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男勝り所じゃない彼女
探偵連載"隙ありっ"、並びにほかのジン成り代わり×赤井秀一とは全く関係ありません。
※夢主は女性です。
パンッ、と鳴り響いた銃声。
「…っはー…」
その後こちらから逃げるように遠ざかっていった足音を聞いた、ライこと赤井秀一は長い溜息を吐いてうなだれ、そのまま目の前の女性の背中にこつんと頭を預ける。
『おい。サボるなよ、起きろ。』
途端にそんな声が上から降ってきて、頭を固い何かで軽く殴られた。
何で殴られたのかなんて簡単に想像がつく。どうせ彼女が愛用する拳銃、ベレッタだろう。
「…あー…」
少し顔をあげ、想像通り拳銃がまず視界に入って、そして端正な顔が見える。
彼女のコードネームはジン。本名は黒澤黒凪。
『あー、じゃない。まだ終わってないんだぞ。』
「……心臓が、」
止まるかと。
そんな俺の言葉にガツガツと俺の頭を叩いていた手が止まった。
チラリと見上げれば困った様に目を逸らし、頬を掻く彼女、黒凪がいる。
『大げさなんだよ。銃を突きつけられる事なんざザラにあるだろうが。』
「(それでも、その突きつけられてる相手がアンタだとこちらの心臓が保たない…)」
組織間では同格とされる幹部同士ではあるが、実質上司のようなものである彼女。今回の自分の任務は彼女の護衛である。
元々実力も実績もある上司の元、そこまでこの任務に腰を入れていたわけでは無かったのだが…。
まさか他の仲間が失敗して追われる羽目になろうとは。
『…ったく、あの野郎ミスりやがって。帰ったらぶっ殺してやる…。』
がさつな手つきで拳銃を確認する黒凪を横目に、そのイラついた顔を見て思わず笑みがこぼれる。
「…物騒な事を言うなよ。女だろ…。」
『こんな場所じゃあ関係ねぇっつの。』
「…正論だな。」
肩を何度か鳴らして立ち上がり、改めて彼女を見てみれば、黒凪は胡坐をかいて拳銃を確認していた。
それを見て軽くその足を自身の足で揺らし「女なんだから…」と続けようとすると、その足を彼女に蹴られ、言葉が止まる。
『るっせ。てめーはその背中の傷どうにかしろ。さっき銃弾掠ってたろ。』
「…言葉遣いをだな…。」
『女っぽくしろってか? お前私の何なんだよ。』
「何って恋人だろう。」
ゔ、と固まる黒凪。
この時黒凪は目元を片手で覆い「…そうだった、ちょっと前までこの文句は通じていたが、最近付き合う事になったんだった…。」と内心呟きながら項垂れる。
するとカキィンッ、と側に弾丸が直撃し「うおお、」と2人して縮こまる。
『んだよ、逃げたんじゃなかったのかよ面倒くせェな…』
続けざまに2発、3発…とどんどん撃ってくる相手を陰から確認しつつ、残り弾を計算していた赤井秀一が最後の弾が撃たれると同時に立ち上がり相手を撃った。
彼が持っていたのは散弾銃。大きな某発音とともに吹き飛んでいった相手の男は地面に沈むとピクリとも動かない。
『流石。いい腕だ。』
「どうも。」
互いに銃を構えたまま物陰から出て男へと近づき、その頭を軽く蹴る。
『おーい、生きてるか?』
「…ぐ……」
『生きてるな。ライ、コイツ運べ。』
「了解」
男を持ち上げ、立ち上がり黒凪の後に続く赤井。
歩く中で、風が吹き黒凪の長い銀髪が揺れた。
…光に反射する銀髪が、自分とはかけ離れた華奢な背中が。
目に焼き付いて離れない。
『おい。ぼーっとすんな。』
「!…ああ…」
『アジトに帰ったらコーヒー買ってやるから』
「…カフェインが切れてるわけじゃないんだがな…」
悠々と歩きながらも敵を見つければ着々と殺していく黒凪。
その躊躇いの無さに悲しくなる時がある。
自分はこの組織に潜入している捜査官で、彼女は組織の中心人物とも取れる程の幹部で。
黒凪はいずれこの手で捕まえなければならない。
…最悪の場合、この手で彼女を。
『…っ!』
「!」
あ。と思わず目を大きく見開いた。
目の前を歩いていた黒凪が撃たれた。
腕から血を流してしゃがみ込んだ黒凪にすぐさま拳銃を取り出し、担いでいた男を盾にして黒凪の顔を覗き込む。
「おい、」
『油断した…』
「らしいな。」
傷口を抑えていた手を見下ろす黒凪。
血がべっとりとついていた。
舌を打った黒凪は拳銃を右手に持ち替えると自分を撃った男を撃ち殺し、イラついた様子で立ち上がる。
その様子を見つめながら考える。彼女は元来左利きだが、右でも難なく銃を撃つ事が出来る。器用なのだ、彼女は。
『肉の壁になってくれてどうも…って、さすがに死んでるな。』
黒凪は2人の盾になった捕虜の男の顔を覗き込み、息を吐いて赤井へと目を向ける。
『もういい、この死体はおいていく。』
「あぁ。他の捕虜を探すか?」
『…。いや、あの方はそこまで欲しがってはいないだろ。』
立ち上がり、左手を何度か握って開いてを繰り返す黒凪が再び歩き出す。
その背中を眺めながら、いつもとは逆の右手に握られた拳銃を見て口を開く。
「変わろうか?」
『あ?』
「先頭だ」
『……。女扱いしてんのか?』
あぁ。と即座に返事を返す。
数秒程黙った黒凪は先頭を赤井に譲り、痺れる左腕へ右手を添えた。
赤井は黒凪の前に進み拳銃を構えながら前へと進んでいく。
「…偶には良いものだろう?」
『あ?』
「女扱いされるのも」
『……。ま、悪くはねぇけど。』
そっぽを向いた黒凪に微かに笑みを溢す赤井。
腕を撃たれていて此処まで平気な顔をしている女はそういないだろう。
ベルモットでも痛がっているのが顔に出るし、キャンティなんて弾を抜かれている間はずっとわめいている。
…彼女だけだ、激痛にも文句ひとつ言わず、静かなのは。
本当に強い女だと思う。…物理的に。
物理的に強い系彼女。
(だ、大丈夫ですかい!? 姉貴!)
(あ? 問題ないケド)
(やせ我慢も程々にしてくだせぇ…!)
(…成程、あれはやせ我慢なのか)
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