名探偵コナン
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その目を向けられて
「ふーん。面白い事件じゃないか」
『それじゃあ私は少し外を見て来ましょうかね』
「は?…アンタ探偵なんだろ?事件をほっとくつもりかよ。」
『そんな事はしません。外に何かあるのではと思いましてね』
黒凪の言葉に眉を寄せる世良。
彼女はメールの受信を知らせる携帯に気が付くと徐に携帯を取り出した。
差出人は先程からメールでやり取りをしている兄。
「("外には何か無い?")」
『あれ、コナン君も外に用事が?』
「うん!ちょっと気になるものがあって…」
「僕も行く。」
え?とコナンと黒凪が同時に振り返った。
携帯をぱたんと閉じた世良が黒凪を鋭い目で見上げ再び口を開く。
外に何かあるかもしれないから。
そう言った彼女に黒凪は小さく笑った。
『先程から誰かと連絡を?』
「!…別に。兄貴だよ」
『お兄さん?へー…』
それって大、じゃなかった。秀一とって事か?
少し眉を寄せた黒凪を見上げてコナンが微かに目を細める。
そんな中世良の携帯が再び受信を知らせ彼女は携帯を開いた。
「(…へ?"電話していい?"って、)」
「世良のねーちゃんは行かないの?」
「あ、あぁ…。うわ、」
世良の携帯が次は着信を知らせた。
すぐさま耳元に携帯を持って行く。
耳に「やあ」と気の抜けた様な声が届いた。
「ちょ、急になんなんだよ兄貴…!」
『兄貴?』
「(え、電話…?)」
≪さっきからお前が言ってる"怪しい奴"、今そこに居る?≫
怪しいとは言ったけど昔に会った事がある様な気がしてただけで…!
そう言う世良に黒凪がピクリと眉を寄せ目を逸らした。
まあ良いから、ちょっと電話代わってくれない?その人に。
あっけらかんと言った兄に世良が思わず「はぁ!?」と眉を寄せた。
≪探偵なんだろ?気になるし…≫
「あのなぁ…」
≪いいからいいから。≫
『良ければ代わりましょうか?』
っ、と世良が息を飲む。
私の事で言い争っているんでしょう?
笑顔で言った彼女を睨む様にして携帯に目を移す。
渋々と言った様子で携帯を差し出した彼女に「どうも」と笑って手を伸ばした。
『お電話代わりました。私に何か?』
≪あぁどうも。妹が貴方の事を随分気にしていた様だったので…≫
『妹さんが私の事を?』
≪ええ。兄に…あぁ、僕の上にも更に兄が居るんですが、その兄と一緒に居ていたのではないかと≫
貴方の上の兄、そう呟いた黒凪に世良が眉を寄せた。
兄貴、一体何処までその女に話すつもりで…。
眉を寄せる世良を心配げに見上げるコナン。
黒凪は薄笑いを浮かべたまま空を見上げた。
『私には覚えがありませんが…、もしかしたら会っていたのかもしれませんね』
≪!…成程。≫
『それより貴方も妹さんから事件の事は訊いているんでしょう?』
≪?ええ、≫
一緒に解きませんか。
そんな黒凪の言葉に電話の相手は息を飲んだ様だった。
世良もそう言った黒凪が理解出来ない様に眉を寄せる。
『どうです?』
≪…構いませんよ≫
『どうも。では…』
電話の相手と話しながら事件現場に戻る黒凪。
顔を見合わせた世良とコナンは彼女について行った。
すると驚く事に世良の兄と
黒凪、2人で結託して事件を紐解いていくとすんなりと事件が解決してしまった。
それもすぐに。そんな2人に世良の頬を汗が伝う。
『随分と簡単に方が付いてしまいましたね』
≪ええ。お見事です≫
『いえいえ貴方こそ。』
≪…やはり貴方は何処か兄に似ている≫
え?と訊き返して黒凪が目を見開いた。
僕の兄とよく似ているんですよ。
再びそう言った彼に黒凪が足を止める。
