吉良、隊員の3人が落下していく。
「うわぁあああっ!」
『!…え、落ちたの』
黒凪がすぐさま穴に近付いて覗き込むと、どうやら吉良が機転を利かせて隊員を助けたらしく、3人共無傷の様だった。
3人を念糸で引き上げてあげようと黒凪が構えた途端、穴の下で虚が姿を見せすぐさま貴船と吉良が対応する。
どうやら平隊員は落下した時に気絶したらしい。
『(邪魔にならない様にあの隊員君を上に…、…あれ、何処だ?)』
「…まずい!」
『!(あそこか)』
現れた虚の胸元に平隊員が飲み込まれかけているのが見えた。
助けに入った吉良はとりあえず虚自体の動きを止めて救出を試みるが、他の虚達を対応せざる得なくなり中々救出する事が出来ない。
黒凪もどうにか救出できないものかと模索していると、ふと動きを止めて隊員を眺める貴船が見えた。
「…っ、貴船三席!彼を――…」
「その必要はありません。今殺します。」
「…は!?」
「こんな何の役にも立たない様な隊員を護る義理はありませんよね。」
何を言っているんだ!
目を見開いて言う吉良の言葉に何も答えず貴船が刀を構える。
それを見て黒凪が念糸を伸ばし、隊員の身体に巻きつけると力任せに引っぱり上げた。
意識の無い隊員の身体は飲み込まれた影響か、酷く傷ついている。
「!(間さん…)」
『(うわ、やばいなこれ)』
「吉良、貴船!」
「この声は…天貝隊長?」
貴船がそう呟いて顔を上げる。
黒凪は隊員を抱きかかえたままで振り返り、姿を見せた天貝を見上げた。
天貝は黒凪の姿を見せると「あれっ?」と素っ頓狂な声を上げる。
「君は確か間黒凪さん…だよね?どうして此処に?」
『…吉良君と先程まで一緒に居て、伝令を受けた彼と共に此処へ…』
「そうだったのか!…あ、そうだ吉良!無事かー!?」
「は、はい!どうにか…!」
虚の亡骸があるじゃないか!それで全部か!?
そんな風に聞いてくる天貝に「はい!」と吉良が返答する。
その声を聞いた黒凪は隊員を抱えたまま念糸を伸ばして貴船と吉良を引き上げた。
「…おや、貴方は朽木家の…」
「朽木家?」
「あ、天貝隊長!」
「へ?」
吉良が天貝を呼び寄せて瞬時に状況を報告する。
隊長、副隊長以外には一応今の所は彼女の事を伏せておくことになっている事は天貝も理解しているし、すぐに彼も今の状況を理解した様だ。
天貝は嘘を付けない性格なのか、随分とぎこちない様子で黒凪の元へ近付いた。
「い、いやあ朽木さん!助けてくれて…いや、助けて下さってありがとうございます!」
『お礼は良いよ、お互い様だしね。それよりこの子だ。』
「え、…おっと、これはまずいな…。すぐに四番隊へ連絡してくれ!」
「はい!」
天貝が他の隊員にそう指示を出し、何人かが四番隊の隊舎へ走って行く。
その背中を見送って黒凪の側にしゃがみ込んだ。
そして他の隊員には聞こえない様に小声で話し始める。
「どうもありがとう。助かったよ。」
『いや、実際に戦っていたのは吉良君だ。彼を労わってあげておくれ。』
「隊長!四番隊が到着しました!」
「ん、あぁ。…そ、それでは朽木さん、彼を…」
天貝に隊員を預けて黒凪が立ち上がる。
すると続けて他の隊員が天貝に近付いて大きな声で報告を開始する。
隊員の報告にはいくつか気になる点があった。
まず吉良達が落ちた足元は何者かによって故意的に崩れやすくなっていたという。
更に穴の底で襲ってきた虚は十二番隊の実験用の虚で、それらもまた何者かによって放たれたものであると。
その報告を聞いた吉良はちらりと疑いの目を貴船に向け、その視線を黒凪はじっと眺めていた。
「間!何処行きやがった!」
「ど、どうかされましたか日番谷隊長…」
「間の野郎が…」
「はざま…?」
振り返った先に居た隊員に言葉を飲み込み、日番谷の額に青筋が浮かぶ。
本日も黒凪は彼の前から姿を消していた。
「(何処だ…?一体何処に…)」
『あれ?』
「っ!?」
きょとんとした黒凪に走っていたルキアが足を止める。
互いに現世に居ると思い込んでいた2人は顔を見合わせ顔をじっと見つめ合う。
先に口を開いたのはルキアの方だった。
