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Happy Birthday
探偵連載"隙ありっ"の番外編です。
『ごめんなさいね、今日は随分仕事が手間取っちゃって…』
「別に構わんさ。疲れもあるだろう」
『そう?ありがと。…今日に限ってこんなに疲れるなんてついてないわ』
「家に冷たいシャンパンがあるが飲めそうか?」
沖矢の言葉に振り返った黒凪は彼の言葉の意味を理解すると微笑んだ。
ありがとう。と改めて言った黒凪に「此方こそ」と笑う沖矢。
ふふ、と嬉しそうに笑っていた黒凪だったが見えた工藤宅の様子に目を見開いた。
そして沖矢を見ると彼も小さく頷き静かに車を止める。
『…家に誰か入れた?』
「いや。記憶にないな」
徐にグローブボックスを開き拳銃を取り出す。
丁度2丁あるそれを互いに1つずつ持ち見えない様に構えながら扉に近付いた。
様子を窺っているとフッと消える明かり。
その様子を見て確信した。やはり誰かいる。
先程消えた明かりの位置はリビングの辺り。
『…彼等かしら』
「さあな…。ボロを出した記憶はないんだが」
『私だって無いわよ。』
2人で顔を見合わせ罠や人が居ない事を確認すると玄関前に立った。
沖矢が扉に手を掛ける。
入るぞと言った様子の彼に頷き鞄の裏に拳銃を構えた。
がちゃ、と音が鳴る。その瞬間に電気が付いた。
「「誕生日おめでとう!」」
『っ!?』
「っと、」
すぐさま拳銃を隠す沖矢、目を見開いた黒凪。
玄関に潜んでいたのは蘭や園子。少し後ろには世良も居た。
唖然とした様子の黒凪と沖矢を引っぱった彼女達はリビングの電気をつける。
すると机の上には見覚えのないケーキや豪華な夕食。
その周りにはコナン達少年探偵団も居た。
「哀ちゃんに誕生日だって聞いて急遽準備したんです。」
「いやー、まさか今日が遥さんの誕生日だなんてな…」
「これだけ豪華に出来たのは園子お姉さんのおかげなんだよ!」
ふふーんと踏ん反り返る園子にありがとね、と笑う蘭達。
そんな中沖矢はコナンに、黒凪は灰原に手を引かれソファへ。
並んで座らされる2人の前でクラッカーがパーン!と放たれた。
その音にビクッと反応した黒凪。
沖矢は笑いながらそんな黒凪の肩を抱いた。
「おめでとう、遥さん。」
「ケーキ!早くケーキ食べようぜ!」
「まずは遥さんから!」
「そうですよ!ちょっと我慢です!」
興奮した様でそう言った元太達。
そんな彼等を見た黒凪は片手を上げた。
あの、と言った黒凪に全員の目が向く。
『もう1人祝いたい人が居て…』
「もう1人?」
『…昴なんだけど』
「……え」
思わずと言った風に呟いた世良。
他の皆も黒凪の言葉に沖矢を見る。
ええええ!?と理解した様子の元太達が叫んだ。
灰原は唖然とした様子だった為その声に肩を跳ねさせる。
「もしかして昴さんも誕生日なんですか!?」
「実は…」
「すごいすごーい!運命の人みたい!」
はははと笑う沖矢と黒凪の前にケーキが移動させられた。
その上には火のついた蝋燭が立っている。
顔を見合わせ息で火を消すと皆がわーっと拍手をしてくれた。
「じゃあ皆の分を切り分けるね。」
「わーい!」
「俺のは大きめ!」
「ちょっと元太君、がめついですよ!」
楽しそうにケーキを囲む子供達を見て徐に立ち上がる黒凪。
トイレ行ってくる、と部屋を出た黒凪について行こうとする灰原。
しかしそれより先に立ちあがった沖矢に動きを止めた。