≪決して本心は見せず、しかし驚くべき速度で全ての謎を解いてしまう。…自分の謎だけは明かさずにね≫
『!』
≪…貴方は兄と同じような立場の方なのでは?≫
『立場って…』
困った様に言った黒凪にクスリと笑った。
いえ、何でもないです。
わざとらしく言った彼に黒凪が少し眉を寄せた。
≪気を付けてくださいね。…兄は既に他界している≫
『!』
≪貴方もそうなる様な気がしてならない≫
そんな言葉を聞いて眉を下げた。
…アンタも似てるよ、兄貴に。
そう言いたい気持ちをぐっと抑え「どうも」とだけ言って通話を切る。
そして世良に携帯を返せば彼女は怪訝な顔で黒凪を見上げた。
「…アンタ兄貴と何を…」
『気になるならご本人に聞いてください』
「…。」
『あぁ、あと…』
世良が片眉を上げた。
貴方のお兄さんにこう伝えてください。
"貴方の考えは間違っていますよ"と。
そうとだけ言って黒凪は背を向け歩いて行った。
その背中を見送った世良はすぐさま携帯を開き操作する。
そしてすぐに耳元に携帯を押し当てた彼女は通話に出た相手にすぐさま口を開いた。
「兄貴か!?一体何話してたんだよ!」
≪別に?…ただ彼女…≫
「?」
≪…いや、良いか。≫
良くない!ちゃんと言えよ!
そう怒鳴る世良にコナンが「ははは、」と乾いた笑みを溢す。
そんなコナンの脳裏に浮かぶのは黒凪の横顔。
困った様な、それでいて嬉しそうな。そんな顔をしていた。
「あ゙、…切りやがった…!」
「ま、まあまあ世良のねーちゃん。とりあえず蘭ねーちゃん達の所に…」
「…そうだな。とりあえず帰るか」
「うん、」
イライラした様子で携帯を閉じた世良はコナンと共に待たせている蘭達の元へ。
やがて部屋に帰った世良はベッドの上で座っていた少女に目を向けると小さく微笑んだ。
少女は持っていた雑誌を側に置き世良を見る。
「どうした、随分疲れているな」
「うん。まあ…」
「?」
「…前々から話してた奴いるだろ?秀兄と一緒に居た女に似てる奴がいるって」
あぁ。と少女が小さく頷いた。
掴み所も無いし不気味な奴なんだけど、そう言って世良が少女の隣に座る。
「キチ兄が急に話したいって言い出してさ。今日は一緒に事件を解いたんだ」
「!」
「…悪い奴じゃないだろうって言ってた」
実際はどうなんだろーな。
兄貴はあの人の事、どう思ってたんだろ。
天井を見上げて呟く様に言った世良に少女は目を伏せる。
一方その話の元である黒凪は…。
『大、飯何が良い?』
「…秀一だ」
『あ。秀一な。…んで何が良いんだよ』
「スープで良い。あまり重い物も食べたくないんでな」
ふーんと言って台所に消える黒凪。
その背中を見送った赤井は開いていた新聞を閉じてテレビをつける。
そこには羽田秀吉が映っており彼は本日も快進撃だった様だ。
≪羽田名人!本日の勝利の決め手は?≫
≪そうですね…、対局の前に謎を1つ解いたので頭がすっきりしたんだと思います≫
≪謎?何かのゲームでしょうか≫
≪まあ、そんな所です≫
羽田のインタビューを見て微笑む赤井。
そんな赤井の前にドンッとスープを置いてその隣に腰を下ろす。
黒凪をチラリと見てスープに手を伸ばした赤井の目線は再びテレビへ。
『羽田秀吉?…知らないな』
「将棋の名人だ。最近は随分と有名だがな」
『ふーん。大…秀一って将棋好きだっけ』
「いや? やった事はあるが」
ふーん。
そう言ってスープを飲む黒凪。
赤井もスープを喉に流し込むと息を吐いて次のニュースに切り替わったテレビから目を逸らした。
唐突な共闘。
(兄弟って似るもんなんだな…)
(は?)
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