「ま、まだ尸魂界にいらっしゃったのですか…?」
『断崖とやらで何か問題が起きたらしくてね、此方から現世へ戻れなくて。』
「そ、そうなのですか…」
『…君は何故こっちへ?』
そう問うと「え゙、あ、それは…」と目を逸らして言葉に詰まる。
そんなルキアに首を傾げて「言えない事かい?」と問い掛けた。
するとルキアは素直に頷き「すみません…」と謝る。
黒凪はその様子を見るとにっこりと笑った。
『そうか、なら仕方がないね。ただ何を探しているのか教えてくれれば一緒に探す事が出来ると思うよ。…探しているものを教えて良いなら言ってご覧。』
「…実は、霞大路瑠璃千代殿と言う方を探しております」
『どんな子?』
「ええと、貴族の方で、金色の髪をお持ちになり…」
困った様に特徴を述べるルキアに「それじゃあ手を貸して」と黒凪が手を差し伸べた。
その手をおずおずと掴んだルキアに目を閉じるとぐん、と黒凪の気配が尸魂界全体に広がっていく。
『――見つけた。』
「…え、あ…本当ですか、」
『うん。早速そっちに行こうか。』
そう黒凪に言われて一瞬瞬きをしただけ。
その間にいつの間にやら周りの景色が一変している。
ルキアは突然の出来事に思わず周りを見渡していた。
『こっちだよ』
「あ、は、はいっ」
思わず呆然としていたルキアを連れて黒凪が目の前に聳え立つ霞大路家の屋敷に入ると小刀を持った少女に追われている瑠璃千代を発見し、ルキアが斬魄刀を構えた。
しかしそれより早く少女の刀を結界で破壊し、すぐさま結界が少女の身体を貫く。
ぐったりとした少女の中から顔を隠した男の亡骸が現れ、男を改めて結界で貫き、黒凪が怯えて此方を見ている瑠璃千代に目を向けた。
「っ、な、なんじゃお主…」
「黒凪!?」
『ん?…おや、一護じゃないか』
「あ、ありがとうございます。間殿…見つけて頂いて…」
「瑠璃千代様ぁぁあぁああ!!」
ドドドドド、と物凄い勢いで走って来た男を見て瑠璃千代が「犬龍!」と顔を上げた。
ご無事ですか!と瑠璃千代の前で跪いた犬龍とやらをちらりと見てから黒凪が霞大路家の屋敷を見上げる。
先程探査用の結界で軽く調べたが、妙な気配がしたのだ。
『(…この一族、何かあるな)』
「さあ!帰りましょう瑠璃千代様!」
「お、お待ちください犬龍様!実は穿界門を通って此方から現世へ行く事は出来ないのです!」
「何!?」
断崖にて緊急事態が発生し、今通る事は危険であると…。
そう説明をする門番に犬龍が顔色を無くしていく。
その様子を見て余程この尸魂界に留まる事がまずいのだと勘付いた黒凪は結界で一護、ルキア、瑠璃千代、犬龍、猿龍を結界で囲み一瞬で別の場所へ転送させた。
「…え、此処は…?」
『大きい部屋でしょ?私の部屋。』
「お前の部屋じゃねえ、俺が貸してやってんだろうが…!」
スパァン!と襖が開き眉間に皺を寄せた日番谷が姿を見せる。
そんな日番谷に「やあ冬獅郎君。急だけどこれだけの人を此処に泊めても良いかな?」とあっけらかんと黒凪が言った。
黒凪の言葉に「あぁ!?」と日番谷が青筋を浮かべたが、現れた地獄蝶に顔を上げる。
≪緊急警報!緊急警報です!瀞霊廷内にメノス出現!≫
「瀞霊廷内にメノス…!?」
「…どうなってやがる」
『…。どうも最近、可笑しな事が立て続けに起きてる様だね。冬獅郎君。』
「日番谷隊長だ。…俺は隊を動かす。お前等は此処から動くな。」
襖を閉ざして歩いて行った日番谷を見て黒凪が部屋に結界を配置する。
結界を不思議そうに見上げる瑠璃千代に黒凪が目を向けて小さく微笑んだ。
『この中に居れば安心です。何人たりとも入れませんから。』
「おい!間黒凪は居るかネ!この箱は貴様のだろう!開けたまえヨ!」
「…なんかめっちゃ叩かれてんぞこの箱…」
「この声は…涅隊長…?」
襖を開いて結界を擦り抜け、マユリの前に姿を見せる。
途端にずいっと彼の顔が近付けられ、「メノスが出現したのだヨ…この瀞霊廷に…。」と至近距離で言うマユリに「はい」と黒凪が返答した。
するとガシッとマユリが黒凪の肩を掴んだ。
「そんなメノスは非常に珍しい!是非とも捕獲したいのだヨ!君の能力に広範囲を探査する能力があるのだろう!?」
