100000hit
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
伝えたい
神楽成り代わり × 殺生丸オチの3話目です。
ドス、と鈍い音が響いた。
黒凪はかごめから目を離し、上空を見上げる。
先程曲霊の本体を天生牙で斬りつけた殺生丸。
その様子を見てかごめの様子を見る事に意識を向けていた黒凪だったが、上空の異変に顔を青ざめた。
殺生丸が奈落の肉体に貫かれているのだ。
『せ、殺生丸様…?』
「殺生丸!」
「殺生丸様!!」
目を見開いてその様子を見れば、殺生丸の表情は普段の余裕を持った表情では無い。
本当に貫かれているのだ、あの奈落の肉体に。
ゾクリとした悪感を感じた黒凪は立ち上がるとかごめから離れ、急いで殺生丸の元へ向かう。
犬夜叉達から静止の声が掛けられたが、其方に目を向けることは無かった。
『殺生丸様!』
「…来るな、」
『っ!』
殺生丸の言葉と同時に奈落の肉体が大きくなり、瞬く間に殺生丸を飲み込んだ。
それを見た犬夜叉は奈落の肉体を鉄砕牙で斬りつけるが、中に殺生丸が居る為に破壊しきれずにいる。
ぽろ、と涙を零した黒凪は奈落の肉体の上に立つとしゃがみ込み、肉体に触れた。
ドクン、と脈打つ奈落の肉体に目を細めた黒凪は徐に目を閉じる。
「――!貴様、奈落の分身か」
「!?黒凪!テメェ何するつもりだ!」
『犬夜叉、構わず戦っていてください』
「…テメェまさか、」
徐々に黒凪の身体に巻き付き始めている奈落の肉体。
元々奈落から出来た黒凪の身体は乗っ取られているというより、同調していると言った方が正しい。
徐々に飲み込まれていく黒凪に犬夜叉が手を伸ばしたが、曲霊が操る腕が犬夜叉を襲う。
チラリと曲霊を見た黒凪は小さく笑った。
『この人は返して貰います』
「黒凪―――」
来なさい、と呟いた黒凪の元へ一気に奈落の肉体が動いた。
…ずっと思っていたの。
貴方の左腕が無い事を改めて知らされる時、左腕を無くしたのが私だったなら。
父の形見を貴方が欲している時、私が与えてあげる事が出来たなら。
『…殺生丸様、帰って来てください』
…いつも独りで何処かに行ってしまう貴方の側に、居られたらと。
チッと曲霊が舌を打ち、眉を寄せる。
その様子に黒凪が満足げに眉を下げた時、パシッと掴まれた手首に目を見開いた。
それと同時に奈落の肉体の隙間から妖気が溢れ出し、一気に粉砕する。
「…馬鹿な事をするな」
『!……殺生丸様、』
殺生丸の顔を見上げ、そして己の手首を掴んでいる手を見る。
その手は失われた筈の殺生丸の左手だった。
金色に輝く妖気が纏っている左腕。
その左腕に抱えられた黒凪は途轍もない妖気に目を大きく見開いた。
『この妖気は、』
「……。捕まっていろ」
ぎゅん、と此方に向かってくる奈落の肉体の一部達。
黒凪は咄嗟に殺生丸の左腕から抜け出すと自ら彼の身体に捕まった。
殺生丸は左腕を振り上げ、奈落の肉体を粉砕する。
すると殺生丸の左腕には1本の刀が握られていた。
天生牙が握られている右手を黒凪の背に添え、殺生丸は左手の刀を見下す。
『それは、殺生丸様のお父上の…?』
「……いや、」
「それはお前自身の刀じゃ、殺生丸」
『!…殺生丸様自身の、』
名は爆砕牙。
その名を聞いた殺生丸は空を飛ぶ刀々斎を見上げ、再び爆砕牙を見下した。
爆砕牙の影響で奈落の肉体が再生出来ない事を知った曲霊は舌を打つと姿を消し、撤退する。
曲霊の気配がない事を確認した殺生丸は地面に降りたち、黒凪を降ろした。
『ありがとうございます…、』
「……」
顔を伏せる黒凪の頭に左手を置いた殺生丸。
顔を赤らめた黒凪は両手で顔を覆った。
するとそんな殺生丸一行の前に刀々斎が降り立つ。
どれ、見せてみろと言った彼の目の前に刀を持ち上げる殺生丸。
刀々斎はにやりと笑った。
「その刀が現れたという事は、お前が父上を越える大妖怪になった証」
「殺生丸様が…」
『大妖怪に…』
殺生丸は何も言わず爆砕牙を仕舞い、徐に飛び上がる。
すぐさまりんと邪見は阿吽に跨り、その後を追った。
黒凪はその様子を見ると徐に振り返り、駆け足でかごめの元へ行く。
かごめは目を覚まし、黒凪を見上げた。
『大丈夫でしたか?怪我は?』
「黒凪…、うん、大丈夫…。」
『…そう、よかった…』
「黒凪」
呼ばれた名に振り返った黒凪。
そこには1人で戻って来たのか、殺生丸が居た。
早く来いと言った殺生丸に返事を返し、かごめに手を振って黒凪が羽を出す。
が、殺生丸は黒凪の腕を掴むと彼女を連れて飛び上がった。
『あの、』
「………」
ぐいと引き寄せられ、抱きかかえられる。
ぼんっとその行為に赤面していると、ふと赤く充血した自分の両手が目に入った。
恐らく奈落の肉体と同調しようとした所為だろう。
気遣ってくれているのだろうか、と黒凪は頬を緩めた。
『…殺生丸様、ご無事でしたか?』
「あぁ」
『……よかった、』
「………」
ぎゅ、と微かに背中に回されている手に力が籠められる。
黒凪は殺生丸に体を預けると徐に目を閉じた。
やがて本当に眠ってしまった黒凪に殺生丸が微かに微笑んだのは。
…本人にしか知らぬ事で。
大事に、大事に。
(殺生丸ってさ、あれデレてるんだよね?)
(あ?知るかよ、んな事。)
(あれは絶対デレてるでしょう…)
(だよねぇ)
(ラブラブだね、殺生丸様と黒凪様。)
(当たり前だ馬鹿者ッ!あれだけの死闘の後は殺生丸様とてデレぬと…)
.
8/8ページ