『……、』
「どうしました?」
『!…昴…。ちょっと涙が出ちゃって』
すん、と鼻を啜った黒凪に沖矢が眉を下げる。
祝ってくれた事なんて無かったし、呟く様に言う黒凪に「うん」と沖矢が頷いた。
黒凪の歪んだ視界にがやがやと騒がしいリビングが入る。
『あの子も私の為に祝ってくれて…』
「…、」
『…昴と一緒に祝えた事も嬉しくて、』
でもちょっと悲しい、
その言葉の意味を理解して眉を下げる。
こんな時でも私達は沖矢昴と神崎遥でなければならない事が、とても苦しい。
ぽろぽろと涙が零れる黒凪に沖矢が手を伸ばしぎゅっと抱きしめた。
『ごめん、みっともないよね』
「いや、…遥は強いよ」
君は悔しい事や悲しい事では泣かないから。
沖矢の言葉を壁に隠れて聞いていた灰原は目を伏せた。
それに、と黒凪を抱きしめる力を少し籠めて彼女の耳元に口を持って行く。
「お前が泣くのは俺に対してだけだ」
『!』
「…俺の為に怒って、俺の前で喜んで」
『…っ、ちょ』
そんな事言ったら泣いちゃう…。
そう言ってまたポロポロと涙を溢す黒凪に沖矢が耐え切れなくなった様に笑った。
そして眉を下げると徐に額にキスを落とす。
「ほら、戻ろう」
『…うん。そだね』
そんな会話を聞いて壁から離れる灰原。
彼女は子供達に紛れるとケーキを受け取りすとんとソファに座った。
泣いた様子の黒凪にすぐさま駆け寄って来たのは世良。
「だ、大丈夫か…?」
『うん、祝ってくれたのが嬉しくてつい…』
「…よかったな」
『うん、』
ほらケーキ、と差し出されたケーキを受け取って沖矢と顔を見合わせる。
その様子を見た世良はチラリと沖矢を見上げて背を向けた。
沖矢と共に元の位置に戻ると沖矢にも差し出されるケーキ。
「あ、このチョコどうぞ。」
『!…ありがとう…っ』
「ははは、また泣いちゃいますね」
「えぇ!?ごめんなさい!」
いやいや、良いんですよ。
そう言って笑った沖矢の皿にばhappy゙と書かれた板チョコ。
黒凪の皿にばbirthday゙と書かれた板チョコが乗せられていた。
『祝ってくれてありがとね…っ』
「は、遥さん、泣かないで…」
「(喜び過ぎだろ…)」
「…。お姉ちゃん、誕生日を祝ってもらった事なかったから」
呆れた様に見ていたコナンは灰原の言葉に振り返ると改めて黒凪を見た。
それに、と不機嫌に言った灰原にまた目を向ける。
彼女は眉を寄せて沖矢を見ていた。
「あの男が偶然にも誕生日が一緒で嬉しかったんじゃない?」
「…偶然かぁ」
「!…ど、どーしたの、世良のねーちゃん…」
「……。偶然ってそんなに重なるもんなのか?」
僕に聞かれても…、
そう言って渇いた笑みを溢すコナン。
そんなコナンをチラリと見て世良は沖矢を見た。
怪訝な目で彼を見ていた世良だったが嬉しそうに笑う遥の顔を見ると眉を下げる。
「…ま、今日の所は良いか。」
「!」
「さーて、僕もケーキ沢山貰お!」
嬉しそうにケーキの元へ行った世良。
そんな彼女を見送って改めて黒凪と沖矢を見る。
あの2人も元の姿で祝う事が出来たら更に幸せだっただろうにと思ってしまう。
その為には、
一刻も早く奴等を、
(…これで全員帰ったわね)
(あぁ)
(じゃあシャンパン開けましょ)
(飲めるのか?)
(当然よ。まだ貴方と私で祝ってないもの)
(…そうだな)
.
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