『はい』
「探したまえメノスを!今すぐに!」
『……。分かりました。とりあえず外に出ましょう。此処十一番隊の領地ですし。』
よし、成立だネ。来たまえ。
そう言って黒凪を連れてマユリが瞬歩で移動する。
そして十二番隊の部下達が居る場所へ連れてこられた黒凪は探査用の結界を一気に広げた。
≪伝令です!北東にメノス出現!各隊向かってください!≫
「聞いたかネ、北東だよ!」
『いえ、居ません。』
「何!?」
居ません。この瀞霊廷の何処にも。
無表情に言った黒凪は一番隊舎から出た総隊長の気配に顔を上げ、其方に向かう。
この騒動を受けて「メノスの出現は虚偽ではないか」と話していた浮竹の元へ現れた総隊長の目の前に黒凪が姿を見せた。
『総隊長殿。この状況、何かご存じでは?』
「……眺める者が言っていた通り、侮れぬようじゃの」
『メノスは何処にもいない。…メノスに似たものはいますがね』
「うむ。これから現れるメノスは儂が作らせたものじゃ。…各隊の連携を重んじろと発言した天貝を試す為にな」
その言葉通りに現れたメノスに目を向ける。
そんな黒凪と浮竹に「一番隊舎へ参るぞ」と声を掛けて総隊長が歩いて行った。
天貝がどのように行動したのかを報告にて確認しようと言う事だろう。
黒凪と浮竹は顔を見合わせるとその後に続いた。
「…いやあ、君は凄いな。すぐにダミーだと気付いたのかい?」
『涅隊長にメノスの場所を探る様に言われましてね。その際に偶然。』
「…現世の神に選ばれるだけはある、と言う事か。」
『……。私はあまり好きではありませんよ、この力。』
一方的過ぎて何だか冷たいでしょう。
メノスを見上げて言った黒凪は小さく笑って言った。
『その内寝首を掻かれそうで何だか嫌なんです。私のこの力はまるで、』
圧倒的な力を奮う悪魔の様だから。
黒凪の言葉を聞いていた浮竹が徐に口を開いた。
「君は、護りたい人は居るかい?」
『?』
「大切に思う人は?」
『…います。護りたい人も、大切に思う人も。』
「だったら大丈夫だ。」
君は悪魔なんかじゃない。
笑って言った浮竹に小さく笑った。
しかし途端に目を見開き、顔を上げる。
「どうかしたのかい?」
『…"出た"』
「え?」
瞬きをした瞬間に姿を消した黒凪に目を見張る。
一方の黒凪は一瞬で日番谷の屋敷へ戻り、襖を開いた。
中を瞬時に見渡せば、瑠璃千代だけが居ない事が分かる。
「黒凪!今すぐこの術を解いてくれ!」
『…どういう事だ、何故此処から抜けた?』
「霞大路家専用の穿界門です!それを使って、」
『死神特有の空間支配術か。油断していたな…、そんな抜け道があったとは』
んな事言ってる場合じゃねえ!瑠璃千代が危ねえんだ!
焦った様子でそう言った一護に目を向けて黒凪が結界に目を向ける。
『…。少し時間が掛かる。変に力を掛けられて術が変形してるみたいでね。』
「変形!?」
『この術はこの世界には向かない。と言うより規制されている、と言った方が良いかもしれない。』
「なんでお前の術が規制されてんだよ!」
ちょっと昔に色々あったからね…。
ま、それを無視してこっちでも使っていたわけだけれど。
そう言って結界に触れて眉を寄せる。
随分と複雑な変形の仕方をしている事が理解出来た。
『…。一護』
「あぁっ!?」
『私がゆっくりと術を解くのと無理に解くの、どっちが良い。ちなみに後者だと尸魂界の役員が飛んで来るやもしれん』
「無理にでも解いてくれ!」
「おい一護!」
『分かった』
すぐさま出された一護の判断に従って空間を捻じり道を開く。
途端にドタドタと複数の足音が聞こえた。
そして突きつけられた刀に黒凪が両手を上げる。
「規制された術を使ったな!」
『…。』
「…その術の類は申請を通さねばならぬ規定だ。今回は事後報告となる。時間を頂くぞ。」
「んな時間なんて――!」
さっと突きつけられた刀に一護が言葉を止める。
自分が死神達にばれずにゆっくり術を解くのとその申請とやらの時間。どちらが早かったのだろうか。
そんな事を呑気に考えながらバタバタと動き始める役員達を静かに見上げた。